日本共産党の高橋千鶴子議員は二日の衆院災害対策特別委員会で、この間の豪雨災害対策について政府をただしました。
高橋氏は、今年内閣府が作成した「被災者支援に関する各種制度の概要」というパンフレットを示し、「この間活用すべきと求めてきた住宅応急修理制度や地域住宅交付金制度などが盛り込まれた」と述べ、「被災者一人ひとりが再建の道を選択できるよう、こうした情報をどう生かしていくのか」と質問。沓掛哲男防災担当相は、「(今後)どう生かされたのかを調査もし、活用していくよう指導していきたい」と答弁しました。
高橋氏は、災害救助法による障害物(堆積土砂)の除去について、除去の範囲が「住居とその周辺」に限られているが、除去費用はプール制(除去を実施した全世帯の平均が一世帯あたり十三万七千円以内)であることにも触れ、今回の土砂災害のように集落一帯に土砂が堆積し、各戸ごとの宅地に境界を引くことが困難という実態に即して、自力でできない被災者を最大限支援すべきだと質問。厚生労働省金子順一総括審議官は、「法の趣旨、原則、被害の実態を踏まえ、柔軟に対応したい」と答えました。
また高橋氏は、災害救助法の適用を見送った被災自治体に対する被災者生活再建支援法適用の可能性について質問。沓掛担当相は「救助法の適用以外にも支援法の適用要件があることを自治体に徹底し積極的に活用を図っていきたい」と答弁しました。
(2006年8月3日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、このたびの豪雨災害において、犠牲者並びに御遺族、被災者の皆様には心よりお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
私は、七月二十三日、党の対策本部として長野県に入り、また今般、二十八日の委員派遣にも参加をさせていただきました。
昨日、岡谷市湊地区では、百十四世帯への避難勧告が解除をされましたが、引き続き二カ所の避難所に二十三世帯六十一人がとどまっているとのことであります。新築の家を跡形もなく流された方、家はあっても土砂だらけで何から手をつけていいかわからない方、本当にこれからが大変だと思います。
私は、避難所で被災者の声を直接伺いました。だれもが圧倒的に、情報が欲しい、あるいは情報が一貫していないことを要望の第一に挙げました。災害の初期には避難勧告のタイミングや安全情報が重要になりますが、今の時期は、自分がこれからどのように住まいと暮らしを再建していくのか、そのプロセスが知りたい、これが中心になるのではないでしょうか。
そこで質問の第一は、内閣府がことし「被災者支援に関する各種制度の概要」というパンフレットを作成しました。これであります。(資料を示す)大変いいものなので皆さんにお配りしたいと思ったんですが、残部が余りないそうで、ぜひ増刷していただいて、ホームページからも引くことができます。授業料や公共料金などの免除制度、税金の減免など今すぐ役立つ知りたい制度から、住まいや営業を再建するための諸制度など多岐に盛り込まれてあります。また、住宅応急修理制度や地域住宅交付金制度など、この間大いに活用すべきだと訴えてきたこと、中越地震などで生かされてきた制度が盛り込まれてまいりました。これをどう生かすかということであります。
長野県では県職員が一丸となった相談窓口も開設されております。自治体の独自の取り組みも生かしつつ、情報を的確に届け、被災者一人一人が再建の道筋を選択できるように国はどう支援し取り組んでいくのか、これについて伺います。
○沓掛国務大臣 今、委員には内閣府でつくりました被災者支援に関するパンフレットのPRをしていただいて、ありがとうございました。
さて、内閣府におきましては、被災者の方が各種の支援制度を最大限に活用しながら生活再建や地域の復興に向けて取り組むことができるように各種の支援制度をわかりやすくまとめたパンフレットを作成し、本年六月に各地方公共団体に送付するとともに、ホームページにも掲載しているところでございます。
災害が発生した場合には、被災地方公共団体において、このパンフレットをもとに地方公共団体独自の支援制度等も含めた支援メニューを作成するとともに、住民へ適切な情報提供を行い、相談体制を整えていくことが重要と考えております。今後ともさまざまな機会をとらえてこの趣旨を各地方公共団体に徹底してまいりたいと考えておりますが、例えば、既にこういう形で、これは鹿児島県で、今度、川内川のはんらん後にこのパンフレットを参考にいたしまして鹿児島県としてつくったのがこのデータでございまして、(資料を示す)こういうものをいろいろ配っていただいているそうでございます。
また、それで窓口をどうするかというような問題もいろいろございますけれども、それにつきましても、今、大きな被災を受けました鹿児島県、長野県ではいろいろな対策をしてくださっております。
鹿児島県では、被災者支援に関する「被害を受けられた方へ」の開設で、そこでいろいろな相談に応じるようになっております。また、メンタルケア電話相談窓口も開設しております。また、住宅相談窓口の開設、これは各土木事務所や県庁住宅政策室等で行っております。また、金融相談窓口の開設も、これは県庁の経営金融課などで行っております。また、長野県でも今申し上げたもの以上にいろいろな窓口等もつくってきております。
委員おっしゃられるように、内閣府においてつくったパンフレットが次第にこういう災害が起きた直後にそういう地域において生かされつつあるというふうに思っておりますが、これからもこの芽がどういうふうに生かされたかについてまた調査をしながら、さらに適切な指導をしてまいりたいというふうに思っております。
○高橋委員 避難所で区長さんらが打ち合わせをしておりましたけれども、この地域は防災訓練のモデル地域である、助け合うことはできる、そして地域でできることはやる、だから、それが地域の力ではできないことは行政がやってほしい、安心して住めるように防災対策をしっかりやってもらいたい、このように強く要望されました。この声を受けとめていただきたいと思います。
ある女性は、県道は県、市道は市、自宅は自分でやれと言われて、絶対にそれでは無理だと思ったと途方に暮れておりました。精神的にも打撃を受けているときに、こうした突き放すような言葉をされると、本当に二重に負担であります。
