日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は六日の衆院厚生労働委員会で、障害者自立支援法の応益負担そのものの見直しをするよう政府に求めました。
高橋氏は、補正予算で、利用者と事業者への百二十億円の負担軽減が盛り込まれた背景に、全国の障害者団体の大きな運動があったと指摘。与党案が応益負担という制度の根幹に踏み込んでいない点については、「自立支援法に伴う三百九十億円の利用者負担は命にかかわるものだが、国にとっては多大な額ではない」と制度の見直しを要求しました。
高橋氏は、障害者施策に欠かせない施設の職員が七十二人も退職するなど法律実施で深刻な影響が出ていることをあげ、「支え手がいなければ、障害者の自立も福祉施策も成り立たない」と述べ、実態把握と職員の労働実態の調査を要求しました。柳沢伯夫厚労相は「与党からの提言や実態を踏まえ、対応を検討したい」と述べました。
高橋氏は、障害児の親が負担増に耐えられないという声を上げていることを示し、「成長・発達する子どもたちへの負担増は、利用制限につながり、障害を悪化させる。応益負担はやめるべきだ」と質問。柳沢厚労相は、「適切な療育や支援をよりよい形で受けられるよう努めていきたい」と答えました。
(2006年12月7日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
【参考人質疑】
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に出席をいただきまして、また本当に貴重な御意見をいただきましたこと、心からお礼を申し上げます。
皆さんが本当に現場からの声をこの場で発してくださったということを私たちがしっかり受けとめて、障害者自立支援法を、本当にいい意味での見直しができるように頑張っていきたい、このように思っております。
最初に、中島参考人に伺いたいと思うんですけれども、本日、最初から先生が主張されております、障害者施策に市場主義の導入をという問題、障害者は消費者であるという問題が随分中心になっているのかなと思っております。先生御自身が障害を持つ息子さんを持ち、そして、その息子さんが自立していく姿を親として目の当たりに見た、その思いから、やはりこの自立ということを提唱されているんだということは十分承知をしております。
ただ、それと同時に、先ほど来指摘をされている、生きるために必要なサービス、オプションではないと。そこに対してやはり市場原理というのはなじまないのではないかということを私は重ねて思っております。
特に、先生御自身がアメリカのコネティカット州で受けた息子さんの無料の手厚いサービスの問題、私は、これは無料だから自立を妨げるということではなくて、障害者を家族のハンディそのものに、家族だけに押しつけるのではなく、みんなで受けとめて支え合っているということで、非常に教訓的なお話ではなかったのかなというふうに思っているんです。
そのことを踏まえて、改めて、市場原理と障害者施策というのはなじまないのではないかなということを先生に伺いたいと思います。
○中島参考人 まさかコネティカットの話を御存じとは思わなかったので、非常に、私自身のことなので、実体験があるんですけれども。
私は確かに、アメリカのコネティカット州にいるときに、無料で学校へのバスの送迎サービスを受けておりまして、子供が非常にいい教育を受けたなというふうに思っておりました。だけれども、そのときに同時に考えたことは、私が、やはりそういうサービスを受けて、どうしてもお世話になっているという発想から抜け切れなかったというところもありまして、これは親自身の考えの持ち方なんですけれども。その後、日本に帰ってきてから、非常に日本の養護学校のあり方とかあるいは統合教育のあり方に疑問を持ったこともありましたが、そのときもやはり一貫して思っていたことは、養護学校で自分の子供がお世話になっているから、なかなか言いたいことも言えないなということが実感でございました。
ですから、私は、必要不可欠なサービスだから、与えられたものを、行政なり社会なりが決めたものを、最低限のサービスをただで受けなさいということも確かに重要な視点ではありますけれども、そういうサービスだからこそ、お金を払い、いいサービスでなかったならばもっといいサービスをしてくれと堂々と言えるというような環境をつくっていくことが、長期的にはやはりサービス全体の底上げになるんじゃないかなというふうに考えております。
