国会質問

質問日:2007年 3月 16日 第166国会 厚生労働委員会

雇用保険法改定案(季節労働者問題)

 日本共産党の高橋千鶴子議員は16日の衆院厚生労働委員会で、季節労働者に対する特例一時金が、50日から30日(当面40日)に削減される問題について質問しました。高橋氏は、地域経済に与える影響が非常に大きいと指摘。北海道の調査では、47.2%が「常用の仕事がない」ことを理由に季節労働者となっていること、35.6%が年収200万円未満であるなどの実態を示し、「本人が好んで季節労働者になり、特例一時金を受けているわけではない。命綱を切るべきではない」とただしました。
 柳沢伯夫厚労相は「今回、季節労働者の実情に照らして当面40日とした。今後、雇用情勢の厳しい地域に対して、施策を重点化し支援していきたい」と述べました。
 高橋氏は、出稼ぎ労働者の相談活動を行う自治体を支援する出稼ぎ労働者援護対策費が廃止される問題に懸念を表明。高橋満職業安定局長は「新たに出稼ぎ労働者就労支援員を配置して対応していく。健康診断は、就労先の七割の事業所で自主的に実施しており、今後も未実施の事業所に対する助言指導を強めていきたい」と答えました。

(2007年3月18日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。時間が限られておりますので、端的に伺います。

 積雪寒冷地などで季節的に雇用される季節労働者の特例一時金が五十日から三十日に減額される、当分の間、四十日間というものがございますが、これには、まず北海道議会を初め、多くの市町村議会から意見書が上がっております。

 まず、その数がどのくらいであるのか、大臣はこれらの意見書をどのように受けとめられるのか、伺います。

○柳澤国務大臣 本件改正案につきまして、要請書等が提出をされたり、あるいは実際に役所にお見えになって要請の趣旨を口頭でお話しになられたことがあったようでございます。

 要請書等によるものは、合計百十件ということでございます。

○高橋委員 ですから、その要請を受けて大臣の感想を伺っております。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

○柳澤国務大臣 これは、地域的にも広がりが限局されているということもございますので、その地域の方々が熱心に御要請になられたということを感じます。

○高橋委員 ちょっと、今の答弁は非常に驚きました。熱心に、その程度の感覚ですか。私は、これはちゃんと通告しておりますので、もう少し誠意ある答弁がいただけると思っておりました。百十件ですよ。道内百八十市町村のうち、過半数を超えているんです。道議会からも寄せられている。それを熱心だと。それは、まさに命と暮らしがかかった請願に対して、その程度の認識は本当に不謹慎ではないかと思っております。

 季節労働者二十三万四千三百三十九人、最も多い北海道における季節労働者は十三万四千九百六十人です。北海道の平成十七年十月一日の失業者数が十三万六千人です。つまり、全道の失業者数と丸々同じくらいの数が季節労働者だ、大変な影響力だと思うんですね。地域によっては、雇用者に占める季節労働者の割合が十割を超すところもあると思います。季節労働者の趨勢が地域経済に与える影響が大きいと思いますが、いかがですか。

○高橋政府参考人 今回の特例一時金の給付水準の見直しにあわせまして、同時に、通年雇用化を促進する施策を強化いたしますとともに、ハローワークを初めとして地域レベルでの相談支援体制の強化等々を図るなど、自治体あるいは業界団体との連携を十分に密にする中で、季節労働者の通年雇用化に向けた各般の取り組みを行うことといたしております。

 また、これらの施策とともに、雇用情勢が厳しい地域に支援を重点化するための地域雇用開発促進法の改正案を今国会に提出させていただいているところでございまして、この改正地域雇用開発促進法に基づく施策等も含めて、総合的に地域対策を講ずることによりまして、地域におきます雇用の確保ということに実効性を期してまいりたいと考えておるところでございます。

○高橋委員 これも聞いたことに答えておりません。北海道全体の雇用者数に占める季節労働者の割合は五・八%です。ただ、安定所別に見ますと、例えば紋別が一三・五%、稚内一一・四%、岩内一〇・五%というように、非常に大きいところがございます。地域の中で季節労働者の占める割合が大きい、そういうところは本当に地域経済に与える影響も大きいということをお認めになりますね。

