○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、参加をいただいて、貴重な御意見をいただきましたこと、本当にありがとうございます。
最初に、和田さんにお伺いをしたいと思うんですけれども、BSEの日本での発生を通して、食の安全、安心という言葉が定着し、農水省は消費者の視点ということを強調するようになりました。私は、生産者の思いと消費者が連帯をして、全頭検査を初めとする安全、安心の体制を日本がつくってきたということは非常に重要に思っております。同時に、これを後退させてはならないというふうに思っております。
先ほど和田さんが、全頭検査が私たちは万能だと言っているのではないということ、それから、未来永劫やれと言っているのでもないとおっしゃいました。私はこれは大変同感であります。私も繰り返し述べてきたところなんです。何か輸入再開を急ぐ方たちは、消費者の反応がすぐ過剰であるとかよく知らずに物を言っている、そういう見方をしているというふうに思うんですね。しかし、私は、今、和田さんがお話しされたように、万能ではないし未来永劫ではない、しかし、今の段階ではまだこの体制をしっかりやっていって、その中で、本当に納得できるし、安全、安心だと言えるときが必ず来るという視点に立つことが大事だし、そこに本当の意味でこたえていくことがこの問題を解決する糸口になるんだ、このように思っているんですね。
そこで、消費者が求めている情報公開とは何なんだろうか、あるいは、この間の行政は消費者の視点を本当に取り入れてきたんだろうかということに疑問を感じるわけです。
食品安全委員会がリスクコミュニケーションを全国で開催しました。傍聴も全面的に認められましたし、意見も聞く、情報も提供してきたというけれども、しかし、その一方で、安全委員会から座長代理として参加をされた金子先生が、日本の検査、食品安全委員会の今やっている検査と米国の輸入再開とは違うものなんだと言っていたのに、結局リンクしたんじゃないかという意見が述べられたり、あるいは、安全委員会のリスクコミュニケーションに参加をされた消費者の代表から圧倒的に反対の意見が多かった、一部の業界の方が何度も手を挙げたりして賛成の論を述べたりする、そういう状況だったにもかかわらず、どうもそれが取り入れられていないんじゃないかという意見なども聞かれておりました。
その点で、率直に、この間の行政と消費者の視点という点でどうだったのかということを、御意見を伺いたいと思うんですけれども。
○和田参考人 確かに、非常に回数多く、リスクコミュニケーションあるいはパブリックコメントというような形で、消費者だけではなく一般の意見を聞くチャンスというのはあるようになってまいりました。それから、情報公開についても、いろいろな審議会がオープンになり、そこでの資料が一般に渡されるようになってから、ちょっとはっきりいたしませんけれども、十五、六年、やっとというところだと思うんですね。それまでは一切非公開だったというようなことから思いますと、やはりいろいろな情報が出るようにはなってきた。それから、私たちからすれば、消費者の意見を言う機会はふえたということは言えると思いますけれども、それが本当に政策決定の場でどのように生かされていくのかということには疑問を感じることがたくさんあります。
それから、審議会なり、いろいろな名前の会合がありますので審議会だけには限りませんけれども、そのメンバー構成を見ますと、初めから結論は出ているということを感じることが、これは以前からそうですけれども、最近になってやっと公募の委員が何人か入っている委員会もできたという程度ですけれども、やはり徹底的に政府の案に対して反対をするというようなメンバーは、なかなかその委員会の中には入らない。だけれども、とにかくやはり、問題を指摘したりなんかするメンバーがいなければこれはちょっとひどいんじゃないかということで何人か入れられているというような感じを持ちまして、私も過去から幾つかに参加しておりますけれども、正直なところ、そういう場に入ることが本当に正しいんだろうかということを、自分自身も、それから会の中でもよく話をいたします。
今のところ、会合も公開されておりますので、そこでどういう発言をしていくかということは一般にオープンになってまいりましたので、大体参加してはおりますけれども、お尋ねのお答えになるかどうかわかりませんが、チャンスはできたし、いろいろな形は整ってきたけれども、本当にそれぞれの場合の意見が生かされているかどうかということには、まだまだこれからだという感じが強くしております。
以上でございます。
〔山田委員長代理退席、委員長着席〕
○高橋委員 ありがとうございます。
今の率直な御意見、初めから結論ありきではないかという指摘は本当に重く受けとめるべきだと思うんですね、行政の側でも。前の参考人質疑のときにも、やはり安全委員会の委員からもそうした指摘がございました。やはり、そうではないんだ、いろいろな立場の方たちが自由に話し合う、そして自由に意見を述べてそれをちゃんと受けとめるという姿勢を本当に求めていきたいと思いますし、和田さんにおかれましては、そういう立場でこれからも大いに発言をされていただきたいと思います。時間があれば、もう一度伺いたいと思うんです。
そこで、今度、品川先生にぜひ伺いたいと思うんですけれども、そういう点で、品川先生も随分今の食品安全委員会のあり方に御意見をお持ちだと思っております。