以上です。
○高橋委員 どうも、先生大変ありがとうございました。
同じ質問を、藤井参考人と尾上参考人に伺いたいと思います。
○藤井参考人 私はそもそも、障害者問題の基本としまして、障害からくる不利益については、やはりこれは公的に応援をしてほしいと。
要は、ここに、コップに水が半分入っています。私は、このコップの半分以下の水というのは、これはまさに生命維持の行為あるいは支援。これは、さっき中島参考人はそういうおっしゃられ方をしたけれども、私はやはりあると思うんですね。このコップの半分上は、これは社会参加に必要ないろいろな行為や支援。それで、あふれる。実は、応益の「益」というのは、語源辞典を見ますと、「溢れる」と書くんです、本当は。私は、ぜいたく部分は全部自分で払うのは当たり前なんですよ。しかし、生命を維持していくぎりぎりの行為というのは、これはやはり公的な面で支援をしてほしい。
さあ、真ん中のこの部分、ここは就労を含めて社会参加ですね。これに関しては、例えばスウェーデンなんかでは、ダイレクトペイメントという所得保障をしながら買うという方式もあります。あるいは、ドイツ等含めて、現物支給もあります。これは今後議論をしていきましょう。今回は、このコップの全部を含めてこれを応益だという点でいいますと、これは少し無理があるし、私はやはり、所得保障が仮にあったにしても、この部分というのは厳しいんじゃないかな、こう思います。
ついでに言いますと、障害者問題の視点から言いますと、単純な市場原理、あるいは、早く、ちゃんと、きちんと、こういう視点は、やはりなじみにくいんじゃないかなという感じが私はしております。
○尾上参考人 二つほど論点があると思っています。
一つは、具体的には、応益負担か無料かという議論というよりは、今までの支援費の状況で考えますと、応益負担か応能負担かなんですね。今回は、そういう意味では、払えないにもかかわらず負担を課すという応益負担になっている。その応益負担がどういう状況を生み出すかというと、障害が重ければ重いほどやはり大きな負担になっているということなんですね。
先ほど私どものアンケートで、私どものアンケートに協力をいただいた方々は、全身性や知的の重度の方、そういう意味ではかなり重度でサービスが必要な方々です。いずれも上限いっぱいいっぱいまで行っている。ところが、実は、この自立支援法の審議のときあるいはその前の社会保障審議会のときに、厚生労働省はどういう資料を出しておられたかというと、ホームヘルプを利用されている在宅障害の方は月八千四百円どまりで負担がおさまりますよと。月八千四百円どまりでは全然おさまっていないわけです。つまり、障害が重ければ重いほどそんなものを何倍も超える負担になっている。そういう意味では、明らかに制度設計の段階に瑕疵があったと言わざるを得ないのではないでしょうか。
そういう意味で、応益負担か無料かではなくて、応益負担か実際に払えるような状況の中での応能負担というのが具体的な論点であったのが一つと、もう一つは、やはり応益負担の原理性、障害が重ければ重いほど大きな負担になっているというのが、国のデータと私たちの重度障害者をターゲットにしたデータとの大きな差としてあらわれているということを指摘したいと思います。
○高橋委員 法律が成立をする前に指摘をされてきたことが現実のものとなって起こっている、それを踏まえての今の御発言だったと思いますので、改めて応益か応能かということでさらに議論を深めていきたいなと思っております。
次に、池添参考人に伺いたいと思います。
本当に、療育の現場でのお母さんたちの思いや携わっている先生方のいろいろな思いが紹介をされました。本当にありがとうございます。
それで、たくさんお聞きしたいことはあったんですけれども、利用者負担がふえたがために給食さえもとらない子供たちが出てきているということ、本当に深刻だなと思って聞いていました。私は、まず、療育の現場における給食の役割というのはやはり特別な意味があるんだろうということをぜひ紹介していただきたいと思っております。
