国会質問

質問日:2024年 2月 27日 第213国会 予算委員会

予算委員会の第5分科会で質問(化学物質過敏症・香害について)

香害 介護提供に影響

衆院予算委分科会 高橋氏がとりあげ

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(写真)質問する高橋千鶴子議員=2月27日、衆院予算委分科会

 日本共産党の高橋千鶴子議員は2月27日、衆院予算委員会分科会で香害や化学物質過敏症(CS)をとりあげました。

 高橋氏は、柔軟仕上げ剤などによる香害への反応があるため介護サービスの提供を断られるCS患者が多いとし、「ケアプランがあるのにサービスが提供されない事態があってよいのか」と質問。武見敬三厚生労働相は「正当な理由なくサービス提供を拒んではならない。適切なサービスが提供困難な場合、他事業者紹介などの措置を行わねばならない」と答弁しました。

 高橋氏は、障害者差別解消法に基づく合理的配慮提供の義務化に言及し、「訴えにもとづき、サービス提供側が柔軟仕上げ剤等の使用を控えるのも合理的配慮か」と質問。内閣府の滝沢幹滋審議官は「意思表明があり、過重な負担でなければ合理的配慮の提供義務に該当しうる」と述べました。

 欧州連合(EU)では、マイクロプラスチックの意図的な添加への規制を決め、2028年10月から販売が原則禁止されます。高橋氏は、この規制に沿って日本でも香料をマイクロカプセルに閉じ込めて添加した洗剤や柔軟仕上げ剤の使用を禁止し、家庭用品規制法の対象に加えるよう求めました。

 高橋氏は「学校に通えず、部活もできなかった。青春が奪われた感じ」「自分にどんな能力があり何を失ったか知らない」など若い世代の患者の声を挙げ、「CSのためにライフイベントや経験を積めなかったのは社会的損失だ。厚労省は知見を総合し標準医療の確立と都道府県に1カ所の専門外来の設置を」と強く要求。武見厚労相は「病態の解明中だ。一刻も早い診断基準や治療法の確立を期待」すると述べるにとどまりました。

(「しんぶん赤旗」2024年3月2日付)

 

