高橋ちづ子議員は、畜産酪農問題を集中審議した十八日の衆院農林水産委員会で、「酪農・畜産物の国内生産を拡大するために、再生産が確保できるよう加工原料乳補給金単価と肉用子牛保証基準価格を引き下げるべきだ」と述べました。
また、新たな酪農肉用牛近代化計画にあたって「競争力強化や規模拡大ではなく、実情にあった適正規模で牛の生理を大切にする経営へ具体的支援策を」と求めました。
井出道雄農水省畜産部長は、乳価はルールにもとづき算定するとの立場に終始しましたが、酪農肉用牛近代化計画の策定にあたっては、日本型放牧など安全安心の酪農が主要なものとなるよう検討を進めることを明らかにしました。
また高橋氏は、全国より東北が10ポイントも整備が遅れている家畜排泄物法に基づく処理施設の問題を質問。規模拡大を推し進めた政府に責任があるのだから、生産者に責任を押し付けるのではなく、政府が責任を持って対応するよう強く求めました。
亀井善之農水相は「この制度については期限を決めてやっている。(政府としては予算の)大幅な増額をして対応している。厳しいが使命を果たしてもらいたい」と答えました。
(2004年3月30日(火)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
BSE問題や鳥インフルエンザなど相次ぐ問題に、畜産、酪農関係者は重大な影響を受けていると思います。
しかし、こんなにも国民が食の安全あるいは食料の供給体制について考えさせられたということはないと思うんですね。こんなにも日本の食料が輸入に頼っているのか、一度事件が起きると全く供給そのものが危うい状態になるのか、そうした点を考えさせられている今、これはまさにチャンスでもあると言えると思うんですね。
死亡牛からもBSEが発生した。現場においてはこれが風評被害であっては絶対にならないわけですけれども、しかし、これは、この間の国会の論戦があって、努力があって、死亡牛の検査もしっかりやる、そこから出てきた結果でありますので、日本の検査体制がいかに万全であるのか、ですから、もうこれから先、日本で市場に出回るものは安心して食べていいんだということのまさに証明であると思うんですね。
そのことを本当に生かして、日本の生産者が胸を張って頑張っていける、そういう農政にしていけたらいいな、そういう期待を込めて質問に入っていきたいと思うんですけれども、そういう点で、日本共産党としては、二〇〇四年度の畜産、酪農対策の決定に当たって、BSE対策や鳥インフルエンザ対策とあわせて、四点、三月十一日に大臣に申し入れをいたしました。
そのうちの二点について、一つは価格の問題でありますが、酪農、畜産物の国内生産を拡大するために、再生産が確保できるよう、加工原料乳補給金単価、肉用子牛保証基準価格は引き上げること、二つ、新たな酪農肉用牛近代化計画に当たっては、競争力強化や規模拡大ではなく、実情に合った適正規模で牛の生理を大切にする経営などに具体的な支援策をするべきだと求めておりますが、この二点についての回答を求めたいと思います。
○井出政府参考人 まず、加工原料乳の補給金の単価及び肉用子牛保証基準価格の算定でございますが、こうした畜産物価格等につきましては、現行の法律の規定に基づきまして、生産条件と需給事情その他の経済事情を考慮いたしまして、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いて決定されることになっております。
このため、平成十六年度の加工原料乳の補給金の単価及び肉用子牛保証基準価格につきましても、ルールに従い算定をいたしまして、本日、審議会に諮問し、御審議をいただいているところでございます。
なお、算定ルールに基づき算定した諮問値につきましては、加工原料乳の補給金単価はキログラム当たり十円五十二銭でございまして、昨年に比べて二十二銭の下げ、肉用子牛の保証基準価格につきましては、乳用種で十二万九千円、これが二千円の下げ、その他の品種は据え置きでございます。
それから、もう一つのお尋ねでございます、酪農肉用牛近代化計画の策定に当たっての配慮事項ということだと思います。
