「一連の問題の根本に、“まず輸入再開ありき”の政府の姿勢があたのではないか」-日本共産党の高橋千鶴子議員は30日の衆院予算委員会で、中川昭一農水相の答弁を通じて浮き彫りになった米国産牛肉の輸入再開にあたっての政府の無責任ぶりを追及しました。
高橋氏は、食品安全委員会の寺田雅昭委員長に、1月20日に危険部位混入が発覚した事態についての所感を求めました。寺田氏は「米国の対応がいかにずさんかと大変驚いた。原因と今後の対応をしっかり見ていきたい。(安全確保の)方策について農水、厚労両省から国民に意見交換してほしい」と述べました。
また、危険部位除去の条件が破られたことについて、高橋氏が「食品安全委答申で示した輸入再開の前提が崩れたということではないか」と尋ね、寺田氏は「おっしゃるとおり。崩れたと思う」と答弁しました。
高橋氏は、輸入再開の前提が崩れているのに中川昭一農水相が行政としての対応に問題がないと答弁したことを批判、答弁の撤回を求めました。
中川農水相は「成田の動物検疫所で違反を発見し、見抜いた」と強弁。高橋氏は、輸入再開直後で特別な検査態勢を取っていたから偶然見つかっただけだと反論し、政府の責任をただしました。
(2006年2月1日(水)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
私も、米国産輸入牛肉の輸入再開問題について質問したいと思います。
午前からの今の質疑のやりとりを聞いておりまして、非常に怒りを禁じ得ません。閣議決定や国会答弁がこんなにも軽いものなのか、このことを本当に怒りを持って抗議をしたいと思います。今後の国会の答弁に責任を持った対応をしっかりと求めておきたいと思います。
この危険部位の混入事件、そして、今回の閣議決定を翻した農水省の決定という問題、これらの一連の問題が起こったその根底には、まず輸入再開ありき、食の安全よりアメリカとの約束を守る、この政府の姿勢があったのではないでしょうか。このことをまず強く指摘をしておきたいと思います。
それで、きょうは、ずっと待機をしていただいて、食品安全委員長の寺田さんにおいでいただいております。
なぜ、このような事態になったんでしょうか。輸入再開の決め手となったのは十二月八日の食品安全委員会の答申でありますが、その後の急展開です。わずか四日後に決定、その四日後には牛肉第一弾が入ってまいりました。一月後には危険部位の混入であります。率直に、この間の事態について寺田食品安全委員長の感想を伺いたいと思います。
○寺田参考人 お答えいたします。
米国からの輸出プログラムにつきましては、私どもの委員会でも審議をいたしまして、その必要性、重要性に関しましては、答申案に繰り返し書いているところであります。
今、高橋先生が言われました問題につきまして、話を聞いた最初は、本当のことを言うと、率直に言いまして大変驚きました。これは、米国の対応がいかにずさんかということを大変に驚いたという感じが、率直なところ、ございます。
ただ、この問題は、米国のずさんさということが大きな問題でございまして、現在、その原因、あるいは今後の対応をするということなので、そこはしっかりと見ていきたいと思いますし、それから、その方策につきまして、管理官庁の方から国民に対してしっかりといわゆるリスクコミュニケーションをしていただきたいというふうに思っております。
また、私どもは評価の機関でございますから、このことに関しまして、管理機関であります政府が全面輸入禁止をされたということは、評価機関といたしましては大変評価をしている次第でございます。
入れなかったら……(発言する者あり)いや、本音でございます。もしかあのまま入れておったら……(発言する者あり)
○大島委員長 答弁者は淡々とお答えしなさい。
○寺田参考人 はい。
国民の健康のことを思いますと、管理機関がやられたことに関しては評価しているという、それはそのままでございます。
以上、私の本当のところでございます。
