日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員は二十九日の衆院災害対策特別委員会で、新潟中越地震による宅地被害について「地域全体としての居住の安定性、安全性の確保が不可欠だ」として、「行政が地盤調査と復旧計画を行い、そこに国が支援するスキーム(枠組み)を検討すべきだ」と提案しました。
北側一雄国土交通相は「指摘はごもっともだ。県、市町村とよく相談してしっかり対応策を講じたい」と答えました。
また高橋氏は、新潟県中越地震が二十六日に激甚災害に指定され、養鯉施設や事業共同組合等の施設の災害復旧事業に適用されることをあげ、「新たな指定が追加されたり、先に指定された台風21号や23号などでも追加指定されることがありえるのか」と質問。内閣府の柴田高博政策統括官(防災担当)は「特別の財政援助の措置の追加が必要になった場合、追加指定を検討しなければならない」と答えました。
高橋氏は、新潟県による災害救助法や被災者生活再建支援法の上乗せ制度に対し、「国として特別交付税措置を含めた財政措置をするべきだ」と要求。総務省の今井宏副大臣は「関係地方公共団体の事情を十二分に聞いて、特別交付税、地方交付税、地方債による財政措置を講じて、財政運営に支障をきたさないように対処したい」と答えました。
(2004年11月30日(火)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
地震発生から一月以上が過ぎました。冬が迫る中で、被災者の皆さんはどんなにか不安な気持ちでおられるでしょうか。十一月二十四日の参議院災害対策特別委員会の参考人質疑で泉田知事が涙ながらに訴えておられたのを拝見し、国政の責任を痛感いたしました。何としても、暖かい春が迎えられるよう最大限の支援をお願いしたいと思います。二十六日に激甚災害の指定がされたことは、約一月で指定を決めたという関係者の皆さんの御苦労にまず感謝をしたいと思います。
今回の政令案を見ますと、第七条、水産動植物の養殖施設、いわゆる地元の強い要望があった養鯉施設がこれに当たりますが、そのほかにも、第十四条、事業協同組合等の施設の災害復旧事業に対する補助、第二十二条、罹災者公営住宅建設等事業に対する補助の特例など、これらは大きな意味があると思います。いわゆる、よく知られている公共土木や農地等の災害復旧などのように数字で決められた指定基準ではなく、災害の実情に応じ、その都度検討するとされていることが重要だと考えております。最大限、法に照らして可能なものは活用すべきと思います。
二十条の母子寡婦福祉法による貸し付けの特例、二十五条、雇用保険法による求職者給付の支給に関する特例なども期待をされているところです。
そこで、当然、時間の経過によって新たな指定が追加されたり、あるいは、先に指定されていた災害、台風二十一号や二十三号などでも追加指定されることがあり得ると思いますが、この点を確認させてください。
○柴田政府参考人 新潟県の中越地震及び台風二十三号の災害につきましては、被災した地方公共団体が安心して災害復旧が取り組めるよう、早期の激甚災害指定が最重要課題であると考え、国の職員が現地に出向かい、簡易な方法などを通じて現地の実態把握を行い、今回政令指定をさせていただきました。
そういうことでございますので、今後、現地の詳しい被害状況の把握が進みまして被害の実態が明らかになる中で、特別の財政援助の措置の追加が例えば必要になった場合、こういった場合には、政令の改正により措置の追加指定を検討していかなければならないというぐあいに考えております。
○高橋委員 ありがとうございます。
少しでも現行法で使えるものは使うという立場で自治体への支援を強くお願いしたいと思います。
次に、今回の地震の特徴として、がけ崩れや宅地の崩壊、農地の崩壊等、いわゆる地盤災害がその特徴だとして、泉田知事と被災自治体などは、特別立法等による特別な支援を要請しております。国土交通省の専門家チームによる調査では、地震による宅地被害は、長岡、小千谷市など約三千カ所のうち四百三十九カ所が危険と判定されたというものですが、この数字がさらに拡大することが懸念されます。
また、長岡市の高町団地では、外周道路沿いは土地の崩壊や地割れなど地盤の被害が相次ぎ、十二日付の新潟日報の数字では、全五百五棟のうち八十一棟が立ち入り危険、宅地では七十五カ所が危険と判定されました。
この盛り土を支えていたコンクリートの擁壁は高さ四、五メートル、この擁壁と道路は業者が施工し、造成完了後、市に寄附、移管されたものであります。そうなると、道路に地盤が崩れ落ちて、宅地と市道、市の持ち物の境目が入り組んで損壊があるわけですが、そういう場合は、最大限公共の力で災害復旧として対応すべきと思いますが、まずこのことについて伺います。
○清治政府参考人 公共土木施設であります長岡市道と、それから民地であります宅地を例にしてお話しをいただきましたが、公共土木施設を災害復旧で対処するに当たりましては、民地部分に影響を与える場合とか、民地部分を含めて復旧工事を行わなければならない場合が出てまいります。こういう場合には、被災の状況でありますとか地形の状況、こういうものを勘案いたしまして、個別の対応になりますが、適切な範囲を対象といたしまして復旧工事を行うことといたしております。
