日本共産党の高橋千鶴子議員は9日の衆院災害対策特別委員会で、全測候所の無人化方針(6月に閣議決定)にたいし、全国の自治体から測候所の存続要望書が気象庁に5月以降50件も寄せられていることから、「地元住民への説明会をきちんと開くべきだ」と求めました。
高橋氏は、冬には地吹雪によって交通まひがおこる地域がある山形県酒田市議会からの意見書を紹介し、「地域の特性があるからこそ、測候所がそこにある意味がある。一路整理すべきではない」と指摘しました。
さらに、1960年に岩手県大船渡市で53人の犠牲者を出したチリ津波地震に対し、当時の気象庁長官が「判断の甘さがあった」とのべ、大船渡測候所が「この教訓から、地元の強い要望で創設された」と指摘。同測候所が10月から無人化されたことをあげ、地域観測体制の強化を求めました。溝手顕正防災担当相は「総合的に各方面としっかり連携して防災体制を作っていきたい」と答えました。
(2006年11月10日(金)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
まず、このたびの北海道佐呂間町を襲った竜巻において犠牲になられた皆さんと御遺族に心から哀悼の意を表するとともに、お悔やみを申し上げます。負傷者の皆さんの一日も早い御回復をお祈りしたいと思います。
朝日新聞の八日付夕刊で、現地での大臣コメントが載せてありました。住宅の損壊が著しいことから「住宅に特化した対策が必要と思う」と述べたとあります。私も、まさにここが肝心なところだと思っております。被災者生活再建支援法は、四年後の見直しを決めた〇四年三月の国会から数えて、あと一年半を切りました。きょうは要望です。ぜひ前向きな御検討を要望いたします。
さて、政府は、ことし六月の閣議で、本年度以降五年間ですべての測候所を無人化する方針を決定いたしました。全国で百カ所以上あった測候所が毎年五カ所のペースで廃止、無人化されるようになり、既に残りは四十一カ所となっております。地域の気象観測センターとしての大事な測候所を一路整理するべきではありません。この半年の間にも全国の議会などから存続の要望などが多数上がっていると思いますが、どのくらい上がっているのか、お答えをお願いします。
○平木政府参考人 お答え申し上げます。
測候所の存続を求める地元自治体からの要望書等に関するお尋ねでございますが、本年五月以降、十八の測候所に関しまして約五十件の要望書が届いてございます。
○高橋委員 できれば正確に答えていただきたかったと思います。気象庁につくっていただいた意見書の一覧を資料の一枚目につけておきました。数えるだけでも五十五本あると思うんですね。ただ、「ほか」とかというのがあるので、正確なところをしっかり把握して受けとめていただきたいと思うんです。
これは非常に大きな数ではないかと思うんですね。それぞれの測候所がどこにあるのかというのを資料の三枚目に、地図もつけておきましたので、いかに減らされて、海岸線にずっと何百キロもないのかということを実感していただきたいと思うんですね。
例えば、八月に私、大船渡の測候所に参りましたが、これは、七月に廃止、無人化が決まって、十月から移行だと。わずか三カ月しか猶予がございません。私が行ったときは、既に黒板に事務所の撤収のスケジュールが書かれておりました。これでは、何の準備もない、ひどいと思うんですね。
私は、少なくとも、これだけの意見書を踏まえ、地元住民への説明会はきちんと開く、それも、三カ月前ではない、もっと早く開くということを約束していただきたいと思いますが、いかがですか。
○平木政府参考人 お答え申し上げます。
測候所の廃止に当たりましては、自動観測システムの整備をするとともに、予報解説業務につきましては近隣の地方気象台等が行う等の措置を講じておりますが、それに当たりましては、地元自治体への御理解をいただくように努めておりますので、これからも鋭意そのために十分説明をしていきたいと考えております。
○高橋委員 ですから、御理解をいただくようにということの具体的な中身なんです。自治体は知らされて、こちらから気象台に出向いて要望を出したとか説明を聞いたとかということなんですよ。今お話ししたように、三カ月前ではもう撤収のスケジュールまで決まっているんだと。そうではなくて、きちんと説明会を開くということを約束していただけますか。
○平木政府参考人 お答え申し上げます。
地元に対する御説明に関するお尋ねでございますけれども、もう先ほど御説明しましたように、今までもいろいろ説明をしてまいりましたけれども、さらに御理解をいただくように、より十分に説明をしていきたいというふうに考えております。
○高橋委員 ちょっと不十分な表現ですが、一応さらにということでしたので、これだけの意見書があるということをしっかり踏まえていただいて、住民への説明会をやって意向を踏んでいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