ー議事録ー

○高橋(千)分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 今日は、主に化学物質過敏症の問題について、武見大臣に質問します。
 二〇一七年の第六分科会を最初に、何度かこの問題を取り上げてきました。その病状ゆえに、リアルでは会えない方が多いです。でも、待っている方々は全国にたくさんいますので、どうかよろしくお願いします。
 最初の質問は、要介護度認定を受け、ケアプランまで作られたのに、介護のサービスを提供できないと断られた利用者の問題です。この方は慢性疲労症候群の患者でありますが、介護度は三です。断られた理由は、香害を併発しており、柔軟仕上げ剤などの香料に反応するから介護を受けられないと。同じような理由で訴えている相談は非常に多いんです。
 そこで伺いますが、これは一般論でお答えください。ケアプランがあっても介護サービスが提供されないという事態は、あってもいいんでしょうか。
○武見国務大臣 一般論としてお答えをいたしますと、介護サービスの取扱いを申し上げれば、例えば、訪問介護などの指定居宅サービス事業者は、運営基準上、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないというふうにされております。
 また、ケアプランに基づくサービス提供については、事業者が、利用申込者に対して自ら適切なサービスを提供することが困難であると認められる場合には、居宅介護支援事業者等へ連絡、適当な他の事業者等の紹介などの必要な措置が速やかに講じられなければなりません。
 事業者においては、こうした基準の趣旨を踏まえて、適切なサービス提供を行う必要があると私は思います。
○高橋(千)分科員 ありがとうございます。
 仮にできない場合でも、別の方を紹介するなど適当な措置を取るべきだということでのお答えだったと思います。
 この方は、居宅介護、通院介助、外出介助も入れて月に七十五時間の介護が必要だと認められたんですけれども、たった十時間しか提供がされませんでした。現在は、週三回、一回一・五時間、ヘルパーさん、たった一人の方が受けてくださって、来てくださっています。同じ患者仲間で千葉の方は、障害の方なんですが、障害支援区分四なんです。でも、月六十時間の利用ができるはずなのに、現在、一時間も提供がありません。市役所からも何もできないと言われました。生きるために必要な介護ですから、こうしたことがないように、実態把握と指導をお願いしたいと思います。
 そこで、内閣府に伺います。
 今年四月一日から、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供が義務化されます。資料の一は内閣府のリーフレットです。改めて、左下の、障害者差別解消法の対象となる障害者とは、これを読みます、一部省略しますけれども、手帳を持っている人や身体、知的、精神だけではなく、障害や社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てが対象ですとあります。二〇一七年の質問において、この定義に照らせば、化学物質過敏症も障害者差別解消法でいう障害の対象になり得るとの答弁をいただいたところです。
 今お話ししたように、サービス提供側が、利用者の訴えに基づき、例えば柔軟仕上げ剤などの使用を控えるというのも合理的配慮として必要なことだと考えますが、いかがでしょうか。
○滝澤政府参考人 お答え申し上げます。
 個別の事案において特定の行為が合理的配慮の提供に当たるか否かは、それぞれの事案に応じて個別具体的に判断されるものですが、改正後の障害者差別解消法第八条第二項では、事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害の状況等に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするようにしなければならない旨規定されておりまして、御指摘のような案件も、同項に該当する場合には合理的配慮の提供に当たり得るものと解しております。
○高橋(千)分科員 ありがとうございます。
 まず意思の表明があった場合にはって、表明をしておりますし、特別難しいことをしているわけではないわけですよね。今紹介した内閣府のリーフレットの中には、特別扱いできませんとか、前例がありませんとか言っちゃ駄目ですよということがあるわけですから、しっかりと対話をしながら、できる措置を取りなさいということを指摘していると思うんです。その趣旨にのっとって対応ができるんじゃないかと今聞いておりました。
 それで、問題は、内閣府のホームページにある合理的配慮サーチには、残念ながら化学物質過敏症に関係すると思われる記述が一切ないことなんです。
 この間、資料の二にあるように、省庁横断で啓発ポスターも作られました。前回質問したときは、左側、「その香り 困っている人がいるかも?」だったのが、今回は、「その香り 困っている人もいます」と断定している。変わったのは、少し理解が進んだのかなと思うんです。化学物質過敏症は、まず、周りの人に理解されることが一番の鍵なんです。
