国会質問

質問日:2020年 3月 6日 第201国会 国土交通委員会

クルーズ船対応ただす

新型コロナ問題/高橋氏が質問

 高橋千鶴子議員は6日の衆院国土交通委員会で、新型コロナウイルス感染症をめぐり、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を14日間も船内にとどめた政府の対応や検疫体制をただしました。

 高橋氏はクルーズ船ゆえの感染リスクがあるなかで下船させず、心のケアにあたった災害派遣精神医療チームは乗客から「死にたい」「船から飛び降りたい」など深刻な訴えもあったと報告していることを紹介。国際保健規則第32条は「旅行者の尊厳、人権、基本的自由を尊重して扱う」と定めていることにふれ、政府の対応は「国際保健規則違反ではないか」と指摘しました。

 赤羽一嘉国交相は「対応がどうであったかという総括は必ずなされなければいけない」と答えました。

 高橋氏は、政府は訪日外国人観光客(インバウンド)を今年度までに4千万人にする目標を掲げ推進してきたが「そもそも検疫がこれだけのインバウンドに追いつく体制だったのか」と問題提起。検疫官は増えているものの検疫すべき港湾や空港が増えたため多くの検疫官は複数の港湾などを兼務しているとし、この5年で倍増したインバウンドに見合ったものではないと指摘。今回のような事案があれば対応しきれないとただしました。

 厚生労働省の浅沼一成審議官は、同号の検疫は日本中の検疫所から応援を受けて対処していると述べ、人員不足を認めました。

 高橋氏は「インバウンドありきではなく、内需の充実こそ重要」と主張。ダイヤモンド・プリンセスから下船した乗客乗員を病院などに輸送したバス運転手らの健康調査・支援も求めました。
(「しんぶん赤旗」2020年3月8日付より)

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 新型コロナウイルス肺炎の感染者が国内でも一千人を超えて拡大をしています。お亡くなりになられた方々に心から哀悼の意を表したいと思います。
 今後、PCR検査の保険適用が現実に始まれば潜在的だった感染者数が大幅に顕在化するのではないかと思っております。日本からの入国を制限あるいは行動制限をする国が、世界五十三カ国・地域にまで広がっている大変深刻な事態です。
 専門家会議が瀬戸際だと指摘をして一週間、国の突然の一斉休校要請に対し、子供たちも保護者も、あるいは受皿となる学童保育なども、大変な混乱で悲鳴を上げています。関連産業、ツアー客が激減した観光産業も大きな痛手を受けており、政府の責任ある対応を求めたいと思います。
 一方、イベントの中止や休業などが広がる中でも、鉄道やバスなどは従前どおり運行しています。公共交通などの感染対策、労働者の感染防止対策はどのようになっているのか、子供を休ませても大人が運び屋になるのではという危惧もあるわけでありますので、お答えをください。