○池添参考人 子供たちにとっての給食、先ほど奈良の場合に六百円というふうに申しましたけれども、これも地域格差がございまして、払っている給食費は地域あるいは施設によって違うんですけれども、そもそも子供たちにとっての給食は、食べることではなくて療育の一環です。
つまり、自閉症の子供さんで非常に偏食が激しい子供さん、いつかは食べるかもしれない、でも今は食べないというときに、目の前にその給食がある必要があるわけです。でも、それは全く手をつけないかもしれない。でも、目の前にあることによって、これをみんな食べているんだよ、おいしいんだよということを見せなくてはいけない。特に、目で見ていろいろなことを理解していく自閉症の子供さんだとなおさらです。そうした場合に、食べないのに給食費を払わなければいけないという現実があります。でも、食べないのだったら要りませんということになると、その子供が偏食を克服していろいろなものが食べられるというプロセス、そのことそのものを奪ってしまうことになります。
それから、いっぱい用意しても少ししか食べない子供もいます。それから、いろいろな形態でないと食べられない子供もいます。本当に、食べるということだけではなく、体そのもの、あるいは命を、あるいは心を育てていくための栄養だと言っても間違いはないというふうに思います。
そのために、六百五十円というふうに国は言っていますけれども、これは普通のお弁当でもそんなにはしないと思います。ましてや子供の食べる量というのはそんなに多くありません。光熱費とか人件費とか全部を含めている費用でありまして、ここのところも保育料の給食費とは少し違うと思います。
以上です。
○高橋委員 ありがとうございました。
もう一つ池添参考人に伺いたいと思うんですが、児童デイサービスの問題がお話しされたと思っております。この間、児童デイサービスの基準について、学齢前の子供さんを七割入れなければならない、経過措置として三割を条件とするということがあって、それが施設の存続にかかわるという大きな反対運動が起こったという経過がございました。
そこで、なぜ今行われているデイサービスの実態と厚労省がやろうとしている基準が合わないのだろうか、そのことと、デイサービスの持っている意義について、ぜひ御紹介いただきたいと思います。
○池添参考人 障害を持っている子供たちの放課後あるいは長期休暇、これは障害を持っていない子供たちにとったら余り問題はないんです。おうちに帰ってきて友達と遊びに行くとか、あるいは長期休暇もいろいろなところへ遊びに行くことができます。しかし、障害を持っている子供は、自分でそれをつくっていくことができなかったり、あるいは安全の確保ができなかったりで、常に保護が必要であるとか、あるいはその場が必要である。その場が家庭であることもありますが、ずっと子供につき合っているのはすごく大変ですから、先ほども申しましたけれども、テレビとかビデオ漬けになっていることが多くて、非常に貧困な、豊かでない放課後であるとか長期休暇を過ごしている子供たちが多いです。
そこのところを、もっと豊かに放課後を過ごさせたいということで、関係者や親御さんたちのお力でつくられてきた、草の根からつくられてきたものだというふうに言えると思います。でも、なかなか制度に乗らなくて、共同でやっていたところとか親御さんたち同士でお金を出し合ってやっていたところがありますけれども、今回児童デイサービスあるいはタイムケアなどの形で制度ができてきて、これはうれしい、もっと広げられると思ったやさきの今回の報酬単価の減額ということになるわけです。
学童期ですから、今、全児童対策とかいろいろな形で、たくさんの子供たちを対象にした学童保育、放課後保障のことが言われていますけれども、それだけではやはり障害を持つ子供たちには対応できません。現に今でも、非常に狭い学童保育所とか児童館に障害のある子供がいて、そこで非常にトラブルが多かったりとか、保護者そのものもしんどい思いをしていたりすることもあります。障害児が集まってやっている場というのは、障害を持っている子供に対応した場所ということですので、それだけ職員体制も必要ですし、場所も必要です。
そういう意味で、財政的な裏づけがないとやっていけない。せっかく広がってきたそのことが、現に今畳まなくてはいけないような実態になってきているというのが今回の調査でも出ています。職員さんたちがかなりボランティア的にやっていらっしゃることも多くなっていますので、そういう意味で、ぜひ実態に目を向けていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