 重ねて伺いますが、私が紹介したような香害や化学物質過敏症に悩む人に対する合理的配慮、あるいは不当な差別的取扱いなどを事例集に加えていただきたいのですが、いかがですか。
○滝澤政府参考人 お答え申し上げます。
 本年四月一日からの改正障害者差別解消法の円滑な施行のためには、合理的配慮の提供に関する具体的な事例を含め、広く国民に周知し、正しい理解を促していくことが重要と考えております。
 御指摘の合理的配慮サーチや同じく内閣府ホームページに掲載しております障害者差別解消に関する事例データベースは、各省庁や地方公共団体から取組や事例の具体例を御確認いただき、内閣府において内容を確認、整理した上で掲載しているものでありますが、随時更新等を図っているところでありまして、今後これらの更新等を図る際には、御指摘のような視点も踏まえ、より充実した内容となるよう努めてまいります。
○高橋(千)分科員 更新に是非期待をしたいと思います。
 そこで大臣に伺いますが、全国の自治体において、ホームページなどで香害や化学物質過敏症について何らかの啓発を行っている自治体がどのくらいあると承知をしているでしょうか。また、啓発ポスターも、今紹介しましたが、作ったはいいんだけれどもちっとも見かけないよという声もあるんですね。そういう点で、どの程度普及されているのか、御存じだったらお答えください。
○武見国務大臣 基本的なことでちょっと申し訳ないのでありますけれども、厚生労働省で、平成二十九年度からこの化学物質過敏症について研究を行っておりまして、その中では、化学物質過敏症を訴える患者のうち約七〇%の方が、柔軟剤等の香料が症状出現の契機であったとの報告もございます。
 しかし、この病態であるとか機序、そうしたことが実は明らかになっているとはまだ言えません。診断基準や治療法もまだ確立していないというのが現状の我々の認識だということを、まず申し上げておきたいと思います。
 ただし、香りでお困りな方々がいることは事実であり、国では、令和三年から、厚生労働省を含む五省庁連名で、香りにより困っている方がいることへの理解や、香りの感じ方には個人差があることなどを周知するポスターを作成して、自治体などに対して配布をさせていただいております。
 また、自治体の中で、滋賀県、それから神奈川県などの複数の自治体では、ホームページにこのポスターを掲載するなど、啓発を行っていると承知しております。
 引き続き、自治体とも協力しながら、香りへの配慮についての周知をしていきたいと思います。
○高橋(千)分科員 理由のところ、ちょっと診断基準がまだできていないんだという話はもうずっとされている話であって、様々な研究がされておりますし、やはりそこは踏み込まなきゃいけないと思うんですね。
 ずっとお話ししていますが、やはり相談窓口を設け、専門外来を設け、そして、やはり訴える人たちのデータを積み上げていくことによってしか診断基準というのはできてこないんだろう、それは難病対策でも同じルートをたどっていると思うんですね。今日は、そのことは、ちょっと次にやりたいことがあるので、指摘だけにしたいなと思います。
 それで、大臣、滋賀県、神奈川県のお名前を出していただきました。二〇一七年の最初の質問をしたとき、その直後に、大阪や京都の当事者の会から十八項目の要望書を託されたんです。この方たちもリアルでは会えなかったんです、やはり病状が深刻で。ただ、その会の皆さんの調べで、ホームページに香害や化学物質過敏症とある都道府県を調べたら、僅か九しかありませんでした。県庁所在地を調べたら、それも九でした。それが今はどうなっているかということで、高橋事務所で調べました、ホームページを全部検索をして。資料の三につけてあります。
 都道府県は、四十七のうち三十九、丸がついております。ついていないところがちょっと目立ちますが。政令指定都市は二十、全部ホームページを持っています。市町村は、千七百四のうち三百七十二、二一・八%まで広がっています。この省庁のポスターをただリンクしているだけのところもあれば、独自のポスターを作っているところもあるし、保健所などに相談窓口がありますよということを言っているところもある。いろいろ努力されていると思います。
 消費者連盟の消費者リポート、二〇二〇年によれば、地方議会での意見書採択は、東京都の三鷹市、埼玉県の所沢市、吉川市、さいたま市、宮城県名取市など、増えてきております。また、宝塚市の教育委員会は、保護者へのネット調査で回答を得た三千八十七人のうち、人工的な香りで体調不良を起こしたことがあると答えたのは二百四十一人、八%に上ったと発表しました。昨年六月二十二日の読売新聞です。
 大臣、自治体から意見書も採択されているわけですよね。独自調査をやっていることもある。こうした自治体の取組に国も応えていくべきではないでしょうか。
○武見国務大臣 先ほども申し上げたとおり、自治体と協力して、こうしたポスター等を含めてホームページで周知するということをやった結果が、今、先生御指摘のように、最初の九のところから確実に広がってきたんだろうというふうに思います。そういう点では、確実に前進しているというふうに思います。
 引き続き、自治体としっかりと連携をしながら、この問題に取り組んでいきたいと思います。
