国会質問

質問日:2019年 6月 5日 第198国会 厚生労働委員会

子どもの死因究明

保育死亡事故なくせ/検証制度具体化早く/高橋氏

 高橋千鶴子議員は5日の衆院厚生労働委員会で、保育施設での子どもの死亡事故を繰り返さないよう、子どもの死亡登録・検証制度(CDR)の具体化を急ぐよう求めました。
 CDRは子どもの全死亡事例を登録し、詳細に検証することで、同様の死を防ぐ制度。
 認可外保育や家庭的保育も含む保育施設での死亡事故は2017年までの14年間で195件も発生。高橋氏は、保育施設での死亡事故で、施設側が何の予兆や既往歴もなく乳幼児が死に至る乳児性突発死症候群(SIDS)だと主張し責任を逃れる事案が後を絶たないと指摘。厚労省の浜谷浩樹子ども家庭局長は、SIDS防止強化月間の取り組みを強調する一方、うつぶせ寝による窒息死はゼロ件だと答えました。
 高橋氏は、赤ちゃんの急死を考える会の遺族らが保育者から聞き取りをするなどして真相解明し、裁判でも、死因がSIDSではなく、うつぶせ寝による窒息死だと確定した事例を示し、実効ある指導監督体制や第三者による検証委員会が必要だと述べました。
 根本匠厚労相は「CDRの実現を目指し研究や省内での検討をはじめている」と答弁。高橋氏は「(保育死亡事故の)遺族は、犯人探しでも、裁くことでもなく、何があったかを知りたいと思っている」と述べ、きちんと検証し、同じような事故が起きないようにする体制づくりを重ねて求めました。
( しんぶん赤旗 2019年06月16日付より) 

―議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 早速ですが、資料の1を見ていただきたいと思います。二月三日付の朝日新聞です。
 子供の死亡登録・検証制度、いわゆるチャイルド・デス・レビューについて、二月二日、都内で国際シンポがあり、子の死亡例、四人に一人は防げた可能性があると発表があったといいます。
 本文を少し読みますが、「CDRは、子どもが死亡した時、その数をすべて把握し、予防できた可能性があったかどうかという観点から複数の機関と専門家が検証し、同じような死を可能な限り減らそうとする取り組み。欧米各国では実践され、成果を上げている。」と書いてあります。
 日本小児科学会の沼口医師らのチームで二〇一四年から二〇一六年の十八歳未満の死亡事例約二千件を分析した、中には、乳幼児突然死症候群、SIDSなど、不詳とされているものが二百八十五件含まれていたといいます。
 今回、附則に子供の死因について情報収集、管理、活用等の仕組みを検討する旨盛り込まれた死因究明法案が参議院から本委員会に付託をされております。児童虐待防止の法案審議でも必要性が議論されました。
 大臣、このチャイルド・デス・レビューの具体化を急ぐべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○根本国務大臣 委員御指摘のように、死因究明推進等推進基本法案の附則、あるいは二十九年の児童福祉法改正の附帯決議で導入を検討することとされておりますし、成育基本法においても規定をされております。
 厚生労働省としても、予防可能な子供の死亡の再発防止を図るために、その導入について検討する必要があると考えています。このため、平成二十八年度から、チャイルド・デス・レビュー制度の確立に向けた調査研究を実施しております。
 また、平成二十九年十月には、省内での検討を進めるため、関係部局による省内プロジェクトチームを立ち上げ、有識者からのヒアリングや論点整理を進めております。
 今後とも、このような取組を更に進めて、制度の導入について検討していきたいと考えています。