○赤羽国務大臣 まず、公共交通機関というのは、やはりそう簡単に休めないというか、その使命と責任というのは重大だというふうに私は思っております。
 同時に、ここで感染拡大をさせるわけにはまいりませんので、まず、公共交通機関に働く従業員の皆様への対策として、これはタクシーでもバスでも鉄道でも共通でございますが、マスク着用ですとか手洗い、またうがいの励行、そして、毎日の検温も実施して健康状態の把握をする、発熱ですとかせきとかちょっと調子が悪い場合には乗務は中止する、そして速やかに医療機関への受診を求める、休むときには休みやすい環境の整備を、対応を行うということの徹底をお願いしておるところでございます。
 また、公共交通機関を利用していただくお客さんに対しては、駅のところにアルコール消毒液の設置ですとかポスターの掲示、また、車内放送等でマスクの着用ですとか手洗い等の呼びかけを実施しておるところでございます。
 これに加えて、二月二十五日に決定をされました新型コロナウイルス感染症対策の基本方針にのっとりまして、とにかく公共交通機関の混雑緩和をしていかなければいけないということで、テレワーク及び時差出勤を推進しようということで、鉄道、バス等の車両、駅、バスターミナル等におけるアナウンスにより、利用者の方々に対しテレワーク、時差出勤の積極的な取組を行っておりますが、それに加えて、二月二十六日には、私と経済産業大臣、厚生労働大臣とともに、経済三団体また連合の御代表の方に対し、テレワークや時差出勤の着実な実施を具体的に直接、やってほしいということで、要請をしたところでございます。
 こうした取組の効果として、早速、細かくは申し上げませんが、鉄道の出勤時間、先ほどJR山手線の数字も出しましたが、ピーク時で約二割強の減少の状況が見られておるところでございます。
 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 二点、ちょっとお話をしたいかなと思うんですけれども、最初は、国交省から膨大な、取組についてというリーフをいただいて、とにかく通知を出しまくりかなという、通知を出すだけかなという思いがございました。そういう指摘をしたかったかなと思っているんですが、今、大臣が経済団体を回ってきたことや、あるいは、先ほど伊藤委員が指摘をされましたけれども、タクシーにマスクを配った、一万二千枚は本当に少ないなと正直思ったんだけれども、だけれども、現物給付というのは大事なんですよね。だって、物がないんだから、お金では解決できない問題なんです。
 ちょっとやり玉に上げて失礼なんですけれども、今、厚労省が、特別支援学校を休校にして、かわりに放課後デイサービスなどになるべく多く、長い時間子供たちを引き受けてくれと言っている割には、マスクだとかアルコール消毒液などを支援しますかといったら、それは経営の中で何とかやってもらいますといって、出ないんですよね。やはり、国の指示のもとに取り組んでいることなのに、どうしても避けられない方たちにどうしてそれができないのかなと思いますので、今の一万二千枚をもっとふやして、タクシーだけじゃなく鉄道やバスなどにも支援をしていただきたいということを言いたい。
 あと、休みやすい環境と大臣おっしゃいました。やはり、今、運転関係の方たちの働き方というのは本当に大変なんですよね。確かに私も電車がすいているとは思います。けれども、ワンマンカーであることにはそれ以上楽にはならないわけで、やはり働き方ということもあわせて議論していかなければならない、これは指摘をさせていただきたいと思います。
 それで、例えば、資料の1に、ダイヤモンド・プリンセス号の三月一日時点の乗客乗員の現在の状況という資料がございます。三千七百十一名の乗員と乗客が、今現在、ようやっとゼロになったわけですが、この方たちが、入院したり、急病や付添いなどで下船をしたり、あるいは、外国のチャーター機で帰国をしたり、濃厚接触者は宿泊施設に移動したり、こういう内訳が書いているわけなんですけれども。これはよく映像で皆さんも見るんだけれども、でも、そこには、関係した乗客乗員のほかに、その方たちを運んでくださったバスの運転士さんたちなどがいるわけなんですよね。こういう人たちの健康対策というのもやはり大事なんじゃないか。
 それで伺いますけれども、国交省がかかわって確保したバスの運転士さんなどがどのくらいいるのか、また、その方たちのその後の健康調査などがフォローできているのか、お願いします。

○一見政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど委員御指摘いただいたダイヤモンド・プリンセス号の乗客の輸送以外にも、武漢から帰国をされた方々を輸送しましたバスの運転手もおりまして、合計で申し上げますと、バス運転者四十七名、実員数、延べではなくて実員数四十七名でございます。
 こういったオペレーションにかかわった人につきましては、厚生労働省と調整をしまして、順次PCR検査を受検させるという形でやらせていただいております。発熱等の症状があった場合にはすぐに報告するようにフォローも行っておりますけれども、現時点では、検査結果は全て陰性であり、発熱の報告もございません。
 ただ、まだ全員受けられておりませんので、早期にPCR検査を受検できるよう、厚生労働省と調整をしておるところでございます。

