衆院本会議 移動の権利守る施策へ/抜本的予算増を/高橋氏
自治体主導で交通サービスの確保をはかる地域公共交通活性化再生法等改定案が24日、衆院本会議で審議入りし、日本共産党の高橋千鶴子議員が質問に立ちました。
高橋氏は、路線バス、地域鉄道が次々廃止され、交通空白地の面積が日本全体の3割にも及ぶと指摘。デマンドタクシーを運行し、路線バスに接続させるなど地域交通の確保を図ろうとする青森県弘前市の取り組みなどを紹介し、「こうした自治体の取り組みを全国で広げ、国として積極的に支援すべきだ」と主張しました。
国が路線バスなどの赤字分の半分を補てんする補助金について赤羽一嘉国土交通相は、60億円の要望に対して30億円しか補助していないことを明らかにしました。高橋氏は、2020年度予算案では305億円から204億円に減額されたとして「(自治体の)要望に応える予算をただちに確保し、抜本拡充をはかるべきだ」「『移動の権利』を交通基本法に明記し、それに基づく施策に踏み出すべきだ」と主張しました。
一方、改定案では、過疎地で市町村やNPO法人が自家用車で行う「自家用有償旅客運送」を拡大します。高橋氏は、改定案が事実上、ライドシェア(2種免許のない者が自家用車を運転して料金をとる、いわゆる白タク行為)の解禁につながるのではとただしました。
赤羽国交相は「安全確保の問題があるため認めるわけにはいかないとの考えは変わっていない」と明言する一方、改定案はライドシェアを解禁しないと答えました。
(「しんぶん赤旗」2020年3月25日付より)
ー議事録ー
○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、地域公共交通活性化再生法等改正案について質問します。(拍手)
十九日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、突然爆発的に患者が急増するオーバーシュートの可能性に言及し、できるだけ影響を最小に、効果を最大限にする方策を呼びかけました。旅客運送事業者は、不特定多数の乗客と接触する業態上、感染リスクが高い特性があります。運転従事者の感染防止対策を徹底すること、自粛が即リストラや廃業につながらないよう、支援策はできるだけ簡素な手続と直接支援が求められると考えますが、見解を伺います。
地域住民の足、移動を支えてきた路線バスは、この十年間で一万三千キロが廃止され、地域鉄道は、二〇〇〇年以降、全国で八百九十五キロ、四十一路線が廃止されました。鉄道もバスもない交通空白地の面積は日本全体の三割にも及びます。
こうした現状は、住民の生活に深刻な影響を及ぼすとともに、人口流出を加速させ、大都市と地方の格差拡大に拍車をかけています。地域公共交通の充実が今ほど求められているときはありません。
政府はこの現状をどのように捉えているのか、伺います。
法案は、乗り合いバスの新規参入に対して、申請があったと国から通知を受けた地元自治体が協議会に諮り、意見を国に提出できるとしています。また、バス路線が廃止される前に、自治体が何らかの旅客運送サービスをつくるよう求めています。
参入と廃止に対して自治体の関与を強めた理由についてお答えください。
さらに、バス事業者間の共同事業などを今回独禁法の適用除外にするのはなぜでしょうか。
これらは規制緩和路線の修正であります。
地域公共交通の廃止、衰退が顕在化した二十年前、政府は鉄道やバス、タクシー事業の新規参入を自由化し、少ない乗客の奪い合いを激化させました。鉄道は一年、バスは六カ月前に届け出るだけで路線廃止ができるようにしました。
国は、地域の実情を考慮せず進めた規制緩和路線を率直に反省すべきではありませんか。
青森県弘前市では、バス路線の七割以上が赤字で、利用者も減少する中、ディマンドタクシーを運行し、路線バスに接続、市街地では百円バスが走り、通院、買物の足になっています。路線バスの空白地域もカバーし、かつ料金も安くなったのです。こうした自治体の取組を全国で広げ、国として積極的に支援するべきです。
ところが、国の補助金は、二〇一一年の三百五億円から、来年度予算案は二百四億円に減額されています。赤字分の半額を補填する仕組みですが、全体、支線、それぞれの地方自治体等からの直近の要望額とこれに対する実績は幾らか、お答えください。
