日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は五日、衆院農林水産委員会で質問に立ち、BSE問題などについて、政府の見解をただしました。
高橋議員は、「毎日」(四日付)の世論調査では、米国産牛肉の輸入再開に反対が65%など、消費者は依然として全頭検査の維持を支持していると指摘しました。
この間、食品安全委員会が各地で開いた意見交換会でも「同様の意見が非常に多いのではないか」とのべ、地方議会でも二県十市町村から意見書が出ているなどの国民の意見をどのように認識しているが、答弁を求めました。
島村宜伸農水相は「全頭検査か国民の安心につながっているのは事実です。国民の納得が得られる環境が確保されるなかで、見直されるべきだと考えています」とのべました。
さらに高橋議員は、全頭検査を堅持することを前提に米国産牛肉の輸入再開に関して、「食品安全委員会の中間取りまとめは、『アメリカの牛肉が二十ヶ月齢未満の場合、検査対象からはずしてもいい』という結論ではない。米国産牛肉についてもリスク評価機関である食品安全委員会としてリスク評価をするのか」と大臣の姿勢を問いました。
BSE対策について外口崇厚生労働省医薬食品安全部長は「米国産牛肉の輸入再開については、わが国と同等の安全性が確保されていることが前提であります。米国側から具体的な提案があった場合には、リスク評価機関である食品安全委員会に諮問することになります」と話しました。
(2004年10月6日(水)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 次に、BSE問題に移りたいと思います。
先ほど来議論がされていて、私もきのうの東京新聞のインタビューについてはぜひお聞きしたいと思ったんですが、どうも大臣が、後ろよりは前に若干軸足がというお話もされましたので、早く再開をと願っているのは事実かなと思うんですね。
そこで、きのうの毎日新聞の世論調査でも輸入再開に反対が六五%と、消費者の声は依然として全頭検査を支持しているわけです。また、この間、食品安全委員会が各地で開いた意見交換会でも、同様な意見が非常に多かったのではないか。あるいは地方自治体からも、千葉県、宮崎県などを先頭に十市町村などからも意見書が出ている、こういう背景もあるかと思いますが、そういう国民の意見を大臣はどう受けとめているのか、まず伺いたいと思います。
○島村国務大臣 かつては、川の水が汚れている、海が汚れているということで、いわば水産物が汚れて、それが身体にいろいろな大きな影響をもたらしたことがございましたが、最近は、特にこの狂牛病の問題を初めとして、食の安全、安心にかかわる食品の話題が急浮上しているわけでありますから、消費者がまず食の安全、安心に強い関心を持ち、そのことを求めるのは当然の成り行きだと思っています。私たちは、それを守る、いわば安心して食をとっていただけるような環境をつくっていくのが我々の仕事でありますから、十分そのことを強く認識し、これに対応していきたいと思います。
私が前向きの云々というのは、すべてに前向きという意味ですから、御理解をいただきたいと思います。
○高橋委員 ちょっとよくわからない。すべてに前向きだということなので、では、ちょっと個々に聞いていきたいと思うんです。
まず、単純な確認であります。先ほど来お話しになっている中間とりまとめの問題ですが、二十カ月齢未満のBSE検査を省略しても感染のリスクが高まることはない、こういう中間とりまとめの内容は、プリオン専門調査会委員の山内名誉教授がけさの新聞で言っているように、線引きに対する見解は示していない、線引きではないんだということを言っていますよね。
何も、リスクが高まることではない、あるいは検出が困難だったという事実は述べているけれども、二十カ月未満の検査はしなくてもいいというところまで踏み込んだ結論ではなかったと確認したいんですが、よろしいですか。厚生労働省、お願いします。
○外口政府参考人 食品安全委員会の中間とりまとめでございますけれども、これは、平成十三年から約三年間が経過した我が国の国内のBSE対策について評価、検証した結果でございまして、その間の科学的知見や規制等の状況も踏まえた上で、中立的、科学的立場から取りまとめられたものと認識しております。