○高橋(千)分科員 自治体も悩んでおりますから。やはり意見書の中には、例えば私がずっと言い続けている専門外来の問題ですとか、相談を受ければ、じゃ、どうしよう、病院がどこにもないよねというのとか、NPOの案内をしてくださっているところとか、様々悩んでいます。ですから、今、せっかく協力し合ってということをおっしゃっていただきましたので、頑張っていただきたい、このように思います。
 国交省に伺います。
 住宅性能表示制度、これは住宅の性能を評価する十の分野があるんですが、空気環境に関することという項目があって、その中に、室内空気中の化学物質の濃度などが含まれています。ただし、任意であって必須ではありません。
 資料の四を見ていただきたい。
 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会発行の「建築基準法に基づくシックハウス対策」というリーフであります。もちろん、国交省の住宅局が協力をしているわけですが、この図を見ますと、たくさんの線が、矢印というか、ポイントがあって、台所と居間の絵に対して、カーテンから壁から天井からストーブから、食器棚、じゅうたん、ワックスをかけた床など、あらゆるところに化学物質の発生源があることを示している図なんですね。右側にその注意事項がありますが、なるべく減らすこと、適切な換気を心がけるとあります。
 私が言いたいのは、まさしくこれなんです。化学物質過敏症の皆さんの多くは、自宅若しくは近隣のリフォーム工事がきっかけで発症しているという方がすごく多いんですね。そういう認識はあるのでしょうか。
○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもとして、住宅回りで空気環境の関係で健康被害を訴えられる方々から我々の関係機関の方に御相談をいただいているということは承知をさせていただいております。
 その中で、私ども国交省としては、厚生労働省が定める化学物質の室内濃度指針値を踏まえ、先ほど先生の方からも御紹介いただきました建築基準法においてホルムアルデヒドなどを使用した建材の使用制限や換気設備の設置の義務化を導入しておりますし、また、住宅性能表示制度において建材からのホルムアルデヒドの発散量の少なさ等において表示することを選択できるようにするとともに、これもまた先生から先ほど御紹介いただきましたが、分かりやすいパンフレット、こうしたものを通じてその普及を図っております。
 引き続き、関係省庁と連携しながら、これらの取組を通じ、居住者の方々、多くの方々が安心して住宅を取得できる、住まわれる環境の整備を進めてまいります。
○高橋(千)分科員 ありがとうございます。
 住宅性能表示、私は任意ではなく義務にしたらいいかなと、今の項目のところは。是非お願いしたいと思います。
 青森の方なんですが、真冬に暖房を一切使わず、ベンチコートなどを重ね着して我慢している女性に会いました。きっかけは、今お話ししたように、リフォームしたときの塗料だったんですね。五十代ですが、専門医も見つからず、ひたすら家の中で過ごしていました。この方は、石油ストーブも電気ストーブもエアコンも使えなくなったということなんですね。
 最初の物質をしっかりと除外できて対策を取れていればここまでにはならないんですが、結局、最初がうまくいかないと次から次と原因物質が増えていく、これが過敏症の特徴でもある、そう思います。
 大臣に伺いますが、私に相談を寄せる方は、本当に住むところがなくて転々と引っ越しを重ねている、こういう方が多いんです。そして、例えば公営住宅に入るんだけれども、リフォームしないでほしい、リフォームしないところに入れてほしい、そういうことまで声として上がっています。こういう実態をお分かりいただけるでしょうか。
○武見国務大臣 こうした化学物質等に関わる過敏症の問題、それからシックハウスの問題、これらについては、もうかねてから、それぞれ、厚生労働省の立場、それから国土交通省の立場、それから環境省の立場で議論されてまいりました。そういった中で、環境規制であるとかあるいは健康規制といったような観点で取り組まれてきたのが今日だというふうに私は理解しております。この観点から、引き続きこの問題に取り組んでいけばよいのではないかと思います。
○高橋(千)分科員 いろいろな角度から、少しでも突破口を開きたいという立場でお話をさせていただいています。シックハウス等の関係も是非認識していただきたいと思います。
 二〇二二年、本委員会での質問の際に、国民生活センターへの柔軟仕上げ剤等の相談が増加していることを取り上げて、一方で販売量は増えている、二〇一八年の数字で三十七万トンでした、このように指摘をして、少なくともマイクロカプセルや香りづけのためだけに使用する製品などは販売しないなど、規制を検討すべきだとただしました。資料の五にあるように、昨年は販売量で四十・六万トンと、更に増えております。
