国会質問

質問日:2007年 2月 21日 第166国会 厚生労働委員会

JAL客室乗務員の深夜業免除問題

 日本共産党の高橋千鶴子議員は二十一日の衆院厚生労働委員会で、日本航空インターナショナルが育児休業法に基づく深夜業務の免除を申請した客室乗務員の仕事を取り上げている問題について是正指導を求めました。柳沢伯夫厚労相は、裁判で係争中としながらも「育児休業法に基づく権利がきちんと確保されるようしっかり取り組んでいきたい」と答えました。
 高橋議員は、厚労省の育休法指針の解説で「請求者を昼間の勤務につけさせず、懲罰的に無給で休業させることは、不利益取り扱いにあたる」としていると指摘。同社が請求者に月一、二日しかフライトさせず、社会保険料などを引くと給与がマイナス一万五千八十四円という赤字になっていると指摘し、指針に反していると追及しました。
 大谷泰夫・雇用均等・児童家庭局長は、申請者が提訴しており「判断は司法の場で」と答弁。
 高橋議員は多くの申請者が不利益扱いを受けており、免除者でない人が年休を申請しても「昼間にフライトしてくれ」と言われている証言も示し、不利益取り扱いは明らかだと批判。「10時までは働くが、せめて夜だけは子どもと一緒にいてあげたいというのがわがままなことか。深夜働けない人は去れ、と言っているのと同じ」と迫りました。
 柳沢厚労相は、係争中でコメントできないとしながらも、「安心して子どもを産み、育てられる職場環境の整備は必要。都道府県労働局で相談や企業主への指導をおこなう」と答えました。
 傍聴席には億の客室乗務員がつめかけ、ハンカチで目頭を押さえる姿も。質問後、高橋議員に「私の思いを言ってくれた」と語っていました。

(2007年2月22日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 大臣、発言すればするほど何か穴を掘るような事態が起こっていると、しっかりと認識する必要があるのではないでしょうか。通常国会冒頭の大臣所信がおわびから始まったというのがかつてあったでしょうか。非常に重大な事態だと思います。

 改めて私は、産む機械発言については許すことができません。大臣は、テレビのインタビューに答えて、人口統計を説明しようとしてぱっと頭に浮かんだのが、物を製造する機械に例えた場合とおっしゃいました。まさしく、女性は産む機械であり、赤ちゃんは製品なのだと言っていることであります。私も一人しか子供を持てませんでした。大臣の言う人口統計でいえば、夫婦で一人しか子供を産めなければ、いずれ社会はしりすぼみになります。だから、一人頭頑張れということでしょうか。少子化は、産めない女性、シングルも含めて、産まない女性が悪いと責められているのか。女性たちはここに強い憤りを感じました。単に言葉が過ぎた、尊厳を傷つけたということではございません。不適切とはそういう意味だとお認めになりますか。

○柳澤国務大臣 私の一月末における松江の講演での不適切な発言、これが本当に女性の方を初めとして国民の皆様に大変御迷惑をかけ、また、その方々の心を傷つけたということで、本当に申しわけなく思っております。反省の上に立って、私の与えられた任務を果たしてまいりたい、このように考えております。

○高橋委員 答えになっていないのです。反省はもう何度も聞きました。大臣所信でも既に伺いました。そういうことではなくて、女性たちの怒っている意味がわかったのですかと。私が先ほど言ったことと同じだと受けとめてよろしいですか。

○柳澤国務大臣 女性の方々の尊厳を傷つけたということで、心からおわびを申し上げます。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

○高橋委員 ですから、私は、尊厳を傷つけたということでは、それだけではない、もちろんそういうことではあるけれども、それだけではないのだ、そこに含まれている意味が問題だと申し上げました。しかし、そのことを何度お話ししても認めないというのであれば、やはり、そこから出発する厚生労働行政を任せるわけにはいかない、このことを重ねて指摘させていただきたいと思います。

 本当はそう言ったらもう質問できなくなっちゃいますけれども、きょうは、やはり本当に大臣がその席にとどまる以上、本気で少子化対策で結果を出すつもりなのか、そのことを伺いたいと思っております。

