高橋千鶴子衆議院議員は18日の農林水産委員会で、加工食品の原料原産地表示について質問。リンゴ果汁など多くの対象外があり、安全性のチェックにも問題があることを指摘。「生産農家の苦労が報われる制度にしてほしい」と要望しました。
農水省の白須敏朗生産局長は「国産が有利になるように表示することは意義のあることだ」と答えました。
(2005年5月19日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
最初に、今回の法改正の主要な部分である有機JASと登録認定機関について伺いたいと思うんですが、前の方何人かの方が質問されておりましたので、簡潔に確認だけをさせていただきたいと思っております。
これまでの、農林水産大臣またはその代行機関がJASマークを貼付することができる製造業者等を認定する仕組みが、民間の第三者機関が設定する仕組みに移行され、登録認定機関の登録基準を法律に明記することで行政の裁量の余地をなくすというものであります。
そこで、登録認定機関の登録基準としてISOガイド65を採用するということについては、有機農業生産者からは、良心的な料金で農家の認証をしてきた認証機関が存続できないのではないかと懸念が出されております。また、認証機関がそのための体制づくりの経費を認証料金に転嫁をし、引き上げにつながるのではないか、そうした懸念も出されておりますが、この点について農水省のお考えを伺いたいと思います。
〔白保委員長代理退席、西川(京)委員長代理着席〕
○中川政府参考人 お答え申し上げます。
ISOガイド65を採用することによって、さまざまなかかり増し経費等々がかかるんじゃないか、あるいは、既に登録認定を受けている小規模な機関にとって、さらに登録の更新をする際にいろいろと負担になるのではないかという趣旨のお尋ねでありますけれども、これまでも、実際に業務規程などの認可に当たりましては、ISOガイド65を参考にしながら審査をしてきております。
したがいまして、現在既に登録認定を受けておられる方であれば特段問題なく、きちっとした業務を日々行っている機関であれば、今度新たな改正後の制度のもとで登録をしていただく際にも特段大きな負担になるようなことはないというふうに考えておりますし、この点につきましては、これまで機会あるごとにそういった有機の登録認定機関の方々にお集まりいただいて説明もしてきておりますので、重ねて御理解いただきたいというふうに思います。
○高橋委員 この点では、有機の生産者の皆さんの不安が解消されて、懸念が当たらないようにぜひお願いしたいと思っております。
やはり、有機農業の支援の仕組みについて、表示制度は整ってきたわけですけれども、それ以外にないということがまだ不十分だと思っております。今回の改正で、外国の登録認定機関の要件緩和もございました。一概にそのことがイコール輸入増だという言い方はしませんけれども、ただ、国内有機生産者がもっと頑張って生産をふやしたい、あるいは有機を始めたい、そう思ったとしても、国内ではさまざまなハードルがある一方、財政支援はない、認証に手間をとる。そういう中で、外国からは有機という名で安い農産物がどんどん入ってくる。それではやっていけるかどうかということが問われてくると思います。いわゆる偽装表示などを的確に防ぐことができるかという問題もあります。
そこで、やはりこれをもっともっと中心的に据える上で、有機農業振興法のような支援法を政府として策定し、財政的措置も含め有機農業支援に重点を置くべきと考えますが、これは大臣の見解を伺いたいと思います。
○島村国務大臣 お答えいたします。
有機農業は、土づくりを基礎に化学肥料や農薬を使用しないことを基本とする農業でありまして、環境保全を重視する農業生産の一つの形態として大変好ましいものであります。また、消費者の安全、安心の要請にこたえる農産物を供給するものであると同時に、農林水産省としても、その取り組みを、これを特に推進しているところであります。
具体的には、これまでも、化学肥料や農薬の使用を低減する技術の開発普及といった施策のほか、法律としても、有機農産物などの表示の適正化を図るためのJAS法、あるいは、環境保全を重視した生産に取り組む農業者に対する支援のための持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律があり、既に所要の法制は整備されているものと考えております。
今後とも、これらの施策を推進し、有機農業への取り組みを支援してまいりたいと考えております。
○高橋委員 所要の法制は整備されているというお答えでありましたけれども、この点については、私自身も有機農業振興議連にも入っておりますし、引き続いて振興法制定に向けて要望していきたいと思っております。
次に、JAS法に基づく食品の表示制度について、先ほど来出ておりますけれども、加工食品の原料原産地表示について伺いたいと思っております。
昨年の九月にJAS法に基づく加工食品の品質表示基準が改正されて、二十食品群の原材料の産地表示が義務づけられました。まず、簡潔にお願いしたいんですけれども、表示を義務化するべきとなった基準、この考え方について説明を願います。
