国会質問

質問日:2004年 5月 18日 第159国会 農林水産委員会

農協法改正案参考人質疑

 農業協同組合法および農業信用保証保険法「改正」案に対する参考人質疑が18日の衆議院農林水産委員会で行われ、全国農協中央会の宮田勇会長、全国農業協同組合連合会(全農)の田林聰理事長、全国共済農協連合会の前田千尋理事長ら5人の参考人が陳述しました。

 高橋ちづ子議員は経済事業「改革」と称して、44%の農協が赤字の中で3年以内に収支を均衡させようとしても厳しく、弾力的運用があってもいいのではないかと指摘。田林氏は「三年でできない時は、全農が受託するか、期間を延ばすこともある。柔軟性をもってやりたい」と答えました。

 小規模農協と合併する際に大規模農協の総会手続きを省略できるようにした点について高橋氏は、組合員の意思が反映されなくなるのではないかと質問。宮田氏は「合併の簡易な手続きをお願いしたのは、合併のスピードアップで、合併される側の小規模農協には総会がある」と答えるにとどまりました。

(2004年5月28日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、大変お忙しい中、私どもの委員会に御出席をいただき、また貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 先ほど来お話を聞いておりまして、農協改革の断行という皆様の決意と、そのために速やかな法改正を求めておられるということは非常によくわかりました。私どもも大筋では、現行制度を追認するものなど、さまざま賛成できる部分があると思っております。ただやはり、地域の農家の皆さんと密着して頑張っていられる単協の皆さんや、そうした皆さんにとってもよりよい改革となるのかという点で幾つかの問題意識を持っておりますので、ぜひ伺わせていただきたいと思います。

 初めに、全国中央会による基本方針の策定の問題でありますけれども、これまでにも全国大会において基本方針というものは当然示してこられたわけですし、現行法においても、全国中央会が県中央会などに対する指導、監査、教育及び情報の提供などということが盛り込まれてきていると思うんでありますけれども、あえてこれを法律で明確にしなければならなかったその理由と、これによるメリットについてどのようにお考えなのかを伺いたいと思います。

○宮田参考人 今回、私ども全中に基本方針を策定する機能を明確にしていただきたいということは、JAグループが一体となって、全中、都道府県、そしてJAということで、改革に一体となって取り組むということを全中と都道府県中央会が方向性を共有して、JA、農家に対する指導、それから理解を円滑に進めていくということを法律の中で明確に示してほしいということでございまして、JAグループが一丸となって、一体となってこの改革を実践していくんだという強い姿勢のあらわれを、そういったことで、法でひとつ示してほしいということであります。

 これは、我々が基本方針を全中の総会等でJAグループの総意として議論をして決定する、そういったことをやはり内外に公表をしていくということで、都道府県の中央会はこの全中の基本方針にのっとって、先ほど前段の質問にお答えしたことも述べたわけでありますけれども、地方のいろいろな実態を加えた中で、そういった全中の基本方針に加えてそういったものを設定して、ともかくそういったものをきっちり全中から単協に一本の柱として取り組んでいくよということを強く示して、改革を一致してやっていくということであると御理解をいただきたいと思っております。

 当面は、そういった中で、年次別の行動計画とか、あるいはまた数値目標の設定ですとか、そういったものをきっちり考えた中で進めていくということでありまして、これはもう当然、経済事業改革の事柄も、そういったものも含まれていくわけでありますけれども、いずれにしても、より強固に示して、お互いの地域の実態を加えた中で、事業方針をきちっとやはり柱として末端までおろし、浸透した中でお互いが取り組んでいくという姿勢をあらわしたものだということで、ひとつ御理解をいただきたいと思います。

○高橋委員 強い姿勢のあらわれであるということと、それから、加えて地方の特殊性を生かした方針については盛り込んでいくというふうなお答えだったと思うんですけれども、やはり、もちろん、当然これまでもそうしてきたことだから、十分そういうものを加味されているとは思うんですけれども、やはり個々の地域、品目などによって特殊性があって、地域でいろいろ取り組むべき目標などが違うと思うんですけれども、どこまで地方の、県中の特殊性などが、自主性などが生かされていくのかということですよね。例えば、極端な話、それぞれ上がってきた目標に対し、ちょっと違うよということもこれありということなのか、伺います。

○宮田参考人 どうも、基本方針を全中が示していくとなりますと、どうしてもそういったものが基本となって縛られるのではないかという末端でのそういう懸念というのは本当にあるかと思いますけれども、私どもは、決して、そういった基本方針がすべてそれがそのままずっと下まで行くということは、これはやはりそれぞれ各県、各町村における農業の実態なり、あるいはまた組合員の意識なり、いろいろまたその農協を取り巻く周囲の環境が違うわけでありますから、基本は基本として、地方のそういった事柄につきましては、そういったものを加えた中で、地域に適したものを加味した中でやっていくということがありまして、何らそういったものを阻害するとか押さえつけるというものではないわけであります。ただ、そういったものを一本の柱として立てていくんだよという基本的な考え方というか取り組みですね、きちっと示していくということが、やはり今の改革の時代には必要ではないかということで、ひとつ御理解をいただきたいと思っております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 それで、次に経済事業改革についてぜひ伺いたいんですけれども、今非常に改革が求められている、生産関連事業では大体四四%の赤字農協がある、あるいは生活関連では七〇%の赤字農協があるという部門別収支の問題が指摘をされまして、これを三年以内に収支均衡していくんだということの目標がJAとして持たれていると思うんですね。

