佐賀県玄海町にある藤ノ平ダムから流れでる濁水から養殖魚を守るための設備を設置するために支払われた補償金が、組合員らに「迷惑料」として配られるなど不正使用されている問題が十日、明らかになりました。同日の衆院農水委員会で日本共産党の高橋千鶴子議員が取り上げたもの。
島村宜伸農水相は「渡したからどうでもいいと放置するのは好ましくない。正しい方向に使われるよう方向付け、指導し確認したい」とのべ、調査し是正させる考えを明らかにしました。
高橋議員によると、ダムが完成した二〇〇三年三月、仮屋湾内でタイ養殖をする仮屋漁協(岩下功組合長)にたいし、濁水から養殖魚をまもるために微細気泡発生装置やオイルフェンスを設けるなど「濁水等抑制対策補償」として約五千万円が支払われました。
しかし、具体的な工事費まで算定されていたにもかかわらず気泡発生装置などは設置されず、組合員らに配分、残額は漁協に留保されています。
高橋氏は、同ダムを含む六町村にまたがる上場土地改良事業をめぐっては事業費が五倍近くにふくれあがり、農家負担の軽減を求める声があがっていたことを紹介し、「事業費増大の根っこにこうした不正使用があれば重大問題だ。徹底調査すべきだ」と求めました。
仮屋漁協・岩下組合長は本紙の取材に「濁水対策設備費として受け取っていたが、迷惑料だと考えており何に使ってもかまわないと思う」と話しています。
(2004年10月11日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、私は、きょうは佐賀県の国営藤ノ平ダムにかかわる問題で質問をさせていただきます。
一定の状況がわかった方がいいと思いましたので、皆さんにお手元の資料を配らせていただきました。十五年十月二十二日付で、仮屋漁業協同組合より、「藤の平ダムのアオコ発生による下流域への影響対策について」という陳情書が出されております。十五年三月に完成したダム、これが河口付近にあるこの漁業組合の養殖に対して大きな影響があったと。アオコが発生し、そのために、この下の方に書いてあるように、マダイ、トラフグがこれほど死んだということが指摘をされているわけです。数字を見ると、大変な数字であって、もし本当にこのようなことがあったとすれば、それは重大な問題であります。
私が言いたいのは、このこと自体が非常に疑義のある、このダムにかかわる補償金問題で補償金が適正に使われたのかということが指摘をされているということであります。
十月に、私も玄海町の現地に行ってまいりました。手元に要請書がございます。これは陳情書ではなくて、この問題を直接指摘した方の要請書でありますが、「九州農政局関係の佐賀県・上場農業利水事業による藤ノ平ダムに関わる補償金疑惑解明について」とこの要請書には書いてあります。その要請書は、同じものが配達証明つきで福岡国税局と会計検査院あてにも送られております。
このダムは、先ほど申しましたように、十五年の三月に完成しました。漁業権の消滅の問題はまた別に、有浦川内水面漁業組合長に対して平成三年に、もう終わっております、平成三年三月に五千八百二十万円が支払われております。その後、十五年の三月十日には仮屋漁協組合長、ですから、最初に言った漁業権消滅は、ダムがある場所とその河口の内水面のところに、川のところに支払われたんですが、今回は、仮屋湾に注ぐ河口のところの養殖のところに約五千二万二千七百円、三月十日、十一日、二回にわたって、濁水流入抑制対策工事費相当額などとして支払われました。
まず、これらの補償金が適正に処理されていないのではないかというのが要請書の趣旨であります。端的に答えてください。これらの補償金が適正に処理をされているでしょうか。
○川村政府参考人 藤ノ平ダムに係ります漁業補償についてのお尋ねでございます。
藤ノ平ダムに係ります漁業補償については、今委員の御質問の中にもございましたが、二つございまして、内水面漁業についての問題とそれから海面の魚類養殖、この二つがございます。この海面の魚類の養殖につきましては、濁水の影響対策とそれから工事中の出荷抑制に対する補償ということで実施をしたところでございます。
これらの補償につきましては、昭和三十七年に閣議決定をされました公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱、それから昭和四十二年の閣議決定によります公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱に基づきまして、実態調査等を踏まえて適正な補償額を算定いたしまして、関係漁協と合意の上、支払ったものでございます。
○高橋委員 私が今聞いたのは、適正に処理をされているかということを聞いたんですね。今局長は、適正に支払われましたとおっしゃいました。工事費の内訳、補償額一覧表、手元にございます。これが言ったとおりに使われていますかということを聞いているんです。