○中川政府参考人 二十品目群に義務づけの対象を拡大したわけでありますけれども、そのときの基準といたしましては、加工食品の原材料がどこでとれたものか、どこでつくられたものかということが最終の加工品に影響する、そういうものであることが一つ目の基準でございます。それから二つ目の基準として、何でもかんでもということではなくて、加工食品の中の主要な材料であるということが二つ目の基準でありまして、これは重量で見て五〇%ということであります。
この二つの基準で、いろいろな加工食品を横断的に把握するという作業を行いまして、これは食品の表示に関する共同会議というところで審議をいただいたわけでございますが、その審議の結果、冒頭申し上げましたような二十品目群、これは基本的には加工度が比較的少ないという食品になりますけれども、こういったものに絞られたというものでございます。
○高橋委員 共同会議の資料もいただきましたけれども、加工度が少ない、生鮮食品に近いということが一般的に説明をされていると思うんですね。
ただ、今お話しされた主要な材料が五〇%とか、そういうことがあるものですから、二十食品群とはいえ、ただし書きが大変多くて、実際には対象にならないものが非常に多いわけであります。例えば、刺身の盛り合わせはだめである。焼き肉セットは肉だけなら確かにいいんですけれども、なべセットは、生鮮食品だけというただし書きがついてございますので、つみれとか、練り物が入っていればそれは対象にならない。さっき出ましたけれども、フライの場合は、揚げてしまったり冷凍してしまえばだめだと。
そういうことを言うと、事細かにただし書きがついていて、実際には大幅に改正されましたとさっき報告されましたけれども、そうではないことがわかる。これはむしろ混乱を招くのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
○中川政府参考人 原料原産地の表示を義務づけるということは当然のことですけれども、それが守られなかった場合には、指示、公表あるいは命令、さらには一定の罰則というふうなことで、そういう強制措置を伴うものでございます。したがいまして、どういう考え方でこの品目が選ばれたのかということは、やはり客観的な一つの尺度でもって説明できるものでないと消費者の方々にも御理解いただけないというふうに思います。
もちろん、この二十品目群に選定をするに当たりましては、すべてパブリックコメントにかけましたし、全国九カ所で意見をお聞きするような機会も設けたわけでありまして、こういったさまざまな意見も踏まえて今のような品目になっているということでございます。
○高橋委員 そのパブリックコメントも見ましたけれども、先ほど大臣がおっしゃったようなカップめんのような話でございまして、製造業者にしてみたら、そんなにたくさんの原料が入っていたらとてもとても表示なんてできないよ、そういう意見が多いわけですよね。でも、消費者は、知りたいんだという意見、生産者は、表示してほしいんだという意見があって、やはりどちらかというとその声は大きかったということも無視できないと思うわけです。
続けますけれども、青森県のリンゴ果汁については、私たち、昔から、自分自身が議員になる前から、原料原産地表示について要望をしてまいりました。加工リンゴというのは生食リンゴにも非常に大きな影響がございます。安価な輸入原料との競合の中で、それが生食にも影響して、全体として価格が維持できないという状況になっている中で繰り返し要望されてきたものなんですけれども、私は、リンゴ果汁というのは生鮮に極めて近い状態だ、なのになぜ対象にならないのか、このことを伺いたいと思います。
○中川政府参考人 リンゴ果汁は一つの例でありますけれども、果汁飲料は、一般的に見ますと、搾汁あるいは抽出、ブレンドといったさまざまな過程を経てつくられております。ここで果汁の例としてリンゴを先生はおっしゃいましたけれども、果汁飲料ということになりますと、リンゴだけではなくて、さまざまな製品が出ております。ですから、リンゴがよくて何がだめというときには、やはり客観的な基準というものを説明する必要がございます。
そういうことで、果汁飲料全体の特性を見てますと、今申し上げたような、一定の品質を維持するために、それぞれの企業で、独自のノウハウも持ちながら、供給する原料の産地を移動させていくとか、そういうことも行いながら、一定の品質のジュース、果汁飲料を供給しているわけであります。そういう実態から見ますと、これを義務表示にするということは現在の状況ではなかなか難しいというのが共同会議での御議論の結果ではございました。
そういう理由によりまして、現在、生鮮食品に近いとはおっしゃいましたけれども、果汁飲料については義務表示の対象にはしていないところでございます。
○高橋委員 果汁にもいろいろあるということで、こういう一くくりにされて、逆にそれが可能じゃなくなるというのであれば、非常に納得しかねる答弁かなと思っております。
私がまだ議員になる前に交渉したときにも同じような答弁がされて、そのときはもっと率直な答弁でしたので私は非常に怒りを感じたことがあるんです。要するに、原料がとれた国から入ってくるまでの間にたくさんの国を経由するんだと。先ほど大臣の答弁の中にあったかと思いますけれども、幾つも経由している国を全部書くのは困難だと。国会では、困難だという表現をされますけれども、私が直接担当者に聞いたのは、企業さんが大変で、とてもそんなのはやらない、そういう答弁だったんですね。