○高橋(千)委員 こういうときは実人員で答えるんですね。ふだんは延べで何かすごく多く見せるんですが、逆にこういうときは実人員で答えたというのはちょっと驚いたんですけれども。
 PCR検査、順次とおっしゃいました。きのうの時点では全然やられていないということだったので、やるということで確認をさせていただいて、その間の健康フォローをきちっとお願いをしたい、このように思っています。そうじゃなかったら、今せっかく大臣もおっしゃってくれた、使命を果たさなければならない方たちにお願いをするわけですけれども、その方たちの安全、健康を守るということはやはり国交省が頑張っていただきたい、このように思っております。
 昨日はアメリカで、同じプリンセス・クルーズ社のクルーズ船がまた集団感染、きのうの時点で二十一名という報道があったと思うんですが、大変衝撃を受けています。私は、やはりクルーズ船ならではの感染リスクということがあるのではないか、このように思っております。
 改めて、おさらいのような感じではありますけれども、資料の2にダイヤモンド・プリンセス号への対応というのとその他のクルーズ船への対応という資料を載せておきました。
 三千七百十一人の乗客乗員を乗せた豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号は、一月二十日横浜で乗船し、一月二十五日に香港で下船した男性、いわばたった一人の感染から始まって、約七百名の感染者、六名が死亡するという大惨事になりました。三日時点の集計で、外国のチャーター機で帰国した外国人七十四名が感染していたと発表をされています。
 専門家会議の座長でもある国立感染研の脇田所長は、船内での隔離が有効に行われたとコメントをしました。菅官房長官も、適切だと思っているとコメントをいたしました。私は、このダイヤモンド・プリンセスのオペレーションにかかわった全ての皆さんの御苦労に本当に敬意を表したいと思います。だけれども、さすがにうまくいったとは言えないだろう。また、仮に言うとしても、今ではないと思っております。
 昨日報道されたのは、ダイヤモンド・プリンセス号で長期間隔離された人たちの心のケアに当たった災害派遣精神医療チーム、DPATの一カ月間の活動報告でしたけれども、三百八十五件の相談が寄せられたこと、死にたい、船から飛びおりたいといった深刻な訴えが九十一件に上ったほか、長期間の個室隔離に伴う不安や不眠の声も百一件あったといいます。心配していたことが現実に突きつけられたという気がいたします。また、このチームの医師の中からも感染者が確認をされています。
 IHR、国際保健規則第三十二条、「参加諸国は旅行者をその尊厳、人権及び基本的自由を尊重して扱い、且つ、かかる措置に伴う不快感や苦痛を最小限に抑えなければならない。」と定めています。この国際保健規則違反と私は言えると思うんです。
 大臣に、この間の対応について認識を一言伺います。

○赤羽国務大臣 済みません、ちょっと質問が、脇田所長のコメントについてなのか、そうじゃなくて、ダイヤモンド・プリンセス号のこの一連のということですか。どちらのことでしょうか。

○高橋(千)委員 うまくいったと思うのかと聞くと、それは厚労省ですと言われるので、そういうことではなくて、そのことも念頭に置きながら、今回のダイヤモンド・プリンセスのオペレーションについてどのような認識をされているのかを伺いたいと思います。

○赤羽国務大臣 まず、大変申し上げにくいんですけれども、これは検疫法の規定に基づいて厚生労働省が主体となって実施されたものだと。ですから、この座長のコメントについて私は答弁する立場にはございませんが、先ほどどなたかの質問にもお答えしましたが、いずれ、この一連のオペレーションが終わったときには、そうしたそれぞれの対応がどうであったかという総括は必ずなされなければいけないと思っております。

○高橋(千)委員 十四日間停留、とめ置きということ自体は検疫法に基づく検疫所長の判断だったかもしれません。ですが、これには政府全体としてかかわってきたわけであります。
 先ほど十九日に下船させる判断がどうだったのかという話がありました。普通の形での健康観察をしながら見ていくのであれば当然二週間、二週間でも多いという議論さえもあったわけですから、下船させるのが当然だったと思うし、そこに向けての検査などを速やかにやっていけばもっと早く下船もできたし、そこから二週間ということもあったかもしれない、国際的な批判も浴びなくてよかったかもしれない、私はこのように思っております。
 いずれにしても、なぜこういう問題になったかというのは、何度も言うようにクルーズ船という特徴があるからなわけですよね。WHOの船舶衛生ガイドの中でも、歴史的に船舶は世界じゅうに感染症を伝播させる、そういう役割を果たしてきたということから始まっているわけで、国立感染研でさえも、乗船している全ての人を個別に隔離することはできず客室の共有が必要であった、また、客室がある以上、お客さんがいる以上、乗員は結局サービスをしなければならなかった、そういう条件があったということを認めていらっしゃるわけなんですよね。ですから、やはりこれは全体として、国交省も船舶を所管する立場として一緒に検証していただきたい、このように思っております。
 そこで、三年前、港湾法の改正がありました。官民連携による外航クルーズ船受入れ拠点形成のため制度を創設するという内容でしたが、横浜港は、官民連携国際クルーズ拠点形成計画書においてダイヤモンド・プリンセス号の母港化を目指しておりました。確かに昨年一年間でダイヤモンド・プリンセス号は横浜港に三十三回入港をしています。
 では、横浜検疫所はこれだけの大型船の検疫の経験があるんでしょうか。また、今回のクルーズも、本当は横浜港は終着であって、那覇港で検疫を済ませているので、四時間半くらいかかったと聞いていますが、コロナウイルスの件がなければ横浜港では特に検疫をやる予定ではなかったと思いますが、これは事実確認です。