農水省の説明によれば、平成十四年七月以降、漁協から濁水等による養殖魚への影響防止施設設置の要望があったと。何かトラフグが六千八百尾なくなったということがあったそうです。同年十月から十五年一月までの間に水質調査をやって、三月十日にはダムの放流についての損失補てんがやられたと聞いています。
契約書があります。「甲は、」「甲は、」というのは、要するに漁協の方ですね。「前項の補償金以外は、藤ノ平ダム完成後における損失について、一切乙に対して補償の要求をしないものとする。」つまり、この補償で終わりということだと思います。その内訳表があります。対策工事費、諸経費など、微細気泡発生装置に二千七百七十九万一千八百円、オイルフェンス一千四十一万一千八百円などとありますが、実際は養殖漁業者だけでなく、一般漁業者にも迷惑料という名目で支払われ、その残額は漁協に留保されたということが指摘をされております。
もう一度伺いますけれども、オイルフェンスやこの気泡発生装置などのような装置が、約三千万以上の装置が実際につくられたのでしょうか。適正に処理されたと言えるのでしょうか。伺います。
○川村政府参考人 補償金の問題でございますけれども、漁業補償のうちの養殖漁業に係ります補償につきましては、先ほども申し上げましたとおり、養殖漁業者からの委任を受けた漁協と協議をいたしまして、養殖業の被害を回避するための費用として補償したものでございます。
この補償金は、事業の実施によりまして不可避的に発生する事業損失に係る漁業補償であります。ただ、この補償金の支払いはいわゆる渡し切りということによって行われておりまして、この具体的な処理は、当該漁協それからその委任をいたしました組合員、これにゆだねられておるということでございます。
○高橋委員 渡し切りだということ、そういう制度になっているんだということは、実は説明を受けました。ただ、それがもしまかり通るのであれば、補償金だと一たん渡してしまったものが当時の目的とは全然関係ないものに使われていても何ら問題がない、そんなことが許される、まかり通るとなれば、どういうことになるのかということが問われると思うんですね。
例えばダムの移転補償だったとしたら、移転補償のために出したお金が、少なくとも、その方たちが移転をした、村がなくなったということは確認できますよね。それと同じように、これは工事費ですから、工事にお金が使われたということは設備があるかどうかで判断できます。それすらも確かめていないのですか。それだと、余りにも自由なお金になってしまいませんか。もう一度伺います。
○川村政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、その補償金の支払いの方式が渡し切りの状態でございますので、その使途について確認をするという仕組みにはなっておらないところでございます。
○高橋委員 仕組みにはなっておらないけれども、現実にそれがわかった場合はどうされますか。目的外使用ですけれども、是正措置をとらないんですか。
○川村政府参考人 本来そういう趣旨で渡されたものではございますので、そういう趣旨で使っていただくことが望ましいわけでございますけれども、今、制度の仕組みとしてはそういう渡し切りの制度ということで、その使途は、具体的にどう処理するかということは漁協なりその組合員にゆだねられているということでございます。
○高橋委員 非常に残念な答弁ですよね。ここまで言われても、好ましいけれどもしようがないというような意味合いのことだったかなと思うんですね。
担当職員に聞きましたけれども、オイルフェンスその他の装置は実際につくられておりません。そのことがわかっていながら、渡し切りだからしようがない。五千万ものお金がしようがないで済むのか。今これだけ、台風だ、地震だ、農家が大変だと言っているときに、それだけの補償をしてくれと言われているときに、国民の税金がそういう使われ方をしていても、しようがないで済むのかということが問われると思うんですね。
実は、ここに玄海町の町長さんにあてた復命書があります。平成十六年二月九日、つまり、復命書ですから、町の職員の方が二月二日から二月三日に出張した際の報告書でございます。用務先は熊本市九州農政局水利整備課、用務は藤ノ平ダム環境整備に伴う浄化槽の設置について打ち合わせのためということで、さまざまなことを言っているんですが、その中に、このことについて打ち合わせをした報告がございます。
「藤ノ平ダムのアオコ対策については平成十五年十二月より水質調査」、省略します。「課長補佐より仮屋漁協には予防措置に対する補償をしている。仮屋漁協は補償金を迷惑料と言うのであれば、目的外使用となる。国の農水委員会の共産党議員(高橋議員)さんからも仮屋漁協に対する補償について調査が入っているので、今後、国会で取り上げられることとなれば、会計検査が入り、補償金返還の可能性があるとのことでした。」
