日本共産党の高橋千鶴子議員は十六日の衆院厚生労働委員会で、社会保険庁の年金保険料不正免除問題の背景に、厳しいノルマ主義があることを追及しました。
社会保険庁が新たに導入した人事評価制度は五段階の相対評価となっています。しかも、全員が成果をあげても全職員の20%は「良好でない」とされ、手当に差がつく仕組みです。高橋氏は「厳しいノルマに追われ、サービス残業で戸別訪問をする。運良く未納者に会えて一口納めてもらっても、すぐ未納に戻る」と現場の実態を紹介。ノルマ主義が不正免除手続きの圧力になったのではないかと指摘しました。
社会保険庁は精神疾患で長期病欠をとっている職員が急増しています。社会保険庁の小林和弘次長は、二〇〇一年は長期病欠者二百八十人のうち精神疾患が百十三人(40・4%)だったのに対し、三年後の〇四年は三百九十人中二百四十人(61・5%)となっていると答弁しました。高橋氏は「この背景に何があるのか。しっかり調べるべきだ」とのべました。
高橋氏は、昨年六月六日の全国事務局長会議で年金保険課長が「社会保険庁の最大の課題は国民年金の収納率」「一年間無駄に給料をもらってぼけーっとしておるのか」と発言した問題を取り上げ、「国民の側に立った気持ちがない。ノルマ達成のために職員に檄(げき)だけ飛ばすやり方は問題だ」と迫りました。
川崎二郎厚労相は課長発言があった事実を初めて認め、「行き過ぎた表現があった。今後ないように努めていく」と答弁しました。
課長発言は一日の参院厚労委員会で小池晃議員が取り上げ、厚労省側は調査する、としていました。
(2006年6月17日(土)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
五月にこの問題が発覚し、本委員会で集中的な審議が行われてからほんのわずかの間に、年金免除の不正処理が、五月二十九日に発表された第一次調査では十一万三千九百七十五件となり、六月十三日の第二次調査では十九万三千百三十六件にもふえました。しかも、検証チームが現地調査に入り、さらに実態は深刻なものになるのではないかと心配をされております。
これはもうあいまいにすることなく、徹底した調査とその結果を本委員会に御報告くださることを強く望みます。先ほど来話題になっておりますが、国民の年金不信にどうこたえるか、このことも我々に問われているのではないでしょうか。
まず、幾つか、調査結果に基づいて質問させていただきます。
第一次調査結果を見ますと、「不適正な事務処理についての事務局と事務所の関係」という調査表がついております。「不適正な事務処理あり」という二十六県中、「事務局が主導し事務所も了承」というのが、青森、静岡、三重、滋賀、京都、高知、熊本の七県であります。
先ほど、青森のことが少し紹介されましたが、地元紙を見ますと、このように経過が書いてあります。二月十七日の会議で、社会保険事務局が戸別訪問を繰り返しても接触できなかった人については、電話連絡により本人の申請の意思と代行申請の了承が得られれば、申請書を作成してもよいと指示をしたと報じられております。ですから、明確に事務局が関与をしたということになると思います。
しかし、三月十九日と五月十八日に社会保険庁からの調査を受けた時点では報告をしておらず、五月二十七日の全国の会議で、長官からヒアリングを受け、初めてこの代行申請が不適切と認識をしたと報じられておるんです。残念ながら、青森は、このとき百三件の代行を報告しておりましたが、二次調査では、新たに三千四百四十件、追加報告をしております。
また、事務所が主導して事務局が了承したというカテゴリーがございますが、これが、茨城、新潟、大阪、兵庫、長崎、沖縄の六県であります。ところが、茨城は、五月三十一日の朝日新聞によれば、「二月二十日に水戸市の事務局であった五事務所長すべてが集まる「国民年金対策会議」で、「不適切な手続き」は県内全体に広まった。土浦事務所などで行われている「不適切な手続き」について、「効率的な手法」と紹介されたという。」事務局が主宰した会議で効率的な手法と紹介されたという。
これはいずれも、手続としては申請の代行であります。今読み上げた経緯を比べて、事務局主導、あるいは事務所主導というふうにカテゴリーを分けることに意味があるのかな、どちらも事務局主導ではないのかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
