国会質問

質問日:2004年 3月 23日 第159国会 農林水産委員会

森林法改正

衆議院本会議で森林法改正案が全会一致で可決されました(二十三日)。これに先立つ農林水産委員会で、高橋ちづ子議員が質問に立ちました。

高橋氏は、国産材価格が年々低下している原因について質問。林野庁の前田直登長官は、「木材の国内需要が低迷している」ことや、「国産材は求められる時期に求められる品質の木材を的確に供給するのが難しい」ことに原因があると答えました。

高橋氏は、木材需要の増減にかかわらず、輸入木材が八割、国産木材が二割という外材に依存する実態は何も変わっていないことを指摘。国産材の自給率向上のため抜本的な対策を講じることを求めました。

亀井善之農水相は「関係省庁とも連携を図り、とりわけ国産材の需要拡大に努めたい」と答弁しました。

高橋氏は、農水省が「三位一体改革」のもとで林業普及事業のスリム化を図り、交付金を今後三年間で二割程度縮減する考えであることを厳しく批判。「交付金水準を後退させるべきではない」と主張しました。

(2004年3月31日(水)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 森林の有する多面的機能の持続的発展や地球温暖化防止対策としての森林の役割などが重視をされ、森林・林業基本法の制定や森林・林業基本計画策定、あるいは昨年の森林法の改正など、各般の取り組みがされてきたことを承知しております。そういう立場では、前に進める立場でぜひ応援もしていきたいと思っておるわけであります。

 最初に、林業就業者数の減少、高齢化率が他産業に比べても進んでいる問題でありますが、平成二年から十二年の比較で、全産業の高齢化率が六%から八%になっているのに対し、林業においては一一%から二四%という倍以上の伸びになっております。改正案で重視されている間伐などが適正に行われていくためにも、労働力の確保が重要であります。

 そこで、先ほど来お話になっている緑の雇用の問題でありますが、就業環境の整備について、先ほど大臣、前の岸本委員に対してお答えになりました。同時に、この受け皿である森林組合などの整備、援助の問題でありますけれども、意欲があって緑の雇用に参加をしたいという方に対して、なかなかこれを受け入れる側も厳しい条件があります。大変なハードな労働でありますし、技術を習得させるための体制なども成らなければならないし、給与の面でも当然しっかりとした体制を森林組合としてもフォローしていかなければならないわけですね。

 そういう点で、これが十七年度までの一応の予算でありますが、一たんやってみたけれどもこれでというふうにしないで、まず、その受け皿がうまくいっているのかということを十分に点検もし、また森林組合への援助も強化をして、制度の拡充をにらんでいく必要があるなと思っておりますが、まず、この点についての見解を伺いたいと思います。

○前田政府参考人 先ほどからいろいろ出ておりますけれども、山村の過疎化と高齢化が進む中で、今後の森林整備を着実に推進していくということのためには、やはり優秀な森林整備の担い手の確保、育成、これが重要でございまして、緊急雇用対策と連携いたしまして、平成十四年度補正予算におきまして、緑の雇用担い手育成対策事業、これを実施しているわけでございます。

 本事業におきましては、四十四都道府県で約二千四百名規模の研修生が林業事業体等から最低限求められます技能の習得に取り組んでいるところでございます。

 本事業によります研修生につきましては、現在まだ研修中、いわゆる十四年の補正なんですが、実際は十五年に実施いたしておりますので、まだ研修中でありますことから、定着の実績、これについては未確定でございますけれども、研修が終了後、森林組合などの林業事業体において本格的に林業に就業していくというように見込んでいるところでございます。

 また、本事業の実施によりまして、優秀な林業就業者の確保、育成あるいは森林整備の着実な推進という効果が期待できますほか、都市部からの人の地域への定住促進によります山村地域の活性化も期待されるところでございまして、地域によっては都会から若い夫婦が子供と一緒に住みついて森林作業に取り組んでいるというような事例も見られるところでございます。

 ちなみに、和歌山県あたりですと、今現在、約二百五十名、緑の研修生として行っておられるわけでございますが、そのうち体力的な問題によりますリタイアを除きましては、ほぼ全員、八割以上の方が定着していくというような状況にあるというふうに聞いているところでございます。

