ちづ子へのエール住民とともに(質問のエピソードと会議録など)
政策と提案

食料自給率引上げのための価格支持制度の堅持・充実とともにすべての農業者を対象とする直接支払い制度導入を求める申し入れ

 農林水産省は、来年の通常国会に、小泉農業構造改革を推進するため、米,麦、大豆、てん菜,でんぷんを対象とする品目横断的経営安定対策を導入する法案を準備していると伝えられている。その基本的考え方は、従来の価格支持制度は廃止し、農産物価格を市場原理にゆだね、そのことによる経営面への打撃は、品目横断的経営安定対策で救済するというものである。そして、その経営安定対策は一部の担い手に限定するというものである。

 しかし、現行の価格支持制度を廃止し、一部の担い手だけに限定した経営安定対策を導入するというやり方は、日本農業に取り返しのつかない打撃を与えるものであり、次のような様々な困難をもたらすことになる。

 第一に、現在の比較的経営規模が大きく農業施策の集中対象となっている認定農業者とすべての集落営農をあわせても、その経営耕地面積は、日本の農地面積の三割程度であり、七割以上の農地は、この経営安定対策の対象外となってしまうことになる。これでは日本の農業農村が更なる荒廃に進んでいくことは必至である。

 第二に、日本の基幹的作物である米生産においても92%の生産者は、経営面積が2ヘクタール以下で検討されている方向では、担い手対象から外れることになる。市場原理の下での米価下落で、生産継続が困難になる事態に追い込まれることは明らかである。

 第三に、日本の食料自給率向上にとって重要な麦,大豆生産についても、都府県では、転作作物として生産されており、生産規模も小さいため、経営安定対策の対象とならず、価格支持制度の廃止と相まって、生産が困難な事態に追い込まれる。

 第四に政策決定の仕方にも問題がある。品目横断的経営安定対策について、今年の二月の農業開発研修センターのアンケートにおいても、「農業に意欲を持っているものは誰でも対象にすべきである」との意見が、回答した市町村の66%、JAの78%、生協の79%にも及んでいることから分るように、経営安定対策を一部の担い手に限定することは、多くの農業者・自治体・消費者からも支持されていない。このような社会的合意が得られていない対策を強引に進めることはまさに強権政治といってもいいものであり、許されるものではない。

 農林水産省が今やるべきことは、食料自給率引上げのためにも、現行の農産物価格支持制度を充実・強化することである。また、品目横断的経営安定対策の強行ではなく、現行の直接支払い制度を拡充して、営農による国土・環境保全など「農業の多面的機能」を維持し、十分発揮できるようにするための、農業経営を行っているすべての農業者を対象とするとする直接支払い制度の創設である。

 EU諸国が食料自給率を引き上げてきた歴史的経緯を見ると、それぞれの国々が、生産すれば生産するほど所得が増える農産物価格制度いわゆる生産刺激的農産物価格支持制度をとってきたことが食料自給率引上げの原動力であったことは、歴史的事実である。農産物価格支持制度の廃止は、農業者の経営面への深刻な打撃となるとともに、食料自給率引上げの決定的手段を失うことになり、食料自給率の引上げが緊急に求められている日本として決して認めることはできない。

 日本共産党国会議員団は、以上の趣旨を農林水産大臣が、十分受け止め、対応されることを強く申し入れるものである。

  2005年10月25日

                        日本共産党国会議員団            

 農林水産大臣 岩永 峯一 殿

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