国会質問

質問日:2020年 4月 3日 第201国会 国土交通委員会

バリアフリー法改正案 衆院委可決

移動の権利明記せよ/ 高橋議員が求める

 日本共産党の高橋千鶴子議員は3日の衆院国土交通委員会で、高齢者や障害者らの移動等の円滑化を促進するバリアフリー法改定案に関連し、障害者権利条約に明記された「移動の権利」について政府の認識をただすとともに、同法に明記してバリアフリー政策を進めるよう求めました。

 高橋氏は、同条約の国連採択後(2006年)、国内で障害者に係る法律が整備され、政府の「ユニバーサルデザイン2020行動計画」では「社会的障壁を取り除くのは社会の責務」と明記されたと指摘。同法は公共交通事業者や行政、国民の責務を求めているが、前提に権利条約が座っていることが必要ではないかとただしました。

 赤羽一嘉国交相は「『移動の権利』を守る社会でなければならないというのは、その通りだ」と述べました。

 高橋氏はまた、駅ホームドアについて、一昨年の参院国交委員会で石井啓一前国交相が「新たな収益を生まない」と答弁したことにふれて「ホームドアは目の見えない人はもちろん、全ての乗客の安全を守るうえでも欠かせないものだ」と赤羽国交相に認識をただしました。赤羽国交相は「ホームドアは重要なファクタと認識している。最大の支援をしていきたい」と答えました。

 高橋氏は、今回の改定案で公立小中学校がバリアフリー基準適合義務の対象となったものの既設学校は努力義務にとどまっていることにふれ「既存の学校を含めてバリアフリーを進めるべきだ」とも提起しました。

 この日の同委員会で同改定案は採決され、全会一致で可決しました。また、「移動の権利」について検討を進める旨を盛り込んだ14本の付帯決議が採択されました。
(「しんぶん赤旗」2020年4月5日付より)

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本法案は、バリアフリー法案と呼ばれているわけですけれども、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律であるわけで、移動が重視されていると思います。
 障害者権利条約の第二十条には「個人の移動を容易にすること」とあり、「障害者自身ができる限り自立して移動することを容易にすることを確保するための効果的な措置をとる。」と明記をされています。特に(a)では、「障害者自身が、自ら選択する方法で、自ら選択する時に、かつ、負担しやすい費用で移動することを容易にすること。」とあります。
 きょう、小宮山委員からも御指摘がありましたけれども、我が党としても、この間ずっと、移動の権利について法案に盛り込むよう求めてまいりました。改めて大臣に認識を伺います。

○赤羽国務大臣 先ほど小宮山さんの御質問で相当踏み込んで答えたつもりでありますが、こうした移動権の権利を守る社会であらなければいけないというのは、私も全くそのとおりでございます。
 ただ、そうしたことを具体的に法律に入れるかどうかというのは、平成三十年の法改正でも相当議論しましたが、なかなか、十分なコンセンサスが得られない。その中で、相当抵抗しました。あのときは与党のプロジェクトチームの公明党の座長ということで、理念をしっかり入れようということで、まず社会的障壁の除去ですとか共生社会の実現ということを入れさせていただきながら、障害者団体の皆さんも、一歩前進ということで御認識をいただいたのではないかというふうに思っております。
 こうしたことは、先ほど申し上げましたとおり、法律的にどうなのかということは検討を続けながらも、具体的なことをしっかり進めるということは非常に大事だと。私は、移動権というものを、ちょっと逆説的に言うと、法律に入れれば全てバリアフリーが進むような、そうした実態ではないのではないかと。ですから、私は両方とも大事だというふうな思いで責任者として取り組んでいきたい、こう考えております。

○高橋(千)委員 よく政府の関係者は、こうすべきじゃないかと言うと、全てはできないみたいな答弁をするんですね。全てとは言っていないんです。書くことが出発だという立場で議論をしています。
 もともと障害者の権利条約というのは、二〇〇六年、国連で採択をされて、二〇〇九年には我が国でも批准しようという動きがありました、もう御存じのことであります。しかし、まさに、三十一日に意見陳述した尾上浩二参考人など当事者の皆さんが、国内法が整わないままの批准はすべきではないと指摘をされ、二〇一一年の障害者基本法、二〇一二年の障害者総合支援法、二〇一三年、障害者差別解消法、そして障害者雇用促進法などの改正をもって、二〇一三年に批准を決めたという経緯があります。旧ハートビル法と旧交通バリアフリー法が統合されたのが二〇〇六年であり、ユニバーサルデザイン二〇二〇行動計画で、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという、障害の社会モデルが強調されました。
 こうした中で、本法案では、国や公共交通事業者、行政、そして国民の責務をそれぞれ求めていると思います。その前提に権利条約が据わっていることはむしろ当然のこと、必要なことだと思いますが、もう一声、お願いします。