大臣、率直な感想を伺います。
○島村国務大臣 実は、このことの説明を受けた際、私も同じ疑問を抱きまして、これはあくまでも公の金でありますから、渡してしまったらどうしてもいい、従前はどうあれ、やはりこれからはそういうことでそのまま放置することが好ましいとは思いません。やはりそれらについては、正しく使われる方向にいわば方向づけるなり、また指導するなり、確認をするなり、何らかの形でこういうことに対しては従前と取り組み方を変えるべきだ、私は率直にそう思います。
○高橋委員 ありがとうございます。
きょうはせっかく会計検査院と国税局にもおいでをいただいておりますので、それぞれに見解を伺いたいと思います。
今の時点でこの件については具体的なお答えはできないかと思いますが、今のように、出し切りだというようなものであっても、不正常な使い方、本来の目的と違う使い方があった場合は当然是正をするべきと思いますが、会計検査院はどうなのか。あるいは国税局としては、これはもらったお金をそれぞれの組合員が確定申告もしておりますので、その書類もありますけれども、国税にかかわる使い方が二重に誤りをされているということにもなります。国税の立場としてもこのような問題をどう考えるかについて、それぞれに伺いたいと思います。
○友寄会計検査院当局者 会計検査院といたしましては、公共事業の実施に伴う公共補償費の検査に当たっては、その補償金額の算定が適正であるか、また補償金の支払いの相手方、支払い時期が適正であるかなどの観点から検査を実施しております。
一般論として申し上げますならば、補償の相手方がその補償費をどのように使用したかについては、本院の検査の対象とはなっておりません。しかしながら、せっかくの今回の先生の御議論もございますので、今後の補償費の検査の参考にさせていただきたいと思っております。
○竹田政府参考人 個別にわたる事柄につきましては、答弁することは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、私ども国税当局といたしましては、常に、納税者への適正な課税を実現するという観点から、あらゆる機会を通じまして課税上有効な資料情報の収集に努めておりまして、これらの資料と納税者から提出された申告書等を総合検討いたしまして、課税上問題があると認められる場合には税務調査などを行うなどいたしまして、適正な課税の実現に努めているところであります。
今後とも、こうした考え方に基づきまして適宜適切に対処してまいりたいと思います。
○高橋委員 今、会計検査院と国税局からそれぞれお話をいただきました。個別の問題でありますので、一般論ということでお答えをいただいたかと思いますが、参考にしてくださるということや、不適正であればというお話がありましたので、それぞれの立場から調査をされ、適切な指導をされることを強く望みたいと思っております。
実は、この玄海町を中心とした地域では、今いろいろな問題が起こっております。
九六年の三月に予算委員会の分科会で我が党の吉井議員が上場土地改良事業という問題を指摘したことがあります。これは、一市四町一村にまたがる四千八百七ヘクタールの非常に広大な地域の土地改良事業で、六三年から始まり、九二年に完了したものであります。着工時三百二十億だったのが現在千四百九十億という事業費、四・六六倍に膨れ上がったということもあり、農家負担が非常に重いという訴えが出され、返済できないところがあり、延滞金をせめて何とかならないかというようなことを当時取り上げたわけであります。同じ地域でこのような土地改良事業やあるいは公共事業などの大きな負担、事業費という問題が実は起きているんですね。
この問題が、例えば今お話ししたようなお金の使い方の不適正な問題が根っこにあるとしたら、だからこんなふうに事業費が上がるんだとしたら、それは本当に重大なことになると思うんです。ですから、それは今の時点では、そうでないことを祈るしかありませんけれども、そういう意味も持っているんだというお立場で徹底調査をしていただきたい、そう思いますけれども、重ねて大臣に伺って、終わりたいと思います。
○川村政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、仕組みとしてはそういう状況でございます、制度的にはそういうものでございます。
今後の問題といたしましては、先生の御指摘も踏まえまして、そういった補償金がその趣旨に沿って使われるよう問い合わせなり調査といったものをすることはあり得ると思っております。
○高橋委員 時間が少しありますが、中途半端になるので、これで指摘をして終わります。
今、お話があったと思いますが、不適正なものがあればしっかり調査をしていくということで、先ほど大臣、好ましいとは思いませんとおっしゃってくださいましたので、その立場で徹底調査をお願いして、終わりたいと思います。
ありがとうございました。