質低下招く/高橋氏が主張/衆院地創特委
日本共産党の高橋千鶴子議員は25日の衆院地方創生特別委員会で、放課後児童クラブ支援員の配置基準(2人以上)を「参酌(参考に)すべき基準」に緩和する政府の第9次地方分権一括法案は学童保育の質の低下を招くと批判しました。
高橋氏は、同支援員配置基準の緩和は「児童福祉法が定める子どもたちの安全な生活の場が維持できるのかが問われる重要な問題だ」として、厚生労働省の社会保障審議会の専門委員会が議論してきた「質の確保」とも矛盾すると批判。基準の「参酌化」を求めた自治体数をただしました。内閣府は「2県」だけだと認めました。
高橋氏は、配置基準の維持や質の確保を求める意見書を11道県、36市町村の議会が採択し、「参酌化」を求める自治体も最大の理由は「人の確保」の問題だったと指摘しました。その上で、自治体立や指定管理などのクラブに一人も正規職員がいない自治体が多数あるとの愛知県内の調査結果を紹介。勤務年数や研修で昇給などを図る「処遇改善事業」を知っていても実施しない理由として、非正規のなかで差別化は図れないとの声があるとして、8時間勤務が当たり前の正規職員の職場に変えるよう国が責任を果たせと迫りました。
高橋氏は「義務教育の小学校は足りないから入れなくていいというのは絶対許されないのに、なぜ放課後児童クラブは自治体任せなのか」と追及。片山さつき地方創生相は「指摘の趣旨も分かる。質を維持するのは当然のことだ」と述べました。
( しんぶん赤旗 2019年04月27日付より)
―議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
質問の機会をいただき、ありがとうございます。
私は、放課後児童支援員の、従うべき基準から参酌化をすることについて質問いたします。
まず、片山大臣に伺います。
なぜ、放課後児童クラブについて、一括法の中で審議をするのかということです。
児童福祉法には、第一条、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、」と定められています。放課後児童クラブ運営指針においても、子供の視点に立ち、子供の最善の利益を保障し、子供にとって放課後児童クラブが安心して過ごせる生活の場となるように、放課後児童クラブが果たすべき役割を再認識し、その役割及び機能を適切に発揮できるような観点で内容を整理すると示されています。
放課後児童支援員をどのように配置するのかは、子供たちの安全な生活の場が維持できるのかが問われる重要な問題です。規制緩和、地方からの提案という切り口だけで、何の関連もないほかの法案とまとめていいはずがありません。大臣の認識を伺います。
○片山国務大臣 一括法ということでございますが、今回の法案も、前政権時代の平成二十三年の第一次地方分権一括法案から過去八次にわたる一括法と同様に、地方公共団体への事務、権限移譲、義務づけ、枠づけの見直しなどを通じて、地域の自主性及び自立性を高め、みずからの判断と責任において行政を実施する仕組みに改めるという同一の趣旨、目的を有するものでありますので、一括法として統一的に見直すことが適当であると考えております。
また、本法案は、提案募集方式という共通の枠組みに基づいて措置をすることとした改正事項を盛り込んでいるところでございまして、関係する法律を個別に改正するよりも、一括して改正案を取りまとめることによって、改正の趣旨と全体像がわかりやすくなるものと考えております。
委員御指摘の放課後児童クラブに係る児童福祉法の改正につきまして、御指摘のような児童福祉法の法の目的、趣旨を何ら、意図するものではございませんが、このような考え方から、今回、一括して本法案に盛り込んでいるというところでございまして、ぜひその点は御理解を賜りたいと思いますが、今後とも、改正する法律の趣旨、目的及び改正の経緯をきちっと検討して、それに鑑みて、統一的に見直すことが適当であるかを検討しつつ法案を提出してまいるというのが我々の方針でございます。
○高橋(千)委員 第八次であろうが、提案募集があったからといって、これを同じ切り口でやるものではない。せっかく児童福祉法の趣旨が何ら変わるものではないとお答えをいただいたので、そうであれば、やはりそのものずばりで議論しなければだめだということを重ねて指摘をしたいと思うんです。
新制度に移行し、配置基準などが定められたのは二〇一五年のことです。何か基準といえば、がんじがらめの細かい基準があり過ぎるというイメージを持たれると思いますが、いわゆる畳一畳という面積要件さえも何も基準がなかったところから、基準をつくれ、指導員の国家資格をつくれと全国学童保育連絡協議会などが運動し、ようやくガイドラインができてからもまだ十二年という大変短い歴史です。しかも、従うべき基準は、放課後児童支援員の、四十人以上の場合は複数配置、たった一つしかないんです。たった一つ。つまり、あとは全部参酌化されてしまった。そういう事情があるのだということです。
