国会質問

質問日:2004年 6月 1日 第159国会 農林水産委員会

競馬法改正案質疑・採決

 高橋ちづ子議員は1日の衆議院農林水産委員会で、競馬実施事務委任制度に民間委託を導入する競馬法「改正」案について、「勝ち馬投票券(馬券)の発券業務を民間委託することは、競馬の変質を招く」と政府をただしました。

 農林水産省の白須敏朗生産局長は「民間委託の実施事務の範囲は政令で定めるが、競馬主催者が基本的責任を負い、必要な監督を行うので問題はない」と答えました。高橋氏は、競馬場で発券業務に携わっている従事員が国庫納付金を扱い、競馬の健全性を支えていることを指摘し、「民間委託すれば競馬の公正性に抵触する。不利益な扱いを受けないようにガイドラインを示すべきだ」とただしました。

 亀井善之農水相は「一律にガイドラインを示すのは、主催者側を拘束することになる。十分な話し合いの中で適切に対応すべきだ」と答えたものの、高橋氏の再度の追及に「私人に委託して競馬の公正性の確保が図られないときは十分指導したい」と約束しました。

 高橋氏は、地方競馬の収支改善のために行う公営企業金融公庫からの長期借入金について、償還の繰り延べや低利な起債への借り換えなどを求めました。

(2004年6月4日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 競馬について、我が党は、スポーツ性を重視した競馬の健全な発展を望む立場から、賛成をしてきました。ただ、今回は、この競馬を支えてきた根幹を見直すものであり、重大な中身だと考えています。その点に立って質問をします。

 競馬実施事務委任制度の見直しで、私人が追加され、いわゆる民間委託が導入できるようになりました。大幅なコスト削減につながるという期待の声も確かにありますが、まず、私人とは何か、いわゆる資格や制限のようなものがあるのか、伺います。

○白須政府参考人 今回、コストの削減あるいはまた民間のノウハウの活用ということで、競馬ファンへのサービス向上を図ることを目的としまして、私人への委託という制度を設けようということにしておるわけでございます。具体的な事務につきましては政令で定めるわけでございますが、私人に対しましては、馬券の発売なり払い戻し、また場内、場外の取り締まりということにつきまして委託できるように規定をすることを想定しているわけでございます。

 そこで、今の、具体的な私人とはどういうものを考えておるのかというお尋ねでございますが、例えば馬券の発売なり払い戻し、そういう事務でございますれば、競馬場やあるいはまた場外の馬券売り場、こういったところのいわゆる所有会社といったようなところが一つには考えられる。それからまた、例えば場内、場外の取り締まりの事務ということでございますれば、警備会社といったようなところに委託するということが想定されるわけでございます。

○高橋委員 限られた時間なので、答弁は簡潔にお願いします。

 それで、本来、勝馬投票券の発売行為は、刑法第百八十七条で禁止されている富くじ発売の性格を有するものでありますが、競馬法によって、刑法の特例として認められているものだと認識をしております。今回、委託を可能とする勝馬投票券の発券業務が、この根幹に触れるものではないのかと思いますが、見解を伺います。

○白須政府参考人 競馬の実施に関する事務の範囲につきましては、具体的には政令で定めることになるわけでございますが、競馬法は競馬の主催者を限定しておるということでございますので、特に、開催日時の決定でございますとかあるいは払戻金の額の決定、そういった競馬の実施の根幹をなす事務につきましては、引き続き主催者が行うべき事務だというふうに考えておりまして、それ以外の事務のうち、例えばこの勝馬投票券の発売など一部の事務につきまして、私人への委託が可能となるよう規定することを想定しているわけでございます。

 ただ、私人への委託を行いました場合にも、競馬の主催者は、その主催者としての基本的な責任を負うわけでございます。したがいまして、その委託をいたしました私人に対しましても必要な監督を行うということでございますので、ただいま委員からも御指摘ございましたが、私人への委託によりましてそういった法的な問題ということが生じることにはならないというふうに考えている次第でございます。