 少子化対策にはたくさんのアプローチがあります。私は、そのかぎは、子供を産みたい、働きながら生み育てたいと思う女性たちがいる、それをどう応援し、それができないバリアをなくしていくかということだと思います。その点は御一致できると思うんですね。仕事と生活の調和、ワークライフバランス、それを直に具体化しているのが育児休業法であると思いますけれども、大臣に、この育児休業法の意義について伺いたいと思います。

○柳澤国務大臣 御指摘のとおり、働くお父さん、お母さんが安心して子供を生み育てる環境ができること、これはもう非常に重要な課題だと思っております。

 育児・介護休業法には、仕事と家庭の両立のための制度として、育児休業制度や短時間勤務制度などが定められておりまして、労働者が気兼ねなくこれらの制度が利用できる職場環境を整備していくことが安心して子供を生み育てることができる環境整備になる、このように考えております。

○高橋委員 中でも十九条、午後十時から午前五時まで深夜業は免除するという規定については、産休あるいは育児休暇から職場に復帰し、フルタイムで働きつつ、子育てと両立したいお母さんたちの願いに沿ったものだと思っております。しかしながら、それは職場の理解、協力が得られるか、本当に免除申請したことが生かされることが問題だと思うんです。

 育児休業法の十条、十六条にある不利益取り扱いの禁止条項、この中には、看護休暇など具体的な記述がある一方、深夜業の免除を申請したことに対する不利益取り扱いについては条文の中で触れておりません。これは該当にならないのでしょうか。

○大谷政府参考人 法律上の該当にはならないというふうになっております。

 ただし、指針において、別の、いわば追加的な考え方が示されておりまして、そういったことについて、取り扱いに当たる場合もあるからということが指針には定められております。

○高橋委員 法律上にはならないと言われたことが、私非常に問題だと思うんです。

 ただ、今お話しされたように、指針においては定められているということで、厚生労働省がつくっている育児・介護休業法のあらまし、両立支援キャラクター、両立するべえちゃんのカットがついているこの資料の中にポイント解説というのがございます。

 読ませていただきます。

 事業主には、深夜業を免除するかわりに同等の昼間勤務を確保することまでは義務づけられていませんが、労働者本人が昼間勤務での就業を希望しており、かつ、かわりに就業させることができる同職種の昼間勤務が十分あるにもかかわらず、深夜業の制限を請求した労働者を昼間勤務につけさせず、懲罰的に無給で休業させるといった取り扱いは、深夜業の制限の制度の利用をちゅうちょさせるものであり、不利益取り扱いに当たるおそれがあります。

 間違いありませんね。

○大谷政府参考人 御指摘の文書の中でそういった記述がございます。

○高橋委員 私は、この解説を読んで、まさにこの文章は、深夜業の免除を申請したために仕事をほとんど取り上げられてしまったJALの客室乗務員のことを言っている、そのままだと思いました。

 九九年四月からJALは深夜業免除制度を導入し、深夜帯を除くフライトが月二十日間免除申請者にも指示されておりました。ところが、二〇〇三年のJASとの合併を契機に、会社は免除者を七十五人に限定し、かつ、それも抽選という方針を発表しました。その後、東京労働局の指導もありました。

 重大なことは、資料の一を見てください。お配りをしております。ある免除申請者の一カ月のスケジュールであります。左側は〇三年七月までの免除者のスケジュール、Hとあるのが休日でございますけれども、それ以外はこのように飛んでおりました。それが、翌月には無給日ばかりであります。この月は、飛んだのは二十一日のたった一日であります。こういう形で、一日か二日しかフライトをさせず、残りの日を無給日、給料を与えない、そういう仕組みをつくりました。

 この方の給与が幾らか想像できるでしょうか。基本賃金は二十七万何がしでございます。しかし、実際には無給日扱いをされていますので、給料が引かれ、社会保険料などが引かれ、差し引きマイナス一万五千八十四円。赤字であります。

 赤字の給与明細書というのを皆さん見たことがあるでしょうか。これでどうやって子育てしながら働くことができるのでしょうか。前の月までは普通にフライトをしていたのに、翌月から無給日にされた。まさに仕事が取り上げられてしまった。これは、今読み上げた不利益取り扱いに当たらないでしょうか。