○高橋委員 今、いかにずさんかという率直な感想をいただいたと思うんですけれども、事は、そのずさんなアメリカの体制について科学者がお墨つきを与えたんだ、そういう言葉がひとり歩きしては困るということなんですよ。安全委員長、そこを責任を転嫁されているんです、今現在。そのことを率直にどう思うのかということが、私、正直に問いたいと思うんですね。
食品安全委員会の答申の内容は、「米国・カナダのBSEリスクの科学的同等性を評価することは困難と言わざるを得ない。」というものと、「リスクの差は非常に小さい」という、一見相反する内容でありました。しかしそこには、上乗せ条件、いわゆる特定危険部位の除去並びに月齢が二十カ月以下が証明できるものという前提がありました。答申の結論部分には、「前提が守られなければ、評価結果は異なったものになる。」とまで指摘をしております。
委員長、今回の脊柱混入問題は、必須条件の一つが破られたのですから、いわゆる上乗せ条件という前提は崩れたと言ってよろしいでしょうか。
○寺田参考人 おっしゃるとおりです。崩れたと思っています。
したがって、輸入をとめたということは正しいと思っております。
○高橋委員 前提が崩れたということはおっしゃるとおりですと言われたですね。
ですから、問題は、それで輸入をとめた、でも、上乗せ条件がきちんと担保できるかどうかを責任を持って管理機関が、厚生労働省と農水省が責任を持ってやるということで評価をした。それを、まさか何度も繰り返すわけにはいかないわけですよね、もう前提が崩れちゃったわけですから。そこをどう見るかという問題なんです。
管理機関である農水省、厚生労働省の責任が問われますが、中川農水大臣は一月二十六日の予算委員会の中で、「日本側に行政としての今回問題点があったかと言われれば、私はないというふうに考えております。」と答えておりますが、この発言について、撤回あるいは訂正されますか。
○中川国務大臣 一年半にわたりまして、日本とアメリカとでいろいろな協議をし、また、独立した機関である食品安全委員会の先生方に長期間にわたって御議論いただき、出た結果、ルールにのっとってスタートをしたわけでございます。
今回は、アメリカ側の、今、委員長からもずさんなという言葉がありましたが、本当に、一重二重のずさんな処理によってああいう形の、脊柱つきの肉が入ってこようとしたわけでありますけれども、日本としては、税関、動物検疫所でこのことを発見し、しかも、その部分、あるいはその会社だけではなくてすべてのアメリカの牛肉の輸入をストップしたわけでありますから、ルールどおり、あるいはそれ以上の対応をとったということで、今回のことに関しての日本側の行政の対応としては、私は問題はなかったというふうに理解しております。
○高橋委員 ずさんな体制を全く見抜けなかったことについての責任はいかがですか。
○中川国務大臣 ずさんな体制を見抜けたんです。
○高橋委員 ずさんな体制を見抜けたと、ちょっと今の答弁は非常に驚きました。
何がわかったんですか。
○大島委員長 中川大臣、丁寧に答えてください。
○中川国務大臣 一月二十日、成田の動物検疫所において、四十一箱の米国から入ってきた牛肉の中に骨つきの子牛の肉が入っている、脊柱つきの肉が入っている、これは、日米間で輸入をしてはならないという取り決めに明らかに違反をしているということを日本の行政当局が発見したということでございます。
○高橋委員 まず一つは、一年半かけて審議をしたというお話ですけれども、一年半ではありません。国内対策についてほとんどの時間を費やしておりました。食品安全委員会がアメリカのリスクについて検討をし始めたのは昨年の五月ですから、わずか七カ月です。十分なデータもないままに、だからこそ上乗せ条件という形で言われたのではなかったですか。
それから、今回の検疫体制、見抜けたと、ここまで自信たっぷりにおっしゃいましたけれども、輸入再開直後の特別な検疫体制の中でようやっと見抜けたし、背骨という特別な目立つものだったからこそ見抜けたんだと。通常の体制になったらそれができたのか、そこに自信を持って言えますか。ここを指摘し、時間なので。
○大島委員長 終わりますね。
○高橋委員 はい、残念ですが、ここを指摘して、終わります。
以上です。