御指摘の検査のところでございますけれども、これについては、検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしても、全月齢の牛からのSRM除去措置を変更しなければ、それによりvCJDリスクが増加することはない、あるいは、二十一カ月齢以上の牛については、現在の検査法でBSEプリオンの存在が確認される可能性がある、そして、二十一、二十三カ月齢で発見された感染牛の延髄かんぬき部の異常プリオンたんぱく質の量が、他の感染牛と比較して五百から千分の一と微量であった等と記載されているわけでございます。
私どもといたしましては、この食品安全委員会の出しました報告書を科学的合理性に基づくものという観点から判断して検討をしているところでございます。
○高橋委員 端的に答えていただきたいんですね。
線引きに対する見解は示していない。ちょっと読みますけれども、けさの日本農業新聞で、「プリオン病専門調査会では、線引きに対する見解は示していない。これまでの検査結果から、現在の検査技術なら感染牛が見つかっている二十一カ月齢での検出は可能とみなした。しかし、検出できない月齢判断は科学的にはできないと判断した。」というふうに言っていますよね。
ですから、今読み上げたところで、それをもって線引きしたとは言えないんですよねということを確認したいんです。
○外口政府参考人 月齢の線引き見直しについてどうかという御指摘でございますけれども、中間とりまとめの中では、結論の部分で、「二十ケ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。」という記載もございます。こういったことも踏まえまして、よく関係者の意見も聞きながら、関係省庁と連携して検討を進めてまいりたいと思っております。
○高橋委員 では、今のは、重要であると言っただけで線引きではないというふうに私は思っております。
続けますけれども、同じく、アメリカの牛肉が二十カ月未満なら入ってもいいということとイコールではありませんよね。これは単純な確認であります。
それから、先ほど鮫島委員に答えたように、アメリカの牛肉が入ってくる場合は、まず食品安全委員会としてリスク評価をするということで確認してよろしいでしょうか。
○外口政府参考人 米国産牛肉の輸入再開については、我が国と同等の安全性が確保されているということ、これが前提であります。
それから、米国側から具体的な措置について提案があった場合には、食品安全委員会に諮問することになると考えております。
○高橋委員 同等の安全性ということは、二十カ月未満というだけでは同等ではないということですね。
それから、リスク評価をするということでいいんですね。もう一回。
○外口政府参考人 BSEの対策につきまして、特に食品の安全性についてでございますけれども、SRMが適切に除去されているか等、種々重要なポイントがあります。それらを含めて安全性が我が国と同等に確保されているかということが一つございます。
それで、具体的な提案がアメリカからあった場合には、リスク評価機関である食品安全委員会に諮問することになります。
○高橋委員 よくわかりました。続けます。
中間とりまとめには、「常にSRM除去が確実に行われていると考えるのは現実的ではない」と指摘をしています。これは日本の対策のことですね。具体的な数字が出ています。全国七カ所、食肉衛生検査所で調査をした数字、これによると、脊髄の除去率で、吸引方式をとっている五カ所では八〇・六%プラマイ一七・一%、つまりは五二・五%から九九・一%の割合だと。押出方式では二カ所平均七五%とあるんですね。いかにもこれは深刻な数字ではないかと思われます。つまりは、SRMの除去が確実にやられていればという前提そのものが現実では成り立っていないということではないかと思うんですね。
全頭検査があり、SRMの除去があり、あるいは飼料規制の問題などがさまざまにセットになってこそ、日本の安全、安心が成り立っているということではないのですか。確認をしたいと思います。
○外口政府参考人 御指摘のように、SRMの除去というのは大変重要な手段でございます。
