清水建設を処分 入札前にダム設計資料入手 農水省本紙報道を認める
清水建設が農水省発注の荒瀬ダム(鹿児島県)工事で、同工事の設計などを請け負ったコンサルタント会社から、守秘義務のある同省あての報告書などを入札前ひそかに入手し、受注に成功した――。本紙が九日付で報道したこの問題を調査した農水省は十七日、事実と認め、十二日付でコンサルタント会社を指名停止一カ月、清水建設を厳重注意処分したことを明らかにしました。入札不正の疑いも濃くなり、島村宜伸農水相は再調査の意向を示しました。
コンサル会社も指名停止
これは、同日の衆院農水委員会で日本共産党の高橋千鶴子議員の質問に答えたもの。 農水省九州農政局発注の荒瀬ダム(総事業費約二百九十四億円)は、昨年三月に一般競争入札がおこなわれ、前田建設工業・清水建設・さとうべネックの共同企業体が三十六億円で第一期建設工事を受注しました。
しかし、本紙入手資料によると、入札の五年近く前から三祐コンサルタンツ(名古屋市)と清水建設が接触。三祐側は請け負った設計業務などを部分的に清水建設に“丸投げ”し、同省あて報告書も渡していました。
調査結果を報告した川村秀三郎農村振興局長は、「発注者の承諾なく、三祐コンサルタンツ社員が荒瀬ダム実施設計の成果品(報告書)等を清水建設の社員に譲渡していた。請負業務契約書の規定に反する」「複数年、複数回にわたってやりとりがあった」と認めました。
高橋議員は「三祐側と清水建設は内部文書に書かれていたように『同じ土俵で意志疎通ができる』関係が常態化していた。これは入札で清水建設に有利に働くことを意味している」と指摘。「このような処分で再発は防止できると思っているのか」と全容の解明と厳正な処分を求めました。
島村農水相は「これで納得できたとは思っていない。再発を防止するための措置がとられたとも思わない。再度調べて、(ダム工事を発注した)会社の方にもなんらかの方法をとるかもしれない」とのべました。
(2005年5月18日(水)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 もう一つ、今度は別な案件でありますが、これも不正にかかわる問題であります。
農水省が発注したダム工事で、大手建設会社とコンサル会社が癒着をしていたという問題でございます。これについては、五月九日付の赤旗新聞の一面で報道をされておりますけれども、本日の産経新聞にも大きく取り上げられておりまして、「コンサル会社 入札前に設計情報」という記事が載っております。それで、これは入札制度の根幹を揺るがす行為だという有識者のコメントも紹介されておりまして、まさにそのとおりだということであります。
経過でありますが、九州農政局が発注した鹿児島県の荒瀬ダム建設工事、総事業費二百九十四億円でございます。昨年の三月、そのうちの工事を一般競争入札で、前田建設工業、清水建設、さとうベネックのJVが三十六億円で落札いたしました。この中の清水建設が、平成十一年から十五年にかけて設計などのコンサル業務を請け負っていた三祐コンサルタンツ会社から、発注者に上げる、つまり農水省に上げる報告書などを入手して、それが契約書にある守秘義務違反であると一カ月の指名停止を受けたという案件であります。
この件に関して、まず農水省としてどのような調査を行ったのか、この何が問題だと認識しているのか、具体的にお伺いいたします。
○川村政府参考人 お答えを申し上げます。
今お尋ねがございましたとおり、九州農政局発注の設計業務の成果品等が工事の受注者でございます施工業者に譲渡されているという情報提供がございまして、九州農政局におきまして、速やかに関係者から事情聴取を行い、事実関係の確認を行ったところでございます。
その結果、発注者たる九州農政局の承諾を得ることなく三祐コンサルタンツの社員が荒瀬ダム実施設計の成果品等を清水建設の社員に譲渡していたということが判明したものでございます。このことは、請負業務契約書の中の規定に反するものでありまして、問題であるというふうに認識をしたところでございます。
○高橋委員 守秘義務違反ですよね。その相手方の清水建設との関係については、厳重注意、口頭でのみだということでありますが、その点に関してはいかがですか。
○川村政府参考人 まず、違反の状況でございますけれども、先ほど言いましたように、守秘義務の規定もございますけれども、請負契約書の中に、成果物を第三者に譲渡し、または貸与し、または質権その他の担保の目的に供してはならないという規定がございますので、これに明白に違反しているということでございます。
それから、清水建設の関係でございますけれども、建設会社自体は契約の当事者ではございませんし、また、この行為が法令違反に直接該当するものではございません。ただ、こういったやりとりというのはまさに受注者の契約義務違反を助長するおそれがあるということで、これもまた問題であるということで処分を行ったところであります。
○高橋委員 皆さんのところに資料をお配りして、たった一枚で恐縮ですけれども、ちょっとごらんになっていただきたいと思うんですね。清水建設株式会社の担当者に向けて、平成十三年十二月二十一日に三祐コンサルタンツが出した書類でございます。「書類送付の件御案内」、要するに、発注者に報告するべく、施工計画・仮設備計画云々、こうしたものを建設会社にすべて与えていたということを裏づける書類でございます。
文章の中をちらっと見ていただきたいと思うんですが、「大変お手数ですが、既に送らせていただいた資料の差し替えお願いいたします。」。つまり、これは差しかえでございますから、一回目の資料も届いておるんです。「今後も同じ土俵で意志疎通ができるかと思います。又、事業に動きがありましたらお知らせいたします。」。つまり、同じ土俵だと。こういうことは、単に一回成果品を提出したというだけではなくて、同じ土俵でやりとりをしていたということを示しているわけですね。
