国会質問

質問日:2006年 10月 27日 第165国会 厚生労働委員会

トンネルじん肺訴訟問題

 日本共産党の高橋千鶴子議員は二十七日、衆院厚生労働委員会で「トンネルじん肺訴訟」に関し、トンネル工事現場での粉じん濃度測定の義務化を行うよう厚労省に求めました。
 国発注のトンネル工事に従事して、じん肺になったことに対し、九百六十四人が全国十一の地裁に訴えています。七月に東京、熊本で、十月に仙台で国の責任を認める判決が出ました。
 高橋氏は冒頭、国が控訴したことに抗議。「粉じん濃度測定は原告団の要求の第一にあげられている。なぜやらないのか」とせまりました。
 厚労省の青木豊労働基準局長は「掘削機のそばでの測定作業は危険で困難であり、義務づけることはしない」と答えました。
 金属鉱山と炭坑については、工事現場での測定が義務づけられています。トンネル工事では、厚労省が二○○○年に換気状況を調べる目的で、工事現場から五十メートル離れた場所での測定を「ガイドライン」で定めただけです。高橋氏は「ガイドラインに基づく測定では実態とは遠い。掘削機そばで測定すれば仕事をさせられない環境だとわかることを恐れているのではないか」と指摘し、「労働者の安全を守るためには、粉じん濃度測定が絶対に必要だ」と追及しました。
 柳沢伯夫厚労相は「科学的所見を踏まえて対策に取り組んでいきたい」と答弁しました。

(2006年10月28日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは二つテーマがありまして、一つは、二十五日の質問の中でちょっとやり残した部分がございまして、それを先に伺いたいと思います。小規模作業所の問題であります。

 小規模作業所は、大体十人から十五人ぐらいの規模が一番多いと聞いておりますが、全国で約六千カ所、八万五千人が利用していると言われております。障害児者と父母などが力を合わせて育ててきた小規模作業所は、障害者が仕事や創作活動などを通して社会にかかわる拠点として重要な役割を果たしていると思います。

 一昨日の質疑の中で、大臣は、障害者自立支援法の目的の一つに、地域的に格差のあったサービスを全国一律のものに近づけて、どこに住んでいる障害者もそのケアに均てんできるようにと述べられました。私は、小規模作業所はまさにそういう点で、地域にまだまだある格差を少しずつ埋めて、障害を持つ人たちに居場所をつくってきた、社会参加への道を開いたという貴重な役割を果たしてきたと思っております。

 大臣は、この点では同じ思いだと確認してよろしいでしょうか。

○柳澤国務大臣 私も、友人の中にそうした小規模作業所をつくって、そして、その後運営している方もいらっしゃいますので、その点はよく承知をしているつもりでございます。

○高橋委員 ありがとうございます。

 そこで、自立支援法の中で小規模作業所の存続が危ぶまれております。この十月からは、小規模作業所は地域活動支援センターへの移行が期待されておりますが、法人格を持つかどうか決めるには時間がかかります。これを踏み出していくのにも、みんなが悩み考えなければならない。非常にその点では慎重にやらなければならないという状態であります。順調に移行するのか、あるいは、どのくらいの作業所が移行できるとお考えですか。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣からも御答弁申し上げました、また委員からも御指摘がございましたように、小規模作業所、全国に約六千カ所ございますが、御案内のとおり、この小規模作業所は、現在、いわば法定の事業所ではないということで活動していただいておりますが、法定の事業を補完し、働く場あるいはアクティビティーの場、社会参加の場として重要な役割を果たしておられます。

 国の方ではこれまで、こういう小規模作業所のうちの幾つかにつきまして、民間団体を通じて一カ所当たり百十万円の国庫補助を行ってまいりました。しかしながら、国庫補助の箇所数は二千二百五十五カ所ということで、全国の小規模作業所の四割弱を対象に国庫補助させていただいたところでございます。

 障害者自立支援法の中で法定の施設としてやっていただくには二つの道がございまして、一つは、小規模作業所などを就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センター、こういったところに転換していただくことになりますと、今の法定外の施設ではなく、いわば障害者自立支援法の施設として活動していただける、こういうことになるのではないかと思っております。

 どのぐらいの移行を考えているかということでございますが、これはまさに小規模作業所の方々の御判断にもよるというふうに考えておりますが、私どもといたしましては、地域活動支援センター、これは地域生活支援事業に位置づけられております。この事業のセンターにつきましては三つの類型を考えており、実利用人員の方、十人以上、十五人以上、二十人以上と考えておりますが、経過的には、今年度は五人以上の方でも対象となるのではないかと考えております。