まず一つ、話を進める上でもう一度確認になるんですけれども、若い牛ほど感染しやすいということが学界の中でも随分言われているかと思うんですね。しかし、プリオンが少量過ぎて検出できない、いわゆる検出限界ということが言われて、検出できないんだから検査をしても無意味だ、もっと言われているのは、アメリカの学者と日本の学者が例えば討論などをして、一部の学者ですけれども、検出できないのに検査をやったら、逆に、感染しているかもしれないのに陰性ですよと宣言しちゃう、これはいかがなものか、そういうような議論までされているんですね。
私は非常にここに違和感を感じます。仮に、今検査で検出できないとしても、そういう限界も含んでいるんだということをきちんと周知した上で全体の体制をちゃんとやっていくんだよとメッセージがされていることが大事だと思うし、同時に、先生は今、プリオンの専門家で、原因の究明やプリオン検出の高度化を研究されていると思うんですね。生体牛の問題やあるいは蓄積の過程、いわゆる脳にたどり着くまでのいろいろな過程なども研究されていると思うんです。そういう過程からいっても検出限界を下げることは可能であるし、その途上を今断ち切るべきではないと思っているんですけれども、その点についての先生の御意見を伺いたいと思います。
○品川参考人 全般的でして、私がどのように何を答えたらいいか、ちょっとよくわかりませんが、ひたすら一生懸命プリオンの研究をやっているとしか言いようがないんです。何に答えたらいいのか、ちょっと困りましたね。(高橋委員「検出限界を下げること」と呼ぶ)
プリオン検出の限界ということに限ってお話をいたしますと、これは先ほど何度も繰り返しておりますが、プリオンだけではなくて、医学領域の病気の検査でもありますが、すべて限界があるわけです。日本の場合は、プリオンの場合、限界がありますから、そこのところを補完するためにSRMを除いている。検査をしないでSRMを除くということが一つありますが、これはSRMを除けば一〇〇%体からプリオンがなくなるというのは間違っておりまして、SRM以外のところにもプリオンが存在するということがわかってきました。
そうしますと、検査を行って検出できない程度の、これが陰性であるような牛のSRM以外のところに存在するかもしれないプリオンの量というのは非常に少ないわけです。ですから、検査で検出できないような個体のSRMを除いてしまって、さらに残っているものというのは非常に少ないであろう。
これは、現在の科学レベルで最大限の努力をしているということであるわけでありまして、現在のところ、少なくとも日本の食肉の安全というのはこのようにして確保しているというふうにしかお答えすることができません。
○高橋委員 それで私が求めたことには答えになっていると思うんですね。やはり、SRM除去だけでいいということに対して、検査の側から見てお互いに限界があるという点での証明だったのかなと思っております。
それで、先ほど山田委員の方から、二十一カ月、二十三カ月の、先ほど先生が間違いないとおっしゃったあの検査の問題ですけれども、アメリカはそれがちょっとおかしいというふうな発言をされたということに対して、にわかプリオン学者が出てきたという指摘もありました。
私自身も一緒にアメリカに行った人間でありますけれども、そこで、にわか専門学者というのは、実は日本にもいたと思うんですね。この二十一カ月、二十三カ月はBSEとはちょっと違うかもしれないというのは、別にアメリカで聞いたわけではなくて、私は日本の農水省や厚生労働省の説明の中で聞きました。同じではないと思う、そういう疑いがあるからまだわからないと。
私は、日本の中にまずそういうのがあって、一緒じゃないというふうにしてしまって、そのことが今回の、つまり、彼らの行政の意図が中間とりまとめにおける線引きに大きく左右したと言わざるを得ないと思うんですが、その点、先生、いかがでしょうか。
○品川参考人 最後の二十一、二十三カ月あるいは二十カ月の線引きに云々ということに関しては、私はわかりません。
○高橋委員 要するに、日本においても二十一カ月、二十三カ月はBSEじゃないかもしれないよという議論があった、それが線引きに影響したんじゃないかということです。
○品川参考人 日本において、二十一カ月、二十三カ月というのは、私が座長をしております牛海綿状脳症の診断に係る委員会でこれは判定を行ったわけでありまして、どなたからも異論はありませんでした。
ただ、違いますのは、二十三カ月の症例については、電気泳動によるウエスタンブロットのパターン、このものが従来のものと違う非定型的な形のものであろうと。たまたま同じ年に、これはドイツ、フランス、ベルギーだったかな、イタリアというような、ちょっと国ははっきり覚えていませんが、かなり幾つかの国から同じように従来のBSEのウエスタンブロットとパターンの違うものが見つかってきたという報告がされております。
ですから、そこの中の一つではあっても、BSEでないということとは全く関係がありません。
○高橋委員 わかりました。
私自身は、行政の中でそういう説明をしていた人がいたということをまず教えておきたいと思うんですね。そういう意味で、ずっと議論されている食品安全委員会の議論が、最後の段階で座長一任後に一文が設けられたということに深く関与しているのではないかということを指摘をしたかったわけなんです。