○浅沼政府参考人 お答えいたします。
 横浜検疫所におきましては、日ごろから横浜港に入港するクルーズ船に対しまして、臨船検疫の方法の一つでありますけれども、着岸検疫というのを実施しておりまして、検疫官が直接乗り込んで検疫を実施しているところでございます。
 また、今回のダイヤモンド・プリンセス号の検疫につきましては、我が国の一次港でございました那覇港で二月一日に那覇検疫所から仮検疫済み証を交付していたところ、二月二日のIHR通報の内容を踏まえまして那覇検疫所が仮検疫済み証を取り消しまして、横浜検疫所が改めて横浜港で検疫を行うこととなったということでございます。

○高橋(千)委員 聞いていることに答えてください。着岸検疫をやったというのは桁が違うでしょう。数千のオーダーの検疫は、横浜港は経験がありません。そうですね。

○浅沼政府参考人 お答えいたします。
 ダイヤモンド・プリンセス号も日ごろから横浜港に入っていますので、あの規模のクルーズ船の検疫というのも、直接、検疫官が乗り込んで検疫を実施しているという実績はございます。

○高橋(千)委員 でしたら、後で資料を出していただきたいんですが、数千の規模のことはないと思いますよ。今回だって、那覇港で検疫したから、何もなければ横浜ではやる必要はなかったんですよ。そうでしょう。そこをちゃんと言わなかったらだめなんですよ。
 二〇〇九年の新型インフルエンザのときは、ダイヤモンド・プリンセスの臨船検疫をやっています。ただし、横浜ではなくて鹿児島港と室蘭港です。だから、横浜港は経験がないでしょうと言っているんですから、それをちゃんと認めてください。母港化を目指していながら、まだそういう事態であるということを指摘をしたいと思います。
 大臣に言いますけれども、観光庁は、先ほど来議論がありましたけれども、訪日外国人旅行者数の目標を二〇二〇年までに二倍増の約四千万人、二〇三〇年までには三倍の六千万人と打ち立てています。うちクルーズ船は、二〇一五年百十一万強だったものが二〇二〇年五百万人の目標とされました。今回の事件で大幅減になったというのは、先ほど来議論されているところなんですが。
 厚労省と国交省の両方に聞くんですが、そもそも検疫がこれだけのインバウンドに追いつく体制だったのかということなんです。国交省としては、インバウンドを拡大し、港湾を整備し、飛行機も増便しとやってきて、今回のような大規模な船舶検疫、十四日のとめ置きと集団感染、こうしたことも、あっても大丈夫、あるよねということも想定していたのでしょうか、そのことを伺います。

○浅沼政府参考人 お答えいたします。
 迅速かつ適切な検疫を実施するために必要な人員につきましては、観光立国推進基本計画などに沿って、訪日外国人旅行者の増加に対応するために必要な人的体制を計画的に整備してきたところでございます。
 クルーズ船の検疫に必要な人員につきましても、観光庁が試算した訪日クルーズ旅客の推移をもとに計算し、必要な体制を整備しているところでございます。
 今後とも、訪日外国人旅行者の増加に対応した検疫体制の整備を図ってまいりたいと考えております。