○高橋(千)委員 比較的はっきりとした答弁であったかなと思います。省内でも検討を始めている、それから調査研究事業も立ち上がっているという報告でありました。
 今、シンポジウムのことを紹介したように、小児科学会の中に子どもの死亡登録・検証委員会というのが既に立ち上がっていて、パイロットスタディーの報告は、二〇一六年に既に群馬、東京、京都、北九州のデータをもとに報告されているんですけれども、その時点で、予防可能性が中等度以上は全小児死亡事例の二七・四%あった、しかも、先ほど述べた不詳死に関する再評価で、四十六例のうち真に原因不明と判断された例は五例のみであった、四十一例では限られた情報の中で真の不詳死とするには解決すべき疑義や不備が存在していたというふうに指摘をされているのは非常に重要だと思っております。
 このためにも、きちんと全ての子供の死亡事例について登録をし、検証して予防可能性を高めていく、防げる死であったということも十分に指摘をされていると思いますので、重ねて進めていただきたい、このように思います。
 そこで、きょうは、保育施設の死亡事故について質問したいと思います。
 資料の2を見てください。昨年七月の教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議の年次報告であります。
 上の段の円グラフは、睡眠中の死亡事故が全体の七割であることを示しています。そのうち、よく言われるうつ伏せ寝は十一件なんですけれども、残りも体位不明などとあって、別にあおむけが多いという意味ではないわけですね、不明ですから。まず、それが言えると思います。
 それから、下の段は死因別です。これは、いわゆるSIDSは二件にとどまっています。窒息及び溺死、各一件。だけれども、最も多い六六%はその他なんですね。その他の内容については、不明、司法解剖中、SIDSの疑いとあります。
 これを考えてみたいんですけれども、ちょっとめくっていただいて、資料の3、これは後でもう一回やりますけれども、赤ちゃんがすやすやしているポスター、突然死を減らしましょうというポスターです、その後、ガイドラインが出てくるんですけれども。この中で、乳幼児突然死症候群の診断は剖検及び死亡状況調査に基づいて行う。フローチャートを見ていただいても、法医解剖又は病理解剖、いずれにしても解剖する必要があると指摘をしている。やむを得ず解剖がなされない場合及び死亡状況調査が実施されない場合は不詳とする。
 言いたいのは、結局、やむを得ず、要するに体制が整わずに原因がわかっていない部分も多いのではないかということなんです。
 SIDSの定義並びに診断の手引作成に当たった名古屋大学の戸苅、加藤両氏らによれば、一般医師を取り巻く諸般の事情と、その受皿である監察医制度が全国レベルで普及されていないこともあって、一部の大都市を除いては実際に機能していないのが現状である、その結果、我が国では衛生統計学的にも本疾患の実数の把握すら困難な状態にあるのであると指摘をしています。
 改めて、この指摘を受けとめて、伺いたいんです、その他が多いのはなぜか。こうした監察医の体制といった事情は、今言われたような事情が反映していると思われますが、いかがでしょうか。

○浜谷政府参考人 お答えいたします。
 まず、子供たちが安全で質の高い保育を受けられる体制を整えることが重要でございます。御指摘いただいておりますとおり、保育施設等で重大事故が発生した場合には、事故の再発防止のための事後的な検証に資するように国へ報告することとなっておりまして、内閣府のホームページに事故情報データベースを掲載いたしますとともに、年次報告を取りまとめております。
 配付していただいておりますけれども、御指摘のとおり、三十年七月の年次報告によりますと、二十七年から平成二十九年における保育所等での死亡事故三十五件の死因別の内訳は、SIDS二件、その他が二十三件と最も多くなっております。なお、その他の中には、不明のほかに、司法解剖中、あるいはSIDSの疑いも含まれております。
 また、御指摘いただいておりますけれども、厚生労働省といたしましては、正確な診断に資するよう、平成二十六年にSIDSの診断ガイドラインを策定いたしまして、乳幼児の鑑別診断を行う際は、SIDSと窒息又は虐待とを鑑別するために的確な対応を行うことを求めております。
 また、監察医制度でございますけれども、これは、犯罪性はないと判断されたが死因不明の死体につきまして、法医学の専門家である監察医が検案、解剖して死因を明らかにすることにより、公衆衛生の向上等に資することを目的とする制度でございまして、現在、東京二十三区、大阪市、神戸市が同制度を設けております。他方で、監察医制度のない地域では、警察から嘱託を受けた医師が死体の検案を実施している、こういうような現状であるというふうに認識しております。

○高橋(千)委員 今の答弁は、私が読み上げた指摘のように、本当に一部の都市でしかそういう体制が整っていないのだということだと思います。ですから、これは別に子供の問題に限らず、監察医制度の体制が不備だということは指摘をされている問題だと思うんですが、これを整えていくことと同時に、やはり、そうであればあるほど、死因を単純に決めつけてはいけないということが更に言いたいわけなんです。
 もう一度資料の3、赤ちゃんすやすやのポスターに戻っていただきたいと思うんですが、十一月がSIDS強化月間ということで、それをアピールするポスターなんです。「睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう」「睡眠中に赤ちゃんが死亡する原因には、乳幼児突然死症候群という病気のほか、窒息などによる事故があります。」とあります。SIDSとは、続けて読みますが、「何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なります。」と強調しています。本当にそうでしょうか。
 私自身も、二〇一〇年ごろから何度か具体の死亡事故を取り上げてきました。これまで、保育園側が突然死だ、SIDSだと主張すれば、病死だから園側の責任はないとして、保護者側と死因や責任の所在を争う事件が幾つもあったと思います。
 現在はどうなんでしょうか。知見が積み上がってきました。今は、うつ伏せ寝による窒息死もあると認めているのでしょうか。もしそうなら、どのくらいあるのか、お答えください。

