国会質問

質問日:2007年 3月 14日 第166国会 厚生労働委員会

雇用保険法改定案

 日本共産党の高橋千鶴子議員は14日の衆院厚生労働委員会で、非正規雇用増大による貧困と格差が問題になるなか、これと逆行して雇用保険への国庫負担を半減することを批判し、雇用に対する国の責任を果たすようただしました。
 雇用保険への国庫負担は、2006年の「骨太方針」で「廃止を含む見直し」とされたのを受け、「当分の間」として半減する法案が出されています。
 高橋氏は、「半減で終わらないという懸念がある。廃止を検討すべきではない」と質問。柳沢伯夫厚労相は、雇用に対する国の責任を認め、「ご懸念の事態はまったく想定していない」と国庫負担の全廃検討を否定しました。
 さらに、高橋氏は、雇用保険の改悪で完全失業者に占める失業給付受給者の比率は、2000年の33.3%から06年に22.8%まで低下していることを示し、「圧倒的多くの失業者が雇用保険から排除されている」と批判。国庫負担を減らすべきではないと主張しました。
 また、行革推進法により廃止の不安の声が出されている労災保険による休業補償の「特別給付金」について、青木豊労働基準局長は「引き続き存続する。廃止の予定はない」と答え、未払い賃金立替制度についても「今後も継続する」と答えました。

(2007年3月15日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今の議論にも若干関連するのかなと思って聞いておりましたけれども、まず、昨年七月七日閣議決定の骨太方針二〇〇六において、「「行政改革推進法」の趣旨を踏まえ、かつ、昨今の雇用保険財政の状況にかんがみ、二〇〇七年度において、廃止を含む見直しを行う。」とされました。

 今般の改正案では、失業等給付費に係る国庫負担額は、当分の間、負担額の五五%、つまり、現行二五%を一三・七五%に引き下げるとするものであります。私は、今回の見直しが、これで終わりでなく、〇七年度中にさらに廃止に向かって検討が続けられていくのかと非常に懸念をしておりますが、そんなことはないということを確認させていただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

○柳澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、私どもは、雇用保険について国の責任を考えているということでございまして、今高橋委員が御懸念になるような事態は全く想定しておりません。

○高橋委員 国庫負担が削減されたこと自体に対しては非常に問題だと私は思っておりますけれども、これ以上はないということで確認をさせていただきたいと思います。

 続けます。

 本会議において、またこの間、与党議員からも発言が繰り返しされております、報告書にも書かれておりますが、いわゆる雇用保険の財政状況が好転しているということが繰り返し述べられているわけなんですけれども、それは一体どういうことなのかをやはり具体的に確認したいと思うんですね。財政状況が好転という、その内容、理由はどのようなものでしょうか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用保険の財政状況、今委員御指摘がございましたが、好転をしておるということであるわけでございます。

 例えば、どういう指標で見るか、非常に端的に申し上げますが、収入に対して支出した分の差である部分が積立金として積み上がるわけでございますが、この積立金残高という点でまず見てみますと、非常に厳しい時期でございました平成十四年度におきましては、四千六十四億円というところまで減少いたしたわけでございますが、一番直近の決算でございます平成十七年度におきましては、この積立金残高が二兆八千三十二億円というところまで積み上がったというふうな点が指摘できるかと思います。

 こうした財政状況の好転の理由と申しますか背景でございますが、一つには、当然ながら、雇用失業情勢というものが改善を見てきておる、こうした点。また同時に、経済の回復等もございまして、保険料率を引き上げたということもございましたが、保険料収入が着実に増大をしたという点。またさらには、平成十五年の改正におきまして、給付の重点化を図る等々の見直しを行ったといったようなさまざまな事項がその背景として考えられるというふうに思っておる次第でございます。

 なお、平成十五年の改正でございますが、これは受給者の早期再就職を促進していく、こういう観点から、当時、基本手当と再就職時賃金とが逆転しておる、つまり基本手当の方が再就職時賃金より上回るケースもあったというようなこともございまして、これを解消していくというために給付の上限額を引き下げる等の見直しを行ったものであるわけでございますが、これらの見直しにつきましては、やはりセーフティーネットとしての雇用保険制度の安定的な運営を図っていく、そして労働者の生活及び雇用の安定を図る、こういう趣旨、目的の上では必要な改正だったと考えておるところでございます。

○高橋委員 今最後に平成十五年度の改正のお話をされましたけれども、若干逆転現象があった、そのことをもって給付率を削減した、そのことによって三千億円の削減効果、皆さんに言わせると効果があったわけですよね。そのことが、その後に給付額が減ったということになっているわけで、何かそれを、非常によいことだけ述べられるのはいかがなものかと私は指摘をしておきたいと思います。