具体的な意見書は、本当にさまざま地域の事情を反映しております。二枚目に酒田測候所の存続を求める意見書を参考に載せさせていただきました。この中に、例えば、二段落目に書いております。これは庄内地方ですので、「日本海に面し鳥海山の近くに位置し、年間を通じて風が強く、とりわけ冬季間の地吹雪によりしばしば交通がまひしている地域」とあります。昨年十二月に羽越線の脱線事故がございましたが、まさにその地域。私も行きましたけれども、線路のある土手に上ると身の危険を感じるほどの強風でありました。それがもう日常茶飯事であるということがわかったんですけれども、地域の特性がある、だからこそそこに測候所がある意味があったと思うんですね。
〇四年に無人化された深浦の測候所では、漁協の組合長さんが、海に出るときに測候所に電話をして気象情報を聞くんだ、海に行っては携帯も通じないしということをおっしゃったんです。初霜や初雪は農家にとっては重要な情報なんです、そういうことを農協からも伺いました。それを聞くときに、もう地方気象台に移行しちゃうわけですから、測候所に電話して、日本海にこれから出るんだけれどもどうなんですかと聞くと、青森市のど真ん中の気象台につながる。それでどうして日本海の様子や山の様子などがわかるかということなんですね。
このような地域ならではの役割、人にしかできない業務があるということ、そのことをお認めになりますか。
○平木政府参考人 お答え申し上げます。
今の御質問は、地方気象台で地域のそれぞれのきめ細かな状況がどうしてわかるのかという御質問でございます。
まず、測候所を廃止するに当たりましては、自動観測システムを設けまして、刻々とそれぞれの地域の状況をまず把握して、それに基づいて予報を行うということをやっております。
それからさらに、非常に重要なことでございますけれども、その地域の気象特性というのが、これは測候所が置いてあるところもありますし置いていないところもございますが、それぞれの気象特性について熟知する必要がございますので、その情報の共有をきちっと行って、その熟知した情報に基づいてきめ細かく解説するように努めておりますので、これからも引き続きそのようにしたいというふうに考えております。
○高橋委員 ですから、気象台に集まってくるのはデータだけなんですね。生の人間が目で見る様子、山の様子、海の様子、風の様子、雪の様子、これが実際にわかるわけではないんです。それを、身近に測候所がいて直接相談をしていたからこそ役立っていたんだ、だからこそこんなに意見書が上がっているんだということを受けとめていただきたいと思うんですね。そしてまた、それを、一つの気象台にいてそれぞれ熟知をした方がとおっしゃいましたが、それであれば、幾ら何でも態勢は足りないということも指摘をしておきたいと思います。
資料の四枚目を皆さんぜひごらんになっていただきたいと思うんです。
これは、昭和三十五年五月二十四日の読売新聞の夕刊でございます。「おそかった警報」と書いてあります。全部は読めないのですが、大きなところを読みます。
「気象庁は二十三日未明チリに地震が起こったさいすでに最大級の地震であることを確認し、ホノルルの太平洋地域津波センターからの警報連絡も二十三日には入手しながら何ら手をうっていなかった。」ということであります。
気象台が警報を出したのは丸一日過ぎてからで、三陸沖で数回もの激しい津波が襲った後でありました。この津波で大船渡市は五十三人の犠牲者を出しました。
気象庁長官の当時のコメントが下の方に載っております。「判断の甘さがあった」「われわれとしては太平洋のかなたからこれほど大きな津波が日本に押し寄せるとは思い及ばなかった。」こんなことをもし今言ったら、ちょっと危ないかなという時代だと思うんですね。こういう苦い経験を経て、大船渡測候所は地元の強い要望を受けて創設されました。
今日、これほど災害が続き、それも、歴史的な災害だと言われているときです。歴史の教訓を生かし、地域観測体制の強化を図るべきと思いますが、大臣に最後に一言見解を伺います。
○溝手国務大臣 お答え申し上げます。
測候所の問題と連絡、通信の問題とは、必ずしも同じ問題ではないと考えております。科学技術の進歩によりまして全体としての防災能力をいかに高めていくかということが我々の課題だと考えております。関係方面としっかり連携して、総合的に防災体制をつくってまいりたいと考えております。
○高橋委員 時間が来ましたので、大臣、今、連絡体制と観測は違うとおっしゃいましたけれども、そういう経験を踏まえて測候所ができたんだという歴史の教訓があるということですので、もう一度記事を読んでいただいて、今後、ちょっとそれでは困るなと思いますので、次の機会に譲りたいと思います。
ありがとうございました。