住宅本体支援に踏み込む時
新潟県中越地方で豪雪に家も人も押しつぶされそうになっている被災者――その声を背に、日本共産党の高橋千鶴子議員は二十八日の衆院予算委員会で、災害被災者への公的支援について質問。住宅本体への国の支援へいまこそ踏み込むべきだと政府に迫りました。
支援法改善に首相言及
高橋氏は、災害に対する国の責任を問い「『住宅を再建し元の暮らしを取り戻したい』という被災地の思いを共有しますか」と小泉純一郎首相に尋ねました。首相は「災害への支援は共有の認識だ。できるだけの手を差し伸べたい」とのべました。
被災者にとって切実な課題となっている住宅本体への公的支援が実現していないことについて、高橋氏は「被災者生活再建支援法が使いにくいという現場の声にこたえないのか」と質問。首相は「支援法が生かせるかどうか、改善点はあるか、よく協議する必要がある」と答弁しました。首相が同法の「改善」に言及するのは初めてのことです。
一方、村田吉隆防災担当相が「個人資産に税金をつぎこむことに同意が得られるか検討すべきだ」と答弁。これに対し高橋氏は、阪神・淡路大震災以来十年の運動で公的支援を前進させてきたことや、新潟では宅地擁壁(がけなどの土留めの壁)の復旧への公費投入が公共性を理由に実現したことを紹介しました。そして、「(宅地への公費投入に)公共性を認めたなら、住宅だけやれない理屈は通じない。国が『できない』とする幅は狭まってきている」と迫りました。
村田防災担当相は「公共性という概念の幅は歴史的にまったく変わらないものではない。時代時代で議論すべきもの」と答えました。地域コミュニティーの再生に住宅の再建が欠かせないという「公共性」を重視すれば、住宅本体への公的支援を拒む政府の理屈は成り立たず、政治の判断で支援が可能であることを裏付けました。
終了直後から反響が次々に
高橋議員の質問には、「非常に納得ずくの質問で、よくわかる」(神奈川・男性)「高ぶらず、激せず、しんみりと語るような態度もよかった」(青森・男性)など、終了直後から党本部や赤旗編集局に反響が次々に寄せられました。
(2005年1月29日(土)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、年末のインドネシア・スマトラ沖地震、インド洋大津波で犠牲になられた皆さん、また、十年目を迎えた阪神・淡路大震災の被災者の皆さんに対しても、改めて心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
新潟中越地震を初め、豪雨、台風など昨年の連続した災害から、被災者の皆さん、そして二月からいよいよ帰島が始まる三宅村の皆さんが希望を持って新たな生活をスタートさせることができるように、心から応援をしたいと思います。
私は、災害から犠牲をなくし、最小限に被害を抑えるための備えを尽くすこと、災害被災者が一日も早くもとの生活に戻れるようにすることが政治の最優先の任務だと思っております。連続する災害に、被災地のみならず全国の皆さんが胸を痛め、また、いつ、どこで自分の地域でもこうした災害が起こるかもしれないと不安を抱えている中ですから、国がどうその役割を果たすのかは注目をしているところではないでしょうか。
総理、まず最初に、この災害に対する国の責任についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。
〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕
○小泉内閣総理大臣 日本は台風や地震の多い国でありますが、昨年は特に台風の襲来が多く、また、集中豪雨も重なり、さらに新潟県においては大地震に襲われて、多くの方々がこの被害に遭われたわけであります。心からお見舞いを改めて申し上げたいと思います。
そして、年末には、これはスマトラ沖で、これまた百年に一度あるかないかというような大地震と大津波、これまた十万、二十万人とも言われるような未曾有の災害に襲われて、この災害対策というのは、もう単に国内の対策だけではなくて、国際社会が一緒に取り組まなきゃならない、そういう認識が現在できてきたと思います。