 EUは、二〇二三年九月二十五日、化学物質規制法、化学物質の登録、評価、認可及び規制に関する規則、REACH規則、これに基づいて、製品に意図的に添加されたマイクロプラスチックを制限する措置を採択して、経過措置を経ますと、二〇二八年十月からは原則販売禁止となります。駐日欧州連合代表部のプレスリリースによると、新規制により約五十万トンのマイクロプラスチックの環境への放出が防がれるとしています。有機性、不溶性、分解抵抗性で五ミリ未満の全ての合成ポリマー粒子が対象となるため、洗剤、柔軟剤も含まれます。
 日本でも、香料をマイクロカプセルに閉じ込め、いわば意図的に添加された洗剤や柔軟仕上げ剤、この使用について禁止すべきと思いますが、どうでしょうか。
○武見国務大臣 洗剤や柔軟仕上げ剤などに使用されているマイクロカプセルが健康に与える影響というものでございますが、科学的にはまだ明らかにされていないものと承知しております。このため、現時点でその使用を規制することは難しいというふうに思います。しかし、他方で、まずは情報の収集が非常に重要であるとも考えております。
 確かにEUなどにおいて、こうしたマイクロプラスチックで五ミリ以下のプラスチック粒子が非常に分解されにくく、環境中に放出されると除去することが困難なため、水生環境への影響を防ぐことを主な目的として、二〇二三年九月にマイクロプラスチックを添加した製品の販売を順次禁止する規制が採択されたと理解しております。これは明らかに環境規制という観点からの規制でございます。
 これに対して、香料を微小なプラスチックの玉、これは数十マイクロメートル程度の玉に封入したマイクロカプセルという技術が使われておりまして、このマイクロカプセルについてもEUで規制対象になるというふうに理解をしております。
 いずれにせよ、こうした環境規制と健康規制という観点で、この問題には科学的な根拠に基づいて取り組んでいきたい、また、海外の動向というものも着実に注視しながら考えていきたいと思います。
○高橋(千)分科員 ちょっと時間が迫ってきましたので、はしょっていきたいと思います。
 今、環境規制なんだというお話がありましたけれども、海外で活躍する日本の石けん関係の企業なども当然EUのルールを守るわけですよね。だけれども、日本はまだそのルールになっていないから、守らなくていいんだ、日本のルールに準ずるというふうにダブルスタンダードになっておりますので、できるんだったらやればいいんですよ。これは検討していただきたいと思います。
 それで、今言った柔軟仕上げ剤や香りカプセルなんかは、まさに家庭用品と思いますが、家庭用品規制法の対象にすべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○城政府参考人 お答え申し上げます。
 化学物質過敏症につきましては、現時点では、どのような化学物質が関与しているのかでありますとか、どのような体内の変化が症状を引き起こすのかといったことにつきまして未解明な部分が多いものと認識をいたしております。
 家庭用品規制法で規制をいたしますためには、有害物質を特定する必要がございます。しかしながら、今申し上げたように、化学物質過敏症には未解明な部分が多く、有害物質の特定が困難であるということがございまして、御指摘の洗剤や柔軟仕上げ剤に含まれる香料成分やマイクロカプセルにつきまして現時点で規制することは困難ということでございます。
○高橋(千)分科員 ここのくだりで有害物質の特定が困難だとおっしゃるとは思いませんでした。
 家庭用品というのは何ですかというQアンドAを見ますと、ホームセンターに並んでいるものがそうですと言っているわけですよ。その中で化学物質を使っていると言っているんだから、これを、やめろとまでは言っていない、規制の対象として分析すべきだということを言っているわけなんです。
 皆さんが言っている二〇二二年度の家庭用品に係る健康被害の年次とりまとめ報告を見ますと、吸入事故などの五十六件のうち、洗浄剤や、芳香剤、消臭剤、脱臭剤に関する事例が二十件もある、そういうふうに書いているわけですよね。
 だったら、起こっている事象、これは家庭用品規制法第三条で、規制の対象になっていない物質であっても、きちっと把握しなきゃいけないということが書いてあるわけ。だから、それに基づいて把握していると思うんですよ。
 だったら、今、対象物質選定のスキームを見直す取組をしていますよね、パブコメをあしたまでやっています。この機会に更に検討すべきだと思いますが、いかがですか。
○城政府参考人 お答え申し上げます。
 家庭用品規制法でございますが、家庭用品とそれから有害物質の組合せで規制をするものでございまして、有害物質として二十一の物質群を指定して、含有量の基準等を定めているものでございます。
 こうした観点から、今申し上げましたとおり、有害物質としての指定が難しいというところでございます。
○高橋(千)分科員 ですから、その有害物質が二十一物質しか指定していなくて、五十年代から全く手をつけていない、だからスキームを今見直しているんでしょう。そのときに検討しなさいと、皆さんが出したデータの中にあるでしょうということを言っています。これは指摘にとどめます。
 それで、今度は労災のことなんですが、化学物質に起因する労災が、毎年どのくらい発生報告があり、そのうち保険給付がどのくらいあるのか。また、これをきっかけとして、慢性的な症状となって休職ですとか退職につながる事例もあると思うんですが、いかがでしょうか。