○高橋政府参考人 地域に与えるそうした影響ということも当然頭に置きながら、今御答弁申し上げたような各般の施策を講ずることによりまして、地域におきます雇用機会の確保ということに万全を期していきたいと考えております。

○高橋委員 そうした中で、今回の減額というのがどれほどの影響があるかということを指摘しなければならないと思うんですけれども、まず、今回、この問題が提起されるに当たって、特例一時金が循環的な給付である、あらかじめ失業が見込まれているものだ、そういうふうなことが言われております。確かに、データを見ますと、十回以上の給付が五一%を超えているなど、長く繰り返し受ける方もいらっしゃいます。しかし、それはそういう事情があるわけです。

 まず、ここで伺いますが、新たに季節労働に入ってくる人はどのくらいでしょうか。また、その理由は何でしょうか。

○高橋政府参考人 北海道庁が十六年三月に実施をいたしました季節労働者実態調査報告書によりますと、毎年、毎年といいますか、その年でございますが、大体、おおむねそういうことだろうと思いますが、全体の中に占める、新たに季節労働者になられた方というのが五%程度と承知をいたしております。

 季節労働者になった理由でございますが、やはりこの調査に基づきますと、常用の仕事がないためが最も多くなっております。他方、仕事内容が自分に向いている、あるいは冬期間休暇がとれる等の理由で季節労働者になった者も一部見られるというところでございます。

○高橋委員 今の局長が御紹介してくださった資料、皆さんのところにつけてあります。三枚目の資料でありますが、北海道庁が昨年調べた季節労働者の実態調査でありますけれども、ことしからが四・七%、昨年からが五・二%というように、やはり毎年のように新しく季節労働に入る方がいらっしゃるという実態がまずございます。そして、圧倒的に多いのが、常用の仕事がない、四七・二%、そして、それを始める前の雇用形態は、常用雇用だったのが三七・四%、家業の有無が、なし、九五%、こういう実態であって、まさに先ほど三井委員がお話をされたように、専業であるということもあるわけですね。そのことをまず見るときに、新しく季節労働に入らなければならない、常用雇用であったけれども入らなければならない事情が発生しているんだということをまず見る必要があると思います。

 そもそも、北海道は昨年度の設計労務単価が一万五千三百五円、全国一低い。同じ北海道庁の調べによると、季節労働者の年収は二百万以下が三五・六%、百万円以下も九・五%もいらっしゃいます。こうした中で、平均二十五万円くらいという特例一時金はまさに命綱になっているんです。それでも春まではもちません。半年の失業期間は生きている心地がしないと悲鳴が上がっています。

 例えば、苫小牧の四十三歳の男性、子供さんが一人いらっしゃいます。十八年通年雇用された中堅クラスの企業を退職しました。現業から事務部門へ配転されて、仕事になじめませんでした。季節労働者になって百五十万円も年収が減った。もう一度通年雇用になりたいと面接に行くと、今より安い派遣会社しか求人がありません。子供二人目はとても産めない、七十過ぎた母がひとり暮らしと途方に暮れています。この方は最後に、私の希望は、仕事が通年雇用され、安心して生活できる収入を得て、親子三人が細々でも生きていけることです、ぜいたくでしょうか、私たちを助けてくださいと訴えております。

 二枚目に事業所の調査を載せていますが、積雪地のため事業の継続ができないと答えた事業所が六五%もございます。こうした地域的な深刻な実態があること、それでも多くの方が、今紹介した方のように、できれば通年で働きたいと思っているんです。意見書を読んでいただければわかりますが、北海道としても市町村としてもそのために努力はしている。しかし、それだけでは足りないから国の支援が必要なんだ。本人が好んで季節労働になり、特例一時金で楽をしようとしているのではありません。大臣、この思いに答えるべきではないでしょうか。