我々としては、今回の、きょうも審議していただいております補正予算において、日本国内での被害者にどのようなこれからの支援をしていくか、同時に、海外におきましても、スマトラ島沖のあの被害につきましては、日本としての支援ができる分野、独自にできる分野もあります。また、各国と協力しながらやっていかなきゃならない支援もありますし、国際協調の考えから、国連の一員としての責任を果たすという観点から、できるだけの支援をしていきたいと思っております。
いずれにおきましても、災害に対して支援をしていこうということについては、各党各会派、立場は日ごろは違いますけれども、していこうという共有の今認識はできているのではないか。それぞれの御意見は違いがあると思いますけれども、できるだけの手を被災者の方々に差し伸べていかなきゃならないと思っております。
○高橋委員 その支援の中身について、共有の気持ちをまず確認したいと思うんです。
私も確かに、青森、豪雪都市の出身でありますが、新潟は特に、雪が水分が多く非常に重い、そういうところであります。人けのない人家が雪の重みに耐えかねてつぶれる、そういう報道が毎日のように伝わり、きのうの毎日新聞によりますと、つぶれた家が五十二棟を数え、除雪や雪おろしに絡んで亡くなった方が四名になるということであります。私が新潟に行ったときに避難所で声をかけた男性が、雪のことが一番心配だ、冬の間に家がつぶれるかもしれない、そう訴えていたのが心に残っております。
豪雪という新たな被害と闘い、長い冬を耐えながら、今被災地の一番の関心は、住宅をどう再建し、もとの暮らしをどう取り戻すかということであります。総理にまず、その点で同じ思いであるかどうか確認したいと思うんです。住まいをしっかり再建し、もとの暮らしを取り戻すことが被災地の共通の願い、その点では同じだと確認してよろしいですか。
○小泉内閣総理大臣 被災者の方々がこの困難あるいは悲しみを乗り越えて再建できるような、どういう支援がいいかということについては、皆さん同じような認識を持って、必要な支援策を講じなければいけないと思っております。
○高橋委員 ありがとうございます。被災者がまず住まいを確保して、もとの暮らしを取り戻す、このことが共通の願いであることは異論のないことかと思います。
そこで、昨年十一月に新潟県知事から出された、名前がいいんですね、「新潟県中越地震の被災者自立に向けた緊急要望」、この中では、自宅に戻った方がその後の生活の再建が円滑に進むことが自明ですので、ぜひとも、住宅本体の建築、補修等にかかわる経費や生業を再建するための経費を国の支援対象としてくださいと求めています。
村田大臣にお尋ねしますが、政府は、今回の緊急要望を受けて、一つ一つ精査をし、大体三十数項目ありましたけれども、その六割方、要望にこたえる形で補正予算に盛り込んだと認識をしております。
今私が読みました新潟県知事が現時点で最優先の課題とされている住宅本体の建築、補修費にかかわる要望についてはどうなりましたか。
○村田国務大臣 被災を受けた方々が一刻も早くもとの生活に戻りたい、そういう切なる気持ちについては、私も担当大臣として共有しているつもりでございます。
実は明日、雪による住宅の状況等につきまして視察をするために、私は再び、これは三回目になりますが、現地を訪れたいというふうに思っているわけでございますが、今回の被災に対しての復旧につきまして、私どもは、とにかく雪が迫ってくるという状況でございましたので、仮設住宅を早く建てるということで、約でございますが三千五百棟建てました。
今御質問の、住宅本体についての御要望が新潟県知事からも出されたということは私どもよく存じておるわけでございますが、政府の役割としていろいろな形があるというふうに思いますが、その中で、私どもは、公共インフラの復旧活動、これを最優先にするのが政府の役割、こういうふうに考えておりまして、そうした知事からの御希望というものもよくわかるわけでございますが、そういう中で、私どもはとにかく、昨年の通常国会で改正された内容、これも限度額を引き上げたり、あるいは対象の事業も、その被害も非常に大幅にふやしたという中で、それを活用してやってもらいたいということでありました。
そのほかに、いろいろな運用も弾力的に応じたつもりでありますし、また、半壊の方々についても、応急修理の資金として六十万円というものも、これは全く新たな措置でございましたけれども提供するという形にして、努力をしたつもりでございます。
公助あるいは自助、共助、そういうことを組み合わせながら、被災者の方々が再建に向かいまして立派に自立の足音を響かせていただきたい、心から私も願っておるわけでございます。
