ー議事録ー
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、土地基本法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
三十年ぶりの土地基本法改正は、所有者不明土地がキーワードとなっています。立法当時は、八〇年代のバブル経済に基づく異常な地価高騰への対応が土地政策の課題でした。近年、人口減少や経済の落ち込みの中で所有者不明土地が増加し、環境悪化や災害リスクなどの外部不経済をもたらすとともに、多発する災害からの復旧復興において障害となってきました。改正案が、災害予防と対策を法の目的に明示し、土地の適正な利用とともに管理を加えたことは重要であります。
一方、都市部において新たな土地への需要が生じています。平成三十一年地価公示では、全国の平均変動率はもちろん、地方部も、住宅地、商業地ともに地価は上昇しています。改正案の土台となる国土審議会土地政策分科会では、土地、不動産の最適活用、低未利用の土地、不動産については市場を通じて利用につなげる創造的活用を目指すとしており、ここでも所有者不明土地の利活用が注目されています。
反対理由の第一は、改正案が、住民無視の再開発事業のような土地の高度利用を一層促進し、民間資本のもうけに奉仕する土地施策となる懸念があるからです。改正案は、土地の市場価値を維持し高めるため、土地の管理の必要性を全体にわたり強調した上で、土地の取引の円滑化を定めました。外資呼び込み、インバウンド目当てのホテル、生産性の高いオフィスビルなど、国や地方公共団体は土地施策をこれ以上市場任せにするべきではありません。
反対理由の第二は、土地基本法改正案が、土地所有者等に対し、行政の土地施策への一般的な協力義務を新たに規定した点です。一般の土地所有者に内容も無限定な協力義務を負わせることは、土地所有権の過度な制約につながるものであり、認められません。
なお、所有者不明土地の発生の抑制並びに解消のための改正点である筆界の特定や手続の簡素化、地籍調査の迅速、円滑化については必要なことだと考えます。
終わりに、東日本大震災から十年目となる来年度末には、ハードの復興事業はほとんどが完成します。土地の共同所有者を訪ねて被災自治体の職員が全国、海外までも問い合わせ、一つ一つを特定していったことは、少ない人員と忙殺される業務の中で想像を絶する苦労だったと思います。それは個人の財産権を尊重する思いでもあり、改正案がこうした被災自治体の努力に報い、今後の災害リスクと被害を減らすために資するものであることを強く望むものです。
以上述べて、討論を終わります。