御指摘がありましたように、我が国の畜産は、国民生活に欠かせない安全な食肉や牛乳・乳製品等の安定供給という基本的使命に加えまして、農業総産出額の約四分の一を占め、地域の雇用や経済を支える、それとともに、自給飼料生産を通じまして、自然環境の保全等重要な役割も果たしております。
しかしながら、現在の我が国の酪農、畜産の現状を見ますと、担い手の確保でありますとか、ゆとりある経営のための労働負担の軽減といった課題もございますし、自給率向上のためには、輸入飼料に依存した畜産から自給飼料に立脚した酪農、畜産経営へ転換していかなければならないという課題も抱えてございます。さらに、先ほど委員から御指摘ありましたように、海外でのBSEの発生や高病原性鳥インフルエンザの流行によりまして、安全、安心な国産畜産物の供給の重要性が増してきている、こういった新たな課題も出てきております。
こうした諸課題に対処するため、現在、食料・農業・農村政策審議会の畜産企画部会におきまして議論を始めていただいたところでありますが、ゆとりある生産性の高い酪農、畜産経営を実現する、あるいは、日本型放牧の普及など自給飼料基盤に立脚した資源循環型の大家畜畜産を実現する、安全・安心で良質な畜産物の安定的な供給を図る、こういったことを主要課題として検討をお願いしているところでございまして、酪農、肉用牛生産の安定的な発展に資するため、新たな酪肉近を一年かけてしっかりと策定してまいりたい、こう考えております。
○高橋委員 ルールはよくわかるんですけれども、そういう中で、農協関係者の皆さんが全国から国会においでになって陳情運動もしているわけですが、せめて現状価格の維持ということを求めていらっしゃるわけで、そういうルールにのっとって、少なくとも維持というふうなことを言っているのかなと私たちは思うのですけれども、引き続いて、こうした声を踏まえて維持以上の対応をしてくださるよう、これは要望にさせていただきたいと思います。
二つ目に、関連して続けていきますけれども、先ほど来取り上げられている家畜排せつ物法に基づく処理施設の問題であります。
猶予期間がことし十一月に迫っているという関係でありますが、昨年の三月に農水省とJA全中、全農との共同による畜産環境整備促進プロジェクトが取り組まれて、十五年度末で六割まで進んだということでありますが、問題は残りを十六年度中に全部やるという計画であります。
内訳を見ますと、施設整備が六千百九十七戸で、七三・三%の進捗、簡易対応が千八百四十六戸で、二九・四%。これを全部やるとなると、簡易の方は千三百十三戸、十五年度の約三倍を一気にやる、施設整備では二千六百六十戸、十二年から十四年度で整備した分を超えるだけの量を一気にやるという、法で決めてしまったからという計画になりますけれども、実際やれる見通しがあるのかどうか、伺います。
○井出政府参考人 家畜排せつ物の処理の関係でございますが、御指摘のとおり、家畜排せつ物法に基づきます管理基準がことしの十一月から全面的に適用されることになることから、こうした処理施設の整備を計画的に推進してまいりました。
御指摘のように、今、十五年度では、全体で五千八百戸の施設整備を予定しております。これについては大体予定どおり進んでおりますが、十六年度は七千八百戸の要望がございます。このため、十六年度予算案におきましても、公共事業、非公共事業とも前年を上回る額を確保したところでありますが、酪農、畜産農家からの非常に希望の多い二分の一補助つきリース事業につきまして、このたび、厳しい財政事情の中ではございますが、十五年度まで毎年二百十億円だったものを十六年度は三百一億円ということで、ほぼ五割増ということで、大幅に増額をいたしているところでございます。
こうした各種の支援措置によりまして、十月末までには計画どおりの施設整備が完成するよう努力をしてまいりたいと思っております。
○高橋委員 私のいる東北は、この全国の整備率よりさらに平均で一〇ポイント整備がおくれており、十六年度で四千戸の整備をしなければならないという大変深刻な状況にあります。
ある県の農協の幹部にこの窮状を訴えられたときですけれども、素堀り、野積みが悪いというのはもう十分わかっていると。そこに至る過程が、環境の問題、重大な問題があってのことであったので、十分わかっているわけです。ただ、農家にそれを負担しろというのは、もうとても無理なんだということをお話しされました。