 こういったものの対象になる方々については、法人格をとっていただければ、地域活動支援センターとしてこの要件を満たしていただければ採択できるもの、要件を満たしていただければ、現在六千ある小規模作業所のうちのかなりの部分がこの地域活動支援センターになれるのではないか、こういうふうに期待しているところでございます。

○高橋委員 局長、端的に答えてください、時間がありませんので。

 資料の一枚目をごらんください。

 小規模作業所に対する支援の状況ということで、先ほど説明がございました単価百十万円の国庫補助、このときの厚労省が出した資料では二千二百三十三カ所になっておりますが、十七年度で廃止でございます。その先の、今るる説明いただきました地域活動支援センターに移行することが期待される、移行したいと頑張る人たちにしたとしても、十月からです。半年間の空白がございます。

 つまり、このことによって、そもそも今のわずかな補助金の中で、小規模作業所の皆さんはもともと脆弱な財政基盤になっている、支払いそのものに追われている、そういう中で半年間も補助を切られて、何とかなるでしょうなどと言われたって、できるはずがありません。作業所の淘汰をこういう制度によってやろうとしているのではないか、私はここを指摘せざるを得ないと思うんですね。

 二枚目をごらんになってください。

 午前の部で郡委員が示したきょうされんの資料と、これはちょっと打ち直したもので、同じ資料でございますけれども、さっき指摘があったように、小規模作業所補助金制度、そのことによって自治体の補助金がこんなにも減る、廃止をするということを、廃止五道県、廃止を検討中が三十四都府県、こんなにもなっているということ、実際ほとんどですよ。そういうことを指摘したのに対して大臣は、市町村に移行するのだから都道府県の補助金は廃止をしてもらわなければならないと答えました。訂正されますか。

 これは、単独の補助金でしょう。全国すべての都道府県百五十七億、市町村全部合わせたら三百七十九億、これだけの単独補助をやっております。これを今打ち切ろうとして、自治体が国もやめたんだから打ち切ろうかな、そういうところになっているんです。そういう中で作業所がやっていけるのかということを聞いています。

○中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま委員の方から、図を示していただいて御説明をいただきましたが、その図にございますとおり、例えば平成十七年度でいいますと、地方交付税を財源とする地方自治体の単独補助がございました。大体一カ所当たり六百万円が地方交付税の措置額、こういうふうになっております。この交付税額は平成十八年度も図にございますように継続いたしますが、この交付税の対象が十七年度までは都道府県と市町村になっておりましたけれども、この交付税の財源が市町村の方に一元化された、こういうことで、二枚目に書いてありますような、都道府県の補助制度としては、市町村の方に交付税の財源が行ったのでいろいろ検討されているのではないか、このように認識しているところでございます。

 したがいまして、私どもは、地方交付税を財源とする小規模作業所についての支援につきましては、十八年度あるいは十九年度においても引き続き継続するように総務省の方にずっと要望もいたしてきておりますし、現に、十八年度についてはそのような補助制度が交付税においては措置されているということでございますので、あくまでも、交付税の財源の主体が都道府県及び市町村から市町村になったということに伴う都道府県と市町村の間の御検討になっていることではないかと承知いたしております。

○高橋委員 今の説明で、基本的に、これまで自治体が単独でやっていた補助については地方交付税で措置されるという説明があったかと思います。ですから、そこを飛び越えて、県が補助を廃止してもらわなければならないという先ほどの説明は、言い過ぎだった、大臣の答弁は言い過ぎだったということを、撤回するべきだということを指摘したいと思います。

 そこで、次に行きますが、移行できない小規模作業所であっても、先ほど来言っているように、地域活動支援センター事業の中で位置づけることができる。今、さっきお話ししたのは交付税ですから総務省の所管、しかし、では厚労省は何をするのかということなんですね。それが表の一枚目の地域活動支援センター機能強化事業。十八年度は年度の途中ですので二百億、そして、来年度の予算概算要求が四百億という、地域生活支援事業という形で予算がある、これが余りにも小さいということなんです。