○赤羽国務大臣 国交省としまして、クルーズ船の振興を進める中で、検疫の手続を含むさまざまな事案を想定して受入れ環境の整備を進めてきたところでございます。
 例えば横浜港では、船舶を停泊させる錨地を確保するとともに、長期間の係留を可能として、十分な後背地を有する岸壁、また、今回もそうしましたが、現地対策本部ですとか搬送する旅客の待機所としても活用可能な旅客船ターミナルなどの必要な整備を行ってきたところでございます。
 ただし、先ほども申し上げましたが、今回の事案を通して改善すべきところはなかったのかといった不断の見直しは当然するべきだと思いますし、クルーズ船は、こうしたことをさまざま指摘されておりますが、この間、観光の資源としても大変成功してきた案件だというふうに思っております。しかし、今回の事案を受けて利用するお客さんたちの気分がシュリンクしている。だから、安心だということをしっかりと示さなければなかなかクルーズ船の振興というのは進まないというふうに、私はそう思っておりますので、それはもう必要に迫られて、しっかりとした対策をとらなければいけない、こう考えております。

○高橋(千)委員 資料の三枚目を見ていただきたいと思うんですね。なぜ私がこの質問を行ったかということなんですが、予算委員会でコロナウイルス肺炎の質問を準備する過程の中で、昨年九月十三日の第十四回新型インフルエンザ対策に関する小委員会の議事録の中にこんなやりとりがありました。竹下インフルエンザ対策推進室長補佐の発言です。
 二〇二〇年には訪日外国人の旅行客数も四千万人にするとの政府の目標が掲げられており、今後、更に運航便の増加が見込まれると考えております。インフルエンザ対策の中で国交省のインバウンドのことが議論されている。それで、特定検疫飛行場は全国五つ、しかし、発着枠にもう余裕がなく、千歳と那覇を新たに追加します。特定検疫港湾については、九州・沖縄地区においてクルーズ船の入港実績が著しく増加しているため、四港湾のみでは対応困難なので、長崎、鹿児島、那覇を新たに追加して受入れ枠の増加を図ると述べているわけです。これで七つの港湾、七つの空港が特定検疫の対象になったわけです。
 特定検疫というのは、本来、新型インフルエンザ等が発生した場合の、要するに、平たく言うと、人手が足りないので集約をする、そのために決めてきたものなんですね。ところが、インバウンドに対応して、その特定検疫空港も港湾も逆にふやしてきた。それに対応できるのかということなんです。
 これが全国の検疫所の設置状況です。今私が読み上げた特定検疫港湾とかがどこら辺かは皆さんも見ればおわかりだと思います。本所、支所、出張所合わせて百十カ所、これはもうほとんど数字が変わっておりません。
 その次のページを見てください。検疫官定員の推移ということで、二〇〇九年度、下の段を見ていただきたいんですけれども、検疫官の定員が三百五十八人だったものが、二〇二〇年度は六百四十六人になっています。これだけを見ると、ああ、インバウンドのためにこれだけの検疫官をふやしたんだなと思いますよね。下の方に、空港と船舶とそれぞれどれだけ利用者がふえてきたかということも出ているんです。だけれども、今言ったように、検疫をしなければならない港や空港がどんどんふえているわけなんですね。
 次のページを見るとわかりますように、これは港の例でありますけれども、一つの支所や出張所が幾つも兼務をしています。これは、港担当の人が港だけではなくて、青森のようなところは空港も港も両方行っています。仙台の支所から釜石や宮古にまで行っている。そういう兼務をして、ようやっと今の体制をもっているんです。ですから、一・五倍にふやしたからといって、これだけの規模の検疫に耐えられるとは思えないんですね。
 それだけではなくて、地方空港ではチャーター便がふえています。ですから、直通便のほかにチャーター便まである。それに応えて検疫官が行かなきゃいけない。こういう体制になっているわけなんです。
 今回のダイヤモンド・プリンセス号のような事案があれば、六百四十六人の検疫官、全国からかなり集めなければ対応できない、こういう事態になるんじゃないですか。どれだけが出動したんでしょう。ふだんだったらマックスでも六人くらいでやっているわけでしょう。どうなんですか。

