復興庁設置法等改定案が21日、衆院震災復興特別委員会で採決され、自民党、公明党、日本維新の会と、立憲民主党などの共同会派の賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。高橋千鶴子議員は討論で「反対の最大の理由は原発事故の原因者である東京電力の責任を免罪し、そのつけを国民、被災者に転嫁するからだ」と表明しました。
改定案は中間貯蔵施設の予算(電源開発促進勘定)が逼迫(ひっぱく)しているとして、再生可能エネルギー普及予算(エネルギー需給勘定)からの借り入れを可能にしています。この借り入れを返済するための財源については「電気料金ではないか」と高橋議員がただしたのに対し、資源エネルギー庁の平井裕秀次長は「おっしゃる通り」と国民負担押しつけを認めました。
高橋氏は、中間貯蔵施設費用(1兆6000億円)は本来、東京電力が負担するものであるにもかかわらず、これまでも国が資金を出してきたことをあげて、さらなる国民負担への転嫁は「断じて認められない」と批判。廃炉や賠償、除染費用も国が負担しており、東電に責任を負わせないことは道理がないと強調しました。
福島第1原発の汚染水の海洋放出については「厳格な食品検査などで売り上げを回復させてきた生産者、販売、観光などの関係者の努力を踏みにじるもので許されない」と指摘しました。
(「しんぶん赤旗」2020年5月27日付より)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、復興庁設置法等の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。
東日本大震災から九年三カ月たちました。被災者は十年で区切りをつけることはできません。
せっかく再建を果たした沿岸部の中小企業、業者が倒産に追い込まれています。ようやく移り住んだ復興公営住宅は、ついの住みかではありませんでした。支援の縮小で家賃が上がり払えないという声や、収入が公営住宅の基準を超えてしまったと退去を余儀なくされる事態が生まれています。孤独死もふえています。福島では、全ての市町村が一部でも避難指示解除を果たした一方、応急仮設住宅から先の行き場を失った被災者もいます。
こうした被災地の実情から見れば、法案で復興庁の設置期間を延長することは当然であります。しかし、復興交付金は廃止となるため、復興公営住宅の家賃特別低減事業も打ち切られます。基本方針では別の補助により支援は継続すると言いつつ、支援の水準を見直しすると答弁されたことは重大です。供用開始後十年間は約束されていると信じていた被災自治体に対する裏切りです。家賃補助のスキームを維持し、収入超過者も含め、住み続けられる支援を検討すべきです。
また、福島イノベーション・コースト構想推進のため、国が職員派遣という形で乗り出し、知事の認定を受けた事業者に課税特例を適用します。新たな技術開発と人の呼び込みに期待し巨額を投じる一方で、八割の県民は知らないと言っている同構想が県民に何をもたらすのか、厳しく見ておく必要があると思います。
法案に反対する最大の理由は、原発事故の原因者である東京電力の責任を免罪し、そのツケを国民、被災者に転嫁するからです。
法案では、中間貯蔵施設費用などを拠出する電源開発促進勘定に、将来的な繰戻しを条件に、エネルギー需給勘定からの繰入れを可能としました。中間貯蔵施設費用約一兆六千億円は、本来、放射性物質汚染対処特措法の規定に基づき、東京電力が負担するとされています。この間の閣議決定により、国が返済の必要がない資金交付を行い、交付期間の延長や交付額を増額してきた結果のびほう策にすぎず、断じて認められません。
これまでも、廃炉や賠償、除染について、制度上は東電が支払う形をとりながら、実質は国が負担をしてきました。その原資は電気料金に含まれてきたものです。その上、最も被害の大きかった帰還困難区域の除染や拠点形成に対し、東電に責任を負わせないことも道理がありません。そうした中での汚染水の海洋放出は、厳格な食品検査などで売上げを回復させてきた生産者や販売、観光など関係者の努力を踏みにじるものであり、許されません。コロナ禍のどさくさ紛れに結論を出すようなことはあってはならないと念押ししておきたいと思います。
以上で反対討論を終わります。