○鈴木政府参考人 労働基準監督署におきまして報告を受けました、休業四日以上の死傷災害のうち、化学物質の性状に関連の強い災害は、令和二年で四百九十八件、令和三年で四百七十二件、令和四年で五百十二件となっております。
 一方で、その内数ではございませんけれども、労災保険におきまして、がんを除く化学物質等による疾病として新規に支給決定を行った件数は、令和二年度で二百十三件、令和三年度で二百三十五件、令和四年度で二百二十八件となっております。
 また、お尋ねの慢性的な症状となって休職、退職につながる事例につきましては、当方では把握が困難でございますけれども、化学物質への暴露による負傷や疾病の労災申請があった場合には、最新の医学的知見を踏まえまして適切に審査を行って、業務との間で相当因果関係が認められれば、必要な療養の給付を行いますとともに、療養のため労務に服することができない場合には、休業補償を給付しているところでございます。
○高橋(千)分科員 ここも指摘にとどめますが、厚労省の職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会の報告書によりますと、休業四日以上の労災のうち、特定化学物質の障害予防規則等の対象外となっている物質を原因とするものが約八割なんですよね。ここにやはり注目しなくちゃいけないと思うんです。
 管理が必要な化学物質が増える一方で、規模の小さい事業所ほどリスクアセスメントが十分にできていないと報告書は言っています。それなのに、政府は事業者の自主管理を基本とする安全衛生対策にシフトしようとしている、このことは矛盾すると思います。指摘をしておきます。
 どうしても最後に一言言いたいことがあるので、次に進みます。
 大臣に聞いてほしいんです。
 思春期や若年世代、十代後半から三十代の方たちをAYA世代と呼ぶそうですが、この世代のCS患者がオンラインで語り合った内容の一部を紹介します。本当に胸の潰れる思いです。社会経験ゼロということの意味なんです。
 中一で入学してからほぼ学校に行けていない。弟が部活できているのが羨ましい、青春という感じがして。何で私はできなかったのか、青春が奪われた。余りにも小さいときからCSで、小学校も一か月も行っていない。経験の幅が物すごく狭い。自分が元気だったらこういう人生を歩めたんじゃないのかなというのはあるのに、現実にはほとんど何も体験しないで終わってしまった。小学校には一年くらいしか通っていない。勉強は好きだったけれども、スポーツも得意だったけれども、どこまで伸ばせるのか、その可能性を試せる機会がなかった。元々は自分にどんな能力があって、何を失ったのか、それ自体を知らない。
 この対談の記録を読んで感想を求められた私は、言葉を失いました。当たり前の人生経験を重ねることができないということの圧倒的な意味、想像を絶するものがあります。だから、私は、この問題を取り上げなければならないと思っています。
 当たり前の人間としてのライフイベントを経験することができない、社会経験を積めないこの方たちは、でも、いろいろな可能性を持っていました。社会の損失です。もっと厚労省が前に出て、標準医療の確立、各都道府県に一か所は専門外来、あらゆる知見を、今いろいろなことをいろいろな角度からお話ししましたが、あらゆる知見を総合して取り組むべきだと思いますが、大臣の言葉でお答えください。
○武見国務大臣 化学物質過敏症については、病態解明などの研究をまさに今進めているところと理解をしております。一刻も早くその診断基準や治療法が確立することを私も期待をしております。
 その上で、実際に診断基準や治療法の確立に向けて、まずは、病態解明のための研究を通じての知見をきちんと確保をして、やはりそうした科学的なエビデンスで、先ほども申し上げたような機序がきちんと解明されるということが、対策を練る上でのやはり基本になってくることを申し上げておかなければならないと思います。
○高橋(千)分科員 隣にいる後藤元大臣が二年前に答弁したのと同じなんですよ。進歩しないわけ、この問題が。
 研究も読みました。様々な研究をされています、あるいは先生方は遺伝子の研究もされています。だけれども、私が、ずっと労災だとかいろいろなことをやってきたのは、やはり化学物質に携わるいろいろな部署でいろいろな知見を積み上げているんですよ。だって、労災なんかは指定病院に行かなきゃいけないわけでしょう。その知見はどうなんですかというと、いやいや、対象が違いますからという形で終わっちゃうわけなんですね。そういう意味で、厚労省が本当に役割を果たしてほしい。この方たちの思いは伝わったと思いたいので、是非、大臣、それに応えて頑張っていただきたい。
 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

 

2024年2月27日 衆院予算委員会第5分科会 提出資料

※資料③「HP等で化学物質過敏症等について何らかの啓発を行っている都道府県及び市町村数の一覧」に、山口県、熊本県の2県を追加しました→こちら

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