高橋千鶴子議員は15日の農水委員会で、有明海の再生のため長期開門調査を行うよう要求しました。諫早干拓工事中止を求める仮処分に関する福岡高裁判決は高いハードルを課した不当な判決ですが、中長期開門調査を含めた調査研究を今後も実施すべきだとしています。農水省の川村秀三郎農村振興局長は「中長期開門調査は非常に予期せぬ被害が発生するため、他の調査を実施する」と答えるにとどまりました。
(2005年6月18日(土)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 きょう、もう一つどうしても伺いたかったのは、諫早干拓の問題であります。
五月十六日に福岡高裁が、昨年八月の佐賀地裁による仮処分命令を覆す決定をいたしました。佐賀地裁の判決は、民事事件において大規模公共事業を工事途中で差しとめを命じたという大変画期的な判決でございまして、全国のマスコミも非常に評価をしたということは周知の事実であったかと思うんです。この中では、有明海の漁業被害と干拓工事との因果関係を明確に認め、同時に、農水省がみずから設置したノリ不作等検討委員会の結果を尊重すると言っていたはずなのに、ここで言われていた報告を無視していまだに中長期開門調査を行わず、因果関係の解明を困難にしてきた、その責任に対しても言及されていたと思っております。しかし、福岡高裁は、その裁定を後に戻すという結果になったわけですけれども、漁民側に対して因果関係の証明を高いものが要求されるという形でハードルを課した、非常に不当なものであると私は思っております。ただ、その高裁の判決でさえも中長期開門調査の必要性を排除できなかった、このことをやはり無視するべきではないと思っております。
そこで伺いますが、福岡高裁が、九州農政局はノリ不作等検討委員会が提言した中長期開門調査を含めた有明海の漁業環境の悪化に対する調査研究を今後も実施すべき責務を有明海の漁民に対して一般的に負っていると。この指摘に対してどうこたえていくのかということをまず伺いたいと思います。
○川村政府参考人 お答えいたします。
有明海沿岸の自治体の要請は、一日も早い有明海の再生を要望しているということだと思います。私どもも、この有明海の再生という点では、非常に重要な課題だということで共通の認識を持っております。
ただ、この中長期開門調査は、これまでも御答弁しておりますとおり、非常に予期せぬ被害が発生する、かといって、その調査の結果もはっきりしない、予想できないということでございまして、これにかえまして、有明海の再生に向けた、その他いろいろな調査あるいは現地実証、こういったものをやろうということでございまして、こういった中でも、できる限り漁業者の方々の御意見も踏まえながら調査を実施し、有明海再生への道筋を明らかにしていく、そういう基本的な考え方で臨んでまいりたいと思っております。
○高橋委員 今おっしゃった予期せぬ被害については、既にこれまでも根拠がないということを述べておりますので、きょうはここでは触れません。問題は、この福岡高裁でも述べている因果関係ですよね。局長がおっしゃる中長期開門調査にかわる調査が、漁業被害と干拓工事との因果関係を証明するに足るものなのかどうか伺います。
○川村政府参考人 諫早干拓事業とそれから有明海の環境との因果関係でございますが、これまで累次の調査をやっております。
一つは、短期の開門調査を含みます開門総合調査もやりましたし、そういったことでは事業の影響はほぼ諫早湾内にとどまっているという結果になっております。その後の調査も、これに矛盾するような結果はないわけでございますので、そういった因果関係自体が、私どもとしては今のところ認められないということで臨んでおります。
○高橋委員 福岡高裁でも、確かに定量的には明らかではないとはしていますけれども、干拓工事と有明海の漁業環境の悪化との関連性を否定できない、こう言っているわけですよね。
だから、それを証明しろと言っているわけで、それを漁民にだけ押しつけるのは問題だと言っているわけですが、それに対して、もう証明をやめたと言っているわけですよ、農水省は。それがおかしいと言っているんですね。だって、もう工事はやめないと決めていて、それで調査をやる、どんな調査をしようとも工事はやめないということなんでしょう。それだったら、全くこの福岡高裁の意思さえも無視していることになりませんか。
○川村政府参考人 今も申し上げましたとおり、有明海の環境のいろいろな実証、こういったものが変化しているということは、これは皆さん認めますし、我々も認めておりまして、その解明の必要性、それはもう十分認識をしております。ですから、その有明海の環境変化、それについてのさまざまな調査等は最大限努力をしていきたいということでございます。
○高橋委員 時間がなくなりましたので、次の機会を待ちたいと思いますが、漁民の皆さんが、何人死んだら門をあけてくれるんだ、こう訴えていること、それをしっかりと受けとめていただきたい、そのことを要望して、終わりたいと思います。