○青柳政府参考人 整理の仕方についてはいろいろな考え方があろうかと存じますが、私どもとしては、一応、その時点で判明したことに基づいて整理をさせていただいたということでございますので、もし、何かもっと適切な整理の仕方があるというのであれば、いろいろ研究をさせていただきたいと思います。
○高橋委員 これは、整理の仕方ということではなくて、先ほど紹介したように、社会保険庁から一回、二回と問い合わせをしたときは、不正だと思わなかった、ここに非常に深刻な根があると思うんですね。それはどういうことだろうか。では、調査する本庁が腰が引けていたのだろうか、あるいは、いつもはいいと言っていたのに、国会で問題になったからだめになったのだろうか、さまざまなことを考えざるを得ないわけです。
二次調査では、数が単にふえただけではなくて、不適正事例の仕分けも変わっています。一次調査のときに、事後に本人からの申請書をすべて受領したものとして、千葉、福島、鹿児島、沖縄が該当していましたが、今回、該当がなくなりました。つまり、事後に申請書をもらったと報告をしておきながら、それがなかったということがあるわけです。
なぜこのように二度、三度と虚偽の報告が繰り返されるのだろうか。ここに本当に、本庁がどのようにこの問題に取り組んできたのかな、今、ようやっと本気でやりますよということなのかなと思わざるを得ないわけです。
当然、本庁に、こういう場合は許されるのかといった問い合わせが地方からあったと思いますが、どうでしょうか、またどのくらいあったでしょうか。
○青柳政府参考人 ただいまのお尋ねは、恐らく、三月の京都の段階での私どもの照会の仕方、五月の大阪の事案が判明したときの私どもの照会の仕方、それから、全国の事務局長会議をいたしましてヒアリングをしたときの整理の仕方、これが、今最終的にというか、現時点で二次調査報告書で整理されている考え方が、最初からそういった考え方で整理されていたかというお尋ねであるとすれば、残念ながら、私どもも、当初は、まずは京都の事案のことしか念頭にございませんでしたので、この二次調査報告書の段階のような全体像が把握できていなかったという意味で、整理の仕方が悪かった、もし御批判をいただくようであれば、甘んじてお受けしなければならぬと考えております。
○高橋委員 ですから、整理の仕方が悪かったというのは、認識の問題なんだ、その程度は悪いと思っていないという本庁自身の考え方が反映したんじゃないかということを指摘させていただいたんです。
質問したのは、別に京都のときはとかそういうことではなくて、わかっているだけでもう既に二十六県判明しているわけです。そういう県が、こういうやり方だったら許されるのかという照会が当然本庁にあったはずです。それがあったかということ、どのくらいあったのかということを聞いています。
○青柳政府参考人 それぞれの段階でどういう具体的な内容で照会があったかということについて、現時点で私ちょっと整理した形では持ち合わせておりませんが、少なくとも、その時点での私どもの問題提起の仕方が不十分であったせいもあり、事務局、事務所の方で勝手に、これは自分たちの場合には当てはまらないんだろうというふうに判断したケースも相当数ございました。
正直申し上げて、この二次調査をやるために、最終的に六月九日から全件調査に入るということに先立って六月六日の段階で事案を私どもの方で再整理して投げて、その結果がこの二次調査報告書になっておりますので、その途中のところの形はともかく、最終的に整理できたものがこの二次調査報告書だということで御理解を賜りたいと存じます。
○高橋委員 そうではなくて、本庁に個々に地方の事務所から、こういう手続をしてもいいですか、それは当然法令違反ですからだめですよ、そうした経過があったでしょうと聞いているんです。
○青柳政府参考人 繰り返しになって大変恐縮でございますが、五月以降そういう形で照会のあったものもございますが、例えば、それぞれの事務所の仕事の流れでありますとか仕組みであるというものを私どももつまびらかに承知できなかったものもございます。
したがいまして、正確に申し上げますが、五月の二十七日に緊急の全国社会保険事務局長会議を開催いたしました際に、それぞれの事務局、事務所における仕事のやり方のレベルまでいわばブレークダウンをして私どもその全体の流れを承知するようになりましたので、このとき以降初めて、例えば各事務局、事務所から照会のあったものをそれぞれの仕事の流れに即して整理した上で、問題のある事例、問題のない事例が整理できてきた。しかし、二十九日に第一次調査報告書をつくりました時点でも整理がつき切れなかったものもございますので、それもあわせてこの第二次調査報告書で整理をさせていただいたというふうに御理解賜りたいと存じます。