今言ったように、二十一カ月、二十三カ月に対して異論を挟む人がもしいなかったんだとすれば、二十一カ月まではとにかくわかったと。だけれども、そこで線を引くという、つまり、二十と二十一カ月にどれほどの違いがあるのかと思うんですね。そこで線を引くということにも、むしろ異論があったというか、それが大勢ではなかったと思いますが、いかがでしょうか。
○品川参考人 きょうも二回くらい言いましたが、その最後のところに私は初めて欠席をしてしまった段階でこういうことが起きたわけであります。ただし、後ほど聞くところによりますと、おっしゃられるとおり、これは異論があったと思いますし、先ほど私も答えましたように、二十一カ月、二十三カ月で検出できているものが、二十カ月のところで線を引くということに関して、何ら科学的な根拠はないというふうに言い切れると思います。
○高橋委員 ありがとうございます。
線引きについて、やはり科学的根拠がないと言われたと思います。
その後、中間とりまとめが出されてから、私も委員会で何度も安全委員長など参考人に来ていただいてこの問題を質問をいたしました。そういう科学的根拠がないという意見の方がむしろ多かったし、また、それが最後まで慎重にすべきであるということが議論されていたにもかかわらず、結果として、あのときの中間とりまとめがもう既に結論になっていたというか、線引きを決定的にしたということは否めない事実だと思うし、また、先般の参考人質疑の中で、山内教授が、行政にある意味で利用されたということもお認めになりました。
こういうことを含めて、先生は最近、委員会に出席をされておられないわけですけれども、やはり科学者としての自由な議論が行政によってねじ曲げられたという側面を考えていらっしゃるのかどうか、伺いたいと思います。
○品川参考人 いや、困った質問ですが。
先ほど言いましたように、私は、食品安全委員会というのは純科学的に結論を出す、それだけの委員会であって、その出てきたものに関して行政が利用して、言ってみれば、リスクマネジメントの方に利用していくんであろう、リスクマネジメントを実施するんであろうという理解でいたのでありますが、どうも取りまとめのところがなかなか私の考えていたものと違って、リスクマネジメントに踏み込んだような取りまとめが行われていたというようなことはあると私は感じております。
○高橋委員 ありがとうございます。
木村先生に伺いたいと思います。
先ほど表を示して、代用乳の可能性について、この間発生した牛と同じ代用乳を使っているということは見て歴然のことでございますし、また、飼料規制が始まってからも発生していることなどを見ても、非常に注目すべき議論ではないのかなと思っております。木村先生や広島大学の三谷先生などが、この研究会報の中で、その点で非常に多岐にわたって研究されているということも、私は大変貴重な御意見だと思って興味を持って伺っておりました。
その中で、やはり動物に感染させているんだという発言を非常に重く受けとめたわけなんです。要するに、健康かもしれないのにルートがわからないために殺処分をしてしまったというふうな経過もあったわけですし、入り口をふさぐのが一番いいわけですよね。感染させないのが一番いいと。そういう点で、ルートの解明と徹底した飼料の本当の意味での入り口規制ができたらいいなということを望んでおります。
そういう点で、今の食品安全委員会の報告というのがちょっと不十分なのかなと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。
○木村参考人 私は、疫学的調査の結果というのは、どなたかからも指摘があったかもしれませんが、技術者の意見が反映されない報告が出る仕組みの中に入り込んでしまったというふうに考えております。
私たち技術者は、いろいろな技術について議論を闘わせて、その論理の精練化をしなくちゃいけないと思っております。そういう意味で、自分の論理に対して異なった意見があるときは徹底的に議論をするということが必要だと思っています。私たちは、研究会報で技術報告レポートに対して技術者として投げかけをしておりますが、技術の精練の場になっておりません。そういう意味で非常に残念であるということ。
もう一つは、やはり代用乳の話が薄れて交差汚染の話になったのは、やはり誘導的な結果が先にあったのではないかというふうに、私は委員会でも何でもありませんが、疫学的に考えていこうとすると、どうしてもそのようにとれてくるわけでございます。
なぜか。代用乳、この表現の仕方もあらかじめつくられた結論に誘導したのではないかなというふうに、えさの場合は、そんなことを感じております。ミート・ボーン・ミールの交差汚染はノーとは言えないという書き方、あるいは代用乳はイエスとは言えないという書き方、結果としてノーとは言えない方が表に出る。これは作文の書き方であると。技術的な議論の結果を要約したものではないんではなかろうかと。
そういう意味で、技術的な結果の論旨の精練ということを技術者はきちんとやるべきじゃないかなという立場で、こういうような研究会報を出すとか、あるいはともに研究するという立場になっております。
以上でございます。
○高橋委員 ありがとうございました。
きょう、それぞれからいただいた意見を、また生かしていきたいと思います。ありがとうございました。