 その中で、例えば実質債務超過、繰越欠損会社で黒字化、債務超過解消が困難な会社は清算も視野に再構築計画を策定するというふうなことも書かれておるわけですけれども、例えば、県の中央会によっては、全中の改革方針よりももっと厳しくするんだというふうな決意などが述べられておったり、三年以内に改善する見込みがない場合は廃止という言葉が明確に盛り込まれている、そういう県の改善計画を持っているところもあるわけです。

 それで、非常に思い切った決意のある中身であると思うんですけれども、具体的に、なるべく黒字になるために努力をしなければいけないんだけれども、三年以内にだということで、大変なタイトな目標なわけですよね。拠点型事業をやっていく、あるいは別会社化などの経営体についても考えていくということが示されているわけですけれども、どういうふうに、例えば単純に別会社化とかいっても、ではどこが受けるのかなどという具体的な問題などが出てくると思いますが、そういう点も含めて、中央会としてどういう指導をしていくのか。

 それから、あわせて伺いますが、個別の事業が全部黒になるというのはかなり難しいだろうと。特に生活関連の分野ですよね。それを、例えば一遍には黒にはならないけれども、全体として見れば黒だ、そういうのをやはり今は認めようというふうな形で、弾力的な運用というのがあってもいいんじゃないのかなと思うんですが、それについてどうなのかなということを伺いたいんですが、よろしいでしょうか。

○田林参考人 今度方針を立てた経済事業の改革の内容が、三カ年で場合によっては撤退する、あるいは廃止する、そういうことが非常に厳しいんじゃないか、もう少し弾力的な改革にならぬか、そういう御趣旨だというふうに思ったわけですけれども、先ほどもちょっとお話をさせていただきましたとおり、地域の農協の改革の主体性を最も私どもは尊重しなきゃならぬというふうに思っています。したがって、改革に当たっては、農協とよく協議をしながら進めていくということがあります。

 ただ、時間を幾らかけてもこの状況ではどうにもならぬ、赤字が大きいSSや、あるいは生活の、店舗の事業が会社化や改革の対象になっておるわけですけれども、そうしたものが、近場に大きなスーパーができたとか、あるいは大きなガソリンスタンドが道の向こうにできたとか、そういうような競争相手の実態が出てきますと、農協としてそういうことを対抗してやる手段をやはり考えていかなきゃいかぬわけで、実態に合った就労だとかあるいは賃金体系だとか、そういうものをやっていかなきゃいかぬ。

 したがって、それは会社化ということも視野に入れなければならないだろうというふうに思っていますが、三カ年ということを一応の目標として考えましたのは、やはり収支の均衡を、例えば十年で収支均衡すればいいじゃないかというようなことは、今の時代に改革をする上でとても実践事例にならないということもありまして、目標としては三年間を立てて、その間に収支を均衡すると。どうしてもそれができない場合には、先ほど言いましたように、全農が受託をするか、あるいはもう少し延ばすか、そういうようなことを農協との間でよく協議しながら進めていきたいということでありますので、三カ年が金科玉条のごとく、それでなければならないというふうには考えておりません。おっしゃられたように、一定の柔軟性は持ちながら進めていきたいというふうに思っております。

○高橋委員 よくわかりました。一定の目標として、どうしてもできない場合の協議やさまざまな努力をされるというお話でしたので、そこにぜひ期待をしたいと思っております。

 それで、松下さんにぜひ伺いたいんですが、多分、この経済事業改革のよい例というのか、非常に進んでいる環境なのかなというふうに、松下さんがあり方研究会の中で発表されているものなどを読んでいると、そのように感じておりますけれども、ちょっと幾つか聞きたいんですけれども、先ほど、合併の手続の問題で、総会の手続を不要とする基準が五%では小さい、一〇%から二〇%に引き上げるべきだとお話をされたかと思うんですね。

 これについてはさまざま、総会の手続自体が困難であるという背景などがいろいろあるかと思うんですが、やはり組合員の意思が反映される仕組みというのが残されなければならないと思うし、大変そこには不安を持っているわけですけれども、その点についてまず伺いたいんですけれども。

○松下参考人 合併の手続でございますけれども、これは、今法案で出ておるのは二十分の一、五%という数字が出ておりますけれども、現実の話になりますと、五%が、吸収される組合と、する組合との差というものは、全国的にも非常に少ないのではないかなと私は直観的にそう思ったわけでございます。やはり一〇%とか二〇%ということになれば、ある程度の組合が救われるんじゃないか。