○高橋委員 いろいろ聞き取りをした中で、職員の方はさまざま相談を受けている、それはちょっと法令違反だよということも言ってあると。ただ、何の記録もないので、一体どのくらい、どこから照会があったかということがないというふうなお話でありました。ただ、今回、検証委員会が調査をする資料の中には、「本庁に可否の照会等をしたか。」と具体的に調査項目を設けております。本庁がメモがなければ事務所もメモがないかもしれませんけれども、当然こういうことは出てくるわけですよね。
私は、今部長はちょっと誤解していると思うんですけれども、何回も照会したかということを聞いているのは、照会を受けた数とこの数が合っているかどうかという問題ではなくて、そういうことがあれば、当然違反事項があるのではないか、あるいはそこが非常に突っかかっているのではないかという問題意識を持って対応するというふうになるのがしかるべきだ、そこが全然話題に上らない、ここがおかしいということを指摘したかったんです。
ことし二月三日の事務局長会議で、数字を追いかける余りに間違えてもこそくな手段は使わないように、絶対ないと確信しておりますが、まかり間違えてそうしたことがありますと今までやってきた積み上げが消えてなくなりますと、年金保険課から強調されております。二月三日とは京都が発覚する一週間前でありますが、これは念頭に既に不正免除があったという意味でしょうか。
○青柳政府参考人 ただいまの御指摘の点をいただきましたので、改めて実は、その発言をした者、これは国民年金の事業室長でございますが、その発言の真意を私も確認をいたしました。確認いたしましたところ、当人は、こそくな手段という表現は使ったかもしれないけれども、その際に何か具体的な手法なり手段を念頭に置いての表現ではなかったというふうに申し述べておりますので、私もそのように信じたいと考えております。
○高橋委員 多分、念頭にあったんだろうということにとどめたいと思いますね。
検証委員会がこれらのことをあいまいにせず、本庁の関与も含めて全容を明らかにするように、重ねて求めたいと思います。
そこで、長官は、先ほど内山委員も指摘をされましたけれども、昨年の十一月のブロックでの会議のときに、私が前にいた損保ジャパンは十二年前に人事評価制度を導入しているという発言をして、失敗しない人事評価をやりましょうということを呼びかけているわけですね。
損保ジャパンが今回業務停止命令という問題が起こった、そのことと直接関係ありませんということを何度か長官はやりとりされています。私は、それを今言うつもりはありません。ただ、長官が十二年前からやっていることを見習おうと言ってきた、そこにやはり根っこは同じものがあるのではないか。行き過ぎた成果主義が架空の保険契約につながった、それが損保ジャパンの教訓でしょうから、これはしっかり教訓として、同じものが流れているのではないかと見るべきではないかと思います。
具体的に伺いますが、社会保険事務所における国民年金保険料徴収業務従事職員数は、常勤で千六百人、非常勤四千二百人、全体二万八千八百人のうち二割にすぎません。本来業務でない方たちが収納に応援するということもあるでしょうか。
○青柳政府参考人 これは、事務所一丸となって収納対策に従事するように、さらに、事務局の職員もこれを応援するようにということで私どもも奨励しておりますので、お尋ねのようなケースは当然生じていると思います。
○高橋委員 事務所一丸となって取り組んでいるので、それがまさに全国グランプリでもあり、成績評価になるんだということだと思うんですね。
資料の一枚目に、人事評価の今のランクの表を示しておきましたけれども、SからDまでの五段階があって、これが勤勉手当に直に反映をされることになるわけです。成績率が特に優秀だと、特定幹部職員の場合は百分の百二十、一般職員の場合は百分の九十五。
先ほど長官は、ほかの省庁だってやろうとしているというお話をされましたけれども、比べてくださればわかるように、人事院の規則と比べても、社会保険庁の評価のつけ方は突出しているということが言えると思います。「良好でない」「特に良好でない」という人たちが、百分の六十九、百分の六十七。人事院の一般職員は百分の七十一ということと比較してもかなり厳しい、つまり、SとDの差があるということが言えるのではないかと思います。これが、示された試算で見ますと、事務所長で十三万以上、係長で八万も差がつくことになります。
