国会質問

質問日:2005年 6月 9日 第162国会 農林水産委員会

森林組合法改正案、種苗法改正案

 9日の農水委員会は森林組合法と種苗法の改正案を全会一致で可決。高橋千鶴子議員は国産材の活用を促進するよう要求、前田直登林野庁長官は地域材の使用が大事であり支援を進めたいと答弁。  育成者権を加工品の生産・譲渡にまで拡大、権利存続期間を拡大する種苗法改正案について、高橋議員は、産地の要望にもこたえる改正だとのべ、種苗は農林水産業の基礎となるものであり、税関との連携だけでなく、種苗を守る農水省として責任を持って水際対策を強化することを求めました。

(2005年6月10日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 最初に、森林組合法の改正について伺います。

 先般発表された二〇〇四年度の森林・林業白書のトップでも紹介されているように、昨年は、地震や台風、集中豪雨など災害が相次ぎ、過去十年間で最大の被害額、二千五百億円にも上ると記されてありました。改めて、森林の持つ国土保全機能など、森、山への関心が注がれた年ではなかったでしょうか。

 私もあちこちの被災地を歩きましたが、例えば三重県の宮川村。大変雨がよく降るところであります。今までは、雨が降り過ぎても、今回の台風以上の雨が降ってもしっかりと森が吸収し、ふもとの集落を守ってくれたと住民の方が言っておりました。そういう山が、逆に、長い間人手が入らず、荒れ放題になって、一気に崩れて多くの犠牲者をのみ込みました。後継者がいなく、林業では暮らしが成り立たない、間伐がほとんどされない、あるいは既に持ち主がいない山が多かったことが要因だとこの間指摘をされています。

 既に、不在村者保有の森林面積は二四・六%にもなっていると聞いております。民有林の七割をカバーする森林組合の果たす役割が本当に今大きいと思いますが、その点について大臣の見解を伺いたいと思います。

○島村国務大臣 森林組合は、森林所有者の協同組織として、植林や除間伐の七割を実施するなど、森林整備の中心的な役割を果たしているところであります。

 森林に対する国民の多様な要請にこたえ、その多面的機能を持続的に発揮させていくためには、森林組合が経営基盤を強化しつつ、施業受託や集約化など、効率的な森林施業に取り組むことが重要であります。

 今回の法改正におきましては、このような森林組合の機能や、あるいは組織基盤の強化を図ることとしておりまして、これらの措置を通じて森林組合が役割を十分に発揮することができるよう努めてまいりたい、こう考えております。

○高橋委員 今の、効率的な機能を果たすというところに少し関連があるのかなと思うんですが、全国森林組合連合会は、森林組合改革プランの中で合併を積極的に推進し、一県一組合など統合再編を目指す方向を示しています。プランの現段階と、この合併による弊害がないのかどうか、考えを伺いたいと思います。

○前田政府参考人 まず、合併の状況でありますが、平成十五年度末の森林組合数、九百七十組合となっております。これは十年前と比較いたしますと約六割ということで、相当進んではきているわけでありますけれども、依然としてやはり常勤役職員が少ないとか、そういった業務執行体制、あるいは経営基盤、こういったものが依然として脆弱な組合が存在するというのが実情でございます。

 市町村合併、こういったものが流動的な状況の中で、なかなか、それを見きわめないとというようなこともあったと思いますし、また、合併のメリット、こういったものがまだ十分認識されていない、あるいは組合間に財務格差が存在するというところで、いろいろな要因があろうと思いますが、やはり合併手続の簡素化、こういったところも図りながら合併を積極的に進めていく、それが森林組合全体としても大きなメリットになってくるというように考えておる次第であります。

○高橋委員 今、合併によるメリットとおっしゃいましたけれども、今最初にお話しした災害との関連、あるいは先ほど話題に出ていた労働災害というふうな問題からいっても、本来ならば地域での森林組合の役割というのは本当に大きいだろうというふうに思うわけですね。ただ、先ほど来お話しされているように、さまざまな厳しい経営条件があり、やむなく合併を進める、そういうふうな背景があるだろうと。私はその点を非常に残念に思うわけです。

