福島第一原発事故からの復興再生の課題についての申し入れ(PDF)
2016年9月23日
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
日本共産党国会議員団
日本共産党福島県委員会
同 県議団
福島第一原発事故からの復興再生の課題についての申し入れ
東日本大震災と原発事故から5年半がたちました。政府は昨年、与党の第五次提言をふまえ、帰還困難区域以外については、遅くとも事故から6年後の2017年3月末までに避難指示を解除するとし、帰っても帰らなくても精神的損害の賠償については1年後の2018年3月末で打ち切る方針を示しました。これにより楢葉町、葛尾村、川内村、南相馬市、飯舘村における該当区域は順次解除され、今後川俣町山木屋地区、富岡町、浪江町なども来年4月の解除をめざしています。
一方、8月24日与党の第6次提言において、「将来的に帰還困難区域のすべてを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組む」と示されたことをうけ、31日原子力災害対策本部・復興推進会議は、「帰還困難区域の取り扱いに関する考え方」を決定、5年を目途に居住を可能とする「復興拠点」を設けながら、全体は立入規制を継続する考え方を示し、立法措置についても検討するとしました。
日本共産党国会議員団と福島県委員会、県議団は8月19、20日、川俣町、南相馬市を中心に現地視察や聞き取り調査を行いました。国の掛け声とは裏はらに、「帰っても農業もできず、年金だけでは暮らしていけない」など、住民の不安は大きく募っています。県の調査でも来年3月末で災害救助法にもとづく応急仮設住宅の供与が終了する際、4月以降の住宅が決まっていないと答えたのは、12,600戸中、県内は16.5%、県外は40.8%が未定であり、被災者に結論だけを迫るのではなく、一人ひとりに寄り添った対応が求められます。
以下、現場の声をもとに急がれる課題について申し入れます。
記
1.福島県内10基全基廃炉は、県と全市町村議会で決議されている。政府として、第二原発の廃炉を決断すること。
2.避難指示解除を巡る問題について
(1)「年間20ミリシーベルト以下を許容範囲」とする帰還方針は撤回すること。
(2)避難指示解除にあたっては、市町村や議会からの要望を尊重するとともに、住民への説明と納得による「住民合意」を前提とすること。
(3)準備宿泊では、解体除染をしたため自宅のない人、自宅の荒廃が著しい人などに対して、浪江町のように宿舎を提供するなどの手立てをとること。
(4)被災12市町村の地域医療再生の姿を国が責任をもって示すべきである。医療費負担の減免の継続と、ミニバスの運行など、通院の足の確保を支援すること。
3.避難者の住まいの確保など、支援について
(1)いわゆる自主避難者の借り上げ住宅については2年限りの家賃補助という形になっているが、みなし「公営住宅」として支援を継続するべきである。
(2)雇用促進住宅は、家賃の3倍の収入がないと入れないなど、避難者が要件から外されるという声が上がっている。要件を緩和すべき。
(3)県内においても、すでに避難は解除されたが、通院の手段がないなどの理由から帰還せず、かつ住宅も決まらない人もいる。公営住宅の提供についてはこうした方たちにも可能となるよう、県を支援すること。
(4)経済的な理由など最後は福祉的対応も必要であり、個別訪問と相談の体制を強めること。ノウハウや人材確保について国の支援を求める。
4.帰還困難区域について、解除しながら立ち入り規制を維持し、「復興拠点」は宿泊できる、というのはわかりにくい。「帰還ありき」としないこと、あくまで住民の選択にゆだね、除染については拠点のみとせず、全体の工程や再生の姿をよく説明されたい。
5.除染について
除染完了となった地域でも、スポット的に線量の高い個所や「帰還困難」と「居住制限」などの境界線についての除染の必要性も指摘されており、「再除染」も含め、実態にあわせ徹底して除染を行うこと。
6.子どもの甲状腺検査については、国の責任で検査を継続すること。また、検査結果の説明や甲状腺についての相談など気軽により丁寧に聞くことができる窓口や無料ダイヤルを増設すること。県の検査の対象とならない、成人が希望する場合や、県外の子どもについて地域で健診を行う場合などに支援すること。
7.フランスの規制当局が強度不足の恐れを指摘している「日本鋳鍛鋼」製造の原子炉圧力容器が、東電福島第二原発2、4号機、稼働中の九電川内原発1、2号機など、8原発13基に使用されていることが明らかになった。稼働中の原発はただちに停止し、すみやかな徹底調査と情報公開を求める。
以上