 十六年度予算では当初予算に入っておりますので、引き続き頑張っていきたいというように思います。

○高橋委員 私が質問したのは、受け皿の森林組合などに対する支援をどうしていくのかということですので、そのことについてのお答えを、次の質問とあわせてもう一度お答えをお願いします。

 林業専門技術員と林業改良指導員の資格が一元化をされるという内容でありますけれども、仕事内容からいって、一元化そのものには余り矛盾がないという話であります。ただ、この背景にあるのが、三位一体の改革に基づいて林業普及指導事業のスリム化を図るんだということ、農水省は交付金を今後三年間で二割程度縮減するとし、来年度予算案はそのうち七%の縮減となっているものであります。

 林業専門技術員が兼務している割合は七四%、改良指導員は八二%にもなっており、実際にはほとんど一般行政職をやっているというのが実態であります。一元化によって、兼務状況も含め、期待される専門的な役割が十分果たされるのかについて伺います。

○前田政府参考人 先ほどの緑の雇用の関係でございますけれども、一つは、緑の雇用自体が定額補助ということで、それ自体は国から補助金が出ますので、森林組合にとりましても、そのことによりまして持ち出しになって負担がふえるというものではないというのは、理解いたしております。また、そういった森林組合につきましては、各種の森林整備事業等々の助成措置あるいは活動交付金、こういったものを通じまして支援いたしておりまして、そういった中で受け皿の確保ということにも努めていきたいというように考えている次第でございます。

 また、林業普及指導職員、いろいろな形で今現場でいろいろな役割を担っているわけでございますけれども、そういった研究と普及と一体の中で円滑な普及の実施に努めていきたいというように考えている次第でございます。

○高橋委員 持ち出しという言い方はしないかもしれませんけれども、実際に、先日説明をいただいた中では、一人当たり大体九万円の給料を保障するに当たって、森林組合としても一定、二十万程度の給料の水準になるようにやっているのが平均的だというお話でありましたので、やはりこれを次に続けていくためには、持ち出しというか、森林組合で雇用するわけですよね。そうなると、それが、次も頑張ってやっていきたい、次も雇用できるというだけのやっぱり応援の体制が必要だという意味でお話をしましたので、ここはぜひ検討していただきたいということであります。

 その一元化の問題でありますけれども、やはり次がまた二割まで向かってもうレールが敷かれているのかなということは非常に懸念するわけですけれども、実際にこれはやってみて、本当にこれから、今までるるお話しされてきたように、森林の整備や管理やいろいろなことが必要になってくるわけで、そういう中で本当に十分できるのかということは見きわめて、必置規制は維持する、交付金、補助金の水準は維持するという立場に立つべきと思いますが、もう一度伺います。

○前田政府参考人 現在のところ、普及指導員につきましては、先ほど申し上げましたような形の中で当面やっていきたいということで考えているところでございます。

 ただ、予算の方につきましては、全体の改革の流れ等の中で若干この数年間ダウンしてきておりますし、今後も若干またダウンしていくというような面があるわけでございますけれども、それはいろいろ普及事業の重点化を図っていく、あるいは弾力的に、専門技術員と指導員とが一体化するわけでございますので、そういった中で柔軟な対応を図っていく、そういった形の中で普及活動が停滞しないように努力していきたいというように考えている次第でございます。

○高橋委員 森林法全体は賛成できるけれども、この点では承服できないということは言っておきたいと思います。

 次に、労働力の問題や整備が進まない背景に材価の問題があるということ、先ほど来指摘されているところでありますが、秋田県、青森県の主要木材である杉の価格でいいますと、昭和五十六年をピークに、平成元年は二万二千円だったものが、平成十四年は八千四百円にまで落ち込んでいる。売れば売るほどこれでは赤字だ、意欲も当然わかないという声が上がっているわけであります。