○赤羽国務大臣 済みません、答弁は余り変わらないで同じなんですけれども。
 別に否定しているわけではありませんが、現実的にそうしたことを法改正できるかというとなかなかそうした状況ではないというのが現状でございますが、私も二十年以上、障害者団体の皆さんと親しくおつき合いをし、御指導いただいている立場から、そうした思いは十分受けとめているつもりでございますし、できれば、法定化というのを別に否定しているわけではありませんが、それは継続しながら、検討しつつ、同時に、じゃあ法定化できるまで何もしなければいいのかというと全くそういう話じゃないはずなので、具体的なことを進めていきながら、障害者の皆様だけではないんですけれども、誰にでも満足していただけるユニバーサルデザインの社会を一歩ずつ前に進めていくんだという思いで職務に専念していきたい、こう考えております。

○高橋(千)委員 まず、思いを共有していただいているということは、やはり大臣、踏み込んでいただいている、このように思っております。ユニバーサルなわけですから、決して障害者だけの問題ではなくて、結局みんなのために今やっていることだというのでは矛盾しない問題があると思いますので、よろしく御検討をお願いしたいと思います。
 車椅子のまま乗れるタクシー、ユニバーサルデザインタクシーは、トヨタのジャパンタクシーや日産の二社が今導入をされて、二〇一八年度末で一万二千五百三十三台導入されております。三十一日の参考人質疑でも、このUDタクシー利用の際に、二七%、乗車拒否に遭ったと調査結果も紹介をされて、当事者参加のもとでのさらなる改善を求める意見がありました。
 後で気づいたんですけれども、この同じ日に認定要領が、三十一日、改正をされていました。
 それで、ジャパンタクシーがユーチューブなどで詳しく解説しているのを見ましたので、非常にセットに時間がかかり過ぎて、あるいは乗車スペースの確保が大変困難であるなど、運転手の負担が大変大き過ぎる、またそれをじっと待っている利用者さんも大変つらいなというふうに思ったところです。
 そのことがひとり運転手の責めにならないよう、私は、やはり補助員をつけるとかそうしたことがやはり望ましいと思っておりますが、参考人からも指摘のあったインセンティブにつながる支援を検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○一見政府参考人 委員御指摘のUDタクシーにつきましては、これは高齢者の方にもあるいは身体障害者の方にも乗車しやすい車ということで導入しているわけでございますので、やはり乗車拒否があるというのはよくないことだと思っております。
 乗車拒否の問題は、構造だとかあるいは知識だとか給与だとか、さまざまな問題がございます。その中で、委員からも御指摘ありましたけれども、認定基準も改正をいたしまして、構造的な部分、より身障者の方が乗っていただきやすいように改定をしてきているところでございます。
 補助員をつければ確かに乗っていただくのは非常に楽になると思いますが、これは人が一人ふえるということになります。それぞれの会社の御判断ということになりますが、コスト面だとか人手不足だとか、なかなか困難な問題ではないかなというふうに考えておるところでございます。
 こういった問題をちょっと横に置きまして、インセンティブをどういうふうにつくっていくことができるか。先ほども申し上げましたけれども、運転手さんの表彰制度などで励みになるようなこともあろうかと思っております。こういったことを当事者団体の方々あるいは事業者の方と話を進めていきたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 給与の制度ですとか困難な要件がわかっていてそれがなかなか前に進まないということでは、表彰されるのはうれしいかもしれないけれども、なかなか実効性あるものにはならないと思うんですね。
 もちろん、補助員、常に二人で乗ってろとかという議論ではなくて、例えば東京駅などでも、協会で交代で出していた方たちがいなくなりましたよね。そういう面、当たり前に、表玄関であるところにもそういう体制がとれないでいるわけですよね。そこなんかはいち早くやっていく、しっかり支援していくということができるんじゃないか。これは提案をさせていただきます。
 スムーズな移動というのは、同時に安全な移動でなければならないと思うんですね。
 研修について、例えば全国福祉輸送サービス協会、ユニバーサルドライバー講習などがあるんだけれども、それは福祉タクシーの乗務員向けなので、要するに、直接、UDタクシーの習得としては適切でないという指摘がありました。
 標準仕様として認定を受け、資料にもありますように、バリアフリー減税などの対象にもなるわけです。ですからこそ、スムーズなセットについて習熟するための研修は徹底するべきだと思いますけれども、法案ではどのように担保されるでしょうか。