ですから、結局、輸入する業者、企業、そうした人たちがやりやすいようにとなればそれで済むのかということが当然ございます。私は、このこと自体が問題だと思っているんです。
つまり、経由国が入り組んでいる、幾つもの国を経由してきているというのは、安全性の確保という点で容認できるのか、チェックができるのか。偽装表示がないのかといっても、さっぱりチェックできない。そうであれば、本来そういうものがまかり通っていること自体に問題があるのではないか。そして、今言ったように、輸入業者の利益の方が消費者や生産者の利益よりも上に来ているのでは問題だ。この点、いかがですか。
○中川政府参考人 表示に関します共同会議での議論はすべてオープンにしております。そのメンバーには、消費者の方も生産者の方も、それから学識経験者の方もいろいろ入っております。そういう公開の場で議論をいただいて、かつまた消費者の方々も含めた意見の募集も行った上で現在の基準は決められております。
もちろん、この後さらに、二十品目群の実施を見ながら、さらにまた関係者の方々の意見、御意向なども、あるいは製造なり流通の実態も踏まえて、さらにこれからどうしていくかということは一つの課題でございます。その問題意識は持っておりますけれども、現在こうなっている理由ということで申し上げれば、今私の方から御答弁させていただいたものでございます。
○高橋委員 問題意識は持っているというお話でございました。ただ、先ほど来の説明の中で、加工食品の表示に関しては、消費者のスタンスに立っているんだということがあったと思うんですね。私は、本来ならば、消費者のスタンスに立ったとしても、本当に納得いく形というのは、国内の生産者も意見が一致できる表示でなければならないんじゃないかと思いますし、そもそも生産者の立場に立っていない、そういうことがやはり問題でないのかなと思っております。
青森県は、昨年、台風でリンゴの落果被害がございました。そしてまた、今冬は例年以上に雪が多くて、園地の枝割れや野ネズミなどの被害がございまして、リンゴだけでも百十八億円の被害でございました。
これだけ自然に左右をされながら、一方、リンゴというのは常に病気との闘いでもございました。農薬の厳しい基準、また農薬にかかるコスト、そういうものも背負いながら、懸命に生産者の皆さんは頑張っている。だけれども、一方では残留農薬基準もない輸入果汁が入ってくる。それにはどうしようもなく、価格競争には負ける。そういう状況があるわけですね。少なくとも、国内の生産者の苦労が報われる、努力した分、優位に立てる視点が必要だと思います。
そこで、生産局長に伺いますけれども、平成十六年八月十一日、食料・農業・農村政策審議会生産分科会果樹部会の「果樹農業振興基本方針の策定に当たっての中間論点整理」、この中で国産加工品の位置づけについて、生食用果実の需給調整の問題など一定の役割を果たし、一方、輸入自由化を契機として国産加工品の生産が大きく減少している、こういうことを書きながら、表示については、国産原料使用の加工品であることをPRする必要がある、果実飲料の義務表示対象化を引き続き検討するとともに、当面は製造業者が国産品として強調表示することを推進すべきでないかということをまとめられております。これは、ことしの三月二十五日の基本方針の中でも同じ文言は盛り込まれております。
この立場に立てば引き続き検討することが当然だと思いますけれども、その点、どうなのか。本当にリンゴ生産者の立場に立ってやっていくつもりなのか、伺いたいと思います。
〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕
○白須政府参考人 ただいまの果汁の表示の関係でございます。
委員からのお話のとおり、この三月に策定をいたしました果樹農業の振興基本方針におきましても、原料原産地表示につきましては「果実飲料の原料原産地表示の義務化について引き続き検討するとともに、当面は製造業者が強調表示するよう推進するものとする。」というふうに決められているわけでございます。
お話しのとおり、表示の義務化は現在のところ見送られておるわけでございますが、消費者の中にはやはり国産果汁を求めるというニーズもございます。また、生産者のサイドから見ましても、国産果汁を有利に販売していく、そういった観点も踏まえますと、やはり国産である旨を表示するということには一定の意義があるというふうに私ども考えているわけでございます。
したがいまして、ただいまの、策定されました果樹基本方針におきましても、そういうふうな策定もされておるわけでございますので、私ども、当面、任意ではございましても、製造業者が国産であることを強調表示するように推進するというふうなことでございます。こういった取り組みを踏まえまして、引き続き、国産果汁の消費拡大等々に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
○高橋委員 ありがとうございます。
やはり、農水省が生産者の立場に立たないでだれが立つのかということが問われていると思いますので、引き続き、果樹の振興と義務表示化の問題については検討されますようにお願いして終わりたいと思います。