○高橋委員 ですから、先ほど来の御答弁は、刑法の特例で認められている競技だ、その根幹をなすものは主催者がかかわる開催日時の決定その他そういうものを言うのであって、発券業務などはその他である、根幹ではないという認識だと思うんです、今の御答弁は。本当にそれでいいのかということなんですね。

 例えば、中央競馬会でいうと、施行令第三条の中で、発売、払戻金、返還金などをみずから行わなければならないと規定をされて、これにより直接雇用をされてきたんだと思うんですね。従事員の皆さんが、窓口で複雑な投票券のマーク方法など文字どおり競馬のスペシャリストとして対応して、だからこそお客さんに楽しんでもらってきたこと、同時に、扱うのは公金であり国庫に納めるお金であること、また、万が一にもお客さんに少なく払い戻しすることがあってはならない、そういう中で、厳重なチェック体制が求められ、現金と投票券の照合、印鑑による照合など、点検を幾重にも重ねて、神経を使ってやってきた。そういう従事員の皆さんが今日の競馬を支えてきたし、毎年三千億円を超える国庫納付金を積み上げてきた、そういう役割を果たしてきたと思うんですね。

 こういう直接雇用の意義について、大臣の認識を伺います。

○亀井国務大臣 競馬の実施に関する事務、これの範囲につきましては、これはそれぞれありますけれども、今回、具体的な政令でそれを定めまして、そして委託、こういうことを考えておるわけでありまして、それぞれ重要な分野がありますけれども、しかし、いろいろ検討会等でも議論をしてまいりまして整理をしたわけであります。

 しかし、先ほど来申し上げますとおり、競馬の実施の根幹をなす事務につきましては、引き続き主催者が行うべき事務、このように考えておりまして、今回の改正というのはあくまでも、競馬主催者のコストの削減やあるいはまた民間のノウハウを活用して競馬ファンへのサービスの向上、こういうことを目的として競馬の実施に関する事務を私人に委託する、こういうことであります。

○高橋委員 コスト削減だけでこの発券業務の問題を割り切っていいのかということがやはり問われていると思うんですね。先ほどお話ししましたけれども、公金を扱うという性格、それを根幹ではないという認識が大臣にはあられるのかなと思うんですけれども、それを後で政令で定めるからという問題では済まないわけですよ。それを踏まえて、どうするかということを今審議しているわけですから、もう少しその点は具体的な認識を伺いたいと思います。

 次に、関連するので進みますけれども、問題は、では、これが外部委託になったとき、退職かあるいはその委託会社に派遣が迫られるのでないのか。参議院の委員会の審議の中では、労使間の話し合いをやってください、そういう答弁があったと思いますが、それだけでいいのかということなんですよ。国からお墨つきをもらって、国が法改正をしたんだから委託できますよと。国からお墨つきをもらって、リストラもできるよ、もしこうなったら、それで済むのかという問題なんです。

 従事員が一方的な解雇や不当な賃金引き下げを要求されるなど不利益な扱いがされないように、国として一定のガイドラインを示すなどの歯どめを持つべきだと思いますが、この点を伺います。

○亀井国務大臣 従業員の雇用の問題、これは各主催者の経営判断、これによるわけでありまして、処遇されるもの、このように思います。そういう面で、国がガイドラインを一律に示すということは、各主催者の主体性が損なわれる、こういうものではなかろうか、こう私は思います。

 したがいまして、やはり、この従業員の処遇の問題等々につきましては、十分主催者と従業員との話し合いの中で適切に対応される、これが必要なことではなかろうか、このように思います。

○高橋委員 重ねて伺いますけれども、話し合いが必要であるというのは、当然、民間の会社、どこでも当たり前のことであって、十分な説明がないままに一方的な解雇があったりとか、そういうことがあってはいけないというのは、これまでの判例でも、裁判などでも明らかにされてきた問題でありますよね。でも、今回の場合は、ただの民間会社ではないわけですね。国庫にお金を納めている団体であり、農林水産大臣はJRAを指導監督する立場にあるわけですよ。お墨つきもらって、あと、話し合いでいいわよと。労組がないところだってあるんですよ。そういう現場の力関係だけにゆだねていいのか。

