国会質問

質問日:2007年 3月 28日 第166国会 厚生労働委員会

一般質疑(障害者自立支援法)

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは二つのテーマで聞きたいことがございます。

 初めに、障害者自立支援法が成立後一年で一千二百億円規模の見直しをするということになったということは、障害者団体を初めとする運動の成果でもあり、それほどこの法律が矛盾だらけであるということの証左ではないかと思います。

 私は、昨年の当委員会において、障害児に対する自立支援法適用については、負担がふえたことにより療育を断念することがあってはならない、年収八十万円未満など、税金さえ払わなくてよい、あるいは払えない、そういう世帯からまで利用料を取るべきではない、このように主張してきました。

 そこで、まず、四月から、上限の四分の一まで負担が軽減されることになり、年収八十万円以下、低所得一に値する世帯は、一万五千円の利用料から三千七百五十円まで引き下げられます。障害児のサービスを受けている世帯のうち、この低所得一に当たる世帯がどのくらいいるでしょうか。

○中村(吉)政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問のありました低所得の一の層に当たる層がどれくらいの割合かということにつきましては、私どもとしては、現在、きちっとした数字としては把握してございません。

○高橋委員 そのこと自体がちょっとどうかなと思うんですけれども。

 一たん説明を受けたときに、低所得一と生活保護世帯と合わせて大体四八%くらいだという数字を伺っておりますが、よろしいでしょうか。

○中村(吉)政府参考人 自立支援法施行前の数字としては、そういうふうに承知しております。

○高橋委員 私は、かなり大きな数字ではないかなと思っているんです。四分の一まで引き下げになりました。しかし、現実に数字で見ますと、まだまだ負担は大きいなと思います。それと同時に、そういう世帯ならば生活保護基準以下ではないのか、そのように思います。

 そこで、境界層という言葉がございます。生活保護基準まで到達しない水準まで利用料や医療費の自己負担分を最大でゼロ円まで引き下げる。つまり、利用料をゼロにすれば保護までには至らない階層、そういう階層を境界層というわけでありますが、この対象は一体どのくらいあるでしょうか。

○中村(吉)政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のありました障害者自立支援法の利用者負担に係る境界層減免の措置につきましては、障害福祉サービスの利用者が利用者負担を支払うことにより要保護者となる場合において、当該利用者が保護を必要としない状態になるまで負担を減免する仕組みでございます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、自立支援法施行後のこの措置の該当者ということにつきましては、現在、数値を把握してございません。

○高橋委員 実は、私、この問題は何度か問題意識を持って伺ったことがあるわけなんです。どのくらいの方が救済されているのかということが全くつまびらかにならないということなんです。私はやはり、制度上負担がゼロになる、三千七百五十円だけではなく、医療費もあるわけですから、全体としてはかなりの負担軽減になるわけです。ですから、その資格のある人、境界層として救済されるべき人はすべて救済されるべきだと思っております。これは介護保険でも同じことが言えると思うんです。

 ところが、それがなぜ全体像もよく見えないのか、あるいは救済されたという話が余り聞こえてこないのか。大きな障害がございます。平成十八年三月三十一日の課長通知を見ると、福祉事務所長は、保護の申請に応じ、保護開始時の要否判定を行った結果、当該申請者が境界層対象者であることが明らかになった場合、別添の証明書を対象者に交付するものとし、負担軽減措置の申請に当たっては、当該証明書を添えて提出するよう教示することとされています。

 つまり、生活保護の申請をして却下されたという証明書がなければ、境界層ということを証明することができないわけです。本人は生活保護を受けなくても頑張りたい、そう思っている人が、わざわざ生活保護を申請し、断られなければ境界層としての減免を受けられない。これはおかしいのではないでしょうか。何とかこれは改善できませんか。

○中村(吉)政府参考人 お答えいたします。

 境界層減免の措置につきましては、先ほどのような性格から、障害者自立支援法の利用者負担を支払った場合に要保護者となるか否かを適正に判断するということが必要でございます。このため生活保護の仕組みを活用しているものであり、必要な手続であるというふうに考えております。

