国会質問

質問日:2005年 10月 18日 第163国会

障害者自立支援法案

 障害者の福祉、医療サービスに一割の定率負担(応益負担)を求める障害者「自立支援」法案は十八日の衆院本会議で審議入りし、日本共産党の高橋千鶴子議員が質問しました。
 高橋議員は、同法案が障害者から批判の強い「応益負担」をそのまま柱にすえ、法案の根幹が政省令にゆだねられたままで、サービスにかかわる重要な内容が明らかにされていないと指摘。「本法案は撤回し、障害者や家族の声を真摯(しんし)に受けとめ、障害者の真の自立と社会参加のため、障害者福祉施策の抜本的な再検討を行うべきではありませんか」とただしました。  また、障害者の公費負担医療にも「応益負担」を導入することについて、「所得保障がないもとで障害が重くなるほど負担を増やすことは障害者の生きる権利を否定するものだ」と追及しました。
 尾辻秀久厚労相は「きめ細かな軽減措置をつくって、限りなく応能負担に近づけた」とこれまでと同じ弁明を繰り返し、「一刻も早い成立をお願いしている」と答えました。
 同じ本会議で、民主党は同党が提出した「自立支援」法案の対案の趣旨説明をしました。民主党案は、現行の支援費制度を当面継続(精神障害者を加える)するもの。医療費の公費負担も続け、負担能力に応じた応能負担を維持する内容です。
 政府提出法案は、通常国会に提出されましたが、衆院解散に伴い審議未了・廃案になりました。政府は、今特別国会に再提出。参院はわずか三回の委員会審議で可決し、衆院に送付されました。

(2005年10月19日(水)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、障害者自立支援法案について質問いたします。(拍手)
 まずお聞きしたいのは、政府が、さきの通常国会での審議をどう受けとめているのかということです。
 衆議院で三回の参考人質疑が行われました。十九人の参考人のほとんどの皆さんが指摘されたのが、応益負担の問題でした。今回提出の法案も、障害者の皆さんが一番問題にしている応益負担をそのまま柱に据えています。しかも、障害程度区分やサービス報酬基準などの事項が政省令にゆだねられたままで、依然として重要なサービスにかかわる内容は明らかにされていません。これでは、必要なサービスが受けられるのかという障害者の不安は募るばかりです。制度の根幹にかかわる重要事項を示さないまま、負担だけを押しつける政府の姿勢は極めて重大です。
 全国の障害者や家族、関係団体は慎重審議を求めています。今政府がなすべきことは、障害者や家族から出されているさまざまな懸念や疑問に正面から答えることではないでしょうか。そのために、本法案は撤回し、障害者や家族の声を真摯に受けとめ、障害者の真の自立と社会参加のため、障害者福祉施策の抜本的な再検討を行うべきではありませんか。答弁を求めます。
 障害福祉サービスへの応益負担の導入は何をもたらすでしょうか。
 障害者にとって、介護や移動などにかかわる各種サービスは、日常生活を維持する上でなくてはならないものです。障害者の自立と社会参加を保障する不可欠の条件であり、いわゆる利益とは全く異なるものです。障害者の生存権を保障するこの重要なサービスを利益と称して、それに負担を求めることは許されません。障害者の現実に照らせば、所得保障がないもとでは、障害が重くなればなるほど負担がふえることになります。これは、障害者の生きる権利を否定するものではありませんか。
 政府は、減免制度を設け、きめ細かな配慮をしていると言いますが、例えば、通所施設を利用している障害者の工賃は月額平均七千円程度です。ところが、施設の利用料負担はこれをはるかに超えています。先日もこんな訴えがありました。作業所でもらう工賃は六千円、丸々交通費に消えてしまう、それでも利用料を負担しなければならないのでしょうか。これが障害者の置かれている実態です。どうして障害者がこれで自立できるでしょうか。明確な答弁を求めます。
 さらに問題なのは、障害者の公費負担医療にも応益負担を導入することです。
 障害者にとって、医療保障は命綱として特別の意味を持っています。その医療への負担増は、障害者を医療から遠ざけ、健康の悪化を引き起こしかねない、これは明らかです。生命の危機に追いやる重大な懸念すらあります。
 公費負担医療は、それぞれ特性を持っています。長期の治療が必要な腎臓病などの育成医療や更生医療、精神障害者の社会復帰に不可欠な通院公費、これらを一緒くたにして、一律に一割の応益負担を押しつける、余りにも乱暴ではありませんか。
 大臣は、障害者の生命と健康にどのように責任を果たすおつもりですか。
 以上、明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

○国務大臣(尾辻秀久君) 障害者自立支援法案の撤回とその再検討についてのお尋ねでございました。
 今回の法案は、障害種別間で制度やサービス基盤に大きな格差がありますことや、大きな地域間格差がありますことなど、現行の支援費制度の問題の解決を図りますとともに、障害者の自立した生活に対する支援の一層の充実を図るためのものでございまして、一刻も早い成立をお願いいたしておるところでございます。
 なお、今回の法案の意義や内容につきまして、障害者や御家族を初めとした関係者の皆様の御理解を得られるよう、丁寧に御説明をいたしますとともに、政省令事項などの検討に当たりましては、これらの方々の御意見も伺いながら進めてまいります。
 利用者負担の見直しについてお尋ねがございました。
 障害者自立支援法案におきましては、障害福祉サービスを契約に基づきだれもが利用できるものとして、他の契約による制度と同様に、利用者に対し、受けたサービス量に応じた負担と食費等の実費負担を求める仕組みに改めることといたしております。
 また、障害福祉サービスにかかる費用が増大いたします中で、その費用を皆で支え合うという観点から、利用者負担の見直しとあわせ、在宅サービスに関する国の負担を義務的なものとしております。
 ただし、御負担を求めるに当たりましては、各般のきめ細かな負担軽減措置を講じておりまして、工賃等の収入が少ない方や重度の障害がある方でも障害基礎年金と工賃等の収入で対応できるように配慮しておるところでございます。私は、限りなく応能負担に近づけた、こういうふうに表現をいたしておるところでございます。
 これらの見直しにより、障害者がみずからも制度を支える一員となりますとともに、必要なサービスを安定的に受けることができる仕組みを実現することが障害者の自立につながるものと考えております。
 公費負担医療制度の見直しについてお尋ねがございました。
 障害者の公費負担医療につきましては、公平の観点と制度の安定性、持続可能性の確保の観点から、負担の仕組みを共通にしつつ、費用を皆で支え合っていただくことが必要であると考えております。
 こうしたことを踏まえまして、原則として医療費の一割を御負担いただく制度といたしておりますが、所得の低い方や継続的に相当額の医療費負担が発生する方などにつきましては、所得に応じた負担の上限額を設定するなど、きめ細かく配慮いたすことといたしておりまして、無理のない範囲で御負担いただきたいと考えております。
 また、本法案におきましては、サービスを可能な限り障害種別にかかわらないものに一元化し、障害者施策全体としてその充実を図るため、自立支援医療の制度を設けることとしたものでございまして、現行の公費負担医療の趣旨や目的を変えるものではなく、これまで同様、必要な医療を確保してまいります。(拍手)

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