実は、やりとりのファクス、もう百回近くやりとりをしているんですけれども、その写しがここにございます、コンサルタンツから清水建設の当事者に対して。その中身を見ますと、ダムの建設工事にかかわってさまざまな施設が必要になりますけれども、例えば、ドリルジャンボだとか防潮シートだとか、そういうものの仕様がどうなっているか、規格がどうなっているか、メーカーがどうなっているか、工事費あるいは工事費積算の根拠に触れるものを具体的にお伺いを立てているんです。つまり、情報を差し上げているんではなくて、お伺いを立てて、清水建設から、相談に乗って援助をいただいている、そういう関係だと。これは、この関係は常態化をしている。ですから、当然、入札で清水建設有利に働くということを意味しておりますけれども、それだけではなく談合情報もございましたので、もう初めからここが落札するということがわかっているということにもなりかねない問題でございます。
一つだけ紹介したいと思うんですけれども、平成十三年の八月ですけれども、発注者は納得するのに手間がかかります、農水省のことです。フィルダム案を決定的に有利にするためにも、平成十二年骨材製造貯蔵設備費を平成十一年より経費がかさむ方が都合がよいと考えます、ということで、その概算を御連絡いただきたいということを清水建設に対してお願いしている。こういうことが常態化しているわけですね。
コストがかさむ構造もこの中で出てきたということであります。これは、そういう構造があるということを建設の関係者の方からもつかんだ上で報道もされております。ですから、こういう実態が、つまり常態化していたんだと、相互にやりとりしていたんだということをわかっているのか、あるいは、わからないのであれば調査をする決意があるのか、農水省に伺います。
○川村政府参考人 今委員の御指摘もございましたが、私どももこの業者両社から何回かにわたって事情聴取をしてございます。その中で、御指摘のとおり、複数回にわたって、また複数年にわたってやりとりがあったということは把握をしてございます。これを踏まえて処分をしたということでございます。
○高橋委員 複数回、複数年にわたって、それで一カ月の指名停止、清水建設は口頭注意。これで再発防止になるんでしょうか。
○川村政府参考人 この関係につきましては、九州農政局工事請負契約指名停止等措置要領というのがございまして、それに基づいて厳正に処分をしたところでございます。
この中で、指名停止期間につきましては二週間以上四カ月以内というふうにしております。今回の事案は、まさに請負契約書に違反をする不適切な行為であるということでございます。そして、二週間というところが最低でございますけれども、今申し上げましたとおり、複数の業務、また複数の年、また複数の回数ということの事実を踏まえて、一カ月の指名停止というふうにしたところでございます。
○高橋委員 ですから、再発防止になるかということです。
○川村政府参考人 これを受けまして、直ちに関係、九州農政局はもちろんでございますけれども、他の農政局に対しましても指導通知を出しまして、そこから厳正に監督指導するように再度徹底をしたところでございます。
○高橋委員 通達はいただきました。非常にシンプルなものでございまして、「今般、請負業者による請負契約書の規定に違反する行為が発生した。 今後、このような事態が生じないよう、設計業務請負契約の履行にあたっては、請負業者に対して、関係法令及び請負契約書等の遵守の徹底を指導するなど、なお一層の適正な履行の確保に努められたい。」
やはり農水省が、この一片の通達を出した、指名停止をやった、しかし、なかなかこれは改善できないだろうということを見られているのではないかと私は思うんですね。
どういうことかといいますと、この三祐コンサルタンツは、専務、常務取締役には農水省のOBが配置をされておりますし、それだけではなく、ここに平成三年度の農業土木技術者名簿がございますけれども、たくさんのOB、関係者が会社に入っております。ですから、そういう関係がまず一つある。農水省から、昨年度までの三年間で三百件、四十億を超えるコンサル業務を受注しています。農水省の仕事だけで三百件です。ですから、もはや農水省の外郭団体と言えるのではないのか。だから、そういう関係で工事がどんどんやられていくんだということを、ここを変えられなかったら、やはり再発防止はないだろうと思う。
大臣、一言お願いします。
○島村国務大臣 今ほど委員と私どもの局長とのやりとりを聞いておりまして、私もこれで納得ができたとは思っておりません。やはりこれで今後こういうことに対して厳しい反省を求めて、再発を防止するための措置が行われたとは思いませんので、私は再度この問題をもう少し調べて、いかにあるべきか、場合によっては、契約当事者でなくても、私は発注の会社の方に対して何かの方法をとるかもしれません。
いずれにしても、こういうことをなおざりにしておきますと、またいろんな犯罪行為が起きて非常に不愉快になりますから、そういうものが起きないように、私どもの先輩の行ってきた歴史と伝統を傷つけないということをいつも強く言っているわけでありますから、今のお話については我々もそう対処しますが、ぜひ的確と思われる情報についてはどんどん私たちにもお伝えを願いたいと思います。
なお、OBの再就職先の問題についてでありますが、一般論で言えば、農業農村整備関係の技術者はその分野における、いわば幅広い専門的知識と経験を持っておるわけでありますから、これらの技術や経験を必要とする民間企業に要請されて、就職しているということについては、それなりに理屈があるんだろうと私は思います。
ただ、問題は、私は常々申していることなんですが、役人の天下りという言葉、私は嫌いなんですけれども、専門の技術を求められ、あるいは経験に対する評価を受けて再就職することは、これは大いにあってしかるべきだと思いますが、その一方で、いわば役所の持っている利権といいましょうか、何か権利に関してそれを持ち込むとか、あるいは本人以外に、求められもしない人をたくさん抱き合わせで就職する、こういうようなことごとは、これはまさにどのような指摘を受けても仕方がない。今まで国会答弁などでも申してきたところでありますが、それらについてはこれからも厳正に対応していきたい、こう思うところであります。
○高橋委員 終わります。よろしくお願いいたします。