国会質問

質問日:2019年 4月 23日 第198国会 本会議

障害者雇用促進法改正案審議入り

当事者参加で議論を/高橋氏が質問/衆院本会議

 障害者雇用促進法改正案が23日、衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の高橋千鶴子議員が質問に立ち、各省庁の障害者雇用水増し問題への真剣な反省の上に、あらためて障害者権利条約に立ち返って、当事者参加で抜本的な議論を行うことを求めました。
 高橋氏は、雇用率制度について、同法案の障害者の定義にそって発達障害や難病も対象とすべきだと要求。また、内部障害など見た目にわからない障害は、障害者手帳の所持を言い出せない、あるいは申請しないという問題があるとして「障害があっても隠さなくてよい職場環境づくりが必要だ」と強調しました。根本匠厚生労働相は「障害の有無にかかわらず働く方の能力を最大限に発揮し、活躍できる職場づくりをすすめる」と答えました。
 高橋氏は、国や地方公共団体に作成が義務付けられた活躍推進計画に、さまざまな障害の特性に応じた採用試験への配慮や通勤時の支援も盛り込むよう主張。統一した採用試験が初めて実施されたことを受け、障害者の特性に応じた採用試験の課題について認識をただしました。一宮なほみ人事院総裁は「知的障害など障害の特性によってはなじみにくいところがあった」と答えました。
 高橋氏が週10時間以上20時間未満の特定短時間労働者を雇用した事業主に特例給付金を支給するとした点について「10時間未満でしか働けない人にとっては、採用で選別されることにならないか」とただすと、根本厚労相は「具体的な仕組みについては法案成立後、労働政策審議会で議論し、検討する」と述べました。
(しんぶん赤旗  2019年04月24日付より) 

―議事録ー

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、障害者雇用促進法改正案について質問します。(拍手)
 同法は、一九六〇年、身体障害者雇用促進法として制定され、順次改正してきました。障害を理由とした差別の禁止や合理的配慮を定めた二〇一三年改正の際は、障害者権利条約の批准に対応するとされました。
 障害者権利条約第二条は、差別とは、障害を理由とするあらゆる排除とし、第二十七条「締約国は、障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める。」とあります。
 しかし、各省庁の障害者雇用水増し問題は、障害者排除そのものです。これは障害者団体からの指摘ですが、根本厚労大臣の受けとめを伺います。
 検証委員会報告は、意図的ではなかったと結論づけました。しかし、各省庁は障害者雇用の義務を果たさないばかりか、達成できなければ省内で探す、まだ足りなければ、裸眼の視力を用いたり、何年も前に亡くなった人までカウントするなど、悪質かつ共通した手法が見受けられました。それがなぜなのか、徹底した全容解明と検証を行うべきです。
 まず、雇用率制度の対象者について伺います。
 法案で、障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害を含む、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者とあります。ところが、雇用率制度の対象は、身体、知的、精神の手帳等の所持者のみです。難病や発達障害などが対象外なのはなぜですか。
 手帳がなくても、職業生活に相当の制限を受ける方がいること、そうした方々の中に働きたいと望んでいる方も多いことを認識していますか。
 次に、水増し問題を受けての国、地方公共団体に対する措置についてです。
 第一に、手帳などの省令で定める書類によって対象者の確認をすると明記しました。今、働き出した後に手帳を持つ人もふえており、内部障害など、見た目にわからない障害は、手帳の所持を言い出せない、あるいは申請しないという問題があるとの指摘があります。障害があっても隠さなくてよい職場環境づくりが必要だと思いますが、見解を求めます。
 第二に、書類等に疑義が生じた場合、民間企業に対しては立入検査をしますが、国や地方公共団体にはその規定がなく、報告聴取と適正実施勧告で対応するとしています。今回、特殊法人や独立行政法人に対する立入検査規定を盛り込んだのに、国や地方公共団体を含めなかったのはなぜですか。
 立入検査ができない中で、どう実効性を担保するのか、お答えください。
 次に、障害者の採用や定着についてです。
 国や地方公共団体に対し、活躍推進計画の作成を義務づけます。さまざまな障害の特性に応じた採用試験への配慮や通勤時の支援も計画の内容に盛り込むべきです。また、それぞれの能力が発揮できる場面を考え、用意することが必要だと思いますが、見解を伺います。
 今般、統一した採用試験が初めて実施されました。その結果と、障害者の特性に応じた採用試験の課題について、人事院に伺います。
 今度の採用計画が単なる数合わせでなく、職場定着につなげるためには、定員増が必要と考えますが、宮腰大臣に伺います。
 第二に、国や地方公共団体に対して、障害者雇用推進者や障害者職業生活相談員の選任を義務づけました。ただし、両者は兼任でもよいとされ、十分な体制は期待できません。一定の職場経験のある障害者を相談員として思い切った採用を図ることや、相談の実績もある障害者就業・生活支援センターや就労定着支援事業所と連携し、支援を強化していくべきです。
 第三に、週十時間以上二十時間未満の特定短時間労働者を雇用した事業主に特例給付金を支給するとしました。障害者の特性や希望に応じて、時間に関係なく働くことができるようにすることが重要であり、十時間未満でしか働けない人にとっては、採用で選別されることになりませんか。
 特例給付金は、調整金、報奨金の四分の一なのですか。障害者を同じ一人と見ない、ダブルカウントなどはやめるべきです。
 水増し問題は、障害者の尊厳を傷つけ、多くの障害者の就業機会を奪ってきたという重大な問題です。その真剣な反省の上に、改めて障害者権利条約に立ち返って、どうあるべきなのか、当事者参加で抜本的な議論を行うことを求め、質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣根本匠君登壇〕