○一見政府参考人 委員御指摘をいただきましたように、バリアフリー施設を導入する場合にさまざまな支援策もとっております。
 その中で、UDタクシーを導入する場合には補助金を交付するということにしておりますが、その補助金の交付の条件といたしまして、年に二回以上の講習を受けてもらう、研修を受けてもらうということにしております。
 こういった研修によりまして、先ほど御指摘もいただきました、例えば乗車拒否がないようなやり方をしてもらうとか、あるいは、安全についてもしっかりと確保しながら身体障害者の方々を車両にお乗せするというようなことを進めていただきたいというふうに考えておるところでございます。
 また、この法案でも、ソフト面の対策というのが盛り込まれております。そういったところでも更に研修については充実をしていくように図ってまいりたいと考えておるところでございます。
    〔委員長退席、小里委員長代理着席〕

○高橋(千)委員 昨年の十一月二十六日付の、ユニバーサルタクシーによる運送の適切な実施の徹底について、この通知では、最後のところにこう書いてあるんですね。特に、車両購入時に実車を用いた車椅子乗降の研修を受けても時間の経過とともに操作方法がわからなくなるなどの指摘があることも踏まえ、実車を用いた研修の年間複数回の受講を確保されたいと。つまり、一回や二回やっても忘れちゃうくらい複雑なんですよね。だから、それを運転手の責めにだけしてはならないということで、しっかりと支えていただきたい、これは指摘にとどめたいと思います。
 次に、先週、本委員会の視察に参加させていただきました。はとバスの苦労も聞きました。空港リムジンバス、羽田国際線ターミナルのバリアフリーなど、前進していることを学ぶことができました。
 ここでは、国内初導入の車椅子対応エレベーターつきリムジンバスで、当日いただいた資料でも、開発段階から当事者参加で行ってきたことや、試作車評価会での主な意見などが紹介されておりましたし、試乗した委員長始め委員の皆さんも恐怖感はないとおっしゃっていたわけであります。
 ただ、率直に思ったのは、リムジンバスは、高速バスなどもそうなんですが、荷物を入れるという構造上、移動円滑化基準認定除外の自動車になっているわけですよね。そのスペースの一部でエレベーターを取り付けているということで、非常に時間もかかるし、大変だなと率直に思って、もともと路線バスで広く普及されている低床バスのように、上げなくても乗れる方が簡単なんじゃないかなと。荷物の置場だけ分ければいいんじゃないかと率直に思ったんですね。お一人の乗車に約五分、最大二人分しか乗れないというのも、現在はそれほどの利用もないということなんですけれども、もっと利用を広げていくためには、ちょっと見直しも必要なんじゃないかなと思うんです。
 電動車椅子のユーザーの方から要望を受けました。この方は、関西空港リムジンバスに乗った際に、やはり九十度回転させるのは、電動の場合は大変手狭感があり、困難だったと。それから、天井にある非常用ボタンを、押しにくいので、それこそ路線バスのように、手の届く横の位置ならよいなということがありました。
 リムジンバスの導入は、まだ台数も少ない今だからこそ、当事者の意見を取り入れ改良を行うことで更に普及を進めることができると思いますが、いかがでしょうか。

○一見政府参考人 お答え申し上げます。
 空港バスなどのリムジンバスにつきましては、委員御指摘のように、床下に収納スペースを設けるということから、なかなか導入が難しい、設備をつくるのも困難なところでございますが、最近では、御視察をいただいたような、新たな車両がつくられております。
 まだこれはつくられたばかりでございます。つくられたばかりでございますけれども、空港バスにつきましては、三年前は二台であったものが今年度は二十七台というふうにかなりふえてくることは事実でございまして、このつくられたばかりの車両につきましては、今後もさまざまな議論をいたしまして、構造などをよりよいものにしていく必要があろうと思っております。そういう意味では、当事者の方、車両メーカーの方、あるいはバス事業者の方が入っていただく会議体、これを定例的に開催をしまして御意見を聞いてまいりたいと思っております。
 また、バリアフリー法の基準省令の適用除外であったのでなかなか導入が進まなかったということもございまして、この見直しについても私どもしっかり考えてまいりたいと思っておるところでございます。