○高橋委員 いろいろおっしゃいましたけれども、結論は、要望はかなえられないということですよね。そうですよね。住宅本体には使えないと。そこを私は聞いたんですから。今紹介いただいた昨年創設した居住安定支援制度、これを改正したけれども、でも、それは本体には公費を使えない。これが最大の問題なんです。
総理、昨年はあれほど災害が連続しました。今大臣がお話しした居住安定支援制度が改正されたのが三月、それから六月、七月、ずっと災害が起きて、支援制度が使われるかどうか、役に立つかどうか試された年だ、そういうことが言えると思うんですね。どうだったでしょうか。
例えば、七月の新潟豪雨の中之島町。県単独で床上浸水などに補修費を支援した、この数字がありますけれども、たった二カ月で二百六十八戸が申請をしました。単独の支援制度には、住宅本体に使う。ところが、国の支援法は、改正したから適用になっているんですけれども、十二戸にすぎませんでした。十二戸です。
ですから、担当者は、これでは被災者を支援しない法だ、支援法と名前がついているけれども支援しない法だと声が上がっている。そういう声が今脈々と、昨年は全自治体から上がった。現場で日々被災者と向き合っている自治体から、なかなか使えないぞと声が上がっていることを御存じですか。また、この声になぜこたえようとしないのですか。総理に伺います。
○小泉内閣総理大臣 支援法をいかに活用するか、それぞれ地域、実情が違うと思いますが、その点は極めて、各家によっても、住居の状況も違うと思います、収入も違うと思います。その点については、よく地方の実情を踏まえて、この支援法が生かせるか生かせないか、また改善点があるか、今後よく協議する必要があると思っております。
○高橋委員 今総理、よく協議をするとおっしゃいました。二十四日から始まった本会議では、ずっと聞いていますと、議論を深めると。意味がどこか違うかなと今ちょっと考えておりましたけれども、いずれにしても、議論をするということではあるんですよね。ただ、もう待てないんですね。
実は、この住宅再建に国が支援するべきだということは、神戸から、阪神・淡路大震災のときから、もう十年来声が上がってきていることであります。こうしている間にも雪が積もり、家も人も押しつぶされるような気持ちになっているんです。それでもまだ議論とか協議とか言っている。いつになったら前に進むのか。
大事なことはスピードなんだと思うんですね。いかに早く被災者が立ち直るか、もとの生活を取り戻すのか。そのときに、初動の段階で政治がどういう姿勢をとるのかが問われているのではないでしょうか。それを立証しているのが、よく言われる鳥取県の例だと思うんです。
二〇〇〇年の十月の鳥取県西部地震、発生して十一日後に、住宅建設には三百万円、補修には百五十万円支援をすると県が発表しました。それに、町独自で支援を重ねたところもありました。
一番最初にそれで住宅をつくったところが、溝口町の百万円の上乗せ制度があって、安達さんという方の記事が載っていましたけれども、家が全壊し、牛小屋に使っていた納屋に仮設のふろとトイレをつくって三カ月ぐらい暮らしていた、蓄えがないのでもう住宅はあきらめていたけれども、県がそういう制度をつくってくれるということで、あきらめずに、五百万かかったそうですが、二DKの家をつくった、そういうお話がありますが、この溝口町の町長さんは、地震が原因で町を離れた人は一人もいないとおっしゃっています。
私は、二つのことが言えると思うんですね。初動で支援するというメッセージを出したことが被災者を大きく励ましたこと、住宅を再建できるということによって町を離れなくて済んだ、鳥取県の知事はこれが最大のポイントだとおっしゃっていますけれども、地域にとっても大きな役割を果たした。そのことについては、総理、当然評価されますよね。どう受けとめますか。
〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕
○小泉内閣総理大臣 その地域の村長さんにおいても知事においても適切な対応がなされたということから、評価されているんだと思っております。
○高橋委員 評価されるべきだと。
鳥取県に続いて、一昨年の宮城県、あるいは一番直近では東京都が独自の支援策を発表するなど、全国に広がっています。
