国会質問

質問日:2004年 10月 27日 第161国会 農林水産委員会

BSE問題

日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員は二十七日の衆院農水委員会で、BSE(牛海綿状脳症)の発生で中止されている米国産牛肉の輸入をめぐり、日米交渉での日本側の姿勢をただしました。

高橋議員は、輸入再開を求めるペン米農務次官が「数週間後に牛肉輸出を再開できるかもしれない」と述べたことをあげ、こうした見方を示すのは、「若い牛なら検査なしで輸入を認める方針を(米側に)伝えたからではないか」とただしました。

外務省の佐々江賢一郎経済局長は「危険部位の完全除去と二十ヶ月齢以上の牛の検査は必要と伝えた」と答弁。島村宜伸農水相は「(米側には)科学的知見に基づき、わが国の国内措置にしたがってもらう」と述べました。

高橋議員は、「科学的知見とともに、消費者、国民的議論も十分ふまえたうえで検討する考えを米側に伝えるべきだ」と強調。島村農相は「当然に消費者の立場にたっていく」と述べました。

高橋氏は、米側が枝肉から牛の月齢を評価する手法を提案していることについて、「科学的に精密にできるのか」と批判。農水省の中川坦消費・安全局長は「不十分だ。枝肉の生理学的評価ができるか、米側の調査をふまえて対応していく」と述べました。

(2004年10月28日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 時間が限られておりますので、BSE問題に絞って伺いたいと思います。

 十月五日の委員会でもこの問題が中心話題になりました。食品安全委員会から中間とりまとめが出されたこと、この結論が、二十カ月齢以下の牛についての全頭検査を検査対象から外すべきという結論ではないけれども、「二十ケ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。」この記載をどう解釈するべきか、そのことが問われたかと思います。一気呵成にアメリカからの輸入再開になるわけではない、国内法の整備をまず、食品安全委員会への諮問、そしてパブリックコメント、再開に当たってはリスク評価がされるということが確認されたのではなかったかと思います。

 ところが、その後、食品安全委員会に諮問もされ、また二十三日の第四回日米局長級会議が行われて、共同記者発表がされました。先ほど来問題になった二十四日付の日経新聞にもありますが、米側代表のペン農務次官が記者団に数週間後には牛肉輸出を再開できるかもしれないと語ったということは、非常に驚く認識であります。先ほどの答弁の中で、このことについては外務省としては覚えがないことで、確認をする、また、確認した上で事実であれば対処もするというような答弁があったと思うんですけれども、なぜそういうことが何度も繰り返されるのか。アメリカがこのように認識するという背景には、やはりこちらの姿勢があったのではないかと思うんです。

 同じ二十四日付の日経新聞の記事の中に「協議の冒頭、日本側は輸入再開の条件として、若い牛なら検査なしで輸入を認める方針を伝えた。」とあるが、この発言はどういう意味でしょうか、外務省に伺います。

○佐々江政府参考人 今お尋ねの日経新聞の記事というのは、私、必ずしもよく知らないのでありますけれども、協議の冒頭で我々が伝えた考え方というのは、日本側の考え方として、危険部位の完全除去、それから、今、国内で政府の考え方として諮問を行っている月齢二十カ月以上のものについては検査が必要だということは、るる説明したと思いますけれども、それ以外のことは、我が方の考え方を変えるようなこと、あるいは誤解を招くような発言をしたことは一切ないし、ほかの出席者も同様であったというふうに思います。

○高橋委員 では、記事にあることは事実ではないということですね。もう一度確認します。

○佐々江政府参考人 ちょっと記事がよくわかりませんが、少なくとも、私どもが米側に述べたことあるいは主張したことは、今申し述べたとおりであります。

○高橋委員 毎回このようなことが起きるんですね、新聞報道にはあるけれども言った覚えがないとか。そうしたことがやはりないように、であれば、議事録なり正確な資料を出していただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

○佐々江政府参考人 この種の日米間の協議、話し合いについては、両国間で協議をいたしまして、その結果を共同記者発表という形で発表したものがすべてでございます。もちろん、その間において、協議をしたわけでございますから、いろいろな意見交換をしたことは事実でございますが、両国間の約束で、それは不公表であるということでございます。協議の結果として出されたものがすべてであるということで、御理解をいただきたいと思います。