 資料の三枚目をごらんになってください。これを都道府県に配分するといかに小さくなるかということなんですね。これで幾ら裁量があると言われても、あれこれやれるはずがないではありませんか。これを市町村に配分すると本当に情けなくなります。しかも、実績に応じて今は配分をしておりますので、実は、東北の分、配分をいただきました。名誉のために市町村の名前は言いませんが、例えば宮城県では年間予算十万四千円という村があります。福島県では四万八千円というところがあります。これでは何もできないと思います。

 愛知県がまとめた市町村地域生活支援事業実施状況という調査資料が私の手元にございます。これを見ますと、自立支援法七十七条一項に基づき、必須事業となっている事業のうち、一般相談と手話通訳だけは六十三市町村すべてで十月実施になっておりますが、それ以外はバツなんですね。地域活動支援センターは、未定や検討中を入れて半分以上が実施にならない、つまり十月では始まらない。見切り発車だということがこのことからも明らかなのだと思うんです。

 実際に、幾ら裁量があるといったって、何もできないのが実際なんです。それを、地域生活支援事業全体の予算枠を拡大し、市町村への支援を強めるべきと考えますが、伺います。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の地域生活支援事業、三ページで都道府県の配分額が示されておりますが、これは、委員から御指摘のありましたとおり、都道府県に対して地域生活支援事業が配分される分でございます。地域生活支援事業、国費として満年度四百億という規模でございますが、配分につきましては、一割を都道府県、九割を市町村に配分する、こういうことでございますので、ここに出ております額は一割の都道府県分でございまして、この都道府県の事業の中には地域活動支援センターは入っておりません。そういうことでございます。

 また、この地域生活支援事業は一種の交付金でございまして、その枠内でさまざまな事業をしていただくということでございます。

 地域活動支援センターがまだない市町村がある、それを見切り発車だということで御指摘でございますが、むしろ、そこの小規模作業所なりそこの地域で、地域活動支援センターを置くか置かないか、そこに移行するかしないかは、そこの事業者の方あるいは市町村の御判断でありますし、市町村が地域活動支援センターにどのくらい資源を配分するか、それは市町村の判断になる、こういう制度でございます。

○高橋委員 ですから、先ほど、後で言いましたように、残りの九割のうち地方に配分された数字について、市町村にすると十万何がしとかそういう予算になってしまって何もできませんねという指摘をさせていただきました。

 そういう事業をやるかやらないかは市町村の判断だとおっしゃいましたけれども、ですから、例えば、小規模作業所がセンターの中で生きていけますよとか、施設で、例えば移送サービスですとか、それが地域の支援事業の中でやっていけますよとか、いろいろ説明をしてきたけれども、現実はこんなに予算がないんだということをお話しさせていただいたんです。ですから、裁量だといったって、やれる範囲がもう限られている、だから予算をもっと確保してほしいということを指摘させていただきました。

 きょうは時間がありませんので、この問題は、十月から始まって、実際どうなっていくのかがこれから非常によく見えてくると思いますから、引き続いてお話をさせていただきたいと思いますので、ぜひ検討をお願いいたします。

 次に行きます。きょうはトンネルじん肺問題について質問をさせていただきます。

 国発注のトンネル工事に従事をしたためにじん肺になった、このことは必要な規制をとらなかった国に責任があるとして、九百六十四人の原告が全国十一地裁に訴えているのがトンネルじん肺根絶訴訟でありますが、七月に東京、熊本、十月に仙台で判決がありました。いずれも国の責任をきっぱり認めるものでありました。原告側勝訴にもかかわらず、国が控訴したことに対し、まず強く抗議をしたいと思います。

 十月二十日付読売新聞に、厚労省が「じん肺訴訟敗訴受け 粉じん測定義務化検討」という記事が載りました。一瞬サプライズかと思ったんですが、厚労省は同日、この記事は事実ではないとプレス発表をいたしました。大変残念であります。私は、読売新聞のフライングかもしれないけれども、この記事がいずれ事実になることを期待したいと思います。

 そこで、まず伺いますが、粉じん濃度測定は原告団の要求の第一に上げられているものですが、なぜ厚労省はやろうとしないのですか。

○青木政府参考人 トンネル建設工事におきましては、とりわけ切り羽の付近におきましては、一番先端のところでありますけれども、大型重機による掘削作業でありますとか、あるいはコンクリートの吹きつけ、あるいは掘削した土砂の搬出作業が行われておりまして、そういった切り羽の位置における粉じん濃度の測定ということは危険でございます。また、測定点の確保が困難ということでございますので、罰則をもって義務づけることとはいたしておらないところでございます。