社保審児童部会放課後児童対策に関する専門委員会の昨年七月の中間取りまとめでも、児童福祉法第一条、子供の最善の利益をいかに実現していくか、今度は質の確保という議論をしていたと思います。矛盾しないでしょうか。厚労副大臣に伺います。
○新谷大臣政務官 お答え申し上げます。
今回の措置は、従うべき基準によりまして人材確保が困難といった地方からの要望を踏まえ、全国一律ではなく、自治体の責任と判断によりまして、質の確保を図った上で、地域の実情に応じて運営を行うことを可能とするものでございます。
また、基準につきましては、市町村が地方議会の議を経て条例により制定するものでございます。厚生労働省としましては、従うべき基準が参酌化された場合であっても、自治体においてこの基準を十分参酌した上で、自治体の責任と判断によりまして、地域の実情に応じた適切な対応が図られるものと考えております。
また、厚生労働省としましては、放課後児童クラブの質が確保されますよう、放課後児童支援員に対する研修によりまして支援員の質の向上を図ること、また、処遇改善を推進すること、そして、放課後児童クラブの活動内容につきまして、質の向上の観点からの評価を推進してまいること、放課後児童クラブの好事例の普及、展開をすること、放課後児童クラブを巡回しまして育成支援の質の向上を図るアドバイザーの市町村への配置等を行うこと、こういったことを通じまして、放課後児童クラブの質の確保にしっかり努めてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 結局、自治体の提案だから、かつ、自治体が条例を決めてやるんだから、あとは責任を持ってということで、全部自治体任せにしているんですね。何か起こったときの責任も含めて自治体任せにしている。これは、この児童福祉法にのっとって、ようやっと積み上げてきた放課後児童クラブの歴史に対しても本当に逆行する中身だと思います。
まず、確認をしますけれども、地方三団体からの要望というのは承知をしています。放課後児童支援員の複数配置そのものの義務化をやめようという自治体は、一体どのくらいあったんでしょうか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
地方からの要望、提案でございますが、これは、各自治体が個別で提案するもの、あるいは県や市町村が共同して提案するもの、あるいは知事会、市長会、町村会が共同して提案するものなど、さまざまな方式がございます。
このうち、県、市町村からの提案としましては、放課後児童クラブに常に配置すべき支援員の人数が一律に決められていることから、地域の実情に応じたクラブの設置ができないといった支障による提案が二件寄せられております。
また、知事会等の共同提案としましては、放課後児童クラブについて、地域の実情に応じた柔軟な職員配置が認められるべきとしまして、平成二十九年の提案募集におきまして、これは地方三団体でございますけれども、さまざまな自治体からの要望を踏まえ、それぞれ機関決定の上、放課後児童クラブに従事する職員の資格と員数に関する従うべき基準の参酌化を求めているところでございます。
○高橋(千)委員 個別に答えていただいたのは二件だけだと思います。
では、逆に、従うべき基準の維持、質の確保を求める意見書、上がっていると思いますが、どのくらい上がっているか承知していますか。
○山野政府参考人 通告にございませんでしたので、手元に資料がございません。承知してございません。
○高橋(千)委員 今私たちが確認しているだけでも、十一道県三十六市町村上がっています。
こうした、結局個別に、いろいろな事情があるところは、それは事情を聞いて対応すればいいんですよ。だけれども、三団体全部がみんな、その三団体の下の市町村がみんな求めているかのように言ったらだめなんです。実際に議会では、こうして、維持してくれ、守ってくれという意見が出ている。これを直視するべきだと思います。
そこで、昨年五月十一日の地方分権有識者会議第七十一回提案募集検討専門部会において、自治体からのヒアリングをやっていますよね。これはたくさんあるので読みましたけれども、例えば、北海道江別市の三好市長は、支援員、補助員が慢性的に不足し、募集しても応募がないとか、保育士の有資格者は保育所にとられちゃうとか、そういう深刻な実態をプレゼンして、各クラブに支援員が一名しか配置できない状況もある、あるいは、支援員が配置できなければクラブを閉鎖に追い込まれる、そういうことを言っています。
ただし、その上で、地域の実情に即した従うべき基準の見直しは必要であるが、質の低下を招くおそれがあるものとなるのであれば、子ども・子育て支援制度の趣旨に反するとして、正規雇用を可能とするような抜本的な処遇改善と財源措置を提案しているんです。これがやはり基本的な自治体の考えではないでしょうか。