片山知事は、昨年二月の定例記者会見の中でこんなことをおっしゃっています。住宅再建支援を決めて発表したのが二〇〇〇年の十月十七日。あの知事も、そのとき本当にこういうことをやっていいのかなと不安だったそうです。認定が難しいんじゃないかとか、国が何を言ってくるかとか、いろいろ不安を抱えていたけれども、一夜明けたら、神戸の方から大喝采があった、自分たちが望んでいたことにかなり近いことを実現してくれたと。そのとき、神戸の皆さんが長い間このことで運動していたのを初めて知った、被災地になって初めてそういう問題があるということを認識されたと。しかし、そのことがまた全国を励ましてこうした取り組みが進んできたと思うんですね。
このことを考えれば、やはり神戸が初動で立ち上がれなかった、そのことが十年たった今も尾を引いているし、その教訓こそが住宅再建への支援だと思うんです。
総理は、先日の本会議で、阪神・淡路大震災から十年が経過いたしましたが、被災地域では、地元自治体、地元住民を初めとする関係者の御努力により、目覚ましい復興が図られたと述べました。もちろん、その一方で、被災者の抱える課題もそれぞれ個別多様化しているとも述べられました。
私も十周年記念行事に神戸に行ってまいりましたけれども、被災者にとって住まいと暮らしはまだ復興していないということを実感しました。この点では、総理、同じお気持ちでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 あの被災にめげず、乗り越えて見事に復興を果たした方々もおられるとは思いますが、同時に、今なお、あの傷がいえずに、困難な生活を余儀なくされている方もたくさんおられると思います。それだけに、今後も、そういう方々に対して、立ち上がれるような対応策は何かという点については、まだまだ課題が残っていると思っております。
○高橋委員 立ち上がれるような課題は何か、そのことを先ほどから提案をしておるのであります。
十六兆三千億円を注いで、復興経費を使って、神戸の町並みは一見、すっかり震災から立ち直ったかのように見えました。その一方では、長田区を初め、区画整理をしてもなお更地が多く残されておりました。六千四百三十三人ものとうとい命を失い、消えることのない深い悲しみや、生活を立て直すことができない被災者の痛みを感じました。
災害復興公営住宅でこの五年間に、ひとり暮らしでだれにもみとられずに亡くなった孤独死、三百二十七人。その前の五年間、仮設住宅では二百三十三人ですから、大きく上回っています。
神戸の記念集会では、被災者の十年、その厳しかった十年の一端を聞くことができました。ケミカル工場を再建した女性は、だんなさんが震災のショックで自暴自棄になったあげく病気になった、金策に追われ、何度運河に飛び込もうと思ったことかと訴えました。そして、国の個人補償制度があったらと訴えました。
今、全国でも、新聞各紙やあるいは知事会も住宅本体への支援を求めていますし、世論調査でも八割が支持をしています。あの地震直後に、市民団体の皆さんが住宅再建への個人補償を迫ったときに、気持ちはわかり過ぎるくらいわかりますが、国の成り立ちとしてそういう仕組みになっていないんですと述べたのは、当時の村山富市首相ですが、十年目の今になって、十七日の毎日新聞の取材では、政治に残された課題は住宅再建への国の支援だと答えています。
もうそろそろ住宅本体への支援に踏み出してもいいのではないでしょうか、総理。
○小泉内閣総理大臣 そういう指摘も踏まえて、支援策の手が差し伸べられたわけであります。しかし、まだまだ再建とか個人の住宅の事情も違います。額も、百万円から三百万円、そして、三百万円から足りなくて五百万円にしろという意見も今出されております。いろいろな点があります。そういう点をさらに協議していく必要があるのではないかと思っております。
○高橋委員 今、額がいろいろとか需要が多いとかさまざまあって、それを協議しておこうとおっしゃったんですけれども、まず、それはそうだと思うんです。私たちは、後で紹介しますけれども、野党三党で改正案も出しましたしね。ただ、そういうことを、昨年も十二月の国会で私たち改正案を出しましたし、何度も訴えてきて、もう国民の意思もはっきりしていて、それで何でそこにこたえられないのかなと。
では、需要はこうだ、やはりこうだというときがいつ来るのかなと思うんですけれども、その点は何か、では、逆に言えば、めどでも考えていらっしゃるんですか。
