福島・宮城沖地震 高橋氏が要求
(写真)質問する高橋千鶴子議員=20日、衆院国交委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は20日の衆院国土交通委員会で、3月に発生した福島・宮城沖地震で脱線した東北新幹線の事故を徹底検証するよう求めました。
今回の脱線では、線路を支える高架橋や橋脚の損傷は約60カ所で、耐震性が高いと補強が後回しにされた高架橋も損傷しました。
阪神・淡路大地震以降、高架橋等の耐震補強が強化されてきました。高橋氏が進捗(しんちょく)状況をただすと、国交省の上原淳鉄道局長は、高架橋が約5万5千本のうち3万6千本(67%)、橋脚は約7千本のうち約3千本(42%)で、計64%が補強を完了したと答弁。高橋氏は「深刻な被害に通じるものから補強しているようだが、27年たって64%の進捗率に衝撃を受けた」と述べました。
また高橋氏が「今回は減速中で運がよかったのでは」とただすと、斉藤鉄夫国交相は「最高速度で走行時における検証も実施したい」と答えました。
高橋氏は、脱線防止対策でJR東海が7割で設置済みの「脱線防止ガード」をなぜ設置してこなかったのかと質問。上原鉄道局長は「構造物の耐震補強対策、早期地震検知システム、列車脱線・逸脱防止対策の三つが重要だ」と繰り返すだけでした。
(「しんぶん赤旗」2022年4月28日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日も十二分しか持ち時間はありませんので、答弁は簡潔に、かつ、はっきりとお願いしたいと思います。
今月十四日に、福島・宮城沖地震で脱線した東北新幹線が再開しました。当初の予定よりは一週間も早く、関係者の皆さんが大変な努力をされたと思います。感謝と敬意を表したいと思います。
また、地震のあった翌日には、例えば羽田便のない仙台空港への臨時便を飛ばしてくださったANAやJALなど、私はどちらにもお世話になっておりまして、大変な御苦労だったと、これも感謝に堪えないと思います。この場をおかりして、改めて感謝と敬意を表したいと思います。
それで、今回の新幹線の脱線は、たまたま運がよかったのではないのかということです。
資料の一枚目は今回の被災状況全体ですけれども、電柱被害や架線など約一千か所に及び、昨年よりやや多いです。また、資料の二は六日付の読売新聞ですが、右下にこれまでの新幹線の脱線が表になっております。二〇〇四年の中越地震、二〇一一年東日本大震災、そして一六年の熊本地震、そして今年と。今年は速度が百五十キロとあるのは「やまびこ二二三号」ですが、白石蔵王駅の二キロ手前くらい、停車寸前で減速中だったということがあります。
「やまびこ」は最高速度が二百七十五キロ、「はやぶさ」は三百二十キロです。もし最高速度であったらこの程度で済んでいたのかと思わざるを得ませんが、大臣の認識をお願いします。
○斉藤鉄夫大臣 現在、脱線のタイミングや早期地震検知システムの動作状況を含めて、脱線の原因究明等については、運輸安全委員会等による調査が行われているところでございます。
いずれにしましても、国土交通省としては、脱線対策や、橋脚を始めとする土木構造物や電化柱の耐震基準、補強計画について、しっかりと検証することとしており、お尋ねの最高速度での走行時における検証につきましても併せて実施していきたいと思っております。
○高橋(千)委員 もう少し個人的な思いでもよかったなと思うんですよね。
この四つの表を見ていただくと、どれもそうなわけです。最高速度ではないし、例えば熊本地震も、回送中ということで誰も乗っていなかったりとか、いろいろな意味で、これまで脱線はしたけれども特別大事には至らなかった、そういうふうに見るべきなんじゃないか、こういうふうに思うんです。
二〇〇四年の中越地震の教訓から、絵にあるような、車輪の金具がレールにひっかかることで車体が大きく逸脱するのを防ぐ逸脱防止ガイドを整備した。これは一定の効果が上がっているよという識者もおります。
一方、資料の三なんですが、これは二〇一六年の熊本地震の事故調査報告書です。上には「九州新幹線の主な大規模地震対策について」。この写真が脱線防止ガードなんですよね。下のちっちゃい解説を読みます。「九州新幹線では「新幹線と直交する活断層があり、地震が発生した場合に付近の高架橋で大きな揺れが想定される場合」に脱線防止ガードを設置。」しているということで、まさに直下に活断層があるというところ、まだそこまでなんだけれども、そこだけしかつけていなくて、脱線したところにはついていなかったと。しかし、こうしたことを受けて、下に調査報告書の結論が書いてありますけれども、検証をしていまして、結論が、脱線防止ガードが仮に設置されていれば発生リスクを低下させることができた可能性はあるとなって、それで「脱線・逸脱防止対策を更に推進していく必要がある。」と指摘をしました。
この認識は共有されていなかったんでしょうか。なぜ東日本ではつけなかったんでしょうか。これは検証は関係ないですから、一般論で聞いていますから、お願いします。
○上原淳政府参考人 お答えいたします。
新幹線の脱線対策につきましては、過去の地震の状況も踏まえながら、支えている構造物が壊れないようにする耐震補強対策、走行中の列車を早く止める早期地震検知システム、列車の脱線・逸脱防止対策、先ほどの脱線ガイドとかこういうものは列車の脱線・逸脱防止対策でございますが、これら三つの対策を組み合わせて実施することが重要であるとされておりまして、これまでも、JR各社や鉄道総合技術研究所等で設置をいたしました新幹線脱線対策協議会におきまして、こうした議論を重ね、対策を進めてきたところでございます。
