国会質問

質問日:2005年 6月 15日 第162国会 農林水産委員会

全農秋田架空取引問題 ―参考人質疑

 高橋千鶴子議員は15日の農水委員会で、全農秋田県本部の米横流しと架空取引問題について、全農会長と背景にある国の責任をただしました。全農の田林聡理事長は「営業課長が個人商店的な振る舞いを行っていた」とのべ、組織的責任を認めようとしませんでした。高橋議員は、価格形成センターの取引監視委員会が機能を果たしていなかった問題に言及。農水省の村上秀徳総合食料局長は同委員会の機能を強化する考えを明らかにしました。

(2005年6月17日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは初めに、全農秋田県本部の問題について、田林理事長もおいでいただいておりますし、少しだけ伺いたいと思っております。

 米の横流しと架空取引という重大な問題、また補助金の不正受給ということがございました。非常に、先ほど来指摘をされているように、たび重なる不祥事でございまして、やはり県民にとっても生産者にとっても、その信頼を傷つける重大な問題であり、再発防止のために関係者の皆さんの御努力をいただきたいと思っております。

 それで、農水省の調査、中間報告と、また全農による調査報告なども読みました。その中で、この横流しに至るまでの長い間の関係というのが、非常に根深く長く続いていた、問題が起こっていたということに改めて驚かされました。

 平成九年に既にパールライス秋田とS商事との関係が始まっていて、その中に帳合いという、介在した会社が、A社、B社ということがあった。パールライス秋田とS商事が直接取引をしていったのではなくて、あくまでも間にその会社があり、S商事が支払い可能な額を前もって聞いて、その額だけ請求書を出してお金をもらっていたり、あるいは、それがもっと悪くなって、入金されたのを確かめて、後から請求書を出すような関係。それがとうとう行き詰まって、お金が入らない、そういうことが続いて、一度は取引をやめなさいということがあったにもかかわらず、また別のB社を介在しての同様の取引が続けられてきた。最終的には、二億五千百万もの不良債権という形になってくるわけですけれども、なぜここまでしてそういう会社との関係が維持されなければならなかったのか、執着しなければならなかったのか、そこを一定掘り下げる必要があるかなと思っているんです。

 ただ、全農が示された調査報告書は、そこの部分は非常に詳しいんですけれども、受ける印象としては、率直に言って、営業課長なりの個人の責任だという受けとめを非常に感じます。やはりそうではなくて、そこを見抜けなかったことも含めて組織全体の問題だという、そういう受けとめがあるのか、非常にそこが伝わってこないですので、まずそこが聞きたいというのが一つ。

 それから、もともと経済連が売り手と買い手が同一だったという問題については、平成六年に既に公取から指摘をされているわけですけれども、その後、分社化を図ったにしても、依然として一〇〇%子会社であると。ですから、この指摘は基本的に変わっていないと思うんですね、いわゆる売り手と買い手の関係は。そういう意味で公取の指摘が生かされなかったと思いますけれども、この点についてどうお考えになるのか、まず伺いたいと思います。

○田林参考人 二年前の米の販売環境というのは大変厳しいものがございまして、余り米の販売をどうするかということで、県本部の職員、みんな非常につらい思いをしてきたところでございます。

 帳合い取引ということで、某卸を経由してS商事と取引をした経過の中には、兵庫県内における販売の権利が秋田パールにはなかった、したがって、兵庫県内における販売の権利を持っている某卸を通じて、帳合い取引を通じて、兵庫のS商事と取引をしたという経過があります。したがって、そのことが帳合い取引を長く続かせてきたという基本的な原因でありまして、帳合い取引自身に問題があったのではない。

 S商事は、S商事の取引先の倒産によって一挙に秋田パールに対する支払いが滞ってきた、その滞った内容について、S商事と個人的な取引をしていたこの営業課長が全く会社に報告しなかった、そういう問題がありまして、発覚した場合には既に大きな不良債権を抱えていたということでございます。

 組織的かどうかということにつきましては、そういう意味では、この営業課長が個人商店的な振る舞いを行っていたというふうに理解をしております。

 それから、公取による独禁法のおそれがあって会社の取引にしたんだけれども、依然として問題があるんじゃないかという点でございます。

 そもそも、経済連時代、経済連は、農家の生産した米を上場し、それを同じ経済連内の精米部門であるパール部門が買うという上場及び入札を同時にやった。そのことが公取によって指摘され、食糧庁に対し申し入れがあったやに聞いております。したがって、その指導に沿いまして私どもは分社化をし、経済連内にあったいわゆる米の卸部門を会社化しまして分離しました。それによって食糧法上でもその取引は可能になったということでございまして、そのこと自体が問題であるということは今現在でも認識をしておりません。