○大谷政府参考人 現在、これは裁判で係争中の案件でございまして、個別の判断について立ち入ることはなかなか難しいわけでありますが、経過を若干御説明申し上げますと、平成十五年の三月に、東京労働局において、深夜業の制限に係る措置が適切に実施されるようにということで、幾つかの指導、三項目の指導を行ったところでございます。

 この労働局の指導を受けまして、日本航空では当面の措置として、その選抜方法を改めるとともに、選抜から漏れた者に一定の配慮を行い、また、十五年の七月に、その後の長期的な措置として、関係する二つの労働組合に対しまして、一つは、深夜業の免除の申請者全員について深夜業を免除する、二つとして、日帰り勤務を申請者全員に極力均等に割り振り、日帰り勤務以外の日については就業を免除する、こういう提案が行われたところと聞いております。

 これについて、二つある組合のうち、一方の組合はこれに応じて労使協定を締結され、もう一方の組合は応じられなくて、十六年の六月に東京地裁に提訴されたということで現在に至っておるというふうに承知しております。

○高橋委員 今御紹介がありました、〇三年の三月に東京労働局が指導して云々ということでございますが、問題は、労働局が指導した内容については、局長、今お答えになりましたけれども、それがこの結果なんだということなのですね。今二つの組合の話をしましたけれども、それはまた後で言います。こういう結果になっている。

 同年の六月十一日の衆議院厚生労働委員会で、我が党の小沢議員が、この労働局の指導の趣旨について、この指導の趣旨は、非常に緊急的なものであるけれども、八月以降は少なくとも育児休業法の趣旨に合う会社側の提案を期待しているという意味ですねという質問に対して、おっしゃるとおりだというふうに認め、その後の問題についても、しっかり調査をし対応していきたいということをお答えになっていると思います。

 こうなったという事実を確認しただけではなくて、いわゆる期待どおりのものかどうかも含めて、必要な措置をやってきたのでしょうか。

○大谷政府参考人 一部繰り返しになりますが、そういったことで指導の後の日本航空の措置を見守ったわけでありますけれども、その提案について訴訟に至ったということで、それ以後はいわば労働局の手から離れて訴訟に、係争中の案件にかかったというふうに理解しております。

○高橋委員 訴訟中であれば何も答えられないということを今おっしゃっているのかもしれませんけれども、訴訟の原告は四人でございます。実際の免除申請者はもっとたくさんいらっしゃいます。そういう皆さんの状態が不利益にならないのかということを私は伺っているのであります。

 そういう皆さんの状態が不利益であれば、それは労働局としてきちんとした務めを果たすのは当然ですね。

○大谷政府参考人 当初の段階で十分に御相談して御指導し、その結果としての提案が出てきたわけでありまして、その後、訴訟に移ったということで、むしろ、司法手続の方に判断が移ったというふうに考えているところであります。

○高橋委員 結局、そうやって必要な責任を果たしていないと言わなければならないんです。

 先ほど労働契約法の議論がございましたけれども、この案件はまさに先取りじゃないか。もう労使間の問題になったんだからと、では労働局としては必要な手だてはとらないということになっていくわけですね。しかし、私が今言ったように、確かに原告の方が四人いらっしゃいます。でも、その方たちも含めて、今、免除申請者の方たちがたくさんいらっしゃる、そういう方たちの不利益を取り除いていただきたいというのが趣旨なんだ、そこをしっかり見ていただきたいと思うんです。

 先ほど紹介した指針の中には、例えば不利益取り扱いの中身というのは、正社員をパートなどの非正規社員とするような労働契約内容の変更は、労働者の表面上の同意を得ていたとしても、これが労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には該当する、そういうことが書いてございます。先ほど局長が、一方の組合員が協定を締結しているとおっしゃいました。だからいいんだということかもしれませんけれども、その一方の組合、いわゆる一般的に言う第一組合に当たりますね、その方たちが圧倒的に深夜業免除を申請しているんです。九割を超えている。その方たちから声が上がっているというのを私は今、ぜひ聞いていただきたいと思うんです。