○浅沼政府参考人 お答えいたします。
 ふだんの空港の検疫、海港の検疫でございますけれども、事前に情報を収集した上で、特段の疾病関係の問題がなければ、なるべく国際交通をとめないようにスムースに対応させていただいております。それでも、今議員御指摘のとおり、日本じゅうの空港、海港が、インバウンドの効果で飛行機、船、ふえてきていることも片や事実でございます。
 そのために、我々の方も、年々検疫官の増員をお願いしているところでございまして、特にここ数年におきましては、増員の規模も随分とふやしていただいているところでございます。
 ただ、先ほど御指摘いただいたとおりで、有事というか、こういったダイヤモンド・プリンセス号のようなことが起これば、それはもう大事でございますので、日本じゅうの検疫所の方から応援もいただきながらこういった事案に対処するということは紛れもない事実でございます。
 そういったことも含めて、やはり人員増、体制強化を不断の努力で進めていかなければならないというふうに考えているところでございます。

○高橋(千)委員 紛れもない事実とお認めになりました。
 ただ、これだけの政府の目標を本当にやろうとすれば、これは追いつかないであろうと私は思うんです。政府の目標も少し見直しをするべきではないか、インバウンドだけではない見方も、内需をもっと高めることも必要なのではないかなと思っているんです。
 この五百万人クルーズ旅客を打ち出した日本再興戦略二〇一六は、翌年の港湾法改正につながっているんですが、こう書いています。「寄港地を探しているクルーズ船社と、クルーズ船を受け入れたい港湾管理者との間の、需要と供給の「マッチング」サービスを国において開始し、利用可能な岸壁をクルーズ船社に紹介するなどの取組を行い、クルーズ船寄港の「お断りゼロ」を実現し、我が国へのクルーズ船の寄港を促進する。」
 日本再興戦略はお断りゼロが目標であります。今、どうでしょうか。ダイヤモンド・プリンセス号を十四日以上もとめ置き、かつウエステルダム号をお断りしました。ウエステルダム号が入港を希望していたのは、まさに特定検疫港湾にプラスした那覇港でありました。
 大変残念ながら時間が来てしまったんですが、今回のウエステルダム号の上陸拒否は、最終的には法務省の入管法のあれでありますけれども、港湾の管理者への通達と海事局からの申出というものがあったわけですよね。国が決めたことですからということで、閣議了解がここに書いてあります。
 しかし、感染のおそれがあるだけで入港を拒否し、しかも、この十二日のを見ていただければわかるように、どこの国の船であってもおそれがあるということで拒否できるというところまで広がっちゃったんですよ。まさにお断りばっかりなんですよ。
 本当にこのまま進めるんでしょうか。まさに人権にかかわる問題ではないかと思いますが、大臣、一言お願いします。

○赤羽国務大臣 二月六日の閣議了解につきましては、これも同じ答弁であれですけれども、疫学的な判断から閣議了解に至ったものであります。それも同じように、それでよかったのかどうかということは総括、反省を加えられなければいけないと思いますが。ただ、このことについて言えることは、こうしたことが将来起こり得るので、国際法上ルールを決めなければいけないというのは、もう与党からも指摘をいただいているところでございます。
 もう一つ、具体的な事案につきましては、日本人のお客さんが四名、もう一人クルーがいらっしゃったと思いますが、ここは国土交通省の海事局が中心となって定期的に連絡をとらせていただいて最後までフォローし、最後に乗せたのは外務省の飛行機で戻ってきましたが、そうしたことはしっかりとやらせていただいたということは、御承知だと思いますが、御報告だけさせていただきます。

○高橋(千)委員 一言で終わります。
 法務省には、申しわけありません、時間が来てしまって質問ができませんでした。
 将来のルールを決めるべきだというお話がありました。そうだと思います。超法規的に解釈がどんどん拡大していくというのはよくないと思うんです。諸外国だって、今確かに入国制限しています。日本は制限されている国なんです。だけれども、その基本は保健省なんじゃないですか。検疫法の世界なんじゃないですか。そこをちゃんと見きわめなければ、政府の対策本部で決めたら何でもできちゃうということはあってはならないんです。
 そのことを強く抗議をして、ちゃんとルールを決めて冷静に対応していただきたい、そのことを求めて終わります。ありがとうございました。

 

ー資料ー

2020年3月6日衆議院国土交通委員会配布資料

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