○高橋委員 厚労省の皆さんも聞いてくださっていると思っております。
次に、宮武参考人と戸枝参考人に伺いたいと思います。
特に、宮武参考人が紹介してくださった「すきっぷ」の取り組みですが、多分厚労省が目指す改革の姿だというふうになっているんだろうなと。ただ、それが、確かにすばらしい取り組みだけれども、就労支援ということでは全体としてそこまで一律になかなかいかないだろうなと思って聞いておりました。
また、障害という問題は、私、ある方がお話しされていたことなんですが、やはり周りの環境、バリアを除くことでその人にとっての障害の価値というか程度というのもまた大きく違うだろうというふうに思っているわけなんです。
そういう点で、まず宮武参考人に、「すきっぷ」は大変立派な施設でして、プロポーザルコンペまでされて、特別な、やはり区としての応援だとか、そういう何か大きなきっかけがあったのかなということを思いますので、行政がどういう形でそれをやろうとしたのかということを伺いたいと思うのと、戸枝参考人には、実際には、地域では財政もない、そして実績もない、そういう中で市町村が実施主体よと言われているわけで、確かに地域生活は大事だけれども、すぐには移行できる条件がない中で、では何ができるか。例えば県の役割ですとか、そういうことがあると思うんですが、ぜひアドバイスをいただきたいと思います。
○宮武参考人 世田谷区の状況といいますか、世田谷区が政策的につくった施設でございます。
世田谷区、各地域がそうだったと思いますけれども、学校卒業後の受け皿として小規模作業所ができて、福祉的就労の場が広がっていった。なかなか一般就労には移行が難しいというような時代がずっと続いておりました。その中で、世田谷区は、保護的就労という中間雇用の制度もつくって、ステップアップというような考え方もあったんですね。それでもなかなかうまく進まない。それで、職能開発センターというような構想があって、作業所から職能センターに通って訓練を受けて一般就労という、一つの循環型のシステムということがあり方検討委員会で出されまして、それが私どもの「すきっぷ」でございます。
そういう区の施策的な取り組みの中から生まれたものですから、最初は都市型福祉工場というような構想もあったそうですけれども、クリーニング、印刷も区が発注するような優先受注を受けております。ですから、そういう、大型じゃなくても、私どものシステムとノウハウをいろいろな形で生かしていただければ、就労支援の拡大につながると思います。
もう一点だけ、働く意味といいますか、当初、労働能力によって障害者が選別されるのじゃないか、そういう話が出たときに、それは選別じゃなくて選択肢を広げるというふうに私は理解しました。
実は、地域の保育園に体験実習という形で、ダウン症の青年が三週間ほど委託訓練という制度を使ってお世話になりました。それは、雇用は難しいけれども体験としてその場を提供していただいた。最後に委託訓練の修了式で賞状をもらう場面があるんですが、その中で、ダウン症の青年ですけれども証書を受けた、年少さんはお昼寝の時間帯で、年長さんの子供さんたちが質問を受けていろいろな感想、サッカーを一緒にやって楽しかった、そういう話の中で、最後にある五歳の子供さんが、たかしお兄さんと会えてよかったというふうにおっしゃったんですね。それで、雇用にも結びついたんですけれども、そういう理解が小さな子供に生まれたことに私は大変感動しました。
そういうことで、働く意味を、地域で生きるということで、重ね合わせて、就労の問題をぜひ考えていただきたいと思います。
○戸枝参考人 県で起こっている問題と市町村の問題、二点についてお話しさせていただきたいんですが、障害福祉は、特に地方に行きますと、町村に関しては県の事務所で今までいろいろな事務をやってきたというふうに考えると、町村は障害福祉をやった経験がない、理解している職員がいないという現状があります。