 ただ、今度ありましたように、県本部のトップと会社の社長が同一人物であるということでこうした取引を発生させる土壌ができているということでございますので、私どもは、この六月末をもってそうした関係を一切断ち切るということを決めております。

○高橋委員 幾つか確認をしたいと思うんですけれども、帳合い取引は問題ではなかったとおっしゃいましたけれども、その取引の形態が問題なのではなくて、その取引を通して不正常な状態がずっと続いていたということは確かですよね。要するに、代金の決済のあり方の問題や、組織に対する相談の問題や、入金されなくてもそれが長く続いていた問題や、そうした点ではやはり問題だったし、それが一人に任されていたということ自体が組織の問題なのであって、個人の振る舞いということで解消してはならないと思うんですね。それは同じ理論で、やはりこの社長と本部長が同じ人だった、同一人物だったということは全くそのとおりなんですけれども、それはもうわかり切っていたことで、そういうことがやはり公取の指摘の精神が生かされなかったと見るべきじゃないかと思うんですが、そこでもう一度。

○田林参考人 個人商店的な取引を会社として把握できなかったということは、それ自体、管理が非常にずさんだったというふうに認識しております。ただ、そのことを組織的というのかどうかということについては、若干疑問が残るところでございます。

 それから、公取の指摘に対して、会社化をして、その会社の社長が県本部長を兼任していたということの問題については、御指摘のとおり問題があった、そういう意味では、公取の指摘の精神を明確に反映をしなかったという意味で問題があったというふうに思います。したがいまして、今回、そうした兼任がないように解決をさせていただきました。

○高橋委員 次に、農水省に伺いたいと思うんですけれども、米の入札については以前から価格形成の公正さに疑問が指摘をされて、コメ価格センターでも内部検討を始めたやさきだった、こういうふうに聞いております。あるいは、取引監視委員会が機能を果たしていなかったという指摘に対して、これを認める答弁がさきの参議院の委員会でもあったと思っております。

 そういう点で、指導監督機関である農水省としての責任をどう考えるか、まず伺います。

○村上政府参考人 お答えいたします。

 コメ価格センターにおける公正な価格の形成というのは非常に重要というふうに認識しているところでございます。

 センターの取引監視委員会に対しまして、基本取引が行われた当日に、疑わしい応札の有無を監視する基本的な役割を適切に果たすように、それから、不公正な取引に該当する事例を具体的に列挙いたしまして、売り手、買い手に周知徹底するということで不公正行為の発生を未然に防止するということ、それから、入札取引当日以降におきましても、取引監視委員会を開催いたしまして取引の結果を分析する、それから、米取引をめぐる動向について把握するというようなことを基本的な役割として、その取り組みを随時指導してきたわけでございますが、今回、このように監視委員会の機能が必ずしも十分発揮されなかったということにつきましては、どのようなケースが特異で疑わしいと見きわめるための判断基準が必ずしも明確になっていなかったということで、今回のケースも見抜けなかったのではないかというふうに考えております。

 そういう意味で、取引監視委員会の機能が十分発揮させられる必要があるということ、それから、信頼を回復するための取引ルールの見直しを緊急に行う必要があるということで、農林水産省といたしましても、そのセンターの検討グループに正規のメンバーとして参画いたしまして、一定の基準に該当するような疑問のある取引は自動的に取引監視委員会が調査をするとか、それから、必要に応じて取引の留保、無効等の措置をとるといったこと、それから、不正防止のためのルールを大幅に強化し、次回の六月の入札から適用するというようなことで鋭意取り組んで責任を果たしていきたいというふうに思っているところでございます。

○高橋委員 限られた時間ですので簡潔にお願いします。

 もう一つ、どうしても質問したいテーマがありますので、ここは指摘にとどめたいと思います。

 やはり私は、米を市場原理にゆだねて、米価格における国の責任、国の関与を最小にしてきた、その背景をしっかりと見なくてはならないと思うんですね。いろいろ全農の方たちが、例えば今回、冷害で品薄感を感じて高額過ぎる仮渡金で集荷に走らざるを得なくなった問題、仮渡金より低くなる米価格を何とか上げなければならないとした状態、これは決してそれで免罪するという意味ではございません。しかし、その背景に米に対する政策の大きな変化があった、価格の下支えということをやはり農水省の責任でしっかりやるべきではなかったかということを指摘しておきたいと思うんです。特に、十五年産の米価の著しい価格の下落に対しては、政府米の大放出という問題もるる指摘をされてきたわけですね。そういうことをしっかりと認識をして価格の下支えに対する責任を果たしてほしいということを、これは要望にしておきたいと思います。

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