 では、適切な扱いが、身分保障がされるように、国としては何の手だても打たないんですか、もう一度。

○亀井国務大臣 私人に委託をいたしまして公正の確保が図られない、こういうようなときには、やはり十分指導してまいりたい、こう思っております。

○高橋委員 よろしくお願いします。

 次に、深刻な地方競馬の問題で伺います。

 単年度収支が赤字となる主催者が大半を占め累積赤字がかさんでいること、十三年度から十五年度で既に七つの競馬が事業から撤退したという中、いずれも今後のあり方を模索しているところであります。今回、地方競馬主催者が単独で事業改善を図ろうとするとき、事業収支改善計画を作成し、農林水産大臣の同意を得た場合、地全協への交付金を最長三年間猶予する特例を盛り込みましたが、この事業収支改善計画書に盛り込む内容、何を考えているのか、どうやってそれを判断するのか、伺います。

○白須政府参考人 今回の法改正におきまして、ただいま委員からもお話ございましたとおり、厳しい状況にかんがみまして、事業収支改善のための一号交付金の猶予制度を設けたわけでございます。そういった制度を活用いただきまして主催者の活性化を図っていただくということを目的にしているわけでございます。ただ、いずれにしても、競馬事業の継続なり撤退ということは、みずからの意思で、それぞれの地方の主催者が判断されるということでございます。

 この猶予措置についてでございますが、ただいま委員からもお話ございました交付金猶予の同意に当たりましての判断でございます。

 判断につきましては、それぞれ地方競馬主催者の方々の事業収支の状況、それから講じようとされる事業収支改善の内容、それぞれ異なるわけでございまして、それぞれごとに判断をせざるを得ないわけでございますが、例えば、一つには、馬券の発売の拡大策といたしまして、新たな場外馬券の発売所の設置でございますとか電話投票の会員の増加、あるいは、新たなかけ式の導入でございますとか、コンピューターの、いわゆるトータリゼータと言っておりますが、集計システムの更新、そういったことが考えられるわけでございます。また一方には、経費の削減策といたしまして、不採算日の削減でございますとかあるいは競馬事務の民間委託といったようなことが考えられるわけでございます。

 そういったそれぞれの主催者の方々が講じようとしておられるただいま申し上げましたような具体的な内容につきまして、それぞれ個々に、個別にその効果がどういうものであるのかというのを判断していく必要があるわけでございますが、基本的には、地方競馬の主催者の方々が策定をされました事業収支の改善計画、そういったことの確実な履行を通じましてその主催者の事業収支が改善される、それによりまして交付金の安定的な交付が見込まれることになるかどうかということを、ただいまのような具体的な内容から見きわめるということになろうかというふうに考えている次第でございます。

○高橋委員 あえて今お話にはなかったようですけれども、同じように、地方競馬の事業収支改善計画の中において、コスト削減イコール人件費の削減ということが大きく前に出ないように、その点は慎重な対処、見きわめをしていただきたいと思うのと同時に、今ちょっと例に挙げた場外の問題ですとかかけ式の問題ですとか、一つ一つ私、問題意識を持っているんですが、時間がないので、もし時間があれば後でお話ししたいと思うんですけれども、具体的な話で伺いたいと思うんですね。

 岩手競馬は、水沢と盛岡に本場があり、青森と秋田を含む九カ所のテレトラックを持っています。先日この二つの競馬場を見てきましたけれども、馬を間近に見ながら家族で楽しむ姿を見て、改めて競馬のよさを感じたり、あるいは、水沢の方では、農耕馬を走らせた時代があったこと、高校に馬術部を持ち、国体開催など、市民の中に根づいてきた競馬の歴史などを感じることができました。ところが、この岩手県競馬組合は、盛岡に平成八年、オーロパークをオープンさせて、一億六千万円の馬の彫刻をシンボルに、四百五億円の施設整備、これが大変重くのしかかっております。