問題は、ここに構成比というのがあります。Sが五%、CとDが合わせて二〇%というように、相対評価なわけですよね。昔の通信簿と同じです。今は絶対評価だから、みんなができればみんなが五というふうに通信簿は変わっていますけれども、全体の中の割合で決まる。ですから、全員が頑張っても必ず二〇%は「良好でない」とされる、その逆もある。違いますか。
○小林政府参考人 昨年の九月から試行させていただいております人事評価制度、今お尋ねの、同じ事務所の中でどんなに頑張ってもというような形で、S、D、いろいろ幅が出てくる。
我々のやろうとしております人事評価制度につきましては、個々の事務所の範囲の中だけで評価するというのではなくて、事務局を単位といたしまして横断的に評価をするということを基本としております。
したがいまして、事務所単位で見ますと、S評価あるいはD評価、そういうように評価される職員につきましても、その事務局の管内のすべての事務所、これを含めて事務局全体で評価をする。その職階に応じて横断的に評価をするということになってまいりますので、そういう意味では、個々の事務所に属しているということではなくて、事務局の中、事務局に存在しております全事務所の中で横断的に適正に評価が行われるのではないか、こういうように考えております。
○高橋委員 今、図らずも、次長がそういうふうな、横断的にとか、個々の事務所の中だけではなくてとおっしゃったのですけれども、それが競争になるわけでしょう。つまり、収納の本来業務ではない方も含めて、あなたも一緒になって収納率を上げてくれなかったら、やはり相対評価で落ちるわけでしょう、事務所同士が競い合っているわけなんですから。そういう仕組みなんだということを問題にしているわけです。
しかし、頑張っても上は何%、下は何%というふうに決まっているから、どうしても頑張って足を引っ張るというふうにいろいろな圧力がかかってくる仕組みができているじゃないかということを言いたいわけであります。厳しいノルマに追われてサービス残業で戸別訪問に歩く、昼間は事務職であっても夜は一軒一軒歩かなければならないというのが実態であります。
会えたとしても、口座振替ですと、その先何口分ということで月数を稼ぐことができますが、一口納めてもらっても、すぐにまた翌月になるとぶり返しますから、免除だと十二カ月以上稼げるし、遡及もできるし、今後は継続免除もできる、これは口数が大きいということで免除に走る、そういうことも背景としてはあるだろう。私はこれをいいとは言っていませんよ。背景だということで指摘をさせていただきました。
こうした中で、資料の二を見ていただきたいんですが、定年前に退職した方と在職死亡が非常にふえております。定年前の退職者数が平成十七年度五百二十八人で、二年前の四百十二人と比べても百人以上ふえていらっしゃいます。また、亡くなった方も、十七年度が十六人ですが、そのうち半分が災害死、自殺、不慮の事故により死亡した方である、在職死亡が。こういう状況になっているというのは非常に憂慮すべき事態ではないかと思うんですね。
では、長期の病欠者数、そのうちメンタルでの病欠がどのくらいか教えていただけますか。
○小林政府参考人 長期の病休者数とメンタルに起因した長期病休者数。三年ごとの調査というのがございまして、直近では平成十三年度と平成十六年度、二カ年のものがございます。平成十三年度を申し上げますと、長期の病休者数は二百八十名、うちメンタルに起因した長期病休者数は百十三名となっております。三年後の平成十六年度の長期病休者数は三百九十名、うちメンタルに起因した長期病休者数は二百四十名となっているところでございます。
○高橋委員 今紹介いただいた数字を割合でいいますと、十三年度は四〇・四%、十六年度は六一・五%にもなっているんですね。長期病欠者数の中でメンタルの病欠がこれほどふえている。このことを本当に、その背景に何があるのかということをしっかり見る必要があるのではないでしょうか。