○高橋委員 ちょっと理解はできませんけれども、これが事実かどうか、外務省の姿勢がどういうものであるかということは、やはりこの議論で検証されていくのかなと思いますので、次に進みたいと思います。

 きょうの日本農業新聞で、大臣、「お互いの認識を共有できた」というふうに述べた、「二十カ月齢以下の牛を検査から除外する方針を両国で確認したことを評価した。」と述べておられますけれども、大臣の認識というところはどこにあるのか伺います。

○島村国務大臣 先ほど来の御説明でも申し上げていることですが、必ずしも和気あいあいといったわけにいかなかったわけでして、実は、私は二日目で、場合によっては決裂するかもしらぬな、その場に対してどう対応するかまで考えておったところです。そのぐらい激しいやりとりの中で両者譲らずというほどだったんですが、私は、三日目に延びたときに、逆に、これは、あるいは両者がまた逆に前進ができるのかな、こんな期待も持ったのが率直な感想であります。

 しかしながら、これは我が国は、先ほど来申し上げておりますように、あくまで科学的知見に基づいて、食の安全、安心を大前提として、そして我が国の国内措置にあくまで従ってもらう、これを基本に主張を貫いたわけでありまして、だからこそ私は、ちょっと内輪話になりますが、中川局長は適役でない、あなたはいわば話し合いの対象として好ましくないとまで言われていながら、彼は最後まで自分の主張を貫いた、それを多としたと申したところですが、決して相手方に迎合したものはありません。

 同時に、今、議事録云々とおっしゃいましたけれども、共同記者会見をやって発表しているわけですから、それぞれが全然認識が違うわけでもありません。あとはそれぞれの方の思いで物を言われたということでありますので、御理解をいただきたいと思います。

○高橋委員 前回の委員会で、鮫島委員の質問に対し外口部長が、国内措置の見直しと輸入再開の問題は、これは全く別の問題と述べております。私は、これは非常に大事なことだと思うんですね。国内措置の見直しについては、今、諮問をされて、話し合いが始まった瞬間であります。しかも、きのうの食品安全委員会では異論が続出して本格的議論には入れなかったという報道もあります。

 ですから、今大臣は、迎合するものではありませんと明確におっしゃいました。そうであれば、日本の態度としては、アメリカに対しても、科学の知見も当然ではあるけれども、消費者、国民的議論も十分踏まえた上で検討するという考えを強く伝えるべきだと思いますが、そういう立場に立っておられるのか、確認をいたしたいと思います。

○島村国務大臣 当然に、私は消費者の立場というものを大前提に考えております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 それでは、共同記者発表の中身について少し伺いたいと思うんですね。

 まず、BEV、牛肉輸出証明プログラムという聞きなれない言葉が登場しました。仮に二十カ月齢以下の牛は輸入できると決めたとしても、アメリカにはトレーサビリティーシステムがないじゃないか、このことはこれまでも指摘をしてきたところであります。

 今回、アメリカが示した四つの内容、個体月齢証明、集団月齢証明、あるいは、四つ目が本当によくわからないんですが、USDAの工程証明個体識別及びデータ収集サービス、こういうことが提案されておりますが、日本としては、そのアメリカが提案をした四つの内容の現時点でのアメリカの到達、どれだけのことができているのか御存じなのかどうか、中川局長に伺います。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の日米局長級会合で、月齢の確認方法といたしまして、屠畜時に二十カ月齢以下の牛であることを、個体の月齢証明等の生産記録、この生産記録を通じて確認する方法を採用することになったわけでありまして、今先生がおっしゃいましたように、その具体的な例として四つが掲げられているわけであります。

 こういったそれぞれの証明方法につきましては、これはこの共同記者発表の冒頭にも書かれておりますけれども、今後、両国の専門家及び実務担当者によりまして具体的な検討作業を行っていくということになっております。

 したがいまして、私どもも、ここに掲げられております具体的な四つの証明方法につきまして、現地での確認等も含めて、本当にそれが確かに月齢が確認されるものであるかどうかといったところの詰めの作業は、これから行っていかなければならないというふうに思っております。