 なぜそういうことを申し上げますかといいますと、私どものように二万五千人の組合員を抱えておりますと、この総会、総代会の手続がありますけれども、総会を開くという場合には、相当な経費と労力、それからそれを収容する施設もございません。そうなりますと、どういうことかというと、必然的に書面議決ということになりますと、組合員への浸透が少なくなってくるということになります。

 私どもは、合併というときには十分各地区別に回りまして、それぞれ了解をとりながら進めておりますので、それから後からの反対というようなことはないということを思って、今なるべく簡素化していただくのが、私どもの現場の声として申し上げたわけでございます。

 以上でございます。

○高橋委員 松下さんのところでは地区別に組合員さんのところをよく回ってやっているというふうなお話であったんですけれども、同じ質問を全中の方にも伺いたいんですが。

○宮田参考人 今回、合併の場合の簡易な手続をこの法改正などでお願いしておりますのは、やはり経営困難な農協の合併、あるいはまたそういったものが、来年のペイオフを控えまして合併のスピードアップということが非常に必要でありますし、またもう一つは、小規模農協が合併する場合、例えば既成の大きな農協の五%とか一〇%の事業規模しかない農協を吸収していただく場合は、やはり受ける側の農協の場合、総会の承認といったことをなくした中で進めていくような法改正をひとつお願いしたいということであります。

 ただ、ここで言えることは、決して組合員の意思を尊重しないという意味ではありませんので、合併される方はちゃんと合併総会があるわけでありますので、受ける側の方の、そういった受け入れの、吸収の場合の簡素化をひとつ法改正でお願いしておるということでございます。そういったことによってかなりスムーズな合併がより進むのではないかということでございますので、そういったことを今回の改正の中で強く望んでおるということでございますので、御理解をいただきたいと思っております。

○高橋委員 これについては意見があるんですけれども、伺っておくだけにしたいと思います。

 もう一つ松下さんにお伺いしたいんですけれども、自己資本比率なども非常に高いですし、経営状況も大健闘されていると思うんですけれども、その中で、能力主義人事管理制度を既に取り入れていて、職員からの不満も出ていないというふうなお話をされていたかと思うんですけれども、この制度導入のメリット、あるいは職員との関係でどう理解を得ているのかをぜひ伺いたいと思うんです。

 それで、農協の仕事の中には、企画分野、経営改善など、成果によって能力が評価しやすい分野と、淡々と事務をこなすといいましょうか、そういうなかなか評価とは言いがたいけれども切っても切れない大事な仕事というのもあると思うんですね。それらの扱いなども含めて、どのようにされていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

○松下参考人 私どもの農協では、合併初年度から能力主義管理制度を導入しました。当初はいろいろと問題もございました。しかし、これは職員の意見等を集約しながら改善をしてまいりました。

 特に、メリットでございますが、これによって職員がそれぞれ評価されますので、私は当初は非常にいろいろ問題が出るだろうと思いましたけれども、一年経過した段階では軌道に乗ってまいりました。メリットにつきましては、やはり能力があったり仕事の実績を上げる者についてはそれなりの評価をするということ。それから、これについては、職員の間で浸透しておりますので、不平不満はありません。

 どういう形でやっているかといいますと、一般職については、係長が第一次評価者、第二次評価者は課長と、それぞれの段階で一次評価者、二次評価者そして総合評価という形でやりますし、それからさらには、具体的に話し合いで行いますので、自分の欠点についていろいろ言われた場合には、それを直すという形になっています。ですから、私ども、A、B、C、Dの四段階にしておりますけれども、最終的に全職員がA段階になった場合には、組合員満足度は一〇〇%になる農協ということを目指して今やっているわけでございます。

 それぞれまた職種によっていろいろ評価が難しいではないかということでございますけれども、これにつきましても、非常にきめ細かい職能表をつくりまして、それによってやっております。ですから、管理部門、現業部門、それぞれにおいて職能評価の仕方が違っているという形になっていますので、そのように御理解いただきたいと思います。

 以上でございます。

○高橋委員 時間が参りました。まだまだたくさん聞きたいことがあったんですけれども、時間が来たので終わりたいと思います。

 本当に改革がいろいろな面で求められているというのは理解をできるんです。先ほどお話があった、例えばスタンドが間近にあったり大手のスーパーが間近にあったりするときに、やはりそれは見直しをしていこうだとか、そういうことというのは確かにあるだろうなと。

 ただ、一方では、生産事業と生活事業というのが一体となってやはり農協の意義があるんだ、生活関連をなくしたらだめなんだという声が非常に多いわけですね。そのことによって、要するに本体である農業関係事業の方も結局だんだん縮小されていくのではないかというふうな懸念などもさまざまあるわけですね。

 あるいは、合理化を図っていくために、いろいろ合併を進める、あるいは職員の合理化も進めるということは当然念頭にあると思うんですけれども、そういう点でも、だんだんだんだん地域と離れていくことによって、本当に農協の役割が発揮されるのかなといういろいろな意味での心配もあって質問をさせていただきましたので、その辺のところをぜひよろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、ありがとうございました。

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