○高橋(千)委員 適用除外の見直しについても検討していくということで、やはりバリアフリーを全体としてやっていくということのお答えだったと思います。
 関空の場合は、今の電動の車椅子ユーザーの方の話ですけれども、東京リムジンバスと違って乗りおりできるバス停が限られている、スペースは一緒なんだけれども限られているために、第二ターミナルでおりたいんだけれども、第一ターミナルでおりて空港のシャトルバスに乗りかえないといけなかったと。これもまた移動の円滑化につながる大きな問題だなと思いますので、こうしたことも一体となって議論していただけるように要望しておきたいと思います。
 次に、ユニバーサル二〇二〇行動計画で位置づけられた心のバリアフリーですけれども、文科大臣と共管になっております。学習指導要領の改訂もあったと思いますが、学校教育の中で心のバリアフリーをどう位置づけているのか、伺います。
    〔小里委員長代理退席、委員長着席〕

○蝦名政府参考人 お答えを申し上げます。
 学校教育におきまして心のバリアフリーを推進することは、障害のある子供と障害のない子供がお互いを尊重し合う大切さを学ぶ観点から、極めて重要であると考えております。
 平成二十九年三月に公示をされました小学校それから中学校の学習指導要領におきましては、その総則におきまして、「特別支援学校などとの間の連携や交流を図るとともに、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を設け、共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むようにすること。」などについて規定をしているところでございまして、その指導の充実を図ることとされております。
 文部科学省といたしましては、引き続き、こうした学習指導要領の内容も踏まえまして、心のバリアフリーの推進に努めてまいります。

○高橋(千)委員 今お話ししていただいた学習指導要領の規定、ここは資料の2につけておきました。幼稚園と小学校の部分だけを抜粋をしておりましたけれども、今読んでいただいた「障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会」ということで、赤字のところが加わったところだと思います。
 それで、特別支援学校の子供と交流や共同学習、これは貴重な経験だと思うんですね。ですが、心のバリアフリー学習推進会議の参考資料によれば、学校間交流の実施状況が、小学校でいうと一六%、中学校だと一八%、高校二六%で、余り多くはないのと、年に二回から三回が主で、次に多いのが年一回です。だんだん学校が上の学校になっていくと特定の学年だけで実施をして、その理由は、教科の時間がやはり必要だということで、受験があるからなのかなと思いますけれども、時間がとれなくなってくる。
 ただ、私、このアンケートをずっと見ていて疑問に思ったのは、一般の生徒が特別支援学校に行ったりあるいは来てもらうという特別なイベントみたいな位置づけなんだろうかと。もともとクラスの中やあるいは子供たちの家族に障害のある人はいるわけで、普通学級に在籍しながら支援学校に通う子供も多いはずで、もっともっと日常の中で心と社会のバリアを学ぶ、そういう環境が大事だと思いますが、お願いいたします。