○高橋委員 それぞれの制度というか個体月齢証明とかというこのシステムが、どの程度のものなのか、本当にできるものなのかはまだ把握されていないということで確認してよろしいですね。

 アメリカがなぜこれを出してきたのかなと思うんですね。四つ示しているけれども、いずれか一つであればよい、そこにやはりみそがあるのかなと。個体月齢がきちんと証明できるなら、いわゆるトレーサビリティーシステムがあると言えますか。ここは確認です。

○中川政府参考人 日米の牛肉貿易の再開条件の一つであります月齢確認につきましては、大変重要な要素でありますけれども、これは、書類等によりまして客観的に二十カ月齢以下であるということが証明される、そのことが何より大事であると思います。

 今、トレーサビリティーシステムというお話がございました。確かにトレーサビリティーシステムというのも、その機能の一つとして月齢確認ができる場合がございますけれども、また、かつ日本の場合はそれで月齢確認ができるようなシステムになっておりますが、必ずしも日本と同じようなトレーサビリティーシステムが月齢確認に不可欠であるとは思っておりません。要は、この日米間の貿易再開につきましては、繰り返しになりますけれども、きちっとした月齢が確認できるシステムが必要不可欠ということでございます。

○高橋委員 日本と同じようなシステムが不可欠とは言えないけれども、月齢がきちんと確認できればよいということですね。だけれども、それはまだできるかどうかはわからないとおっしゃっていますよね。だから、私はそのこと自体がまず不満なわけですね。

 それと同時に、報道にもあるとおり、アメリカの本音はこの次のところの、枝肉の格付及び品質属性に関する協議を継続していく、これで何とかやろうというのが落としどころなのかなと思いますが、農水省として、この枝肉の評価で、二十カ月以下かどうか、それを明確にできるとお思いですか。

○中川政府参考人 これまでもアメリカから幾つかの資料は提供され、説明も受けておりますけれども、その限りではまだそういったことは不十分だというふうに思っております。

 ただ、今回のこの協議を通じまして、こういった、先ほども申し上げましたが、承認手続に必要な、二十カ月齢以下であるということがきちっと枝肉の生理学的なものによりまして評価できるかどうかということは、今改めてアメリカ側で調査を行うということになっております。その結果を見てから判断をしたいというふうに思います。

○高橋委員 不十分だということが現時点の到達だということを確認したいと思います。

 次に、厚生労働省に伺いたいんですけれども、食品安全委員会の中間とりまとめの考え方ですけれども、三百五十万頭検査して一番若かった発生牛は二十一カ月だった、これまでの実験から見ても二十カ月齢のところが検出限界だということが言われたわけですよね。

 私どもは、そもそも検出限界は科学の知見によって下がっていくということ、さらに、検出限界だからといって感染している可能性を否定できないということも指摘してきましたし、その点も中間とりまとめの中には書かれてきたと思うんですね。だから、二十カ月と厳密に区切ることは、その前後、例えば十九カ月、二十一カ月にそんな差があるのかという疑問は依然として残りますよね。

 あるいは、中間とりまとめの中には、イギリスでの感染実験で接種三十二カ月後に感染性が見出された発症例は、三カ月後にそれが認められた、そのことを照らし合わせると、例えば二十カ月発症例の場合、十七カ月齢で感染性が検出される可能性もあるということまで踏み込んで書かれておりますよね。ですから、二十カ月と厳密に区切ることがどうかということは、現実問題として問われていると思いますが、その点いかがですか。

○外口政府参考人 二十カ月のところで厳密に線が引けるかどうかという御指摘であります。

 何カ月でBSEが確認できるかということは、まず接種した異常プリオンの量、それから検査の検出限界、そして増殖する期間、この三つのファクターから成り立っていると思います。したがいまして、その三つの関数によるものですから、どこか二つがある程度規定されないとなかなか決まってこないわけです。そういう意味で、いわゆる純粋な科学者の立場からいえば、いろいろな御意見があることは承知しております。