○国務大臣(根本匠君) 高橋千鶴子議員にお答えします。
 今回の問題の背景についてお尋ねがありました。
 障害のある方の雇用や活躍の場の拡大を民間に率先して進めていくべき国の行政機関の多くで対象障害者の不適切な計上があり、法定雇用率が達成されていない状況が長年にわたって継続していたことは、極めて遺憾であります。
 検証委員会の報告書においては、今般の事案が生じた各行政機関側の根本原因として、国の行政機関における障害者雇用の促進を実効あらしめようとする基本認識の欠如と法の理念に対する意識の低さが指摘されており、私もそのとおりであると思います。
 これまでの対応を深く反省し、公務部門を含めて障害者雇用の推進を所管する責任を改めて自覚した上で、国における障害者雇用の促進にしっかりとした役割を果たせるよう、改正法案を提出したところであり、障害者の雇用を一層促進してまいります。
 今般の障害者雇用率の不適切計上における背景の解明と検証についてお尋ねがありました。
 国の行政機関における障害者雇用に関する今般の事案については、福岡高検の検事長も務められた松井委員長をトップとした検証委員会を立ち上げ、多角的にしっかりと検証していただきました。
 その結果として、組織として障害者雇用に対する意識が低く、ガバナンスが著しく欠如している中で、担当者が法定雇用率を達成させようとする余り、恣意的に解釈された基準により不適切な実務慣行を継続させてきたという、各行政機関側における今般の事案の基本的な構図を明らかにしていただいています。
 このため、私としては、検証委員会は十分にその役割を果たしていただいたものと認識しております。
 障害者雇用義務制度の対象範囲についてお尋ねがありました。
 障害者雇用義務制度では、法的公平性と安定性を確保するため、対象を明確かつ容易に判定できるよう、対象障害者の条件を、原則として障害者手帳等を所持していることとしています。
 障害者雇用促進法における障害者は、心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者とされており、障害者手帳所持者に限らず、職業相談や職業紹介等の支援の対象となるものであり、これらの支援をしっかりと進めてまいります。
 障害者の職場環境づくりについてお尋ねがありました。
 障害者が障害があることを隠さなくてもよい職場づくりをしていくためには、障害があることを開示することが本人にとって不利益とならないようにすることが重要であり、そのためには、障害者に対する職場の理解を深めていくことが前提となると考えられます。
 障害者に対する職場の理解を深めるための厚生労働省の取組として、各府省に対して、雇用セミナー、障害者雇用職場見学会など各種の支援策を実施するとともに、特に精神障害者、発達障害者については、精神・発達障害者しごとサポーター養成講座により、職場の上司や同僚の方の理解の促進を図っているところです。
 これらの地道な取組を通じて、障害の有無にかかわらず、働く方それぞれの能力を最大限に発揮し活躍できるような職場づくりを進めていきたいと考えております。
 国等に対する立入検査についてお尋ねがありました。
 独立行政法人を含む特殊法人については、障害者雇用納付金制度に関する規定を除いて、民間の事業主と基本的に同じ規定が適用されていることを踏まえ、民間の事業主と同様に、厚生労働大臣による立入検査等を行うことができる旨を明確化したところです。
 他方で、現行の各法体系において、国等に対する立入検査等が認められている主体は、基本的に、会計検査院、人事院といった、憲法による検査権や準立法的権限、準司法的権限を持つ特別な機関であることも踏まえ、立入検査の規定がないことが今般の事案の原因であるとは考えにくいことから、厚生労働大臣による立入検査を規定しないものとしたところです。
 なお、今回の改正において、国等に対する報告徴収や是正勧告の規定を新設することにより再発防止を図ることができるものと考えております。
 障害者活用推進計画に盛り込む内容についてお尋ねがありました。
 障害者活躍推進計画は、障害者の活躍の場を拡大するための取組を不断に実施できるよう、国及び地方公共団体に作成、公表を義務づけることとしています。
 障害者活躍推進計画では、計画期間、目標、取組内容などを定めることとされています。計画で定める取組内容については、厚生労働大臣が定める作成指針を踏まえて、各機関の実情や方針を踏まえて設定していただくことを想定しています。作成指針については、法案が成立した場合、労働政策審議会等における議論を踏まえて詳細を検討してまいります。
 障害者雇用推進者や障害者職業生活相談員等についてお尋ねがありました。
 今回の改正では、障害者の職場環境の整備などに取り組むため、国等に対し、障害者雇用の促進等の業務を担当する障害者雇用推進者と、職業生活に関する相談、指導を行う障害者職業生活相談員の選任義務を課すこととしています。
 これらの推進体制の実効性の確保と障害者に対する支援の強化に向け、障害者職業生活相談員は、資格認定講習を受講した者の中から選任することとしているほか、関係閣僚会議において、障害者雇用推進者には各府省等の官房長等を選任すること、障害者雇用推進者や障害者職業生活相談員等の職員の人事評価に当たっては、業務内容に応じた取組が適切に考慮されるものであること、就労支援機関との連携を推進することを決定したところです。
 特定短時間労働者を雇用する事業主に対する特例給付金等についてお尋ねがありました。
 本法案においては、短時間であれば就業可能な障害者の就業機会の確保を促進するため、特例給付金を設けることとし、その支給要件や支給単価については、労働政策審議会の意見書において、給付金の単価は障害者雇用調整金や奨励金の単価の四分の一程度とすること、支給対象となる雇用障害者の所定労働時間の下限は十時間とすることなどとされています。
 いずれにせよ、具体的な仕組みについては、法案が成立した場合、労働政策審議会において御議論いただき、具体的に検討してまいります。
 また、重度障害者のダブルカウントについては、就労の困難度の高い重度障害者の雇用を促進するため、事業主に対して職域の拡大の努力を促すとともに、その雇用には施設設備の改善等に多くの負担を伴うことを考慮し、雇用率制度の適用上、有利に取り扱っているものであり、今後も適切に運用してまいりたいと考えています。(拍手)
    〔政府特別補佐人一宮なほみ君登壇〕