 岩手競馬のあり方懇談会報告書では、「地方競馬は、地方財政に寄与することを目的としており、」現在ではその開催する意義が認められないとまで言い切り、「競馬組合の歳入不足額がこれ以上増加するのであれば、」「廃止することを決断すべき」とまで提言をしています。ただ、施設整備の責任は確かに問われなければならないわけでありますが、同時に、二千八百人もの関連する従事者への影響、廃止による債務負担が自治体にかぶさってくることの影響ははかり知れないものであります。

 岩手競馬は、一人当たりの売り上げは大きく減少しておりますが、入場者は順調にふえ、二百万人を超すファンに支えられております。四十年間、地全協、公営企業金融公庫への交付金のほか、剰余金からの自治体への配分四百七億円、合わせて七百三十五億円を交付してきたという実績もございます。

 これらを踏まえて総務省に伺いますが、要望が出ております。公営企業金融公庫からの長期借入金について、経営が安定するまでの間、償還の繰り延べや低利な起債への借りかえなどを検討するべきと思いますが、伺います。

○山口政府参考人 お答えを申し上げます。

 公営企業金融公庫による地方債の繰り上げ償還につきましては、政府資金と同様に、平成十三年度から、希望する地方公共団体につきまして、公庫が将来収入すると見込んでいた利子に相当する補償金を支払うことを条件に繰り上げ償還を行うことが可能になっているところでございます。これは、公的資金について一括の繰り上げ償還が認められますと、長期で安定した資金を地方公共団体へ供給するという基本的な機能を損ないかねないことから、補償金の支払いを条件としているものでございます。

 このような趣旨から、お尋ねの地方競馬に係る借りかえ制度を創設することにつきましては困難であると考えております。

○高橋委員 御検討をよろしくお願いします。

 終わります。

 


競馬法の一部を改正する法律案に対する反対討論

○高橋委員 私は、日本共産党を代表して、競馬法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 第一の反対理由は、競馬の実施に関する事務を民間企業にまで委託できるとしたことであります。

 賭博、富くじ販売禁止の例外として、国、都道府県及び指定市町村に限って行われている公営競技において、それぞれの主催者が責任を持って実施することが、公正な運営の保障であり、ギャンブルの弊害を抑制することにつながると考えます。経費削減や効率性本位で民間委託が行われるならば、健全な国民のレジャーとしての発展方向に逆行するおそれがあります。また、販売、払い戻し等、民間委託が予想される業務に携わる労働者の身分保障を不安定化させるものであります。

 第二の理由は、売り上げをふやすため、ギャンブル性拡大の方策をとっていることであります。

 射幸心を高め、かけごとの弊害を助長するとして廃止されていた重勝式投票方法の復活をどれほどの議論を経て復活させたのか問題であります。さらに、成人した学生の購入禁止を解除することは、未成年、成人がともに学ぶ教育現場への影響を無視することができません。

 なお、本法案は地方競馬への支援策を盛り込んでおります。しかし、その内容は、生き残れるところだけ地方競馬全国協会への交付金納入を延期させる措置であり、その猶予額も、莫大な累積赤字規模と比べたら極めて少額であります。また、施設整備事業にほぼ限定した競馬連携計画への財政支援策のもと、無理な投資が行われたり、住民との摩擦が起きがちな場外販売施設設置を促進させる懸念があります。

 さらに、競走馬生産振興業務とする生産者対策も、いまだ構想がはっきりせず、生産地との協議も不十分であります。一定の枠がある中央競馬会の特別振興資金からと財源規模を限定したのでは、非常に不十分なものになると思われます。軽種馬生産を文字どおり農業、畜産振興として位置づけ、馬産地の自治体や農協などが実施しやすい抜本的な対策こそが必要であります。

 以上を申し上げまして、私の反対討論を終わります。

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