要望に応える予算を直ちに確保し、抜本拡充をするべきです。なお、昨年の台風でも復旧が大きな課題となった地域鉄道もこの補助制度の対象に加えるべきです。見解を伺います。
自家用有償旅客運送は、二種免許のない者が運転して料金を取る、いわゆる白タク行為です。今回、対象や地域の限定を事実上なくします。事業者の協力を明文化していますが、もともと二種免許を持った運転手で運行しているタクシー事業者等に協力を求めるのはなぜですか。
二〇一六年国家戦略特区法の衆参附帯決議には、「いわゆる「ライドシェア」の導入は認めないこと。」とあります。国交省としても、新経済連盟のライドシェア提言に対し、対応不可と回答していました。今もその立場に変わりはないか、改正案が事実上のライドシェア解禁につながらないのか、お答えください。
交通政策基本法第二条は、「交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要」と定めています。充足どころか、高齢者の三割以上が運転できなければ生活できないという実態なのです。地方バス路線等を公共インフラとして位置づけ、一兆円規模の財政援助を続けているEU諸国などに学び、思い切って拡充すべきではありませんか。
今こそ、移動の権利を交通政策基本法に明記し、それに基づく施策に踏み出すべきときです。
以上、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣赤羽一嘉君登壇〕
○国務大臣(赤羽一嘉君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。
まず、運転従事者の感染防止対策と旅客運送事業者に対する支援策についてお尋ねがございました。
何よりも感染の拡大防止が重要であり、運転従事者の感染防止対策のため、これまで関係業界団体等に対し、マスクの着用、うがい、手洗い及び検温の励行、そして、体調がすぐれないときには無理をして仕事に出ない環境づくりを繰り返し要請し、徹底していただいております。
そして、厳しい状況にある事業者の資金繰りと雇用の維持を図るため、これまでセーフティーネット保証制度や雇用調整助成金の要件緩和を行ってきたところでございますが、今後も引き続き、事業者の声に真摯に耳を傾け、実効性ある支援に取り組んでまいります。
国土交通省として、政府全体の早期収束に向けた取組の中で、所管業界の状況をきめ細かく把握しつつ、内外の経済の動向や国民生活への影響等についてしっかりと見きわめ、反転攻勢に向けた効果的な施策が講じられるよう、必要な対応について引き続き万全を期してまいります。
地域公共交通の現状に関する認識についてお尋ねがございました。
現在、地域公共交通は、人口減少の本格化に伴う需要の縮小や経営の悪化、運転者不足の深刻化によるサービス供給体制の不安など、厳しい状況に直面をしております。
他方、高齢者の運転免許の返納が年々増加し、受皿としての移動手段を確保することがますます重要になっております。
このため、地域における移動ニーズに対し、きめ細やかに対応できる立場にある地方公共団体が中心となって、交通事業者や地域の住民等と協議しながら、また、国の支援も受けながら、交通サービスの確保、充実に取り組むことがこれまで以上に求められていると認識をしております。
次に、乗り合いバスの参入と廃止に対して自治体の関与を強めた理由についてお尋ねがございました。
本法案では、地域における移動ニーズに対し、きめ細やかに対応できる立場にある地方公共団体が中心となって多様な関係者と連携し、それぞれの実情に応じた交通サービスを確保するための制度について、その充実を図ることとしております。
その一環として、乗り合いバスの新規参入等について国が通知する制度により、地方公共団体が地域の交通をめぐる最新の動向を常に把握し、その将来のあり方を適切に検討できるようにすることとしております。
また、維持が困難となった路線バスについては、地方公共団体が中心となって将来のあり方を関係者とともに十分協議することが必要です。このため、廃止の届出が行われる前の段階でそのような協議ができる制度を盛り込んだところでございます。
続きまして、バス事業者間の共同事業などを独禁法の適用除外とする理由についてお尋ねがございました。