そういう意味では、自立支援法では、県がアドバイザーという相談支援者を県に置いて、それぞれわからない自治体に情報提供したり、場合によっては、財政力の弱いところは広域連合をしないと障害福祉が進められないということですからそこをくっつけていったり、そういったことをするという仕組みにはなっているんですが、ここも、厚生労働省にお伺いしたときには、百七十万人標準で大体一千四百万ぐらいの財政措置しかされていないということでいけば、県が十分に町村を支援する体制になり切れていないんですね。やはりここの、県にきちんと相談支援体制、特に市町村への相談支援体制ができる仕組みをつくってほしいということが緊急に必要だと思っています。
もう一点が、先ほどの福島豊先生の、地域支援はNPOが支えてきたという質問を掘り下げる形にもなるかと思うんですけれども、例えば、市町村が社会福祉法人減免で認められている減免をNPOに認めればできるというふうに制度上はなっているんですが、やはりNPOが所得保障、減免をするほどの財政措置ができないという形でなかなか進んでいません。NPOでやれるようにするにはやはりある程度市町村に財政措置しないとだめかなという気がしていますので、そこも配慮いただきたいと思っています。
○高橋委員 時間が参りました。きょうは本当にありがとうございました。
165-衆-厚生労働委員会-8号 平成18年12月06日 【一般質疑-障害者自立支援法問題】
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
先ほど来紹介されている一千二百億円規模という与党の補正予算案については、利用者と事業者への一定の負担軽減が盛り込まれました。十月三十一日の日比谷に一万五千人が集結する、このことを象徴とした全国の障害者団体の大きな運動が後押ししたのだろうと受けとめております。私たちも、各委員会での質疑はもとより、ことし二月、六月、八月と重ねて緊急要求を提言してきたところであります。ただ、与党案は時限措置であって、二年後に迫った、三年後ですが、もう一年たっておりますので、二年後に迫った見直しまでのつなぎと言えるものであります。
応益負担という制度の根幹は崩すつもりはないということでありますから、ここが最大の問題であります。私としては、今回の経過措置をとらざるを得なくなった背景は何だったのか、そのことをしっかりと認識し、制度そのものの見直しが必要ではないかと考えております。
まず最初に伺いますが、自立支援法施行に伴う利用者の負担増、いわゆる財政影響額は幾らだったのか。また、今回与党が提案している上限の引き下げは、そのうちどのくらい軽減することになるのでしょうか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
障害者自立支援法による利用者負担の見直しに伴う財政影響額は、平成十八年度予算ベースで、障害者分約三百十億円、障害児分約八十億円、合わせて国費負担として約三百九十億円となっております。
今回、与党からの申し入れにおいては、利用者負担の軽減、十九年度、二十年度当初予算二年間で国費二百四十億円とされており、この額を前提として計算いたしますと、三百九十億円から一年分百二十億円マイナスという計算になりますが、二百七十億円になるものと考えております。
○高橋委員 改めて確認したいなと思うんです。
三百九十億の影響額であったと。当事者にとっては、今山井委員からの指摘もあったとおり、生命にかかわる負担増であります。でも、国にとっては、それが国が倒れるほどの多大な額であるだろうか、本当にここは食いしばって、この負担をもとに戻しても問題はないのではないか、私はそのことを本当に言いたいと思います。
今回の与党の提案、十分ではないけれども、この間繰り返し指摘されてきた応益負担について、影響の大きさが一定反映されたものかと思います。さらにこれを深めて、思い切った見直しを強く求めたいと思います。
さて、昨年の議論の中で、介護給付、訓練給付、公費負担医療などが義務的経費として位置づけられました。義務的経費と裁量的経費との割合が九対一であること、三年ごとの見直しの中で各自治体がつくる障害福祉計画を踏まえ、この割合が変わっていくだろう、そういう説明であったかと思います。当事者が心配されているのは、この義務的経費について国庫負担分がきちんと担保されるのだろうかという点ですが、いかがでしょうか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