 また一方、国はいわゆる担い手への林地の集積という基本方向も持っているわけですが、こういうことに対しても、やはり、根本にある木材価格の低下や自給率の向上、この問題を本当に解決しなければ、担い手といってもそれは進んでいかないだろうということはお話ししておきたいなと思います。

 その上で、今、木材自給率が二割を割り込んでから、木材の需要量も一億立米を下回り、昨年度の木材需要量は八千七百十八万立米にまで落ち込んでいます。ですから、まず材を使ってほしいと関係者から強い声が出ているのも当然ではないかと思います。

 そこで、国産材や地元の材を活用して住宅をつくるなどの取り組みが全国に広がっていると思っております。きょう、ここに持ってきたのは、三八地域県産材で家を建てる会というNPOみたいな組織で頑張っているんですが、林業、製材業、地元工務店、本当に全体が一つの輪をつくって、地元の材を利用した家づくりをしよう、それに対して県としても支援をしている、そういう取り組みをされておるところであります。こうした全国に広がっている取り組みを支援して、強力に国産材の活用を進めるべきと思いますが、国の取り組み方向を伺いたいと思うんです。

 あわせて、時間がないので一緒に言いますけれども、ハウスメーカーが早く安くをモットーに輸入材をどんどん使う、これに対して、やはり地元の工務店が太刀打ちできないという問題がございます。この点では国土交通省との連携も必要だと思いますけれども、木材を使うことが、むしろ耐震耐火構造という点でも本来は有利であるんだということのPR、あるいは、シックハウス病対策などが非常に大きく注目される中で、国産材の優位性、これをもっとPRしていって差別化を図っていく、そういう取り組みがあわせて求められていると思いますが、この点での見解を伺います。

○前田政府参考人 お話にございましたけれども、私どももそういったことで、やはり地域材、こういったものが使用されていくことは大事であるということで、森林所有者から住宅生産者までの関係者が一体となった家づくり、いわゆる顔の見える木材での家づくり、今お話ありました三八地域の方でもそういった運動がやられているわけでありますが、そういった運動に対します支援、あるいは低コストでの安定的な木材の供給、こういった体制づくり、こういったものに努めているところでございますし、また、住宅に使う場合には地財措置でいろいろな支援を行っている、そんな状況にあるわけでございます。

 また、大手ハウスメーカーに対しましても、いわば一定の確認された品質、こういったものを安定的に出していくというようなことで、昨年度からも新たな取り組みをやっているわけでありますし、さらに、今お話ございましたけれども、やはり国産材、例えば杉ですと、無垢の材ですと、まさにハウスシックは関係ないわけであります。そういった利点も大変あるわけでありますので、そういったものを積極的にアピールしながら、国産材の振興、こういったものに努めてまいりたい、かように考えている次第であります。

○高橋委員 国においても少しずつではありますが努力が始まっているというふうに受けとめまして、さらなる支援をお願いして、次の法案がありますので、そちらに移りたいと思います。

 種苗法の改正についてでありますが、種苗は農林水産業における基礎的な生産資材であり、収量、品質、耐病性など、すぐれた品種を育成することは、生産者にとっても消費者にとっても重要な意義を持つものだと考えます。

 今回、育成者権の及ぶ範囲が加工品の生産、譲渡にまで拡大されることや、権利の存続期間を拡大するということは、産地の要望にもこたえるものであり、賛成であります。

 そこでですが、実際の育成者権の登録期間が平均で五・二年であります。育成者権の存続期間について、アンケートに対し、現行どおりでよいとの回答が七割を占めているといいます。正直、意外でした。現体制が育成者にとって余りメリットがないということを示しているのかとも思われます。その要因についてどう考えるのか。そして、それでもあえて期間延長を提案したその理由を伺いたいと思います。

○白須政府参考人 ただいまの存続期間の延長の関係でございますが、お話しのとおり、存続期間のすべての平均は五・二年というふうなことでございます。

 この短い要因といたしましては、品種登録されます植物のうちで、草花でございますとかあるいは観賞樹、これは比率が高いわけでございますが、こういったものは比較的商品としての寿命が短いということでございますので、短期間で品種登録の取り消しをされるものが多いということによるものではないかというふうに考えているわけでございます。