○柳澤国務大臣 循環的な給付でありますこの特例一時金につきましては、かねてより実は見直しの必要性が指摘されてきたところでございます。

 今回の改正におきましてはそういう見直しを行ったのでございますけれども、見直しの後の給付水準としては、ほかの被保険者とのバランス等を考慮して決めさせていただきました。しかし、それに加えまして、やはり実際のこの関係の受給者の労働者の実情等に照らしまして、当分の間、四十日間ということにさせていただいた次第でございます。

 積雪寒冷地を初めとする雇用情勢が厳しい地域の雇用対策につきましては、事業主が行う通年雇用化を支援する施策等の充実強化によりまして、季節労働者の通年雇用化を、現にかなり少なくなってきましたが、一層促進するとともに、雇用情勢が厳しい地域に支援を重点化するために、地域雇用開発促進法の改正案を国会に提出しておるところでありまして、これらを通じまして地域雇用対策の拡充を図ってまいりたい、このように考えております。

○高橋委員 今大臣、真ん中のところで、実際の労働者の実情に照らしてとおっしゃいました。私、今、ほんの一部ですけれども、労働者の実際の声を紹介させていただきました。最初に大臣に感想を求めたときに、熱心なことだという感想でありましたけれども、決してそうではない。本当にこれが命綱なんだという必死な思いをしっかり受けとめていただいて、当然、総合的な対策は必要だけれども、しかし、そこにたどり着くまでの命綱を切るべきではないということを重ねて要望しておきたいと思います。

 さて、出稼ぎ労働者も、ピークだった昭和四十七年の五十四万九千人から、今は三万三千人まで減少しています。こちらの方は青森県がトップ、九千六百十三人となっています。しかし、その背景は、単に景気がよくなったとか仕事がふえたということではありません。農家人口そのものが減少している。通年出稼ぎになっている。出稼ぎ先そのものが減少している。こういうふうに、決して出稼ぎしなくてもよい環境になってきたのではないんです。厚労省の出稼ぎ労働者実態調査を見ても、一割が女性です。そのうち三十歳未満が六割を超えている。これも大変驚かされる実態であります。

 そうした中で、今回、都道府県への補助が廃止をされました。今年度は八千七百万円ありました。出稼ぎ就労前の健康診断、地域相談指導員などの事業が行われていました。季節労働だからこそ、健康診断の確実な実施、その後のフォロー対策が重要であります。また、県への補助がなくなれば、市町村への補助がなくなるなど、影響が出るのは避けられないのではないかと思います。この点について伺います。

○高橋政府参考人 出稼ぎ労働者対策のお尋ねでございますが、出稼ぎ労働者の減少でありますとか、これまでの実績等を踏まえまして見直しを行いました結果、平成十九年度におきましては、御指摘のとおり、都道府県事業に対する補助金を廃止させていただくことといたしております。

 今後、この出稼ぎ労働者対策につきましては、新たに出稼ぎ労働者就労支援員を送り出し地及び受け入れ地に配置いたしまして、必要な対策をとっていきたい。

 と同時に、健康管理対策についてのお尋ねがございましたが、出稼ぎ労働者に対しまして健康診断を実施しております受け入れ事業所は七割強となっておりまして、かなり既に実施をされている実態がございます。ただ、健康診断未実施の事業所もまだあるということでございますので、そうした事業所に対しましては、この出稼ぎ労働者就労支援員を活用いたしまして、必要に応じた健康診断の実施等について助言指導を行いながら、出稼ぎ労働者の健康の確保に努めてまいりたいと考えております。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○高橋委員 私の大先輩に当たる青森県の故津川武一代議士が、七〇年代、米とリンゴと出稼ぎ者を守れと、聴診器を持って東京の飯場を歩いて健康診断をやり、また、出稼ぎ者の声を繰り返し国会で取り上げました。今の職場の健康診断の問題やあるいは立てかえ払い制度などが整備をされてきた、そのことに津川さんのこうした活動が生かされているということは本当に誇りに思うし、また、それが今心細くなっているということに大変懸念をしております。

 今の若い人たちの働かせ方、派遣や請負、期間雇用などということを見ると、また新たな現代的な出稼ぎという問題が想起されているのではないか、そのことを本当に考えております。大臣、そのことの問題意識もしっかり持っていただいて、今の出稼ぎ対策を維持していただくように要望して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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