福祉サービスの経費、従来は在宅福祉サービスの経費については裁量的経費でございましたが、障害者自立支援法において義務的経費になっております。
したがいまして、市町村が給付をした経費につきまして、国は二分の一、義務的負担を行うということになっております。十八年度予算では、四千三百七十五億円、国費ということで、前年度に比べて一一%の増加の経費を算定しております。また、十九年度の概算要求におきましても、一一%台の伸びの福祉給付費の経費を要求しておりますが、これも予算でございますので、実績に基づいて二分の一、負担をするという義務的経費になっております。
○高橋委員 今のお答えは、当然、義務的経費ですので担保するということで受けとめてよろしいということですね。はい。今後、補正で義務的経費が拡大したときどうなるのか、予算不足のため自治体にしわ寄せが行かないのか、さまざまな心配があります。それが今の答弁で、きちんと担保されるということを確認したいと思います。
私は、その上で、サービスの量はこの程度なんだと決めて、それ以上使ってはいけませんよと上から決められている、このことがやはり一番大きな問題なんだろう。私は、なぜこの程度と決められなきゃいけないんだろう。午前中の参考人の質疑の中でDPIの資料の中にもありましたけれども、一人一人に必要なサービスは違うんだ、そのことを本当に踏まえたら、最初から量も仕組みも決まっているということそのものを見直ししなければならないのではないか、そして、実績に応じてきちんと義務的経費が担保されるような仕組みにしていきたい、そのことを指摘していきたいと思います。
そこで、厚労省は、この間、野党が繰り返し要求してきたこともあり、全国的な影響調査を行って、取りまとめを行っているところと聞いております。そこで、障害者施策にとって欠かすことのできない職員、サービスを支えている職員の実態に着目した調査は行っているでしょうか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
まず、調査の件は、先ほども大臣お答えいたしましたように、実施状況についてきちんとしたフォーマットで調査を行っております。特に、その際、当委員会でも、例えば所得区分に応じて利用の控えがどうなっているか、そういったことについても調査するようになど細かな御要請をいただきましたので、そういったことについて、まずは急がれるものについて調査をいたしております。
それから、今委員の御指摘は、福祉サービスを提供する施設職員の待遇、処遇、そういった観点から、適切な経営が担保されることの前提としてそういう実態調査をすべきではないか、こういうお話だと思います。
これは、従来も、施設の報酬については、それぞれの施設の経営状況等について見させていただいた上、実態把握に努めて、事業者の状況について把握し、報酬水準の改定をするという作業をいたしております。何分、障害者自立支援法の新体系につきましては、まさに十月から施行されたところでございますので、状況が落ちつきました段階で、また報酬改定の時期等も踏まえて、経営状態について把握をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
○高橋委員 いろいろおっしゃいましたけれども、職員の実態は把握をされてないということだったと思います。
午前中の参考人の資料の中にもございましたけれども、きょうされんが十二月一日に発表した自立支援法に伴う影響調査、これは、十月からの全面施行に伴って、多くの事業者や施設では厳しい経営を余儀なくされていること、そういう中で、施設、事業所職員にも深刻な影響を与えていることを浮き彫りにしました。ことし三月以降、施設職員が七十二人も退職をしています。自立支援法の影響で、やめたいと感じている人は、回答があった千二百六十五人中、六割近い、七百二十九人にも上っております。特に、やめたいと感じている人への調査では、忙し過ぎて体調を崩した、百六十六人、忙し過ぎて精神的に体調を崩した、百十五人、減給によって生活設計の見通しが立ちがたくなっている、漠然とした不安を抱えているなど深刻な声を出しております。
大臣に伺いたいと思います。