 この材価の低迷について、その原因をどう考えているのか、伺います。

○前田政府参考人 材価の低迷自体は、いわゆる需要が低迷している、そういった形の中で、材価につきましても低迷してきているということでございますけれども、需給の関係全体、ちょっと申し上げますと、全体は一億、大体我が国の木材需給量は一億オーダーで推移してきていたわけでありますけれども、最近はこれがだんだん減少してきているということで、現在は八千八百万立方ということで、ダウンしてきております。そういった中で、その八割が外材に依存というような状況になっております。

 そういった形の中で、木材価格につきましては、大変厳しい状況にあるというような状況にございます。

○高橋委員 一億オーダーだったものが八千八百万水準に落ちているというのは事実でありますが、しかし、もちろん、その需給量が一定上がったとしても、自給率そのものがやはり上がらないという、ここをやはり変えていかなければならないと思うんですね。

 五年間の需給量の推移の資料をいただきましたけれども、五年間で一番需給量が多かった十二年、九千九百万何がしの立米でありましても一八・二%、十四年では八千八百十三万立米で一八・二%、高くても少なくても自給率はこの程度で推移してきた。ここを根本的に変える立場に立たなければ、やはり材価の問題も解決はしないというふうに思うんですけれども、その点、伺いたいと思います。

○前田政府参考人 先ほど答弁で、若干漏れ落としたんですが、ただ、十五年の需給量を見ますと、実は木造の新設住宅着工戸数、これが前年を若干上回る水準で推移しました関係から、外材につきましては前年並み、国産材の方につきましては前年を若干上回る水準というような状況と見通しているところでございます。

 ただ、外材に比べまして、国産材につきましては、一定の求められる品質のものを求められる時期に的確に供給していくという、そういったところになかなか難しい面がございまして、そういったところからどうしても自給率が上がっていかないというような面を有しているということが言えるのではないかと考えております。

○高橋委員 今紹介がありました国産材の活用については、この間随分論議もされて、例えば学校などの公共建築に国産材を活用するという問題や、あるいは住宅品確法の対応での乾燥に対する支援だとか、そういう取り組みがるるされてきたことは承知をしていますし、この路線はやはり大いに進めていただきたいと思うんです。

 ただ、自給率を上げるという点では、やはりもっと踏み込んだことがどうしても必要だろうと思うんですね。森林・林業基本法には、「林産物の輸入に関する措置」として、輸入国側の森林の多面的機能に配慮した適正な輸入を確保するための国際的な連携を求めて、関税措置などのことを言っているわけですよね。

 平成十四年の林業白書によれば、世界の森林が、平成十二年までの十年間で、我が国国土の二・五倍に当たる九千四百万ヘクタールが減少し、その九六%がアフリカや南米の熱帯林であると。途上国の荒廃や水不足などの大きな問題を生み出しているという側面があります。同時に、中国などの経済発展に伴う需要が高まっているということでの木材消費の増加もまた言われているわけですよね。

 そういうことを踏まえて、林業白書では、世界有数の木材輸入国である我が国が、世界の持続可能な森林経営を推進する観点から、国内の森林を資源として十分に利用していくことが国際社会の一員としての責務である、これは資源循環型社会を構築していく上でも避けて通れない課題であるとおっしゃっていますので、この立場で、やはり国内資源をしっかり守るんだ、自給率を高めていくという立場に立っていくんだという大臣の決意を一言お願いします。

○亀井国務大臣 木材の需要拡大、このためには、木材のよさ、あるいは普及啓発、あるいは住宅や公共施設等への地域材の利用の促進、また木質バイオマスエネルギーなど新たな需要の確保、これら、いろいろ努めておるわけであります。農水省といたしましても、農水省木材利用拡大行動計画を昨年八月に策定いたしまして、省を挙げて木材利用の拡大に取り組んでおるわけでありまして、また、十六年度の予算におきましても、大規模需要、これのニーズに対応する地域材の新しい流通・加工システムの構築等につきましても取り組んでおりますし、さらには、関係省庁あるいは地方公共団体と一層の連携を図りまして、木材、とりわけ国産材の需要の拡大に努めてまいりたい、こう思っております。

○高橋委員 終わります。よろしくお願いします。

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