また、堆肥センターなどを先進的にやっている町もあります。岩手県の紫波町というところに行ったときに、町ぐるみで非常に清潔な形でのセンターがつくられて、また町のイチゴなどの農産物に活用されている、そういう受け皿もしっかりしているという取り組みがあって、うまくいっているところもあるよと紹介もしたんですけれども、しかし、実際に、コストが高い肥料の受け皿がないというのも現実にあるということもまた言われたわけであります。
そういう現場の声にこたえてぜひ伺いたいと思うんですが、一つは、罰則規定の問題がある。この適用に当たっては、やはり延期も含めて、一律に、期限が来たから適用するよということがないように考えていただきたいと思いますけれども、いかがか。次に、全体の三分の一が簡易施設である。防水シートあるいはビニールハウスで対応でもとりあえずはいいよということになっておりますけれども、長期に耐え得るものではない、これをどう考えていくのかということをまず伺いたいと思います。
○井出政府参考人 管理基準の適用猶予期限を延長すべきではないかという御意見ではないかと承りましたが、これにつきましては、ほぼ五年前から、酪農、畜産農家、今お話のありました厳しい状況の中ではありますが、やはり環境問題をクリアしないでこの狭い我が国で畜産を続けていくことは難しい、そういう認識に立って、協力しよう、やろうということになったわけでございまして、既に整備を率先してやられた農家もたくさんおられますので、そういったことで、一方的に延長するということは公平性に欠けるのではないかというふうにも考えられます。もともと、この法律がつくられましたのは、家畜排せつ物の不適切な処理が深刻な水質汚濁等の原因の一つであり、漁業等への影響もはかり知れないということもありまして、かつ、人の健康にも影響を与える可能性もあるということでございますから、その是正を社会的に厳しく求められておるということを考慮いたしますと、猶予期限を延長することは適切ではないと思っておるところでございます。
それから、簡易対応でことしの十一月末はやっていこうという農家につきましても、数年後に恒久的な施設に変えるという方もあろうかと思いますが、現在でも、公共事業、非公共事業の環境対策というのは今後も続くわけでございますので、そういった事業を活用していただくことも可能なのではないかと考えております。
○高橋委員 社会的に厳しくというお話でありましたけれども、この点について、二つ関連して伺います。
個人の農家の、そういう負担がとてもできない、これでは離農せざるを得ないという声に対してしっかりこたえて、農家の負担がなるべく少なくなるような対応をしていただきたいということ。もう一つは、逆に、規模が拡大しているところこそその処理が大変であるということは、もう明確であるわけですね。
社団法人中央酪農会議の平成十二年度の全国基礎調査で見ましても、北海道はまだしも、都府県に至りますと、飼養規模別に見た家畜排せつ物の処理状況について、十九頭以下のところは六〇・四%が飼養の範囲、経営の範囲内で処理ができているのに対して、八十頭以上の農家は二四・八%にとどまっている。耕地還元をしても、内や外で使っても処理できないのが八・六%残っているということが指摘をされておりまして、改めて、規模が大きい農家ほど処理が困難である。
小規模だった時代には自前で農地や草地に還元してきたという背景もあるわけですね。そういう中で規模拡大を進めてきたことも、この国の責任を考えるならば、そこにしっかり、社会的責任を果たすためにも、やはり国の責任も明確にしていかなければならないと思いますけれども、その点で大臣の決意を伺いたいと思います。
○亀井国務大臣 この制度につきましては、期限を決めていろいろやっておるわけでありまして、また、今回大幅な増額もいたしまして対応しておるわけでありまして、いろいろ厳しい状況下にあろうかと思いますが、ぜひそれらに沿ってこの使命を果たしていっていただきたいとお願いを申し上げる次第であります。
○高橋委員 時間になりましたので、非常に残念ですけれども、先ほど、最後にお話しした堆肥の利用の問題で、耕種農業の中で堆肥利用が減っている、そういう背景もありますので、この点での連携などに支援をしていただきたいことを要望して、終わりたいと思います。
以上です。