もともと、施設、事業所の職員は、十分な条件ではないものの、障害者事業を担っている誇りと気概に燃えて献身的に支えてきたのが実態ではなかったでしょうか。こうした支え手がいなければ、障害者の自立も福祉施策もそもそも成り立たないと思います。職員の皆さんが退職をされる、またはやめたいと思っている実態をどう受けとめていますか。
○柳澤国務大臣 委員の御指摘のとおり、質の高いサービスを確保する上では、資質の高い職員を確保しておくことが非常に重要だ、このように考えます。
これも今委員のお述べになったところから、やはり事業者に対する報酬がそういう事態をもたらしているのではないかというようなことを御主張される向きが多いわけでございまして、私どもとしては、この報酬については、当初案から、実はかなりいろいろなことを配慮した単価に設定してきたつもりでございますし、また、全体額についても、従前額の八割を保障するというような激変緩和の措置を講じてまいったわけでございます。
ただ、特に通所の施設につきまして、報酬の日払い化への即応の対応に苦慮されている事業者も見られるというようなことがデータの上からも示されている、そういうことかと思いまして、こうした事業者が、より安定的な運営を確保できるように、また、職員が、今仰せのとおり、やりがいを持ち、生きがいを持って質の高いサービスを障害者の皆さんに提供されるように、そういった考えから、今回与党から御提言もございました、したがいまして、私ども、その御提言と、それからまた、我々の把握している実態等を踏まえまして、どのような対応がいいかということを検討していきたい、このように考えているところでございます。
○高橋委員 職員の話をしますと、必ず、質の高いサービスをというお話をされるんです。もちろん、よりよいサービスをやりたいとみんなが思っています。でも、私が今指摘をしているのは、それ以前の問題なんです。障害者施策を支えている職員の皆さんがもたなくなったら施策は崩れるでしょうということを言っているんです。そのことに対して、しっかりと受けとめているのかということであります。いかがですか。
○柳澤国務大臣 同じ事態に着目してどのような表現をするかということではないか、このように思います。
事業者のもとにおける職員の皆さんが生きがいを持ってやっていただけるというように私は申したのでございますけれども、そうした職場を離れたいというような消極的な気持ちに陥っている、こういうことを委員は御指摘になっていらっしゃるのかと思いますけれども、私どもとしては、やはり本当にやりがいを持って質の高いサービスを障害のある方々に御提供いただけるようにというような考え方でもっていろいろな措置を講じてまいりたい、こういうように申し上げているところでございます。
○高橋委員 全然わかってません、大臣。消極的とかそういう問題じゃないんです。本当に驚きました。
今の調査には個票がついているんです、一人一人の声が。全体で六割を超える方が、以前より強くストレスを感じている、利用者と話す機会が減った、家族との摩擦が多くなった、職員が減って職員間がぎくしゃくしている、利用者との間の心のすき間ができたような気がする、こういう声が上がっていることを本当に深刻に受けとめるべきなんです。一生懸命お世話をしたいけれども、すき間を感じてしまう、お互いに大変だ、こういう事態を消極的などという言葉であらわしてはなりません。
全国福祉保育労働組合障害種別協議会が十月二十六日に発表した労働条件等に関するアンケート調査、これは施設の経営がどのように職員にしわ寄せされているかを示しているんです。三八・五%が職員数が減ったと答えて、その理由の六割が施設の収入の減だと。それで、数を減らしていなくても、パートや臨時に置きかえている。それから、日払いの問題がございますので、もう休みがなくなっちゃった、土日全部出勤している、平日に代休といっても、もしまともに休むとその分の対応がとても間に合わない、そういうことで休みを我慢するしかない、そういう労働強化がはっきりしているんです。そういう実態があるんだということをしっかり認めていただいて、実態把握と対策を強く求めたい。
次に行きたいと思います。
