衆院災害対策特別委員会で27日、日本共産党の高橋千鶴子議員は、大雪による果樹被害の問題を取り上げ、「農業離れを食い止める立場で強い支援を」と求めました。
高橋氏は、被害を受けた長野県中野市の果樹園を視察した歳の様子を紹介。雪に埋まったブドウ棚、根元から折れたリンゴなどの写真を手に、「農家が『これ以上続けられない』と営農意欲をなくすことがないように」と訴えました。
農林水産省は雪害救済のために、果樹共済の「迅速かつ適正な査定」や「早期支払い」を打ち出しています。高橋氏は、果樹共済は短期加入が一般的で、被害を受けた農家の多くが補償の対象外だと指摘。「本当に活用できる制度の検討を」求めました。
また、壊れた農業施設などに改良を加えて復旧する場合には補助を受けられる「強い農業作り交付金」の活用について質問。農水省の吉田岳志審議官は「今回の災害を契機に、優良品種への改植などに活用して積極的に支援していきたい」と答弁しました。
高橋氏は農業被害や中小企業者の被災などの産業被害は「単に個人の被害にとどまらず、地域の基幹産業を衰退させ、人を流出することになる」とし、これまで課題だった直接補償を求めました。災害救助法に定められている「生業に必要な資金の給与又は貸与」(23条)を紹介し「現場が有効と判断すれば生業資金の給与は可能」と指摘。厚生労働省の金子順一大臣官房総括審議官は否定しませんでした。
(2006年2月28日(火)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
二月一日の災害対策特別委員会としての委員派遣に私も参加させていただきましたが、その後、長野県の党の議員さんたちと御一緒に果樹園の被害を見てまいりました。改めてことしの冬の被害の大きさに驚きました。私は地元が先ほどの横山委員と同じ青森でありますが、地元の青森のリンゴも二度続けての被害でありますので、そこら辺も非常に思いをいたしているところであります。
農水省におかれては、三浦副大臣が、先日、青森県のリンゴ園地の被害視察に来ていただいたことは承知をしております。農業被害は春が来てから事態が表面化をいたします。今、生産者がもうこれ以上続けていけない、そういう気持ちにならないように、営農意欲をなくすことがないように国の強い姿勢を求めたいと思います。
そこで、まず、農水省として、現時点での実態把握と取り組みについて、特にきょうは、果樹被害を最小限に食いとめるために技術指導などはどうなっているか、ここを中心にお伺いしたいと思います。
○本川政府参考人 まず初めに、今回の雪により被災された方々に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。
まず最初に、農林水産関係の被害でございますが、かんきつ類の雪やけでありますとか、今御指摘のあったような果樹の枝折れ、あるいはビニールハウスの倒壊などの被害が発生しておりまして、現時点で約八十八億円の被害が生じております。
農林水産省におきましては、これまで農作物の被害防止に向けた技術対策の徹底や関係金融機関に対する資金の円滑な融通等の要請のほか、迅速な損害評価による共済金の早期支払いなどを行ってきているところであります。特に、果樹被害を防止するため、支柱による枝の補強でありますとか具体的な技術指導を行うとともに、果樹研究所に技術相談窓口を設置しているところであります。
今回の大雪被害の全容は雪解け時期にならないと判明してまいりませんが、可能な限り早期の被害状況の把握に努め、被害を受けた農林業者の方々が一刻も早く経営再建ができるよう、引き続きその支援に万全を尽くしてまいりたいと考えております。
○高橋委員 そこで、ちょっと余り写りがよくないんですが、(写真を示す)行ってきた中野市の状況なんですけれども、これがブドウの状態なんですが、本当に枝の先っちょが雪からぽつぽつと出ているだけの状態です。ですから、実際には二メートルくらいの背丈があるんですね。私たちはその上に立って見おろしている、こういう状況でございました。ですから、この間の農道の除雪の問題でも特交措置などができるよということがありましたけれども、しかし、ここまでたどり着くのには本当に生産者が負担をしなければならない、こういうことが現実としてあるわけですね。