○浜谷政府参考人 お答えいたします。
 まず、先ほど、SIDSの診断ガイドラインにつきましては、平成二十六年と申し上げたかもしれませんけれども、平成十六年でございます。訂正いたします。
 今の御質問でございますけれども、保育施設等で発生した事故につきましては、死亡事故や治療に要する期間が三十日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故については国へ報告を行うことといたしております。
 この報告の際でございますけれども、SIDSにつきましては医療機関等での確定診断が出されたときのみ記載することとしておりまして、SIDSの疑いの場合はその旨を区別して報告することとしております。疑いの場合には、死因としてはその他に分類をいたしております。したがいまして、これによりまして、保育施設で死亡事故が起こった場合でございますけれども、確定診断がなければ死因としてSIDSを主張することは困難になっているものと考えております。
 また、死亡事故等の重大事故が発生した場合でございますけれども、地方自治体におきまして事後的な検証も行うことといたしております。SIDSや死因不明とされた事例につきましても、事故発生時の状況等につきまして検証を行うことといたしております。
 今後とも、死亡事故等の報告、検証を続けますとともに、保育関係者に対しまして、先ほど御指摘がありましたけれども、毎年十一月のSIDS対策強化月間等を通じまして、正しい知識の普及を進めたいと考えております。
 なお、重大事故が発生した場合の国への報告の仕組みが整備されました平成二十七年度以降でございますけれども、発生時の状況がうつ伏せ寝の状態だった事例で、死因が窒息とされた事例は報告をされておりません。

○高橋(千)委員 おりませんという答弁でありました。だからおかしいと言っているんです。
 強化月間をやるのは構いません。だけれども、睡眠中、うつ伏せ寝は気をつけてねと言っておきながら、これは病気だとなぜ言い切れるのかということを問題にしているんです。
 これは本当に大事なところで、大臣に伺いたいと思うんですけれども、これは厚労省にも大いに責任があると思うんですね。施設側にはもうマニュアルがあるんですよ。乳幼児突然死症候群ですと言えば、警察も行政もフリーズしてしまって、施設側の責任が問えなくなる。
 赤ちゃんの急死を考える会などが、行政が本来やるべき調査をしてくれないためにみずから保育者からの聞き取りをするなどして真相を究明し、国にも働きかけて、認可外の施設からも報告書をとることや検証委員会を設置させる、そうやって動かしてきました。
 私が二〇一〇年三月に取り上げたのは、大臣の地元福島県郡山市の無認可保育園での一歳女児、りのちゃんの事件です。私は、本委員会で、直接かかわった保育士さんが証言した陳述書を読み上げました。うつ伏せ寝にして、その上にバスタオルをすっぽりかけて、厚手の毛布で頭の上から足先まで覆って、その上、円柱形の重たい枕を二つもおもしにしたんです。証言では、副園長から、警察が調べに来たら、五分に一回は様子を見ていたと言いなさい、横向きになっていたと言いなさいと指示されて、うそをつけと言われたことで、もう本人はショックで、ぐあいが悪くなったんです。
 でも、結局、仕事をやめたけれども、勇気を持ってこのことを証言してくれたんです。だから、この事件は、一審で勝訴し、二〇一五年三月に、仙台高裁で確定しています。突然死ではなく、うつ伏せ寝による窒息死であると確定をしているんです。先ほど事例はないと言いましたが、裁判では確定をしています。
 さらに、資料の一番最後のページを見てください。最後のページというか、ごめんなさい、最後、二枚なんですね。
 国民生活センターが事例を紹介しています。昨年八月に公表した、認可外保育施設での乳児の窒息死亡事故。この事件は、亡くなったのは生後四カ月の男の子で、お姉ちゃんもいて、二人でお試し保育をやって、お試し保育の後、正規に預けられて、一週間たって亡くなったんです。
 一審では、死亡の原因はSIDSによるものとして、請求は棄却されました。しかし、控訴審で大阪高裁が、これは窒息死だと認定をしたんです。実証実験をやって、園側は、これは枕の専門店の枕なんだからそんなはずはないと言うんですけれども、柔らか過ぎて、実験をすると二・五センチも顔が埋まるんです。なので、フェースダウン、窒息死と認定をした。事実を詳細に検討した上で死因を窒息死と判断した点において、参考となると評価をしている。まさに国民生活センターが参考となるとして裁判例を紹介している、こういうこともあるんですね。
 こうした裁判例も積み重なっている中、一方的に突然死だと決めつけることはもうできない、うつ伏せ寝を放置したことによる窒息死もあるということは認めますよね。大臣、お願いします。