○村田国務大臣 やはり一つは、国の施策の体系として、個人の資産に税金をつぎ込むことについて、公平があるか、あるいはコンセンサスが得られるかということ、これを十分検討してみなければいけないのではないか、こういうふうに思います。賃貸住宅にお住まいであった方で被災を受けた方がある。あるいは、ほかの面でもっとお気の毒な方もある。そういうときに、税金の使い方として一体どうしたらいいんだということをみんなでさらに詰めて議論をしていく。
だから、そういうことで、昨年の通常国会での被災者生活再建支援法の議論もそういうことを大いに議論した結果、とりあえず、それでは本体ではなくて住宅のローン等々含めて住宅の再建に必要な、本体ではないけれどもそうしたお金も必要なんだから、そこに二百万円アップして、そして支援しようという、そのぎりぎりのところで協議がまとまったと私どもは聞いているわけでございます。
私は、総理が今おっしゃいましたように、いろいろな観点からの議論をさらに進めていくことがよろしいのではないかというふうに考えております。
○高橋委員 やはりそこに来たかという気がするんですが、個人の資産だからという、それは十年前からお話しされていたことと変わっていないわけですよね。これが本当に、昨年の三月の災害対策特別委員会でも、当時の井上防災担当大臣は、憲法や法律に特にそれを私有財産に使っちゃいけないということは書いていないということをおっしゃったわけですし、なぜ、そこにこだわっているのかなと、そして本当にそうなのかなということを少し幾つかの角度から検証してみたいと思うんです。
新潟県の特徴は、中山間地が多く、そのために地盤災害が多かったということです。これが非常に自治体から要望が上がって、何とかこれに支援をしてくれとなって、十一月二十九日に、私自身もこの委員会室でこの点を取り上げました。
今回の補正予算案では、自然斜面だけでなく、人工の斜面、いわゆる宅地擁壁等、個人のものも含めて対象とする災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業が提案されました。がけ崩れ対策事業での特例措置は、新潟が実質初めてと聞いております。個人の宅地だけれども、これを公共の復旧事業として支援できるスキームを今回の補正予算で提案されましたよね。
個人だからできないと言われて、新潟の皆さんの何とかしてくれという声にこたえることができた、その決め手は何だったでしょうか。国土交通大臣に伺いたいと思います。
○北側国務大臣 委員御指摘のように、このたびの中越地震は中山間地を襲いました直下型地震であるということで、御指摘のような住宅宅地における擁壁の倒壊等の地盤災害が多数発生をいたしました。私どもといたしましては、今ある制度をできるだけ柔軟に活用しようということで、精いっぱいの運用をさせていただきました。
本来、御指摘の災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業とか災害関連地域防災がけ崩れ対策事業、これはともに自然斜面を対象とするのが本則でございます。しかし、そういう人工でつくられた斜面であっても、その崩壊の危険、そのままほうっておきますと道路とかその他ライフライン等の公共施設等に被害のおそれがある、そういうことを前提といたしまして、こうした、今申し上げました制度についても、今回の中越地震におきましては適用をさせていただくということにした次第でございます。
ちなみに、宅地擁壁への対策を行う特例は、阪神・淡路大震災、それから芸予地震に続きまして三例目でございます。
○高橋委員 ありがとうございます。
今お話をしていただいたんですけれども、整理の都合で、国土交通省が昨年の十二月二十日にこの特例措置について説明する報道資料を出しておりますので、私は三点あると思うんですね。「宅地擁壁等の被害が多数生じていること」「自力での再建が困難な状況となっていること」、これは国土交通省の文章ですから。「周辺の住家及び各種公共施設等に甚大な被害が生ずるおそれがあること」。
今お話しいただいたように、人工のものや個人のものであっても、おそれがある、公共のものに影響があるということ等、やはりこの三つが非常に私、ポイントだと思うんです。つまり、自力では再建できない、被害が甚大である、そして公共等に影響がある。これは個人の問題でも、個人の住宅でも同じことが言えると思うんですね。住宅が一つの地域をつくり、コミュニティーをつくり、公共性がある、個人のものであるけれども公共性があると述べたのも、被災者生活再建支援法に基づいて設置された旧国土庁のあり方検討委員会の報告でありました。