改革に後ろ向きな人は去れと長官が発言した昨年六月六日の局長会議では、ちょうど自民党のワーキンググループが社会保険庁の解体的出直しを発表した直後でもありました。まさに組織の存続がかかっている、だから収納率を上げなければならない、成果主義の導入でこれは分限処分にも結びつくのか、そういう切迫感ということが背景にあったかと思われますが、その点についていかがでしょうか。
○小林政府参考人 昨年、与党の中あるいは官房長官のもとの有識者会議、さまざまに御議論をちょうだいいたしまして、昨年の五月に相次いで御報告をちょうだいしたところでございます。
内閣官房長官のもとの有識者会議におきましては、我々、この社会保険業務につきまして、特に効率性が強く求められるということから、新組織に移行する以前の段階から、民間企業的な能力主義あるいは実績主義に立った措置を積極的に導入する、こういうような御指摘もちょうだいしたわけでございます。こういう指摘を受けまして、私ども、人事評価制度の導入を図るということでの取り組みをさせていただいたところでございます。
また、民間企業では広く導入されております人事評価制度、これにつきましては、他省庁においても平成十七年の十二月から試行的に行われているというようなことでございますし、業務に意欲的に取り組む職員、これを適正に評価していこう、これによって職員の質の向上も図っていこうという極めて重要な取り組みになってくる、こういうふうに理解をしているところでございます。
○高橋委員 民間のやり方を導入するということが、やはりなじむ分野となじまない分野があるのではないか、そのことを重ねて指摘したいなと思っております。
今、長官の発言を紹介した、同じ六月六日の会議で、年金課長の発言をぜひ紹介したいと思います。これは長官もびっくりの発言であります。
「〇・二ポイントも上げていただいてありがとうございました。」と言った後で、
〇・二ポイント上がったというけれども、実際は〇・一九です。少数以下第二位まで言うと、〇・〇一以上マイナスが、あえて足を引っ張ったと申し上げるけれども、その事務局が山形、茨城、埼玉、千葉、神奈川、岐阜、愛知、長崎です。特に愛知は〇・一一、仮に愛知がプラ・マイゼロで終わってくれれば、さらに〇・一一上がっていたということです。そういうことをこれからも言わせていただく。もう能書きを言っている場合ではないですよ。日光の猿は三年もやったらあれでも反省するのですよ。社会保険庁改革の最大の課題は国年の収納率なんです。これをまず徹底的に職員の意識にすり込んで仕事をしないと、
中略、
市町村の情報をもとに免除勧奨をやれよと言うと、それは本来、国民年金の王道ではない。王道ではないというのは邪道だということを言っているのでしょう。それが嫌なら強制徴収をやれよと言うと、気の毒で。では実際、何をやるのだと。一年間無駄に給料をもらってぼけーっとしておるのか。
これが年金課長の発言であります。
この発言を聞きますと、これまでお話しされている、年金権の保障だとか、国民の側に立った気持ちは、何一つない。ノルマ達成のために社員に檄を飛ばす民間会社の社長とどこが違うのか、伺いたいと思います。
○青柳政府参考人 ただいま御紹介がございました発言は、私の記憶によりますと、全国の局長会議の際に、現職のではございませんが、前職の年金保険課長が説明をした際の表現であったと記憶をしております。
これは、この会そのものは、いわば非公開の会議でございますので、まさに仲間内の事務局長に対して、まさに檄を飛ばすというのが主たる目的でございました。したがいまして、その表現が、ただいま御紹介ありましたように、必ずしも適切でない部分もあったかもしれません。
しかしながら、問題は、この国民年金の納付率の問題を、自分の事務局は一生懸命やって高い納付率を上げているからいいではないか、こういう考え方が当時蔓延をしておりました。
私もある事務局に行ったときに、そこの事務局は納付率が下がりました。しかし、全国ではまだ高い納付率を誇っている、何で自分のところがそういうことで一々本省から指図を受けなければならないのかということをはっきり言われました。
そういう雰囲気ではない、まさに国民年金の納付率を少しでも向上させるために、すべての事務局、事務所がまさに一丸となって取り組まなければならない、そういうことを伝えたかったというのが本旨であろうというふうに、私はその席におりまして理解をいたした次第でございます。
○高橋委員 今、必ずしも適切でないとお認めになったと思います。内輪の会議なら何でも言えるんだなと。これが実は本音ではないかと思います。国民の前では、年金権の保障である、国民の側に立っている、そう説明をしていながら、そういう目ではとても見ていないというのが現実ではないでしょうか。