地方都市などのバス交通については、取り巻く環境の厳しさから、地域内の事業者同士が連携し、サービスの改善や効率性の向上に取り組みたいとの御要望が多く寄せられております。
しかしながら、現行の独占禁止法では、複数のバス事業者間でダイヤ、運賃の調整等を行うことはカルテル規制に抵触するおそれがあることから、このたびの独占禁止法特例法案において、一定の場合にこれを適用除外とすることとしたところでございます。
次に、地域公共交通における規制緩和に対する見解についてお尋ねがございました。
乗り合いバスや鉄道などにつきましては、平成十二年以降、いわゆる需給調整規制が廃止され、サービスの供給量やその水準は、原則として交通事業者の経営判断により決められるようになっており、このことにより、運賃の低下や運行便数の増加など、さまざまな面で利用者にとっての利便性の向上が図られてきたところ、本法案においても、このような基本的な考え方については変更ございません。
一方で、その後の人口減少の本格化に伴う需要の縮小や運転者不足の深刻化等により、特に地方部では、採算性の安定的な確保等が難しくなってきております。
これに対応し、国土交通省では、地方公共団体が中心となって、国の支援を受けながら、地域の多様な関係者と連携し、それぞれの実情に応じた交通サービスを確保するための制度の整備をこれまで進めてきたところであり、本法案においても、引き続きその充実を図ることとしております。
地方におけるバスや地域鉄道への補助の拡充についてお尋ねがございました。
国土交通省におきましては、地域における必要不可欠な移動手段を確保、維持するため、過疎地域等における幹線バスやコミュニティーバス等の運行、離島航路や航空路の運航の欠損等に対し、国費による補助を行っております。
このうち、バス関係につきましては、平成三十年度には、幹線バス関係で、地域からの要望どおり約九十億円を、また、これと一体となったコミュニティーバス等の地域内交通関係で、地域からの要望約六十二億円に対し、約三十億円を交付しております。
地域鉄道につきましては、安全性向上のための車両更新や被災時の施設の復旧等に対する補助を行っているものの、鉄道の特性が発揮できないものについては、より効率的な他の交通機関で代替することが可能であることから、欠損補助の対象とすることは考えておりません。
今後とも、地域の御要望を伺いながら、必要な予算の確保に最大限努めてまいりたいと思っております。
ライドシェアに対する国土交通省の立場と本法案による改正がライドシェアの解禁につながらないのかについてお尋ねがございました。
ライドシェアは、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としており、安全の確保等の問題があるため、認めるわけにはいかないと考えており、この考えは従来から全く変わっておりません。
一方、自家用有償旅客運送は、道路運送法による登録を受け、市町村等が、運行管理等の措置や事故の際の賠償等を行う体制を整備し、利用者の安全、安心を確保することとしており、ライドシェアとは全く異なるものと認識をしております。
したがいまして、本法案による改正がライドシェアの解禁につながるとは考えておりません。
最後に、交通政策基本法を踏まえた地方バス路線等への支援の拡充と、移動権に基づく施策についてお尋ねがございました。
国におきましては、過疎地域等における必要不可欠な移動手段であるバス路線等の確保、維持を予算面で支援しつつ、本法案の枠組みも活用し、地域の実情に応じて、より効率的な交通サービスが提供されるよう促していくことが重要と考えております。
次に、いわゆる移動権を法律上規定することにつきましては、平成二十五年に交通政策基本法が制定された際、関係審議会において議論が行われたところでございます。
この際には、保障する権利の内容や保障する責務を有する主体、権利を保障する仕組みや財源の確保について、実定法上の権利として規定できるだけの国民のコンセンサスが得られているとは言えないとし、移動権を法定化することは時期尚早とされたところでございます。
こうした状況は、現在においてもなお変わっていないと考えております。
以上でございます。(拍手)