 しかしながら、トンネル建設工事の掘削作業等においては、既に法令により、湿潤化による発じん防止、つまり発散することをまず防止する、それから呼吸用保護具を使用しなければいけない、それから換気、これを義務づけております。それと同時に、総合対策を講じまして粉じん対策の効果を上げてきておりまして、今後ともこういった意味で予防対策に積極的に取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

○高橋委員 予防対策がしっかりできるかどうかということを何によって担保するかという問題なんですね。

 例えば、平成十二年十二月にずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインを発出して、この中で、換気対策の効果を確認するための粉じん濃度測定を義務づけております。このこと自体が原告団が求めている切り羽での測定とはかけ離れたものなんですね。換気を目的としているということと、切り羽から五十メートルも離れているということで、全然違うわけですけれども、少なくとも、このガイドラインが、例えば測定の記録をチェックしたり、改善を指導できる仕組みがあるでしょうか。

○青木政府参考人 今お話しになりましたガイドラインでございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたような法令上の義務づけとは別に、さらに一層、発じん防止でありますとか災害予防という観点からガイドラインを定めて、それを守っていただくという指導をいたしているところでございます。

 そういう意味では、先ほど申し上げました予防対策、総合対策などで、事業者、あるいは我々関係機関もともにそういったものを監督したり点検をしたりしていくということで、災害の発生の防止に努めているところでございます。

○高橋委員 ですから、監督したり予防したりということがどうやって担保できるかと言っているんです。ガイドラインは規則ではないので、それに基づいて、では、監督官が具体的に測定の記録を出せ、改善をしなさいという指導がちゃんとできるんですか。

○青木政府参考人 当然のこと、さまざまな私どもの手法としてガイドラインを定め、それに基づいてやるようにということで指導いたしているわけです。もちろん、法律上の義務づけということでありません部分については、罰則というようなことで最終的な担保ということはできないわけでありますけれども、そういったガイドラインに基づいて指導をやっているというところでございます。

○高橋委員 今お認めになりましたように、さまざまな指導と言いますが、担保するものがないということが問題なんですね。それははっきりしている。何でトンネルだけできないのか。金属や炭鉱が規則になっていることと比べても、全然違うのではないかということであります。

 先ほど、切り羽は危ないからというふうなお話も少しありましたけれども、ここに、長野県がトンネル工事における粉じん対策を検討するに当たってのモデル事業として取り組んだ資料がございます。この中で、五カ月の間、十一回にわたって粉じん濃度測定を行っております。切り羽から五十メートルのところでは、確かに、国の基準である一立方メートル当たり三ミリグラムに対して一ミリグラム以下である。しかし、切り羽では最大で三十二・八ミリグラム、非常に大きい。

 これでは、ガイドラインを仮に守っていたとしても、それに基づく測定では実態とはほど遠いということがわかるし、むしろ測定すればとても仕事をさせられない環境なんだなということを恐れているのかなと疑わざるを得ないと思うんですね。どうでしょうか。

○青木政府参考人 今委員がお触れになりました報告書でございますけれども、この報告書の中におきましても、トンネル工事現場においては大型重機の間を縫っての測定が不可能な場合もある、あるいは、切り羽付近は安全上の観点から部外者立入禁止区域ということになっていまして、測定者の安全確保が確実でない、そういった問題があるというようなこともあるわけでございます。実際、切り羽付近における死亡事故も多く発生しているところでございます。

○高橋委員 切り羽付近における死亡事故も発生している、非常に危険な場所であるということはよくわかります。だったら、労働者はそこに毎日従事をして危険ではないのかということが問われると思うんですね。やはりトンネルは、日本は国土の七割が山である、そういう地形もあって、まだまだトンネル事業というのは続くと思うんですね。だからこそ、本当に安全対策というのが問われてくると思うし、逆に、だからこれをやると言えないのかな、そういうことを思わざるを得ないんですね。

 労働者の安全を守るためにも粉じん濃度測定をやるべきではないかということ、なぜそれができないのかということを重ねて指摘したいと思うんです。

 ちょっと時間もありますので先に進みたいと思うんですが、資料の四枚目をごらんになっていただきたいと思います。

 「改正じん肺法下の有所見者数・要療養患者数の推移」ということで、厚労省の資料をもとに作成をさせていただきました。この間、皆さんは、有所見者数が四人しかいない、減っているということをおっしゃって、対策はうまくいっているということを随分おっしゃっております。しかし、その前の数字を見ますと、全産業合計で要療養患者数が七百六十七名に対し、トンネル建設業が百四十五名いらっしゃる。依然として二割前後、やはり全産業の中でトンネル産業の占める割合、じん肺のいわゆる罹患数が多いということ、これはまずしっかりと見なければいけないと思うんですね。