それで、先ほど来出ている日払いの問題では、やはり山井委員もお話ししたように、ごめんなさいと利用者が言わなければならない。利用者にとって、自分が休むことで施設の収入が減るということをわかっているからなんですね。これは、障全協の十月の調査でも、自分にとって負担は重い、だけれども事業所に迷惑がかかると三四・三%が答えていて、自分の体や負担もあるけれども施設のことを苦慮している、こういう状態が起こっているんです。ぐあいが悪くても、経営を考え、施設に行く、あるいは来てもらうという現状について、障害者の特性からいえば本来あるべき姿ではないと思いますが、いかがですか。
○中村政府参考人 日払いについての御指摘がございました。また、そういった中で、利用者の方、事業者の方、それぞれ御心配されているという御指摘もございました。
私どもは、大臣の方からも御説明しておりますように、従前の施設の収入の八割の保障ということを提案しておりますし、また、日割りをするときには、開所日数を加味したり、利用率を加味したり、また、利用者の方々が必ずしも一〇〇%通所されるということもありませんので、さらに定員外の利用者の方の利用も考えていただく、そういう措置を講じてきたところでございます。
なお、こういう措置でも、報酬日払い化への即時の対応に苦慮している事業者も見られることから、さらに安定的な運営を確保する観点から、与党からの御提言もいただいております、事業者の実態等を踏まえ、対応について検討させていただきたいと考えております。
○高橋委員 聞いたことにはきちんと答えていただいていないような気がしますけれども、やはりそういう現場の声があって見直しをせざるを得なくなったんだろう、それはそういうふうに受けとめたいと思います。それでも十分ではありません。しかし、見直しは必要だということで指摘をしたいと思います。
次に、きょうは障害児の問題が随分指摘をされました。障害者自立支援法に、名前にそもそも障害児が入っておりません。確かに条文の中では「障害者及び障害児」として定義をされておりますが、障害児の通所サービス、入所サービスについては改正児童福祉法で対応しているという状況であります。私は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」とした児童福祉法の精神と今の障害者自立支援法が合致するだろうか、このように疑問に思っています。
十月に放映されたNHKのテレビ、「@ヒューマン」でも紹介をされていました。また、そのときに出ていた方が、きょうの参考人のところにも来ていただいております。そのお母さんたちの声が本当に一つ一つ胸に刺さるんです。政府から重荷だと言われている気がするというお母さんの声。自分の子供の周りはゆったりとした時間が流れている、その言葉にはっとさせられました。毎日毎日、同じことの繰り返しのように思えるけれども、その長い時間を経て子供は確実に変化をしている、あるいは、ある日突然できなかったことができるようになっている、そういう喜びも語りながら、しかしこれ以上の負担には耐えられないと訴えていること、そのことをどう受けとめるかということであります。
そこで、質問は二つです。
確認しますが、子供は成長、発達するものであり、障害を固定的に見るべきではない、この認識が一致できるのかどうか、これが一つ。十月の委員会でも指摘をしましたが、子供の障害は、続ければ改善もあります。しかし、その逆もあります。そのためにも、負担増が利用制限につながり、障害を悪化させてはならないと思うが、どうでしょうか。大臣に伺います。
○柳澤国務大臣 障害児の方々は発達過程にもとよりあることでございますので、個々の状況に応じて適切な療育や支援を行うことがその発達にとって極めて重要だと思っております。
それから、障害児についても、措置ではなくてサービスの選択ができるように新しい制度がなったわけでございますけれども、これについては原則一割ということで御負担をお願いしていますが、しかし、障害者以上によりきめ細かな軽減措置を講じておりまして、利用者としての障害児の皆さん、また親御さんが使いやすい制度になるように配慮しているところでございます。
障害児に対して適切な支援を行うべきという御指摘ですけれども、障害児施策については、サービスの利用動向を注視しながら、今後とも適切な療育や支援をよりよい形で受けられるように努めていきたい、このように考えております。
○高橋委員 障害児の問題は、児童福祉法の原点に返って応益負担をやめるべきだ、このことを指摘して、終わりたいと思います。