○蝦名政府参考人 お答え申し上げます。
 今ほど委員から、例えば、小学校では特別支援学校との間の学校間交流が一六%ぐらいにすぎないのではないかといったような御指摘もございました。
 そういったことに加えまして、現在、小中学校の大体八割ぐらいには特別支援学級も設けられておりまして、こうした特別支援学級が設けられているところも含めまして、小中学校でそうした学級に所属する子供との交流、共同学習を行っている割合というのも八割ぐらいあるというふうなことでありますので、それがどれぐらいの頻度で行われていて、確かに、特別な行事のようになっているかどうかということは大変課題として認識をしておりますけれども、それぞれ、かなり多くの学校で取り組まれているという実情はあるのだろうというふうに考えております。
 従来から、交流及び共同学習の推進に取り組んできておりますけれども、先ほど委員から御紹介いただきましたように、平成三十年には、有識者等から成る心のバリアフリー学習推進会議におきまして、こうした交流及び共同学習の推進方策についての提言を取りまとめていただきまして、その趣旨を踏まえました積極的な取組を促す通知を都道府県教育委員会等に対して発出をいたしましたところです。
 この通知におきましては、委員御指摘のように、単発の交流機会を設けるのみにとどまらず、年間を通じて計画的に取り組むこととすること、あるいは、障害について形式的に理解させる程度にとどまらず、児童生徒等が主体的に取り組む活動とするといったような留意事項が示されているところでございまして、日常的な相互理解の重要性についてもこうした通知の中で示し、取組を促しているところでございます。
 学校現場におきましては、例えば、クラブ活動や給食の時間など日常的な場面におきまして、障害のある子供と障害のない子供がともに活動する取組が行われている、そして相互理解が深められているといったような例も承知しているところでございます。
 文部科学省といたしましては、交流及び共同学習の趣旨や日常的に行われているこうした取組の事例につきまして各種会議等において周知を行うなど、引き続き、交流及び共同学習等を通じた心のバリアフリーの推進に努めてまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 なぜこの質問をしたかといいますと、二〇一三年の学校教育法施行令の改正の中で、一定の障害のある児童生徒は特別支援学校に原則として就学するという従来の仕組みを改めて、個々の児童生徒について、障害の状態や本人の教育的ニーズや本人、保護者の意見、教育学や医学や心理学など専門的見地からの意見、あるいは学校や地域の状況を踏まえて総合的な観点から就学先を決める、その際に、障害者基本法十六条に基づいて十分な情報提供も行い、可能な限りその意向を重視することが求められているというふうになったと承知をしています。
 医療的ケア児が、現在、特別支援学校に八千名いるわけですけれども、その約四分の一は実は自宅や病院や施設で訪問教育を受けている状態。だけれども、公立の小中学校に在籍するケア児は八百五十八人いるわけなんですね。今は学校に看護師を配置するなどして普通の学校生活が送れる状況になっているし、文科省としてもそういう方向なんだということを説明いただいて、ケア児を持つお母さんが、私がそのことを教えたときに、鳥肌が立ったといって喜んでくださったんです。
 だから、そういう立場で、日常の中で学んでいくんだということが大事だと思って、文科省もそういう方向になってきているんだということで質問したわけでございますので、ぜひ、単発ではなくと答弁していただきましたので、引き続きお願いをしたいと思います。
 それで、きょう話題になっていた学校のバリアフリーの問題なんですけれども、やはり、現状がどうなっているのかというのをぜひつかんでいただいて答えていただきたい。それから、既設の学校については努力義務となっておりますけれども、やはりここについても進めていくべきだと思いますがどのように取り組むか、お願いします。

○笠原政府参考人 まず、先生の方から現状についてのお尋ねがございました。
 文部科学省では、避難所に指定されている公立学校施設の現状の調査を行っております。平成三十一年四月一日現在、要配慮者の利用が想定される学校について、スロープ等の設置により段差が解消された校舎は六六・六%、多目的トイレが設置された校舎は六五・二%になってございます。また、新築ですとか増築等を実施した一定規模の公立小中学校のうち、エレベーター、多機能トイレ、スロープのいずれも整備している施設は約九割となってございます。
 もう一つ、既存の公立小中学校施設のバリアフリー化の推進に関するお尋ねがございました。
 文部科学省におきましては、今回の改正法案も踏まえまして、学校施設のバリアフリー化の重要性や整備における留意点等をまとめた学校施設バリアフリー化推進指針というのがございますけれども、それを改定するとともに、災害に備えて平時からバリアフリー化を図ることの重要性を伝えつつ、自治体の取組を紹介する事例集を改めて周知して横展開を図ってまいりたいと思っております。
 また、国庫補助制度によっても財政支援の方をさせていただいておりますけれども、既存施設の改修時におきましても、バリアフリー化対策に係る事業を優先的に採択をしているところでございます。
 引き続き、必要な予算の確保に努めながら、各地方公共団体の取組をしっかり支援させていただきたいと思います。