 しかしながら、産地の主力品種として普及するような品種につきましては、期間の延長を求める声も非常に強うございまして、そういった意味で、やはり競争力の強化を図りますためには存続期間の延長ということが必要であるというふうに考えたわけでございまして、研究会におきましても、やはりアンケート調査の結果も検討した上で、存続期間の延長を検討すべきというふうに結論づけているところでございます。

○高橋委員 単純に、現行どおりでよいというアンケートだけではなく、やはり主力品種、あるいはロングセラーと言えるようなすぐれた品種を育成するという立場からこうした決断をされたということは、非常にありがたいことかなと思っております。せっかくのそういう権利を有効に行使できるために、水際でのチェック体制がやはり問われてくると思っております。

 現在は、全国七つの税関でDNAの識別検査が可能な体制になっております。先日も、東京税関でイグサの「ひのみどり」の識別を拝見いたしました。分析キットの活用や他の品種への拡大も準備をされているということであります。今後の分析検査の拡大の見通しを伺いたいと思います。

 また、対象となる品種を拡大するに伴って、当然、検査体制の拡充が求められます。単に権利者が申告をした、そういうときに限らず、品種保護Gメンあるいはサンプリング検査など、農水省の責任においての体制、これもしっかりふやす必要があると思いますけれども、お考えを伺いたいと思います。

○白須政府参考人 まず一点は、品種識別技術の方の対象品目の関係でございます。

 現在、インゲンマメそれから小豆ではあん、イグサではござ、稲では米飯、お茶では製茶というものにつきまして、既に実用化技術が開発されておるということでございます。さらに、小麦粉、めん、コンニャク精粉などにおきまして、実用化に向けて技術開発が進められておるというふうなことでございまして、私どもとしては、この識別技術が確立したものから機動的に政令品目を追加するということで、できるだけ速やかに加工品の品目を拡大してまいりたいというふうに考えているわけでございます。

 もう一点、水際取り締まりのお話もあったわけでございますが、やはり侵害物品の水際取り締まりにつきましては、他の知的財産権の侵害物品の水際取り締まりと同様でございまして、税関におきまして行われておるということで、私ども農林水産省としては、この侵害物品の効果的な取り締まりが行われますように、DNA鑑定などの品種識別技術の提供、あるいはまた種苗管理センターにおきましても、DNA鑑定を行うというふうなことで支援をしているわけでございます。

 また、関税定率法の方も今回の国会で改正をされまして、意見照会の仕組みが設けられたというふうなことでございますので、私どもとしては、加工品につきましても税関の取り締まりの対象となりますので、財務省税関と一層密接な連携を図ってまいりたいと考えている次第でございます。

○高橋委員 今局長、支援というお言葉を使いましたけれども、やはり税関に対する、一義的には税関がやるんだという、法的な仕組みではそうかもしれませんけれども、支援という枠ではおさまらない話だと思うんですね。

 先ほど来、ずっと午前からの審議の中でも繰り返し大臣も答弁されているように、種苗というのが農林水産業の基礎となる大事なものなんだ、その大事なものの権利を守るのは、やはり第一義的には農水省が責任を持たなきゃいけないんだと。単に支援をする、それで済むのかということが問われると思うんですね。いかがですか。

○白須政府参考人 委員も御案内だと思いますが、これは他の侵害物品の場合も同じでございまして、やはり水際取り締まりというものは、一義的に税関において行われるというふうなことになっているわけでございます。

 そこで、私どもとしては、しかしながら、税関における水際取り締まりがより効果的に行われますように、税関からの意見照会に対する意見の提出でありますとか、あるいは税関が行う輸入品の検査に当たっての技術的なアドバイス、さらには、鑑定の依頼が当然向こうからございますので、それに対してDNA鑑定を直接我が方の種苗管理センターが実施する。