こういう要素があれば、個人の宅地でも支援ができる。なぜ住宅ならできないんですか、総理。
○村田国務大臣 今、国土交通大臣から御説明いたしました件でございますが、私たちも知恵を絞りまして、何とかぎりぎりのところで、そうした危ない箇所、一番大事なメルクマールは公共性ということですね。今委員もおっしゃいました。そこで、私どもは、そういう人工の擁壁あるいは急傾斜地等についても国の力で直す、こういう措置を講じたわけでありまして、そこのところは、公共性があるかどうかということが大きく判断の材料となった措置であるというふうに考えております。
住宅本体になぜできないかということでございますが、先ほどの御答弁の繰り返しになりますけれども、私どもは、そういった私有財産については税金を使うのはいかがかという観点からいって、そのぎりぎりのところで、住宅に関しての再建のためのぎりぎりの支援策としてああした拡大を認めた、こういうことになっているわけでございます。
○高橋委員 メルクマールは公共性とおっしゃいましたけれども、ですから、先ほど私が言ったように、また大臣も認めたように、住宅は個人の住宅であるけれども公共性があると、これまで認めてきたことじゃないですか。何でまたそこに戻るのか。認めてきたのに、住宅だけやれないというのは、それはどうしても理屈が通じない。
それで、今ぎりぎりのとおっしゃいました。ぎりぎりの支援をやっていると。私、そのぎりぎりのラインの話なんですけれども、やはり歴史的に見ると、これはもうできないというラインというのはどんどん変わってきている、国民の中で変わってきている、そう思うんですね。
今当たり前になっている災害弔慰金制度ですら、最初は、個人に直接支援するのはどうかと拒んできたはずであります。当時の議事録などを見ますと、これは昭和四十一年の参議院の災害対策特別委員会の議事録ですけれども、「個人災害に対して国がどこまでめんどうを見るかという問題、これは非常に広範な大きな問題であります。」云々として、あくまで融資が基本だというふうなお話をされて、そういう時代から始まって、今は当たり前の制度になっている。
なぜか。これは先輩議員の皆さん、大変よく御存じだと思うんですが、昭和四十二年の八月二十九日の新潟県下越の集中豪雨で両親と二人の息子さんを亡くされた故佐藤隆衆議院議員らが訴えて、実現まで七年かかった。いろいろな方たちとやって七年かかった、著書、その経過を私読ませていただきました。
両親と三人の息子さんが宿泊していた旅館の裏山が崩れて、土石流で押しつぶされてしまった。その中でお一人、次男がわずかな空間で生存していたという描写があるんですけれども、あの新潟の優太ちゃんのことを思い出すような、そういう経過があって、国会に出て、個人災害救済法、いわゆる今の災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律が成立したわけですけれども、このことに関して故佐藤議員は、「個人災害に対する公的給付が行われたということが、本制度の最大の特色であり、画期的意義を有する」、その考え方の基礎として、「個人災害の補てんは個人の責任であるという大原則の修正がある」、このように述べています。
そうして、九八年の被災者生活再建支援法、昨年の居住安定支援制度、市民の大きな運動を背景に、一つ一つ乗り越えてきた。つまり、できないという幅はどんどん狭まってきた。それはいかがですか。そのとおりですか。
○村田国務大臣 私も防災担当大臣として、公共性というその定義といいますか、その概念の幅について、歴史的に全く変わらないものではないというふうには考えておりません。これは、みんなで、そうした、先ほど申しました税金の使い方としての公平性の観点とか、改めて、公共性があるかどうかということについて、時代時代について議論すべきものというふうに考えております。
○高橋委員 変わらないものではないとおっしゃいましたので、今がそのときだと言っておきたいと思います。
大事な点がもう一つあります。この著書の中にも出てくるんですけれども、やはりこういう制度は、市町村が始めたことを国が追認するといいましょうか、国が制度としてしっかり発展させてきたということであります。