○高橋委員 確かに、お答えは、生活保護を受けるだけの世帯であるということを調査する必要があるというお話だったと思うんです。

 ただ、実際にそれだけの人がどれほどいるのかということが全くわからないわけですね。だけれども、五割近くの人が生活保護世帯と低所得である。あるいは低所得二の人だって十分該当するかと思うんですね。まず、それを知らずに、利用していない人がいるのではないか。知っていても、そこまでして、屈辱的な思いをしてまで受けなきゃいけないのかという方もいらっしゃる。しかし、税金を払っていないわけですから、あるいは母子家庭だったり、だれが見ても、例えばケースワーカーさんですとか民生委員ですとか、だれが見ても証明してあげられることは十分可能ではないか、そういう仕組みを考えてもいいと思うんです。

 これは大臣に伺いたいと思います。当然受けられる資格を持っていながら、その手続のために受けられない人がいるということは少なくとも避けるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○柳澤国務大臣 生活保護境界層の方々に対する措置につきまして、手続面でもう少し考えられないか、こういう問題提起をいただきました。

 今般、法の円滑な運用を図るため、現場の声を十分に踏まえまして、在宅、通所施設利用者について負担上限を現行の四分の一に引き下げるなど、もう一段の負担軽減措置を講ずることとしているわけでございます。

 私どもとしては、これらの軽減措置が必要な方々に確実に適用されることによって、手続面を含めて、負担軽減の趣旨が実現できるというふうに考えているところでございます。

○高橋委員 負担軽減の趣旨が実現できるように思うというふうな答弁だったかなと思うんですけれども、私が述べているのは、資格を持っているのに受けられない人がいるのはおかしいのではないか、そのこと自体が、せっかく軽減策を設けているのにその趣旨が生かされないということになるのではないかということを指摘しているわけであります。

 昨年の十二月六日に、障害者自立支援法の問題で参考人質疑をやりました。そのことでは、本当に多くの皆さんも、まだ記憶に新しい、本当に関係者の皆さんの切実な訴えが胸に響いた質疑であったなと思うわけですけれども、あのときに、障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会の代表の池添参考人の発言が大変感動を呼んだわけです。

 その会がことしの二月にまた全国集会をやって、全国の取り組みや実態などをまとめているんですけれども、その中で、宮崎の保護者がこんなことを言っているんですね。「今まで、給食費も含めて二千二百円でしたが、今では一万円前後になって、さらに園が遠いので通園にかかる燃料代が三~四万円かかります。家計は厳しいです。 最近、おたふく風邪で一週間お休みしていたのですが、家から出なければお金がかからないのだと実感しました。しかし、家にずっといるというのは、私も子どもも変になりそうなぐらい大変なことだと思い、がんばって通おうと改めて思っています。」私は、家から出なければお金がかからないと気がついたというこの一言が非常に胸に響くわけなんです。

 せっかくの自立支援法なのに、もうお金がないから、ではやはり家にいようかというふうになるのであれば、全く法律の趣旨が生かされないじゃないか。そのことを本当に受けとめていただきたいと思うんです。

 施設関係者の方は、こんなことを言っています。「新しく入ってくる子どもへの説明会では、希望がたくさんありました。今までは、「お金のことは心配しないで、この子のことを大切にしよう」といってきました。今、説明会では、「お金は○○円かかります」といわざるをえない状況です。それが、どの子にも必要な、早期の取り組みが行えるだろうかと心配しています。」私は、こういう皆さんたちの希望が、もう断念せざるを得ないということにはならないように、まずは、来年に検討されている自立支援法の見直しに当たっては、抜本的な応益負担の撤回を求めていきたいと思います。

 同時に、今できること、少なくとも制度としてあることはそれが受けられるように、厚労省として知恵を使うべきだ、英断をするべきだと思いますが、もう一度伺います。

○中村(吉)政府参考人 お答えいたします。

 制度のPRにつきましては、私どもとしてもきちんと進めていきたいというふうに思っております。

 それから、境界層減免の措置につきましては、介護保険にもある仕組みでありますし、市町村の事務の負担の軽減ということからも、先ほど答弁いたしましたように、必要な措置であるというふうに考えております。

○高橋委員 きょうは指摘にとどめます。大臣にぜひ、税務の専門家でありますから、本当に、所得がないことがはっきりしているのに、生活保護の申請をしなければならないという壁によって受けられない方たちがいるんだということをしっかり受けとめていただいて、救済ができるように検討していただきたいと思うんです。あわせて、このことが介護保険やその他の問題にも波及するということ、本来ならばあるべき制度なのですから活用していただきたいということは指摘をしておきたいなと思っております。

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