これも情報の不徹底が原因でありまして、現実には、自力で解決できない方への支援はたくさんあると思います。その一つが災害救助法による障害物の除去であります。範囲は住宅とその周辺と限っております。しかし、今回のような土砂災害は、上流から流木や家、湊地区の場合はお社まで土砂になってしまいました。家と家の境界をすることに余り意味がありません。もともと災害救助法の計算は、個々の被災者単位ではなく、総数で見るプール制でありますから、特別基準なども含め思い切った柔軟な対応をするべきと思いますが、この点について伺います。
○金子政府参考人 災害救助法についてのお尋ねでございます。
議員御案内のとおり、災害救助法につきましては応急的な措置をするというのが法律の趣旨でございます。そういったことで法律的な目的というものがあるわけでございまして、あらゆるケースにというのはなかなか難しいわけでございます。
それから、運用ということにつきまして申し上げますれば、今、国庫負担の算定に当たってプール制がとられているということなので、これは全体で総枠管理するということですので、そういったことで柔軟に対応すべきはしていかなければいけないと思っております。
それで、住宅の敷地内に流入した土砂、こういったものを除去しなければならないという際にこの適用をどうするかということでございますが、私ども、法の趣旨に照らして、それを除去しなければ居住が不可能であるとか、あるいは住居への出入りができない、こういった日常生活に著しい支障を及ぼす、こうした範囲で救助の対象にするとしているところでございます。
その運用に当たりましては、それぞれ事例は区々で、いろいろなケースが実態としてはあるんだろうと思います。今申し上げましたような法の趣旨、原則を踏まえつつ、またその災害の実態といったものも踏まえた上で、適切に実施主体であります都道府県あるいは市町村で御判断をいただくということではないかと考えております。
厚生労働省といたしましても、この災害救助法の適用につきまして、関係方面からの御相談があれば適切にそれに対応して、できる限り柔軟な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。
○高橋委員 今、柔軟な運用ということで確認できたと思います。
法律の趣旨ということを随分強調されましたけれども、もちろん、住居と道路に出るまでの障害を除去するのが基本だというお話だったと思うんですが、今お話をしたように、また委員の皆さんもごらんになったように、家と家の境界というのが、土砂の量が非常に多くて引くのが難しいような今の状況である。そしてまた、上流から流れてきた中で、ここからここまでは出入りの範囲よと、そう単純にはいかないというところを踏まえて、許される総額の範囲でやってほしいということを言ったまでであります。
もちろん、救助法では対応できないものもあります。それは十分わかっております。それについては行政や県がやるということは当然だと思います。それに対して、やはり国も大いに支援をしていただきたいということは内閣に対してお願いをしたいと思います。
長野県は独自に厄介な災害廃棄物の処理をいち早く引き受けております。これは大変自治体からも喜ばれています。自治体独自の取り組みに対して国が強くバックアップしてくださることを要望しておきたいと思います。
次に、例えば箕輪町や辰野町のように、災害救助法の適用を見送ったところもあります。しかし、例えば私たちが行った北小河内中村地区というところ、一本の坂道を挟んで三十弱の世帯が向かい合っているんですが、この狭い道を一気に流木と土砂が襲ってきたということで、けが人はなかったんですが、大変な被害をこうむっています。
こうしたところに、救助法は見送ったとしても、支援という点で被災者生活支援法が使える道があるのではないか、あるいはそれがあるとすれば積極的に活用を促すべきと思いますが、この点についていかがでしょうか。
○沓掛国務大臣 被災者生活再建支援法は、災害救助法施行令第一条第一項第一号または第二号に該当する被害が発生した市町村、そういうところは当然ですけれども、すなわち、大規模な住宅浸水被害等の発生した市町村について適用されるわけです。ですが、ほかにもいろいろ適用されるところがありまして、また、これに加えて、災害救助法の適用がない場合でも、十世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村あるいは百世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県、五世帯以上の住宅全壊被害が発生し、かつ、今申し上げた被災者生活再建支援法が適用される市町村または都道府県に隣接する市町村にも適用されます。さらに、災害救助法施行令第一条第一項第一号または第二号の適用がなされなかった場合でも、これに該当するような大規模な住宅浸水被害等が発生したと後に認められた場合には支援法の対象ともなります。
これらのことについては、これまでも各都道府県に通知しているところでありますが、今般の豪雨災害により被害の発生した各県に対しては、改めてこの旨を連絡し、周知を図ったところでもございます。今後とも、被災者生活再建支援制度の積極的な活用を図り、被災者の一日も早い生活再建に資するよう努めてまいりたいと思っています。
これはたしか平成十一年、私も長いこと災害をやってきたんですけれども、個人に対する国からの支援というのは実は何もないので、私も非常に苦労していたんです。そういう中において、この生活再建支援法で、百万円でしたけれども平成十一年から実施されたことは大変ありがたい、画期的なことだというふうに思いました。しかし、百万円ですから、それを一昨年から三百万円までに上げて施行される、もちろんいろいろな条件はあるんですけれども。ということで、半歩なり一歩なりでもそういう面で個人の被災者に対する、個人の被災した方は非常に大変です、それに対してそういう手が進められた、政策が進められているということは大変ありがたいことだなというふうにも思っておりますので、そういうものをできるだけフルに生かせるようにやっていきたいというふうに思っております。
○高橋委員 ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。