先ほど大臣が答弁いたしましたとおり、今回の脱線の原因究明等につきましては、現在、運輸安全委員会等による調査が行われているところでございます。国土交通省としても、脱線対策につきましては、しっかりと検証し、検証結果を踏まえた対策を進めてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 一般論でと聞きました。検証結果は関係なく、既に、熊本の検証を踏まえて、なぜつけなかったのか、その判断はもっと早いタイミングでされていると思うので、それを聞いています。
○上原政府参考人 お答えいたします。
一般論という御質問の趣旨がちょっとよく分からないんですが、これは、科学的、工学的に技術的な指針を作って、そしてその対策を取っていくという趣旨で、先ほど申し上げました耐震補強対策と早期地震検知システム、それから脱線・逸脱防止対策の三つを組み合わせて対策を取っていくというのが全ての新幹線についての考え方だというふうに承知しております。
○高橋(千)委員 一般論でというのが意味が分からないとおっしゃいましたけれども、今回の事故の前の話をしているんですよ。それで、なぜつけなかったんだろう。
つまり、熊本では脱線防止ガードが必要だとされているし、JR東海では、もう七割ですか、つけている。しかし、JR東日本では、ガードよりも逸脱防止ガイドの組合せの方が効果的だと判断したということなんですか。はっきりお答えください。
○上原政府参考人 お答えいたします。
大変技術的な課題でございますので、そうした単純な議論ではないというふうに承知しております。
例えば、一つ申し上げますと、九州新幹線は整備新幹線として建設されたものでございまして、これまでの耐震基準そのものが建設途中から適用されておりまして、先ほど一番初めに申し上げました構造物が壊れないようにする耐震補強対策につきましては、そうしたほかの古い新幹線に比べまして構造物の強度が耐震化が行われている、そういうものでございます。
こうしたことを、三つの事項を組み合わせて検討していくことが重要であるというふうに考えております。
○高橋(千)委員 単純な議論ではないとおっしゃいました。象徴的なことだから聞いているんです。ガードが必要だと私は新聞記事を見て単純に聞いているんじゃありません。どうしてそういう判断をしてきたのかということがはっきりして、それと今日の事故調査対策というのがあるんじゃないでしょうか。
九州新幹線がオープンしたのは三・一一の日ですよね。青森市長がそちらのオープンに行っていましたので、私は鮮明に覚えております。だから、一番新しいからこそ耐震が新しいのは当たり前なんです。だけれども、そういう中で熊本地震を経てこうした対策をしてきた。
だったら、東日本は、更に、東日本大震災があり、内陸地震もあり、今回の地震も続いてということでは、これまでの間にいろいろな見直しがされてきたであろうと思うから、単純に三つの話、三点の角度でやっていますという議論ではない、これまでどういう検討をしてきたのかということを聞きたかったわけであります。それを事前にちゃんとお話をしたということであります。時間がありませんので、指摘して、次に進みます。
今回、レールが本来の位置より二十センチから三十センチ下がったという変形が見られました。その原因は、真下の高架橋の根元が大きく壊れていたからと聞いております。橋脚については、まさに阪神・淡路大震災の際に大きな問題となって、耐震化を進めてきました。
昨年の質問の際にも、政府は、土木構造物については、一たび被災をすれば人命や長時間に及ぶ輸送障害につながるものですから、耐震補強の進捗状況についても国も報告を受けておりましたと答弁していますよね。だったら、あの電柱とは違って、高架橋や橋脚についてはちゃんと報告を受けているんです。
それで、伺いますが、阪神・淡路大震災以来続けてきた耐震強化策がまだ終わっていない高架橋、橋脚はどのくらいあって、進捗がどうなっているのか、お答えください。
○上原政府参考人 お答えいたします。
委員お尋ねの阪神・淡路大震災以降における耐震補強の進捗状況でございますが、高架橋につきましては、約五万五千本のうち約三万六千本の補強が完了しておりまして、進捗状況としては六七%、橋脚につきましては、約七千本のうち約三千本の補強が完了しておりまして、進捗状況としては四二%、これらを合わせますと、約六万二千本のうち約四万本の補強が完了しており、進捗状況としては約六四%であると承知しております。
また、このうち、阪神・淡路大震災でも被害に遭ったような落橋、倒壊等の構造物の崩壊に直結するおそれのある剪断破壊に対する耐震補強につきましては、既に全て完了いたしております。
○高橋(千)委員 二十七年たって六四%という進捗率だということは、正直衝撃を受けました。もちろん、深刻な被害に通じるものは先に対策をしているというお話だったと思いますが、今回の、土木設備ということで表紙のある高架橋の問題は、一定その予測が外れたのではないかという指摘もあったかと思っております。
大臣に最後にもう一回聞こうと思ったんですが、済みません、時間がなくなりました。私が言いたかったのは、やはり安全対策というのは時間がかかるのは当然なんです。でも、だからこそ、再開を急ぐ、あるいはとにかく走らせなきゃいけないということで、安全対策が後になっては困るということで、そういう決断も必要だということで指摘をしたかったということであります。
時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。