参酌にしてほしいという自治体の最大の理由は、人の確保であります。厚労省の処遇改善事業やキャリアアップ処遇改善事業をやっていると何度もお答えになっていますが、どのくらいの実績があるのでしょうか、具体的にお答えください。
○新谷大臣政務官 お答え申し上げます。
放課後児童支援員等の待遇を改善すること、これは、人材確保を図るとともに、放課後児童クラブの適切な運営を図る観点からも大変重要なところでございます。
委員御質問のところでございますが、平成三十年度におきまして放課後児童支援員等処遇改善等事業を実施している自治体数は三百十市町村でございまして、全クラブ実施自治体に占める割合は一九・一%でございました。
また、放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業を実施している自治体数、これは三百三十二市町村でございまして、全クラブ実施自治体に占める割合は二〇・五%となっているところでございます。
また、放課後児童支援員の処遇改善におきましては、人員確保を始めとしまして、長く勤務いただく環境づくりのために処遇改善は重要であると考えております。
多くの自治体におきましてこの事業を活用していただけるよう、全国主管課長会議を始め、文科省との連携のもと開催している全国五ブロック説明会などで、あらゆる機会を通じて働きかけをしてまいりたいと考えております。
また、こういった事業は、補助に関しては子ども・子育て支援交付金から交付されているところでございまして、事業ごとの実績額、これは算出できないところがございます。
○高橋(千)委員 二割に行かない、そういう状態ですよね。極めて少ないと思います。先週の委員会でも、少ないという答弁が厚労省の政府参考人からされていたと思います。
その理由は何だと思いますか。
○新谷大臣政務官 お答え申し上げます。
まだこの制度自体が始まったばかりということもございまして、これからしっかりと周知を図ってまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 つかんでいないということだと思うんですね。
例えば、岐阜県の春闘共闘会議が自治体アンケートを行った中では、処遇改善事業は知っている、だけれども実施していない。なぜかという理由を聞いたところ、市の臨時職員としての雇用をしているので差別化しにくい、つまり誰かを選ぶということができない、委託のため処遇については一任しちゃっている、あるいは、十八時半を超えた勤務をできる人がいない、それ以上の開園が条件になっているので、それに合う人がいない。こういうふうなことで、処遇を改善しようとしても、もともと非正規中心の職場のために、誰かを常勤としてキャリアアップという差別化はできない、これはまさに負のスパイラルになっているんです。この実態を変えなければ、もうどんどん緩和していく以外にないわけなんですね。
それで伺いますが、常勤と非常勤の割合がどうなっているんでしょうか。細切れ雇用の組合せという場合があると思うんですが、それぞれの実働時間、日数が一体どのくらいなのか。それから、正規職員がゼロの自治体もありますけれども、把握していますか。
○新谷大臣政務官 お答え申し上げます。
平成三十年度における常勤職員と非常勤職員の割合につきましては、常勤職員が約二五%、非常勤職員が約七五%と承知をしておるところでございます。
また、それぞれの実働時間、日数及び正規職員が配置されていない公立のクラブ、これらに関しましては、把握をしてございません。
○高橋(千)委員 今、実働時間についても、通告してあったけれども、把握していないというお答えでしたか。ごめんなさい、聞き逃した。
○新谷大臣政務官 再度お答え申し上げます。
それぞれの実働時間に関しても把握をしておらないところでございます。
○高橋(千)委員 そういうことなんですよ。つかんでいただきたいなと思うんです。
結局、処遇改善のためにいろいろな事業をつくりました。五年経験した方、十年経験した方、階段のようにキャリアアップしていこうと。だけれども、そもそも非常勤、非正規が圧倒的に多くて、そして細切れの、週三日だけよとか、一日、午前中だけよとか、そういう中でやりくりをしているのが実態なわけですよね。そうしたら、そこからキャリアアップするというところにつながっていかないわけです。
例えば、愛知県の場合は大変、正規職員がゼロの自治体が多いです。名誉のためにイニシャルで言いますけれども、O市、三十四カ所のクラブが自治体立なんですけれども、非正規が二百七人で、正規はゼロです。I市、指定管理のみしかありません、五十八クラブ、非正規が五百五十八人で、正規はゼロです。K市、自治体立が三十一クラブ、非正規が百四十五人いますが、正規はゼロです。T市、自治体立は二つしかなくて、非正規三十人で、正規職員はゼロです。指定管理が六十四クラブあって、非正規五百三十六人で、正規はゼロです。これはほんの一部でしかありません。まだたくさんあります。