○高橋委員 入り組んでいる場合、民地を含めたとしても、影響を与えるという点では公共で手当てできるという道が開けるかなと思って今の答弁を伺いました。
次に、宅地については、先般の参議院の委員会の質疑の中でも、被災者生活再建支援法による整地費用で整備が可能との答弁がありました。ただ、私は、個々の対応に任せるだけでは不十分である、地域全体としての居住の安定性、安全性の確保が不可欠と思われます。
そういう視点で国土交通大臣に伺いたいのですが、行政が地盤調査と復旧計画を行い、そこに国が支援するスキーム、地域全体という観点からです、そういうスキームを検討するべきと思いますが、いかがでしょうか。
○北側国務大臣 お答えします。
委員の御指摘、ごもっともであるというふうに思っております。
現在、宅地防災の専門家を被災宅地復旧支援隊ということで現地に派遣をしております。十二月中旬まで延べ六百人態勢で今実施をしているところでございまして、被災の状況というのはその被災地域に応じて全く違います、その被災状況に応じた復旧方針等を検討して、これは技術的に、専門的にやはりアドバイスをする必要があると思っておりまして、県、市町村と連携をとってしっかり支援をさせていただきたいと思っておりますし、また、学識経験者から成る被災宅地復旧技術検討委員会というものを設置しておりまして、年内じゅうに復旧に資する技術指針等も策定をさせていただきたいと思っております。
いずれにしましても、復旧支援隊の調査結果等を踏まえまして、県、市町村とよく相談してしっかり対応策を講じてまいりたいと考えております。
○高橋委員 ありがとうございます。
あくまでも、宅地だから個人の問題ということにしないで、地域全体として知恵を出し合って支援をしてくださるように強く要望したいと思います。
さて、災害復旧や防災工事をしても依然として危険を取り除くことができない、あるいは居住に適当でないと認められる区域内の住居に対し、防災集団移転促進事業というのがありますが、一方、集団でなくとも、がけ地近接等危険住宅移転補助事業というのもあると聞いています。最悪の場合にはこうした手段もあるということを周知した上で選択の幅を広げるべきと考えますが、見解を伺います。
○山本政府参考人 お尋ねのがけ地近接等移転事業でございますが、具体的にその場所に建築基準法で言う災害危険区域がかかっているか、あるいは新潟県が、基準法に基づく条例で建築制限をかけている、そういう区域の建築物であればこの事業の適用が可能でございますので、積極的に運用したいと思っております。
○高橋委員 ありがとうございます。
私は、やはり選択肢が多様にあるということが非常に大事だと思うんですね。避難勧告が続いているために、やむを得ず仮設で冬を越す方がたくさんいらっしゃいますが、しかし、それをカバーするのが、本来支援法の役割だと思います。雪の被害も当然加味されると思います。自宅の再建が困難な方には、公営住宅もある、あるいは最悪の場合は、今言った移転も含めて選択肢があるということ、そのことが十分に納得がいく形で住民に知らされ決定できるということが望ましいのではないかと思います。
新潟日報の八日付に、栃尾市半蔵金の報道があります。冬に三メートルも雪の降るこの地域で、家にも帰れず、棚田も壊れ、生活の基盤が奪われました。五年前に夫を亡くし、ひとり暮らしだという六十七歳の女性が、「頼りにしていたいとこが長岡へ行ってしまった。他人にわがままは言えないし、切なくてすぐに涙が出てしまう」と打ち明け、余震が怖くて自宅へ戻ることができず、「一人でいるのが心配で心配で。二人で避難している人を見るのがうらやましい」と涙をぬぐったといいます。
こうしたひとり暮らしで考えあぐねている方を初め、個別の相談に乗り、再建への道筋を、資金面も含めてケアプランのようにコーディネートできる支援体制が今求められていると思いますが、いかがでしょうか。内閣の大臣に伺います。
○村田国務大臣 発災をして、きょう現在で五千人をちょっと超える程度の避難者になりましたが、発災をしてしばらくしてから、私どもはそうした住宅相談の窓口も開きました。そして、住宅公庫も、特別の窓口を開いてその融資の相談に伺っていたというふうに聞いております。
私どもとしては、県が、「被災者生活再建の手引き」と、主に罹災証明とか、いろいろな住宅にまつわる始めから終わりまで、再建のところまで含めてパンフレットをつくるというお話がありましたものですから、我々の方で知恵を出して、共同していいパンフレットをつくって少しでも理解に役立つようにしなさいということで、県と協力してこういうものをつくってもらいました。わかりやすくできていると思います。
しかし、紙だけ渡しても、これも市町村に配っているんですが、あれですが、人間でやはり相談に来られる体制を整えるということが一番大切だと思っておりますので、今後とも相談に乗っていく体制は維持してまいりたいと考えております。
○高橋委員 よろしくお願いしたいと思います。
次に、いよいよまた支援法のお話になるんですけれども、新潟労働局のまとめでは、五十社四百二十人が解雇されたと言われております。