昭和四十一年の松代群発地震、個人住宅の補強の材料を市町村が供給していた。これだって個人に対する補助金、個人の財産に補助する、市町村がやっていた。でも、これも、ほっておくと、個人の住宅が破壊されたらいずれ火災が起こるかもしれない、公共に影響を及ぼす、そういうことで特例として認めてきた。
あるいは、今紹介した四十八年の災害弔慰金の制度だって、四十七年に市町村に災害弔慰金補助制度が設けられて、国はそれに補助するという形でやっていた。これが、これではまだ十分とは言えないという理由で、委員長提案、全会一致で弔慰金制度がつくられた。ですから、今全国に広がっている自治体の制度、これがまさに広がっていって、やはり国だってやらなくちゃいけないとなっている、そういうときなのではないかと思うんですね。
続けますけれども、要するに、時代が変われば変わっていくだろうということ、やろうとすればできる、いろいろ言ってやろうとしないんじゃないか、今の段階はですよ。なぜ、ここでは総理お得意のやればできると言わないのでしょうか。
冒頭言いましたように、被害を最小限に抑え、一日も早くもとの暮らしに戻ることができるようにする、これが政治の責任だと思います。新潟の中越地震の被災者から、二十五日の我が党の穀田議員の質問とそれに対する総理の答弁を聞いて電話がありました。自分のせいではない地震によって職を失い、家を失い、お金も借りられず本当に困っている、失業したのはだれのせいでもなく地震のせいなのにと訴えています。
災害によってこれまでの人生を一瞬にして破壊された被災者に、あなた方はあきらめろと言うのですか。この方に対しても自分の責任で何とかしろと言うおつもりですか。喫緊の課題である住宅本体への支援を決断してこそ、政治の責任を果たすことではないでしょうか。総理に伺います。
○小泉内閣総理大臣 先ほど佐藤議員のことを紹介されましたけれども、私も、生前佐藤議員と大変親しくさせていただいておりまして、御家族を災害で亡くされて、それが自分が政治家になるきっかけになったという話、直接伺ったこともあります。災害に対する思い、被災者に支援の手を差し伸べなきゃならないという、それを発言するときのあの佐藤議員の迫力ある、また説得力ある言葉は、今でも私は耳に残っております。非常に精力的な活動をされて、当時は無理だと思われるようなことを実現してきた。
今回のこの災害に対する問題につきましても、やはり地域の事情、異なりますが、それだけに現場の皆さん方の、被災者の実情もそれぞれの地域によって違いますが、今、国会の議論も踏まえ、これから何ができるかという点につきましても、より具体的に、全部事情が違いますので、全体的に何ができるかということは、やはりもっと議論を深めていく必要があると思っております。
○高橋委員 総理、今、無理だというのを実現してきたお話を受けとめてお話しされていますので、ぜひそれをやってほしいなと思うんですね。
その上でも、ちょっと確認したいんですが、細田官房長官に。
一月十七日付の読売新聞で紹介されておりますが、官房長官は十七日の閣議後の記者会見で、被災者生活再建支援法に基づく支援制度の拡充について、「一つの課題だ。政府としても様々な需要に」(発言する者あり)これで最後ですから。「さらに調査をしたい」と述べられました。
調査をいつまでに、どんな調査をやるのか、やるからにはきちっと実態をつかんでいただきたい、これにお答えしていただきたい、これで終わります。
○甘利委員長 官房長官。簡潔にお願いします。時間が終了しております。
○細田国務大臣 私は記者会見でそういうふうに申したわけでございまして、我が地元の島根県でも、先ほど言われた鳥取県と一緒の地震が起きまして、大変に苦労をした経験がございますし、水害も多いわけでございます。そういった被災者の気持ちというものを体して、できるだけ被災者の気持ちに沿うような制度を検討しなさいということで、私は、現に、どういう支出をしたかという証拠書類をそろえさせるような今までの運用は非常によくない、そこで、実際に再建するには一千万円以上かかるんだから、全体として見て、ぱっとお金を出しなさいというような運用改善も指示して、それは現にやっております。
それから、先ほどの、じゃ、どこまで、幾らまで出すのかということについては、検討をしなさいということを言っておりますので、今回の震災も含め、これまでずっと起こっております災害も含めて調査を進めるべきであると考えておりますし、現に進めております。
○高橋委員 終わります。