こういう実態の中で、今の処遇改善というだけでは、事業を当てはめるだけでは手を挙げるところがないし、人手不足が解消できるわけがないと思いませんか。研修に行けない、送り出してやる体制がない、研修を受けても賃金はふえない、現場は悲鳴が上がっています。
一昨年、山形市と天童市の児童クラブを、私、視察しました。あらゆるパターン、学校の中の教室や学童専門の公民館、すばらしい公民館がありました。それから、学校の校舎と校舎のすき間にプレハブを建てているところ、あるいは昔ながらのプレハブ、マンションの一室、さまざまなパターンを見て、専門のところが一番理想だなと思ったんですけれども。
ただ、その狭い中でも、やはり自治体がガイドラインの基準に合わせて、ともかく待機児童をつくらない、そうやって増設をしてきたという、これは天童市の姿勢なんですが、これはすばらしいと思いましたし、そういう中で、どこでもベテランで情熱的な支援員が誇りを持って子供たちに接しているんです。だから、子供たちの表情もとてもいいですし、満足をしている。
でも、若い男性職員が寿退社、これは逆の意味であって、結婚すれば暮らしていけないからやめていく。今頑張ってやっている自分たちがいなくなったときはもう引き継ぐ人がいないだろう、あと何年もつかという訴えもあるわけなんです。
ですから、抜本的な見直しをするべきなんです。準備の時間も含め八時間労働が当たり前、正職員としてきちっと見ていく条件をつくっていく、それに見合った処遇を保障できるよう、国としての責任を果たすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○新谷大臣政務官 お答え申し上げます。
放課後児童支援員等の勤務時間につきましては、子供の受入れ準備や打合せ、育成支援の記録作成等、開所時間の前後に必要となる時間を前提として設定されることが求められております。一義的には、各クラブにおきまして開所時間を考慮して決定をされるもの、そのように認識をいたしております。
なお、放課後児童クラブの職員の待遇を改善することは、人材確保を図るとともに、放課後児童クラブの適切な運営を図る観点からも大変重要なところでございます。
厚生労働省におきましては、常勤、非常勤にかかわりなく、先ほどもちょっとお話しさせていただきました、平成二十九年度から放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業を推進しているところでございまして、引き続き、このような取組を通じて放課後児童クラブの職員の待遇改善に努めてまいりたいと考えております。
なお、先ほども申し上げさせていただきまして、委員からも御指摘ございましたが、この処遇改善は始まって日が浅いところがございまして、一部の市町村での実施にとどまっているところがございます。低い実施率ということはよく認識をしておりまして、多くの自治体でこの事業を活用していただけるよう、全国主管課長会議を始めとしまして、しっかりと文科省との連携のもと、あらゆる機会を通じて働きかけをしてまいりたい、そのように考えております。
○高橋(千)委員 最後に片山大臣に、今の議論を聞いていただいたと思うんですが、感想的な発言でよろしいですので、一言お願いしたいなと思います。
自治体からの要望といっても、これはやはり特別に議論するべきだと私が指摘をしました。そして、やはり基準を維持してほしいという自治体の意見書の方が多く上がっているんだということもお話をしました。
例えば、二〇一七年八月二十九日の朝日新聞で、保育問題の専門家としてよく知られている淑徳大学の柏女霊峰教授がこんなことをおっしゃっています。「保育園の待機児童が解消しないなか、当然のように数年後には学童保育もパンクする。」これはそのとおりだと思うんですね。
私たちは本当に、学童保育と運動してきたときに、小学校は義務教育だから、足りないから入れなくていいということは絶対許されないわけですよね。なぜ放課後の子供たちについては自治体任せで、待機児がいてもどうにもしないんだろうかということをすごく疑問に思っていたんです。
そういうところから、今こうやってつくってきたわけですよね。保育所に入れないお母さんたちが、せめて学童保育はちゃんと入って、仕事ができるようになりたいなという声も上がっている。その声にやはり応えなくちゃいけないんじゃないかと思いますが、もう時間が過ぎていますので、一言。
○松野委員長 申合せの時間が経過をしておりますので、簡潔にお願いします。
○片山国務大臣 委員は私と同い年でございまして、その育った子供の環境、時代感覚も同じでございますので、あの当時、学童保育は、働いているお母さんの家もなかったんですけれども、まさに今の状況を考えて、御指摘の趣旨もわかりますし、質を維持するというのは当然のことでございますので、こういった改革、地方分権の中で、こういったことをしても実際の現場においてはきちっと質が維持されることが望ましいという意味では同じであると思っております。
以上です。
○高橋(千)委員 終わります。