○高橋(千)委員 資料の三枚目に、「公立学校施設のバリアフリー化に関する国庫補助」というのがあります。
 この中で、ではバリアフリーってどこまでやるのよというときに、少なくとも、エレベーターやスロープや多目的トイレ、こうしたことが基準になっているはずなんですね。それで新築のときは当たり前にやっていて、九割を超えていると。だけれども、最初にお話しされた避難所対応としてどうかといったときには、スロープと多目的トイレがあるかというその程度なのであって、実際のバリアフリーが全体としてどのくらいかという答えにはなっていないんですね。そこをしっかりと捉えていただきたい。
 それから、避難所にもなるからという議論だけじゃなくて、そもそも学校というのは、授業参観に保護者も来て、保護者の中に障害者がいるのは当たり前なんです。あるいは、先生方だって、車椅子で先生をやっている人たち、いるわけですよね。
 そういう意味で、不特定多数の施設じゃないからということで今まで対象にしてこなかった、このこと自体に、やはり遅かったなという指摘をしたいし、そういう意味で、既存の施設も含めてバリアフリーを進めるべきだということで重ねて指摘をしたいと思います。
 最後に、駅のホームドアについて大臣に伺いたいと思います。
 山城参考人から、転落事故が絶えないこと、実際どういう状況で事故が起きているのか、リアルな実態もお聞かせいただきました。
 資料の4にあるように、ホームの転落事故は二〇一七年度で二千八百六十三件、そのうち視覚障害者の転落が六十五件、ほぼ横ばいと言える状態で、放置できません。内側に下がってくださいというアナウンスが聞こえても、どっちが内側かわからないで誤認して逆に動いてしまうことがあること、指摘されたように、駅の無人化がふえていて助ける体制がないということ、大きな問題であります。
 一昨年五月十七日の参議院の国交委員会において、我が党の山添拓議員が、ホームからの転落事故を取り上げて、ホームドア設置がやはり義務となっていない既存の駅についても今のままでよいのかとただした際に、石井前大臣が、「ホームドア整備は、新たな収益を生むものではなく、整備に多額の費用が掛かることを踏まえ、その整備を義務付けする対象は、駅の新設又は大規模な改良を行う場合に限る」、こういう答えをしているわけなんです。
 私は、この新たな収益を生まずという大臣の答弁がいかがなものかと率直に指摘をしたいと思うんですね。ホームドアは、目の見えない人はもちろん、都内で多発する飛びおりを防ぎ、全ての乗客の安全を守る上でも欠かせないものです。収益の問題ではない。大臣の認識を伺いたいと思います。

○赤羽国務大臣 そもそも、二十年前にほとんどの駅にエレベーターもエスカレーターもなかったというのは、当時はやはりエレベーター、エスカレーターをつけても経済的な波及があるわけじゃないということでなかなか進まなかったという現実があったと思います。しかし、そうであってはいけないんだ、公共施設としてバリアフリーが当たり前の世の中をつくろうということがそもそもであって、エレベーター、エスカレーターはほとんど、新設のところは全部ついてきた。
 他方、ホームドアの話というのは、私が十数年前に聞いたときは、率直に言って相当高価なものだなとか、余り見たことがなかったのでどんな感じか。当時は新幹線の駅も転落防止のはついていなかったという現実。しかし、それが、やはり首都圏が先行して相当つけ始めて、これはやはりあった方がいいなということを認識し、相当関西圏はおくれているんですけれども、関西圏もようやくつき始めたということでございます。
 やはり、目標を決めて、十万人以上ということでとりあえず始めています。三十年度末までに、今、八百駅の目標に対して七百八十三、来ていますので、エレベーターのときも一緒ですから、十万人というのも多分下げて拡大していくということにしていかなければいけないと思いますし、これはやはりふえていけば、恐らく技術開発なんかも進んで、ホームドア自体の費用も、多分コストも相当低減していくのではないかということも期待しておりますので。
 いずれにしても、このホームドアは、もはやユニバーサルデザインというか、バリアフリーにとって大変重要なファクターだというふうに認識をしておりますので、経済的な問題はもちろんありますけれども、しっかりそれが進められるように、国としても最大の支援をしていきたい、こう考えております。

○高橋(千)委員 前大臣は二十年前と同じ答弁をしたという意味だと思います。赤羽大臣がそうではなかったということで、大変ありがたく思っております。
 全国で八百駅の目標に、今七百八十三駅まで来て、あと一歩だ、前倒しで達成できる、こういうふうに説明をされているんですね。だけれども、十万人以上という意味でいいますと、まだ二百七十九駅のうち百二十三駅くらいですか、ほとんど届いていないということと、ホームドアがついたといっても全部のホームではないわけで、結局、片側はついていても向かい側はついていないとか、一カ所ついていれば一駅と数えている、そういう実態もありますので、そこから見るとまだまだ遠い。確かにお金もかかるし、一遍にはできないのはわかっています。だけれども、これはやはり加速させる必要があるということで頑張っていただきたいということを訴えて、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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