 今述べたことを、収支状況ということで、資料の二枚目につけてございます。少しごらんになっていただきたいと思うんですが、下から二番目の差し引き剰余というところをごらんになっていただけるとわかりますが、確かに、マイナスだった収支が十五年度から黒字に転化をしております。

 それで、給付費だけで見ていただきたいんですけれども、その上ですが、十五年度に五千億円の減、十五年度から十六年度に四千二百億円の減、わずか五年間で一兆円も給付費が減少している。これは全体の枠から見るとかなり大きいと指摘せざるを得ないと思うんですね。

 これをグラフに落とすとどうなるかというので、三枚目をごらんになっていただきたいと思います。失業者が減って給付が減った、そうなればそれは大変よろしいかと思うんですが、決してそうではないと思うんです。

 二〇〇〇年、平成十二年は、収支がマイナス一兆円を超えておりますけれども、そのとき、完全失業者が三百二十万人でございました。失業給付を受給していた比率が三三・三%でございます。二〇〇五年になるとこれがぐっと下がりまして、収支は確かに一兆円を今度は超えてプラスになっておりますが、失業者は二十六万人減った。しかし、それ以上に、給付率が二〇〇五年は二三・一%という形で、いわゆる給付率が一〇%もダウンしているんですね。

 つまり、雇用保険で救えている失業者が減っている、割合が減っているということになるわけです。失業者の二割強しか雇用保険で救えていない、圧倒的多くの失業者が雇用保険から排除されているということになりますが、このことをお認めになりますか。

○高橋政府参考人 今委員がお示しした資料で見た例えば二〇〇〇年におきます受給者比率、これは完全失業者に対する受給者実人員の比率ということでお示しされていると思いますが、これが三三・三%だったものが二〇〇六年は二二・八にまで低下しておる、これは失業者の中に雇用保険の受給を受けられない人たちがふえているのではないか、こういう御指摘なのかもしれません。

 確かに、二〇〇〇年のころ、離職者と申しますか、企業のリストラ等を背景に、大変企業からの離職者が大きくふえた、そのことが完全失業者の増加ということをもたらしていた面があろうかと思います。その後の景気回復の中で、そうしたリストラ等々に伴う離職者というものが減少する。

 他方、労働市場が好転をしてくる中で、今まで労働市場から引っ込んでおられた方の中から、新たに求職活動を始める、こういうことを通じて失業者という形になる方がふえてきておる。そうした方々は、ある意味では雇用保険としての被保険者資格というものを持っていないわけでございますので、求職活動を始めたとしても雇用保険の受給というものはない。そうした面もこの比率の低下の背景にはあるのではないかというふうにも考えられるところでございます。

○高橋委員 それについては、一〇%に値するだけ、そういうような引っ込んでいた方が表に出てきたということ、言えますか。

○高橋政府参考人 今の御質問でございますが、一〇%の低下のうち、どれくらいが今言ったような要因で説明できるか、これはにわかにはこの場ではお答えはできませんが、我々もそこら辺は十分分析をしてみたいというふうには思っております。

○高橋委員 この点については、分析の後、資料の提出をお願いしたいと思います。

 今おっしゃったことは、確かに一つの傾向としてあるかもしれないけれども、やはりそれは一部分ではないか、圧倒的には雇用の流動化などという原因があるのではないか、ここに真剣に目を向ける必要があると思うんですね。

 資料の一枚目に戻りますけれども、主要労働経済指標、完全失業者や率、有効求人倍率あるいは非正規労働者の割合などについて資料を述べさせていただきました。

 これはいろいろなところで議論をされていることですけれども、簡単におさらいをしますと、この右の表を見ても、二〇〇〇年から二〇〇五年の間に正社員が二百五十六万人減り、一方、非正規が三百六十万人ふえ、三二・六%の割合になっています。やはりこうした正社員から非正規社員への置きかえが進んできたことがいわゆる雇用保険から排除される大きな要因になっているということは否めないのではないかと思うんです。

 先日、私がお邪魔した山形労働局、三年連続で有効求人倍率が一倍を超えています、厳しい東北各県の雇用情勢の中でも求人数が着実にふえている、そういうふうに胸を張っておられました。では正社員の比率はどうですかと聞きますと、正社員はわずか三割強にすぎないと。やはり非正規の求人が圧倒的にふえているんだという現実でありました。

 そういう中で、今の青年の皆さんからは、雇用保険さえも入れないような働き方がふえているんだということでの訴えが続いていること、それは皆さんも自覚されていることではないかと思うんですね。そういう働き方の問題があるということをお認めになるのか。大もとにある働き方の問題、企業の無法、労働者の無権利状態を改善し、しっかりとした雇用を確保していくことが必要だと思います。そのために国庫負担を今減らすべきではないと思いますが、いかがでしょうか。

○柳澤国務大臣 委員も、財政状況そのものについては好転をしているということをお認めになっておられるわけでございます。それから、国が責任をいたずらに回避するというか、そういうような気持ちもないということも、先ほど私答弁したとおりでございます。

