日本が実施したりんご火傷病に対する検疫措置の緩和が不十分だとして、米国が世界貿易機関に再提訴した問題で、高橋千鶴子議員は、9日の農林水産委員会で質問。米国が対抗措置として主張している155億円の報復関税の根拠について中川坦消費・安全局長は、米国が根拠を明らかにしないと報告。高橋議員は「過去最高だった米国産りんごの輸入実績は14億円。これだけ見ても、米国の主張は何の根拠もない不当なもの」と批判。島村宜伸農水相は、「自分が正しいと考えていることは主張する」と答弁しました。
(2005年6月10日(金)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 そこで、最後にリンゴ火傷病の問題で伺いたいと思うんですが、リンゴ火傷病の検疫措置について、米国がWTOに訴えて、今、最終段階、再パネルに付されている段階になっておりますけれども、その最終決着の見通しについて、まず伺いたいと思います。
○島村国務大臣 我が国の火傷病の検疫措置につきましては、平成十五年十二月、これを国際協定、すなわちSPS協定に整合させるべきとのWTOからの勧告を受けまして、昨年六月に改正を行ったところであります。
しかしながら、ただいま御指摘ありましたように、米国はこの改正措置を不服としまして再パネル設置を要求いたしました。この再パネルにおいて、我が国の措置は国際協定に整合していると主張してきたところでありますが、再パネルでの審議は我が国にとって厳しい感触であったと報告を受けております。
したがいまして、再パネルの最終報告で、我が国の措置が国際協定に整合していないとの判断がなされる可能性が高いと考えておりまして、もしそのような場合には、検疫措置を改めて改正することが必要である、こう認識いたしております。
○高橋委員 非常に最悪の結果が今出るのではないかということで、おそれを持っているんですが、まず、アメリカがいわゆる対抗措置として主張している百五十五億円、この根拠がどうなっているのか伺いたいと思うんですね。少しわかりやすくするために、アメリカからのリンゴの輸入実績に照らしてこの額はどういう額なのか、少し御紹介いただきたいと思います。
○中川政府参考人 お答え申し上げます。
対抗措置として百五十五億円の報復関税というものを申請した事実はございますけれども、その具体的な積算根拠等については、私どもつまびらかに承知をいたしておりません。
この対抗措置の承認申請とあわせまして、日本の方からは、再パネルの設置についてアメリカと協議をして、こちらのプロセスで現在まで来ておりますので、今先生お尋ねの具体的な、その百五十五億円が妥当かどうか云々というのは、仮にその再パネルの結論が得られて、かつまた日本とアメリカとの間でその再パネルの結論を踏まえて協議をした結果、調わなかった場合に、今度はそちらの報復措置にいくということでありますので、その際に、確認その他、必要なことはチェックしていきたいというふうに思っております。
○高橋委員 ですから、リンゴの輸入実績に照らしての額の意味です。
○中川政府参考人 アメリカからのリンゴの輸入実績というのは最近ありませんので、平成七年、これが過去最大の輸入量でありますけれども、八千四百九十七トン輸入をされております。これを金額にいたしますと十四億円程度というふうになるわけでありますが、これと今アメリカが言っております百五十五億円との関係その他、確かなことは私ども承知をいたしておりません。
○高橋委員 ありがとうございます。
過去最大の輸入実績を見ても十四億円しかないわけですね。それに対して、今アメリカが百五十五億円という報復関税を持ち出している、これだけを見ても、全く根拠がないものだと思うんですね。
しかも、関税ですから、それがいろいろな、工業製品ですとか別なものにばらばらにかけられてきて、ほかのものに影響を与える、そういう問題にもなりかねないわけですので、本当にこれは納得のいかない不当なものであると私は思っております。
火傷病は、リンゴだけでなく、ナシやサクランボあるいはバラ科の植物全体に発生し得るものであります。しかも、一度侵入を許すと有効な防除策がありません。湿度の多い日本の方が蔓延しやすい気候条件でもあります。米国で使われているストレプトマイシンでは、むしろ別な、副作用という心配もあります。それをアメリカは、緩衝地帯をゼロにしろ、つまりは、発生した園地のすぐ隣の園地でも出荷して大丈夫、そう言っているわけです。全くアメリカの措置こそ根拠がないと思います。
これはBSEと同じ構図なんだ、とてもアメリカの言い分は承服できない、私はこのように思いますけれども、アメリカの要求が非常に不当なものである、科学的な根拠はないものであるということに対して、大臣にぜひ、同じ認識かどうか伺いたいと思います。
○島村国務大臣 私は、たとえアメリカであれ、これが中国であれ、自分が正しいと思うことは常に自分の言い分をきちんと主張するのを主義としておりますので、今回のことについては報告を受けていて、自分が当事者として出席したわけではございませんが、事情をよく聞いて、我々の納得のいく線で話を進めたい、こう考えております。
○高橋委員 相手がだれであろうとという大臣のお言葉でした。最終段階に来ておりますので、本当に日本の、そういう大臣の強い覚悟をいただきたいと思うんですね。さっき言いましたように、リンゴだけではないですので、全体に広がる問題なんだと。
日本の検疫措置が科学的でないとアメリカは言うんですけれども、ではアメリカの言っている措置が科学的かというと、それもまた根拠がないわけですね。そういう点で、日本がもっと根拠をそろえる必要がある。SPS協定は、科学的に正当な理由がある場合、国際基準や指針、勧告よりも厳しい措置をとることを認めています。これを立証する材料が、やはり発生国じゃないので、アメリカに行かないと、それは材料をそろえることができません。
日米共同研究がやられていましたけれども、それが今中断しているという段階で、データが足りないと私は率直に言って思うんですね。この点での、やはり発生国へ行っての研究がまず絶対必要だと思います。この点と、前から県としても要望していましたけれども、防疫マニュアルを整備すべき、この点について、どうなっているのか、見通しと、それを生産者に対してどう説明するのか、伺いたいと思います。
○中川政府参考人 まず、火傷病発生国等との共同研究の問題でありますけれども、私どももこういったことは必要だというふうに思っておりまして、これまでも、世界会議などにおきまして、ワークショップなどには研究者を派遣したりということはいたしておりますけれども、新たな知見あるいは情報の収集のために、必要に応じて、火傷病について、発生国と共同研究を行うということにつきましても検討いたしてまいりたいというふうに思っております。
それからもう一点、防疫マニュアルのことでございますが、昨年の植物検疫に関する研究会報告を受けまして、現在、この防疫マニュアルの作成を急いでおります。もう間もなく成案を得ることになるというふうに思っておりますので、再パネルの最終報告が出ました暁には、そのことにつきましても生産者を中心に御説明もしていかなければいけません。そういった機会をとらえて、この防疫マニュアルにつきましてもきちっと説明をいたしたいというふうに思っております。
○高橋委員 最悪の結果にならないように、また、なってもしっかりと生産者が納得いける対策を最大限とるように要望して、終わりたいと思います。