 免除申請者でない乗務員たちが年休を申請しても、昼間にフライトをしてくれと言われて困っている、免除申請の乗務員たちに飛んでもらえばいいのにと言っているんです。年休は消化し切れていません。年度末の三月三十一日までに、一日当たり二百三十人が年休をとらないと失効してしまうくらいの規模の年休未消化という実態でございます。

 きょうは時間がありませんが、資料をつけておいております。JALの私傷病と労災発生件数の推移というのがございますけれども、こうした労働強化の実態も起こっている。

 その中で望んでいることは何かということは、今おっしゃった、協定を結んだ側の組合の方たちがこんなことを言っています。無給日を認めない組合の人には月に一日から二日しか勤務日を与えず、無給日を協定している我々組合員には、およそ深夜免除とは言えない勤務、早朝三時台に起床し、帰宅は深夜十一時近くを与え、仕事と育児の両立が困難にされていますという訴えがございます。

 このような訴えを見るときに、やはりこれは多くの方たちに不利益を与えているのではないか、そういうことをしっかり見る必要がある、そのように思いますが、いかがですか。

○大谷政府参考人 両当事者間の事実認定の問題等ありまして、軽々に即断することは難しいわけでありますけれども、一般にそういう事態があったとするならば、この指針等の考え方に基づいて考えていく必要があろうというふうに考えております。

○高橋委員 一般にそういう実態があったとしたらというお答えがございましたので、しっかりとそこは調べていただきたいと思います。

 最後に大臣に聞いていただいて、質問を最後に一問させていただきます。

 四人の原告がJALを相手取り、提訴したのは二〇〇四年と二〇〇五年であります。彼女たちはいずれも勤続二十年以上のベテラン乗務員であります。そのうち一人は母子家庭で、退職を余儀なくされました。もう一人は、いずれ子育てが安定したら前のようにフルで働きたいという希望を断念し、月十日のみという部分就労を選択せざるを得ませんでした。赤字か月一万、二万という給料では住宅ローンも引き去りできなくなったということで、アルバイト、アルバイトといっても、いつフライトが入るかわからない状況では時間が決まったアルバイトをすることができず、チラシ配りをして生活費の足しにしています。月に一回か二回のフライトでは仕事の勘がなかなか戻らず、機種や設備にもなれていないため、毎回新人同然の扱いを受け、緊張を強いられます。人間としても、客室乗務員としてこれまで積み上げてきた誇りも傷つけられている状態であります。

 一人目は免除制度を使いながら育てた、原告はこう述べています。入社してからずっとこの仕事に誇りとやりがいを持っていました。ですから、できるだけ長くこの仕事を続けていきたいと考えていました。そうした働き続けるという人生プランの中で、深夜業免除措置があったからこそ、二人目の子供の妊娠、出産を考えることもできました。それぞれに、親の死亡や子供さんのぜんそくなど事情があります。そういう中でも、深夜業さえ免除してくれたら仕事と家庭生活は両立できたと主張しているのです。

 中には、収入のため泊まり勤務に復帰した方もいらっしゃいますが、子供を一人で寝かせるときもございます。十時までは働いているんです。せめて夜だけ一緒にいてあげたいということがわがままなことでしょうか。せっかくのこの深夜業免除制度が二人目を産む勇気をくれたと言っているのに、会社は働けない人は去れと言っているのと同じではないでしょうか。これでは法律の趣旨も生かされないし、大会社がこういうことをしているのであれば、社会全体の両立支援が進むはずがありません。

 こうした声をしっかりと受けとめて、必要な指導を約束していただけるでしょうか、大臣。

○柳澤国務大臣 係争中の具体の案件についてコメントは差し控えさせていただきますけれども、安心して子供を生み育てやすい職場環境の整備は重要だという認識は、全く委員と同じであります。

 厚生労働省としては、今後とも、各都道府県労働局におきまして、労働者からの相談への対応や事業主に対する助言指導などを行うことにより、育児・介護休業法に基づく労働者の権利がきちんと確保されるようにしっかり取り組んでまいりたいと思います。

○高橋委員 終わります。よろしくお願いいたします。

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