それと、リンゴの枝折れです。これは、ちょっと色が見えなくて残念なんですけれども、(写真を示す)根元からざっくり割れている状況が見られました。それで、今、技術指導の件でお伺いをしましたけれども、確かに、補強するとかさまざまなことが留意事項ということで通知もされているし、現場でも援助をしてくださっていると思うんですが、そうはいっても、補強しても実際にこれだけ割れてしまったものではバランスが崩れちゃって同じものはできない、そういうことは現実としてあるわけです。また、もともとどうにもならない。ですから、苗木を助成するという形で新たな木を育てなければならないわけですけれども、十年、二十年という年月を要する。その間、どうしていくかということが本当に問われているわけなんですね。
それで、少し具体的なことを相談していきたいと思うんですが、まず、果樹共済が活用できるかどうかという問題であります。先ほどお話の中に、早期、適切な査定や早期支払いなどについても通知を出しているというふうなお話だったと思いますけれども、この点での見通しはいかがでしょうか。
○本川政府参考人 今回の大雪に対処するために、昨年十二月に、適切かつ迅速な損害評価の実施と共済金の早期支払い体制の確立について、関係団体を指導申し上げたところであります。この結果、園芸施設共済につきましては、既に十四の道府県で一月から支払いを開始しておりまして、二月には二十三府県で開始または開始する予定となっております。
また、果樹共済につきましては、その性格上、共済期間が非常に長いという性格上、直ちに共済金をお支払いするというのは難しゅうございますが、できる限り早期に支払われるように対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○高橋委員 今のお話ですと、二十三府県ですか、道府県とおっしゃいましたか、に共済が支払われる見通しだというお話でしたけれども、ただ、実際に私が見たところは多分対象にならないんだと思うんですね。なぜかというと、冬の間は共済に入っていない、短期と長期というものがあるんだと説明を受けました。長野県は、リンゴにおいては一〇〇%短期に入っているんですね。ですから、生産をしていない冬の間は、被害が幾らあっても共済は出ない。桃でも四・九%にしかすぎません。青森県も、長期に入っているかというと、入っているのは数%だと思います。これだけ大きな被害に何ら活用できないのかということになるわけです。
ハウスも、被害が今回大変大きくなっておりますが、同じように、冬の間は生産していない、通年加入していないため、やはり対象外だと言われました。今回は、秋田、岩手などを初め、ハウスの被害だけでも二十四億円、もっとふえていると思いますが。そうなると、さっき八十八億円とおっしゃいましたけれども、その中で、本当に大変なところはまだまだ共済の対象にはならないと思うんですね。その点の確認と、だったら、雪害対応できる共済のあり方、加入率をどう引き上げていくのか、考えを伺いたいと思います。
○本川政府参考人 御指摘のように、果樹共済につきましても、それから園芸施設共済につきましても、私どもとしては、一年間通じた、雪害も含めた補償を行うような商品を用意しております。それから、施設共済につきましても、雪の降る期間も保険に掛けるようなものも用意しておりますけれども、掛金の問題でありますとか営農の実態、そういうものを反映いたしまして、農家の方々が短い方にお入りになる。その結果、冬季の雪害などのあれが対象にならないというケースが生じております。
私どもとしては、今回のこういう災害も踏まえまして、できるだけ実態に合った、あるいは雪害も念頭に置いた共済にお入りいただくように農家の方々にお勧めしてまいりたいと思っておりますし、その旨共済団体を指導してまいりたいというふうに考えております。
○高橋委員 この問題は、だったら掛金がうんと高くなるよとか、めったに降らないところは活用できないよということになっても困りますので、十分この点を勘案していただいて、本当に活用できる、せっかく入った以上は、入ってよかったと思えるような共済制度ということで引き続いて検討していただきたいと思うし、私自身も要望しておきたいと思っております。