 あるいはまた、今回、関税定率法の改正によりまして、侵害物品の認定のまさに参考となる意見を、直接、農林水産大臣が税関からの依頼に応じて、意見の照会に応じて意見を申し上げるというふうな制度的な枠組みもできたわけでございますので、こういったことを活用しながら、さらには税関との一層の連携を密にしまして、より一層の効果的な水際取り締まりが行われるように、農林水産省としても対応してまいりたいというふうなことでございます。

○高橋委員 今の答弁は先ほどの答弁と余り基本的に変わりがないわけで、この点について、そこだけやる時間がないですので、やはり本来の農林水産業の基礎を守るという立場で、いわゆる受け身ではなく、こちらから守っていくという立場に立ってほしいということは指摘にとどめたいと思います。

 あわせて、不法な海外への持ち出しについて、これが本当は根元から絶てれば一番いいわけでありますけれども、やはり加工、輸出入扱い業者の中で、故意に持ち出して、海外で生産して日本にまた持ち込んでいるというふうに考えるのが普通ではないかと思うんですね。

 そこで、その対策を強める必要があると思うんですが、一つに、熊本県のイグサの摘発が最初の事例であるわけですけれども、そのイグサにおいては一定の産地あるいはルートの特定などができているのかどうか、あるいはするべきと思うけれども、これについてはいかがでしょうか。

○白須政府参考人 種苗の海外への違法な持ち出し、ただいま委員からも御指摘があったわけでございますが、大変に残念なことながら、この持ち出しにつきましてのルートというものは特定ができておらないという状況にあるわけでございます。

 しかしながら、我が国の新品種の種苗が違法に海外に持ち出される、あるいはそれによって増殖される、さらには生産をされました農産物が我が国に持ち込まれるということは、これはもう申すまでもなく、大変重要な問題であるわけでございます。

 したがいまして、私どもとしては、一つには、税関とも連携を図りまして、我が国への輸入に当たりましての取り締まり、これはもう当然、先ほど来御議論ありますように、そこのところは連携してしっかりとやる。それから、持ち出しでございますが、これにつきましても、違法な種苗の持ち出しが起こらないように、空港におけますリーフレットの配布といったようなことも通じまして啓発活動を強化してまいりたい。もう一点は、やはり種苗業者といった方々への指導も強化してまいらなければならない。さらには、先ほどもお話ございました、品種保護Gメンといったような形を通じました育成者権侵害の実態の把握をしてまいる。

 そういうことを通じまして、違法な持ち出しあるいは持ち込みというものの防止ということをしっかりとやってまいりたいということでございます。

○高橋委員 この持ち出しの問題については、私、今イグサのことを取り上げたのは、一つのヒントになるだろうと。雲をつかむような話ではなくて、現実に持ち込まれたルートや産地、手法がどんなものであったのか、それを、一つのことをきちっと調査をしていくことによって、やはりそういう手法が見えてくる、当然そう考えるんですよね。ですから、啓発も大事ですけれども、そこまで踏み込んだ取り組みを、ぜひこれは検討していただきたいと思っております。

 先日、つくばの農業・生物系特定産業技術研究機構、これですけれども、視察した際、米一粒からDNA鑑定ができるシステムを見せていただいて、バンドが大変わかりやすいですので素人目にもよくわかるわけですが、それをさらに識別をして、新潟県から発注をされて、耐いもち病のコシヒカリのDNA識別を行っているのを見ました。残念ながら、こういう依頼が新潟県だけだということだったので、もっと生かせばいいのになと思ったわけです。貴重な研究成果をやはり地域ブランドの振興に結びつけていくということが非常に重要ではないかと思っています。

 日本が外国へ出願している権利の件数が百五十九件に対し、外国から日本に出願する件数が三百五十四件、国内全体の三割を既に占めております。あるいは、種苗そのものの輸入、外国からの輸入も輸出の三倍にもなっています。そういう国際競争にさらされているという今の現状の中で、本当の国内の種苗農家の育成、保護、ここに力を入れるということが求められていると思うんです。この点は強く要望しておきたいと思います、もう一つ聞きたいことがありますので、ここは要望にとどめたいと思います。

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