次長のあいさつを紹介させていただきます。昨年の六月六日、この間の社会保険庁の不祥事をとらえて、こう言っております。「信頼は地に落ちたということで、地に落ちた看板をお互いしょって、皆さんしゃにむに走っていただかなければならんわけであります。ただ、この三年間というのは、ある面逆に言えば、あるいは我々名誉挽回の三年間でもあるわけです。」と言って「こういう冷やかな見方をしている方々の鼻を明かしてやろうじゃないか。」という檄を飛ばしたのが、昨年の六月であります。
そして、ことしの二月になりまして、
最大の課題でございます、国民年金保険料の収納率の向上につきましては、最大の時間を使い、最大の厚さの資料でご説明をさせていただいておりますとおり、社会保険庁はどれだけ立ち直ったのか、あるいは変わってきたのかということについては、この国民年金保険料の収納率の数字、これによって判定をされてしまう。例え方は少し悪いですが、厚年とか政管の収納率をいくら上げても、それだけでは社会保険庁良くやっているとは言われないと、これが現実であります。
云々と言いまして、次長はこの問題が最初に起こったときに、この二年間は何だったのかという他人事のようなコメントをされました。最初に、この三年間、名誉回復だという決意のあいさつをされて、結局、その結論は、名誉回復のために、国民に社保庁を信じてもらうためには収納率を上げるだけだ、そういう認識しかなかったわけです。本当の意味での国民の信頼をかち取るという気持ちがあったのか、そのことを伺いたいと思います。
○小林政府参考人 社会保険庁、いろいろな課題を抱えて走っているわけでありますけれども、特にこの二年間、さまざまな不祥事、至らぬところの指摘をちょうだいしている中で、そういうさまざまな御指摘いただいている中でも、特にこの国民年金の収納率、これが我々に対して突きつけられている最大の課題であるというのが私の認識でございます。
そういう意味では、この国民年金の収納率について、どういうパフォーマンスを上げられるか、どういう数字が残せるのかということについて、これはしっかりと地方庁、本当に現場で働いていらっしゃる方々にも直接ストレートにお伝えしなきゃいけないだろうという思いからの発言ということで御理解いただきたいと思います。
○高橋委員 大臣に今の感想をぜひ伺いたいと思うんです。私は、やはり社会保険庁が本当に国民の信頼をかち取るために頑張ろうと思ったら、年金の未納者などを商品と同じように見る、仲間内なら何を言ってもいい、そういう気風からはやはり信頼をかち取ることはできないだろうと思いますが、いかがでしょうか。
○川崎国務大臣 私も民間にいた人間ですから、営業会議のときに仲間内でさまざまな表現が使われてしまう、今高橋委員が御指摘のように行き過ぎた表現があったことは認めます。そういうものは今後使わないようにしっかり指導いたしますけれども、一方で、目標を持ちながら進んでいく、公務員だから目標管理がふさわしくないということについては、私どもは違うと思います。
特に二年前のあの厳しい御指摘の中で、国民的な視点、民間的な視点でこの社会保険庁を改革していかなきゃならぬという中でやってきたことでございますので、そういった意味では、行き過ぎた表現については今後ないように努めさせますけれども、ぜひ御理解を賜りたい。
また、一方で、どこでしゃべってもこうしてオープンになる組織ですから、立派な組織だな、こう思います。
○高橋委員 今、行き過ぎた発言だということをお認めいただいたと思います。やはりこれは、いずれわかることではありますけれども、トップダウンそのもののやり方ではなかったのかなということを本当に指摘をしたいと思います。
先ほど来議論をされているように、やはり根っこにあるのは、今の年金制度そのものが、国民がとても安心して払いたいと思うような制度じゃない。ここを何とか変えていかなければなりません。社会保険庁のホームページを開いていただくと、若者のページがございまして、「百五十歳になっても、ダイジョーブ。 牛丼が五千円になっても、ダイジョーブ。」そういううたい文句が躍っております。これでは本当に真剣についていきたいとは思わないだろうということで、今後、年金制度をどう国民が安心できる制度に構築していくかということをまた議論させていただきたいと思います。
終わります。