次に、では何が使えるかということでありますけれども、例えば、強い農業づくり交付金の活用で、ハウスの改良復旧や苗木の補強、改植などの活用はいかがかと思うんですけれども、この点について、国の考え、積極活用をするべきだと思いますが、伺いたいと思います。
○吉田政府参考人 お尋ねの強い農業づくり交付金の活用でございますけれども、果樹産地におきまして、今回の災害を契機にいたしまして、優良品種への改植あるいは低コスト耐候性ハウスの導入など、力強い産地の構築に向けた構造改革を推進しようとされる場合には、私どもとしましても、強い農業づくり交付金を活用するなどによりまして積極的に支援をしてまいりたいというふうに思っております。
○高橋委員 よろしくお願いしたいと思います。
農協さんも自治体さんもいろいろな形で頑張っております。例えば、今お話しした中野市では、では園地の消雪をどうするかという点では、消雪剤を二万袋用意すると話しておりました。一反歩に大体三袋を使うそうですが、一袋が九百六十円、これを三百円で分けています、最初の段階はモニターという形で無料で分けています、そういうふうなお話をされていました。一日一回まいても、何度も何度も繰り返し使わなければならないし、大変な覚悟が要るのかなと思っています。
何よりも農業者の強い声は、本当にこの間、リンゴもそうですが、価格が下がっている、そういう中での災害なんだと。そして、先ほどお話ししたように、苗木をたとえ助成したとしても、それが育つまでの間どうするか、そういうことが問われている。ですから、もっと思い切った補償、支援ということがやはり求められていると思うんですね。
例えば、岐阜県の飛騨市では、大雪による農業被害への支援策として、復旧事業費の八割までを助成することを決めたそうです。これまで持っている補助金要領では四五%が上限だったんですけれども、これを思い切って改正したわけです。鉄骨パイプの倒壊、果樹折れ、畜舎倒壊などで五億八千八百七十五万円の被害が出ております。市の担当者は、なぜこの八割助成に踏み切ったかということについて、災害を機に農業をやめる人がふえれば過疎化も進む、支援策を打ち出すことが農家の不安解消につながる、産地を守るために生産を継続してほしい、このように話しているんですね。我が党の議員団も現地調査を行い、市や県にお話をして、申し入れをしたりしてきたところでした。
私は、やはり今大事なことは、こういう立場に国が立てるかどうかということなんですね。本当にこのまま放置すれば農業離れが進むんだ、それを食いとめるために何ができるか、そういう立場での支援が求められていると思うんです。この点でもう一度見解を伺いたいと思います。
○本川政府参考人 私どもとして、今回の農業被害の状況を早急に把握いたしまして、被害を受けた農林業者の方々が一刻も早く経営再建できますように、先ほど答弁申し上げました強い農業づくり交付金の活用、そういうものも含めて引き続き支援に万全を尽くしてまいる考えでございます。
○高橋委員 もう一言お願いしてもいいですか。経営再建の前に、農業離れを食いとめるんだ、そういう決意をお願いいたします。
○本川政府参考人 まさに、そのようなつもりで、考えでやっていきたいというふうに思います。
○高橋委員 ありがとうございます。
きょうは、農水省にこれ以上言いませんけれども、さっきリンゴの話をしましたけれども、連続しての被害である。こういうときに今農水省がやろうとしていることは、リンゴの価格安定制度を廃止して、担い手にのみ着目した経営安定制度に移行するということですね。これでは、今こうして災害が起こっている、それで構造改革だと、その中身を見たら大部分の農家切り捨てにつながるのではないかと、これでは踏んだりけったりなわけですね。私は、やはり今農業離れを食いとめる、あるいは経営再建を果たすというのであれば、せっかく地元からの要求でつくってきた大事な安定制度は拡充こそすれ放すべきではない、このことを強く要望しておきたいと思っております。
そこで、きょうは、大臣に伺いたいと思うんですが、ここまで農業被害の話をしてまいりましたけれども、やはり中小業者の対策もしかりだと思うんですね。産業被害といいますのは、どうしても私有財産だと。先ほどちょっと議論もされていましたけれども、壁が非常に厚くて、災害対策の中でもおくれている分野ではないかと思います。