 ただし、御指摘にありましたような英国の一九九二年の二十カ月の発症例の場合は、当時の英国のBSEプリオンの暴露量というものがかなり大きいもので、これは例外であろうということは報告書にも書いてあるとおりです。それから、検出限界につきましても、これも現在の検出法では二十一カ月というのが一番小さいわけでありますし、それは実際プリオン量も微量であったわけでございます。あと、プリオンの増殖の過程においては、これはリニアカーブというか直線的にふえるのではなくて、どちらかというと指数関数的なふえ方をする、そういった性質もあります。そういったこと等々を総合的に判断しまして、食品安全委員会の中間とりまとめの報告書になっていると思います。

 そういったことを考慮いたしまして、私どもは検査対象を二十一カ月齢とすることを食品安全委員会に諮問したところでありまして、それによってもリスクは変わらないんだというのが我々の立場でありますけれども、これについて十分御審議いただきたいと考えている次第でございます。

○高橋委員 答弁は同じなんですけれども、現時点では二十カ月だ、そういうところまで今到達していて、しかしアメリカのトレーサビリティーという、月齢判断というのはまだ現時点ではわからない、明確ではないということまでわかっている。そういうときに、アメリカは既に三十カ月齢にしたいということを明確に言っているわけですね。私は、日本が完全に足元を見られているなと思うんです。

 あり得ないことだと思いますが、農水省に確認したいと思うんです。そういうことは受け入れる考えはないなということと、一度再開したら、今は一定の手続を踏むけれども、次の段階は一気に簡略されるということはないですよね。確認ですので、伺います。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。

 科学的知見に基づいて、それ以外の条件によって何か条件が変わるということは、これから先、あり得ないことだと思っております。

○高橋委員 限定されたので、それはよろしいかと思います。

 それで、「貿易の攪乱の防止」ということなんですけれども、「少数の追加的なBSEの事例が確認されても、科学的な根拠がなければ輸入停止や牛肉貿易パターンの攪乱という結果に至ることはない。」これは非常にわかりにくいですね。「少数」とはどれくらいか、「牛肉貿易パターンの攪乱」とはどういうことか、これをはっきりと言ってほしいと思うんです。

 日本においては、今後も二十カ月以上は全頭検査がされていく、しかも、ダブルスタンダードと言われるけれども、当面は各県が二十カ月未満も全頭検査をやるだろう、そうすると、発生の確認というのは当然少しずつまた出ると思うんですね。しかしそれは、消費者にとっては、国民にとっては、しっかり検査がやられているなという確認になります。

 だけれども、アメリカはそういう努力をしているだろうか。日本に輸出していたときも八割が若い牛だった。二十カ月以上の牛は、相変わらず全頭検査というわけではないわけです。日本が措置を緩めただけだった。そうなると、少数の追加的な事例というのは、日本においては、あと一頭出ても重大な意味を持つけれども、アメリカにおいては、圧倒的な屠畜頭数の割合からいっても、本当にまれだというふうに片づけられてしまうんですね。この価値観の違いがどう受けとめられるのかということは非常に問題になるんですよね。

 この点について、私は、非常に消極的な言いぶりではなく、逆に、そういう科学的なあれがあればきちんと見直しをするという立場の確認をするべきと思いますが、伺います。

○中川政府参考人 「貿易の攪乱の防止」ということについてのお尋ねでございますけれども、今後、日米間で条件を整えまして牛肉貿易を再開する、そういうふうに再開をする以上は、BSEに関します現在の科学的知見に基づいて安定的な貿易が可能となるような、そういう条件を設定するというのはある意味で必要であり、また当然のことではないかというふうに思います。こういった考え方のもとに、科学的な根拠なく輸入停止等の措置を講ずるべきではない、そういう趣旨で設けられたものでございます。

 したがいまして、少数の追加的な事例というのは具体的にどれぐらいの数だとか、そういうことではなくて、あくまでも我々が今現在共有している科学的知見、それを覆すような新たな事態が生じた場合には当然この限りではないということで、また新しい事実関係をよく検証して、それに基づいて適切に対応していくということでございます。

○山岡委員長 高橋さん、時間です。

○高橋委員 終わります。よろしくお願いします。

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