○根本国務大臣 子供たちが安全で質の高い保育を受けられる体制を整えることが重要であります。保育施設などで重大事故が発生した場合に、事故の再発防止のための事後的な検証に資するように国へ報告することになっております。内閣府のホームページに事故情報データベースを掲載するとともに、年次報告を取りまとめております。
 我々は、SIDSに関する調査研究や普及啓発活動などの取組を進めていきたいと思います。例えば、平成三十一年度に開始することにしていますが、我が国の至適なチャイルド・デス・レビュー制度を確立するための研究において、日本での至適なCDR制度を目指して、チャイルド・デス・レビュー制度を目指して、多機関が連携した登録、検証システムの構築とデータ収集及び評価の検討を行っておりますので、先ほども省内でプロジェクトチームを立ち上げて論点整理を進めているということを申し上げましたが、このような取組を更に進めて対応していきたいと思います。

○高橋(千)委員 厚労省も、本当に真面目に検討会をやってきたんですよ。二〇一五年五月十二日の第五回の重大事故の再発防止策に関する検討会では、赤ちゃんの急死を考える会からプレゼンがあったんです。さいたま市の認定施設で一歳七カ月の長女を亡くした阿部さんが報告をしています。
 さいたま市は、最初は調査しないと言った。でも、その阿部さんたちの訴えに応えて、今度はお昼寝中に抜き打ちの立入検査をする、そこまで市を変えたんですよ。そして、こうした事件にたくさんかかわってきた寺町東子弁護士が具体例を四例紹介して、参加者一同、胸を痛める、こんなことがあるのかと驚きを隠せなかった。
 私が一番驚いたのは、外傷があって、顔が変わっていて虐待が疑われるような事案でさえも、SIDSだと施設側が平気で言い逃れをしてきたんだと。当然、これは実証されて、そうじゃないということがわかるわけなんですけれども。だからこそ、実効ある指導監督体制や第三者による検証委員会が必要なんだということを重ねて指摘したい。
 大事なことは、保護者自身が言いたいのは、あんな施設に預けた自分が悪いとみずからを責めています、だからこそ、きちんと検証してほしいし、犯人捜しだとか、保育者の責任にしたいとか、裁きたいとかそういうことではない、何があったかを知りたいんです。その声に応えていただきたいと思います。
 資料の5を見ていただくと、事故発生時の担当職員の動き、一番多いのが赤で、至近距離で対象児を見ていたというのが一応多いんですけれども、三割くらいは離れていて見ているとか、見ていなかったのが二五%もあるんですね。また、右側を見ると、ほかの職員は、一番多いのが、見ていなかったです。六五%、七割くらい。しかも、その見ていなかったの内訳を見てください。担当以外の職員がいなかったと。見ているも何も、職員一人だったということなんです。これを本当にどう見るか。
 今、深刻な人手不足が言われています。先ほどの大阪の事案も、一人は勤めて一カ月目、一人は六カ月、いずれも無資格者です。間仕切りがあるのに、そのうち一人は離乳食をつくっていて、当然、一人しか手が回らなかったんです。だけれども、認可外保育施設であっても、指導監督基準では、保育者は二人を下回ってはならないとあります。そうですよね。だとすれば、こんなことは絶対あってはならないんです。どんなに人手不足で大変だといっても、必要な体制をつくらなきゃいけない。そのために国がきちっと支援をしなければならないんだということ。
 もう少し問いがあったんですけれども、残念ですが、そのことを指摘して、時間が来たので、終わりたいと思います。

―資料ー

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