 そして、括弧に入れたのは、百四十三名というのは、これは随時申請による健診で療養が必要になった患者さんであります。渡り坑夫と言われ、トンネル現場を次々と移らなければならないトンネル労働者の仕事の特性、そしてじん肺が発症するには何年もかかる、そういう病気の特性、そこから見て、やはり随時申請も含めて所見者がどれだけいるのかということをしっかり見なければ、本来の姿にはならないだろうということがあると思うんです。

 このことは平成十三年の第一回の労政審のじん肺部会でも労働側の委員から指摘をされて、その数字を資料に出さないじゃないかということを指摘された、そういう経緯もございます。

 そこをしっかりと示して、ここに向き合わなければ、全産業のうちいかにじん肺患者がトンネル産業に多いのか、ここに向き合うという立場に立たなければならないと思いますが、この点で大臣の見解を伺いたいと思います。

○柳澤国務大臣 じん肺を病む方々については、本当に御同情申し上げるわけですけれども、今先生御指摘の四ページ目の有所見者数また要療養患者数の推移を見ますと、これはやはり、徐々にではありますけれども減少をしているというのが読み取れるのではないか、このように思います。特に、新規の有所見者数を見ますと、全産業二百五十三に対して四名ということでございまして、その比率も大変減少しているというふうに見られます。

 しかしながら、そういうことに満足というか、そういうことだからいいんだというふうには考えずに、これからも、いろいろな新しい技術あるいは科学的な知見を踏まえて、この対策に我々としては取り組んでまいりたい、このように考えております。

○高橋委員 ですから、幾らかはそれは減っていかなくちゃ困るんです。何度も総合対策をやっているわけですから、今第六次にまで行っているわけですからね。しかし、それでも依然としてこんなにあるじゃないか、三けたの数字があるじゃないかということを指摘したわけですから、そこをしっかりと向き合っていただきたいということを重ねて指摘したいと思います。

 五枚目に紹介をしておきましたが、「じん肺症及び合併症による労災新規受給決定者数及び療養継続者数」、これを見ていただきたいと思います。〇四年度で千二百三十三人、療養継続者数が一万七千三百四人と依然として大きい状態であります。

 また、先ほど来お話をしている遵守という問題ですね。担保するものがないじゃないかというお話をしましたけれども、一般的に、「土木工事業に係る定期監督等実施状況」を見ますと、〇五年で一万一千六百十一件の監督件数に対して、違反が六千九十八件、五二・五%なんですね。この労働条件も含めての違反率の問題であります。

 ですから、そもそも建設土木工事業全体がこうした法規を守れない状況にある、これが依然として続いている中で、トンネル産業だけがしっかりやるだろう、やるから大丈夫だろうなどということが言えるはずがないんです。そこを何としても認めていただきたいと思います。

 じん肺根絶訴訟は六年余りの裁判闘争、ゼネコンを相手にして闘って勝利和解をして、この間も百人が結審をする前に命を落としています。しかし、和解をしたけれども、後に続く人のために根絶をしなければならないということで国に対してもう一度裁判をした、これは例のないことだと思うんです。しかし、例のないことだけれども、原告団は、勝利をすれば、あるいは国が謝罪をして協議の場に着くなら解決金を放棄するとまで言っています。その原告団の声に本当にこたえて、控訴を繰り返し、負けを繰り返し、死に絶えるのを待つつもりか、このことを本当に受けとめていただきたいと思います。これは時間がないので指摘だけにします。

 十月十九日の西日本新聞に、水俣裁判の最高裁を受けて懇談会の提言に加わった柳田邦男氏が次のように述べています。

 国が負ける裁判が、薬害とか原爆とか続いているけれども、その本質は同じなんだ、なぜかというと、それは一つは行政の規制権限不行使だ、そして一つは形式主義だということを指摘して、官僚が経済成長や産業の保護育成を優先順位の第一位に置き、住民や働く者、国民の健康と命を二の次にしか考えてこなかった、ここに問題があり、根本的に変えるべきだと指摘をしています。

 この指摘をしっかりと受けとめて、大臣が政治決断をされることを強く求めて、終わりたいと思います。ありがとうございました。

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