しかし、生活基盤が奪われたというのは、単にその持ち主の被害にとどまりません、地域にとって基幹産業を衰退させて人も流出してしまう、重要な損失になります。ですから、地域の産業を守るためにも、産業被害に対しては手厚い支援が本来必要なんだ、私はそのように思うんですけれども、この点で大臣の認識を伺いたいと思います。
○沓掛国務大臣 今委員言われましたように、被災地の復旧復興のために、農家や中小企業者などの個人の事業者に対する支援も大変必要でございます。
したがって、農業者につきましては、農業経営維持安定資金などの長期低利の制度資金の円滑な融通、農業共済金の早期支払いなどの各種支援措置に取り組んでいるところでもございます。
また、中小企業については、政府系中小企業金融機関において、一般貸し付けとは別枠での運転資金等の融資、あるいは既往債務の返済猶予等の対応を行っているところでございまして、今委員おっしゃられました被災者生活再建支援の法律は、これはそういうことの支援を何にも受けることのない全くの普通の個人について、生活再建の安定の資金を供与しようとしてつくった新しい仕組みでもございますので、それぞれの施策を組み合わせて支援を行ってまいりたいというふうに思っております。
○高橋委員 何かもう少し決意が聞きたかったなと思うんですが、もし時間があれば後にして。
もう少し、この間ずっと話し合われてきたことは、産業支援にはやはり融資しかないのかということなんですね。いや、そうではなくて、本当に必要なところには直接補償というのが、それは程度はありますよ、あるけれどももっと必要なのではないかということが私たちのこの間ずっと要望してきたことなんです。
そこで、きょうは厚生労働省にも伺いたいと思います。
災害救助法の二十三条、救助の種類の中には生業に必要な資金の給与または貸与が書かれてあります。この二十三条の二項には、「都道府県知事が必要があると認めた場合においては、前項の規定にかかわらず、救助を要する者に対し、金銭を支給してこれをなすことができる。」このようにも書かれております。実際には使われてきていなかったなと思うんですね。しかし、できるはずですね。この点、どうお考えになりますか。
○金子政府参考人 災害救助法の適用の関係でございますが、これはもう議員御案内のとおりでございますが、災害救助法自身は昭和二十二年に制定をされました。これは、大規模な災害の初動におきまして、さまざまな応急的な救助を行うということを目的にしているものでございます。
そういった応急的な救助の一つとして、今議員から御指摘がございましたが、二十三条の第一項第七号におきまして、生業に必要な資金の給与または貸与という項目が規定をされているわけでございます。この生業資金の給与等につきましては、災害救助法が制定をされました昭和二十二年以降、公的資金によります各種貸し付け、これは長期かつ低利の制度、こういったものが充実整備をされてきたというようなことから行ってこなかったというのは、議員の御指摘のとおりでございます。
私どもとしては、現在でも、災害救助法によります給与等を行うまでもなく、御案内のとおりでございますが、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づきまして、広く生活の立て直しのための災害援護資金の貸し付けが行われるなど、生業を支援するための所要の施策が講じられているところでございまして、私どもとしては、今後ともこれらの施策により適切に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。
○高橋委員 昭和二十二年の通達ですね、救助は現品によって行うことを原則とし、第二項の規定による金銭の支給は事情まことにやむを得ない場合において、金銭の支給によって救助の実効を期待し得る場合に限ってこれを行うべきである。
ですから、これは実行を伴うかどうかは現場で判断をするべきだと思うんですね。いろいろな制度があるのは当然です。いろいろな制度を活用すべきだけれども、初動の段階において、わずかであっても現金を出す方が一番効果的だともし判断されたら、そういう判断が成り立つのではないか。法律としてはまだ生きているわけですから。そうですね。この点を確認して、ぜひ実行してほしいということを主張して、終わりたいと思います。