それで、脊髄の除去についてでございますけれども、確かに、現在各屠畜場で行っておりますSRMの吸引除去方式、これで一〇〇%完全に脊髄を吸引除去するということはなかなか難しゅうございます。実際には、吸引除去した後で、丁寧にあと手作業で取ったり、それから高圧洗浄によって、その先のプロセスとしてSRMがきれいに取れているようにというプロセスを行っておるところでございます。
○高橋委員 手作業で大変な苦労をされていると思うんですが、一〇〇%完全ではないということを今お認めになったと思うんですね。日本の検査でさえそういう状況なんだと。だから、さっき言ったように、やはり全頭検査とセットになってこそではないのかなと思うんですね。
もう一つ、この中間とりまとめのSRM除去の内容の中には、プリオンを蓄積する組織がSRMと言われる組織外でも全くないということは「現時点において判断することはできない。」と述べておりますよね。この点も考慮する必要があるかと思います。
さて、先ほど来問題になっている二十カ月齢未満の問題ですけれども、プリオンの検出が不可能ということについては、「ある組織について感染性が検出されなかったとしても、検出限界以下の感染性が存在していた可能性は否定できない」、このようにとりまとめでも行っている。つまりは、現在の検出限界では不可能だけれども、だからといって感染性がないとは言えないということを言っているわけですよね。
四月十五日の食品安全委員会でも、OIEの名誉顧問である小澤氏は、生体牛検査が可能になれば、全頭検査が世界的標準になるだろうと述べております。また、先ほど来出ているノーベル賞学者でありますプルシナー氏も、「一見健康な動物でも病原型プリオンタンパク質を持っている可能性があることを考えれば、全頭検査こそが唯一の合理的な政策だ」と述べて、ことし十月号の日経サイエンスの中でも、「迅速で高感度な検査方法が出現すれば、全頭検査が標準となるかもしれない」、こういうふうに言っていますね。
ですから、感染の可能性を否定できないということ、また、検出限界がどんどん下がっていって、いずれは全頭検査が標準になるかもしれない、これだけの指摘がされているときに、これを、今検査体制を変えるのでいいのか、今そういう成果があるのであれば、それを待って、検査体制を続けることこそが消費者やあるいは国内生産者の願いにこたえる道ではないかなと思うんですけれども、大臣に伺いたいと思います。
○外口政府参考人 新しい検査法の開発については、日本も含めて、世界じゅうでいろいろな研究が行われております。プルシナー博士のCDI法もその一つでありましょうし、それから、生体というか、生きているうちに検査する方法として、例えば牛の血清の赤外線スペクトルは使えないかとか、いろいろな研究が進んでいると思います。ただし、現在、現時点で、画期的なそういった方法が確立されて、早期に実用化される見通しであるというような情報まではまだございません。引き続き、BSE検査に関する情報を収集するとともに、高感度迅速診断法の研究開発にも意を用いてまいりたいと考えております。
○高橋委員 大臣、さっき御指名したんですけれどもお答えがなくて、もしよかったら一言。
私は、このまま、まだ未知のものであるのに、可能性があるかもしれないのに、今日本がハードルを下げるということは、結局アメリカの要求に屈服したことにしかならないと思うんですね。消費者がみんな支持していることを、多くの消費者が支持していることを引き下げるというのはどうか。そういう意味で、やはり大臣の姿勢が問われていると思っています。
○島村国務大臣 失礼をいたしました。
私自身は、全頭検査という緊急避難的な手段をとったときに、随分思い切ったことをやるな、こう思いました。それは、あのときにすぐ世界のいろいろな実情を調べてみたときに、例えばヨーロッパは御承知のように三十カ月以上ですし、豪州は、これは清浄国ですからほとんどやっていないに等しいぐらい数が少ない。アメリカ自身は、いわばかなりずさんといえばずさんかもしれませんが、日本とは比較にならない。そういう中で、せめて二十カ月なら二十カ月というところで切ってもよかったのかなと当時思ったものですが、全頭検査ということが今現実になっている。これがある意味でいわば国民の安心につながっているということは事実でありますから、これらについてはよく納得の得られる環境が確保される中で見直されるべきだ、こう考えます。
○高橋委員 よろしくお願いします。
終わります。