 そういう中で、行政改革の一環として今回のような国庫負担の削減をしたわけでございまして、これによって別段雇用保険の事業に支障が出るということでもないわけでございますので、一つの雇用保険の財政運営として、ぜひこの国庫負担の削減ということについては御理解を賜りたいと思います。

○高橋委員 財政が好転していることと、国がいたずらに回避する気持ちはないのだということを繰り返されたわけであります。

 もちろん、今国庫負担を削減したことによって今すぐ支障が出るわけではない、例えば保険料率が下がっていますよとか、そういうことをおっしゃりたいと思うんですけれども、私があえて確認をさせていただきたいのは、財政が好転した背景に、雇用保険から排除される労働者がふえているとか、あるいは、その犠牲によって好転したのでは本末転倒なわけであって、本来の役割を果たすためにも、その大もとにある働き方の問題と真剣に向き合うのだということがやはり必要だと思いますが、その点はよろしいでしょうか。

○柳澤国務大臣 正規雇用、非正規雇用という働き方の多様な中で、非正規雇用の皆さんの一部の中には雇用保険の対象者にならない方も出ている、こういう御指摘かと思います。

 しかしながら、雇用保険としてしっかりと、これは労働者の負担もあるわけでございますし、事業主の負担もあるわけでございますが、もちろん国庫負担もあるわけですが、そういう支え合いの中でこの保険が運営されているということでございますので、非正規の雇用者のどういう人たちを雇用保険の中に取り込んでいくかということについては、やはり一定の要件というものでこれを画する必要があるということは、これは御理解賜れるのではないかと思います。

○高橋委員 私が聞いているのは、一定の要件で画することが悪いと言っているのではなくて、今そこを論じているのではなくて、要件があるのに、企業がきちんと届け出なくて資格を得ていないですとか、雇用の仕方によって雇用保険が受けられない、本人が希望しているにもかかわらず受けられないとか、そういう本人の意思とは別に雇用保険から排除される労働者がいてはならないですよということです。いかがですか。

○柳澤国務大臣 繰り返しになりますけれども、雇用保険として、相互の支え合いの中の保険、こういうことを成立せしめるためには一定の限界があるということは、委員もお認めになられたところでございます。

 そういう中で、さらに、むしろ雇用形態というものを、要件に合致するような雇用をできるだけふやしていくという取り組みが必要なのではないか、こういう意味合いであれば、私ども、できるだけそういう、今たびたび申しておりますように、非正規雇用の中で、それを望まない、正規雇用を望んでいる方々が正規雇用に移行するということについては、政策的な対応をいろいろとらせていただいて努力をしているということで御理解を賜りたいと思います。

○高橋委員 昨年の国民生活白書でも、正社員への転職を希望しながらパートやアルバイトをしている十五歳から三十四歳、九十七万人もいる、ふえているということがあります。こうした問題が大もとにあるということをしっかり見て今後の労働行政もやっていただきたいと思います。

 時間がないので、労働福祉事業について二点伺いたいと思います。

 労働福祉事業は、労働条件確保事業の廃止、事業名の変更などの改廃が行われます。その中で心配されていることは、賃金の八割を補償する労災保険者の休業補償、この二割は労働福祉事業の特別支給金として給付されておりますけれども、今回この二割分がカットされては困る、そういうことはないだろうかと懸念が出ておりますので、この点が従来どおり確保されるということを確認したいと思います。

 あわせて、倒産した際の労働者の賃金を補償する未払い賃金立てかえ制度、非常にこれも重要な制度でありますけれども、これに対しても、絶対になくせないと思っております。一部、使用者側から廃止論なども出ておりますので心配しておりますが、この点について確認をさせていただきます。

○青木政府参考人 今委員御指摘になりました特別支給金でございますけれども、これは、労災保険給付が支給される場合に上乗せして、おっしゃいましたように、被災労働者、その遺族に直接支給されるものでございます。

 今回の労働福祉事業の見直しに当たりましては、見直し後の新たな事業を、保険給付の補完、労災の防止等、労災保険にふさわしいものに限定するということといたしたものでございます。この特別支給金は、従来から保険給付を補完する性格のものであるということから、引き続き存続することといたしました。このような特別支給金の性格にかんがみまして、これを廃止する予定はございません。

 それから、未払いの賃金の立てかえ払い、この事業につきましては、企業の倒産によりまして賃金が支払われない労働者に対しまして、未払い賃金の一定範囲を事業主にかわって支払うというものでございまして、国が設けるセーフティーネットとして重要な役割を果たしておりますので、先般の労働政策審議会の答申を踏まえまして、今後も継続して行うことといたしております。

○高橋委員 ありがとうございました。二点確認させていただきました。

 時間になりましたので、もっと質問したいのですが、次の機会に譲りたいと思います。ありがとうございました。

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