中越新潟県労連などでつくる地震救援・復興被災地労働者センターが、今月の十一、十二日に小千谷市、長岡市のハローワーク前で被災者アンケートを実施しました。その中の声では、とても仕事のできる状態ではない、家のローン、子供の学費のローンが残っている、不況なので解雇、家も仕事もなくなりテント生活、地震のショックで子供に留守番をさせられなくなり仕事もやめることになった、母子家庭で、子守を頼める人もいないのでとても困っているなど、深刻な声が寄せられております。
もちろん、雇用対策でも緊急雇用対策などの事業が求められておりますが、同時に家も仕事も失った、家が決まらなければ仕事どころではないという方たちに、あなたたちは昨年の所得があるから対象になりませんよというので納得していただけるでしょうか。
例えば、住宅ローンが残っていて、再建のために二重のローンを組まざるを得ない方、解雇され、あるいは倒産、休業に追い込まれ、現在収入がないことがはっきりしている方など、実態に合わせて所得要件を緩和するべきではないかと考えますが、見解を伺います。
○柴田政府参考人 被災者生活再建支援法は、「生活基盤に著しい被害を受けた」というだけではございませんで、経済的理由や高齢者等の理由で自力により生活を再建することが困難な、真に支援が必要な者について、「その自立した生活の開始を支援することを目的」といたしております。そういう意味で一定の収入要件を設けているところでございます。
要件の設定に当たりましては、四十五歳以上の世帯や六十歳以上の高齢世帯、要援護世帯については収入要件を緩和しているところでございます。
なお、本制度は、対象世帯等の認定については被災日を基準といたしているため、基準とする収入も前年収入を用いざるを得ないところでございます。
また、その年の収入がわかるのを待たずに被災者生活再建支援金を速やかに支給するということで、結果として、被災者の自立した生活の開始を迅速かつ確実に支援することにつながるものと考えてございます。
また、世帯の所得ということについて、一つの家族に数世帯おられた場合に、それを合計して、おじいちゃん、おばあちゃん世帯それから自分らの若夫婦世帯、足して世帯の全体の家庭の金額にするのではないかという誤解もございましたので、これにつきましても、おじいちゃん、おばあちゃんが一つの世帯、それから若夫婦が一つの世帯の場合には、若夫婦の世帯でもって収入要件について収入をカウントするということについて通知を出させていただいたところでございます。
○高橋委員 確かに、今の最後のお話の、二世帯のところを明確に分けるんだとされたということは非常に多とするものかと思っております。
この所得要件の問題は、先ほどの質疑の中でも大臣の御答弁ありましたけれども、確かに理屈は十分わかっております。ただ、目の前に、もう既に仕事がないんだ、もう収入の道が途絶えたという方がはっきりわかっているときに何の手だてもないということを改善すべきかと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
○村田国務大臣 制度につきましてさまざまな御意見があることは、きょうの午後からの御審議を承りまして私もよく存じておりますが、公助としてのぎりぎりの制度をつくったわけでございますので、個別のケースについて大変気の毒なケースが生じてしまうということもやはりあると私は思いますが、今申しましたように、税金の使い方として、一定の条件を設けて、そしてお使いになっていただくという制度になっておりますので、どうかひとつ、そこは御理解を賜りたいというふうに考えておるわけでございます。
○高橋委員 この点については、他の、本体への経費なども含めて支援法の問題については、さらに本当に求められる制度になっているのかということを検討されていただきたいということを要望するにとどめたいと思います。
最後になりますが、新潟県知事は、十六日の臨時県議会で、復興を財政健全化に優先して取り組みたいという決意を述べられました。新潟県が、財政再建団体も危ぶまれるような、財政的には大変逼迫しているということは、残念ながら周知の事実であります。それでも、現実に苦しんでいる県民のためにと、県独自の災害救助法や支援法への上乗せ制度を創設したり、風評被害を受けている観光業者への融資適用を含め、産業支援策や雇用対策など独自の支援策で必死に取り組んでいらっしゃいます。
また、みずからが被災者でありながら、自宅の復興を後回しに奮闘されている職員の皆さん方、この方たちの人件費なども十分考慮しながら、国として特別交付税措置を含めた財政支援をするべきと考えますが、見解を伺います。
○今井副大臣 高橋委員にお答えを申し上げます。
今回の新潟県の中越地震は、被災した地方公共団体みずからも含めまして、この地域に大変な、甚大な被害を及ぼしたわけであります。そのための応急対策あるいは復旧対策、さまざまな経費について相当の財政負担が生じている、これが現状でございます。
総務省といたしましては、御質問ございましたが、これら関係地方公共団体の実情を十二分にお聞かせいただきまして、特別交付税あるいは地方交付税、地方債による地方財政措置を講じまして、その財政運営に支障の来さないように適切に対処してまいりたいと、かように考えているところであります。
○高橋委員 ありがとうございます。
特段の御配慮をお願いして、終わりたいと思います。