○政府特別補佐人(一宮なほみ君) 障害者選考試験の結果及び障害者の特性に応じた採用試験の課題についてお尋ねがありました。
 今回実施した障害者選考試験は、身体障害者手帳等、療育手帳等又は精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方を対象として統一的に実施したものであり、本年三月二十二日に七百五十四名の合格者を発表したところです。本試験は、障害の種別にかかわらず同一の筆記試験による第一次選考を行っており、知的障害など、障害の特性によってはなじみにくいところもあったかと考えられます。
 障害のある方を採用する方法には、障害者選考試験を経て採用する方法のほか、各府省における個別選考により採用する方法や、各府省の非常勤職員として採用する方法があり、これらにおいては、筆記試験だけでなく、仕事の内容に応じて実技を重視するなどしているところです。
 人事院としては、引き続き、多様な障害特性を有する障害者の就業機会の確保に向けて、厚生労働省等と連携しつつ、必要な取組を行ってまいります。(拍手)
    〔国務大臣宮腰光寛君登壇〕

○国務大臣(宮腰光寛君) 障害者雇用に係る定員増についてお尋ねがありました。
 障害者雇用を促進するための定員については、各府省が策定した採用計画に基づき、常勤職員として採用するために必要となる定員として、平成三十年度に三百八十人、平成三十一年度に八百七人の要求をいただきました。
 公務部門における障害者雇用に関する基本方針において、必要となる定員については適切に措置することとされたことを受け、障害者の方々に安定的な雇用環境を提供する観点から、要求を全て認めることとしたものです。
 現在、各府省において障害者の方々の採用が進められていると承知しておりますが、引き続き、採用計画に沿って円滑な採用が行われ、採用された障害者の方々の職場への定着に向けた取組を行っていくことが重要であると考えております。(拍手)
   

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