○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、六人の参考人の皆さん、貴重なお時間を割いて本委員会に出席をいただきまして、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。
最初に、今田参考人にお伺いをしたいと思います。
フルタイムは基幹的、専門的職務であり、パートは補助的、単純職務という従来の職務の分業が崩れて、パートタイム労働者の中にも基幹的業務についている人がふえてきている、このことについては多分異論がないと思います。というのは、そういう表現は実は今田参考人が書いたものから今引用させていただきました。こういう方たちを政府の言う均衡処遇へと引き上げるためにはどういう基準が必要と思うかについて伺いたいと思います。
○今田参考人 引き上げるというよりも、パートに大きな変化が生じ、伝統的には、そうした単純と基幹の分業という形でフルタイムとパートの働きが制度化されてきたのが、徐々にパートの質的、量的拡大に伴ってその二つの分業が崩れて、二つが、パートとフルの仕事が重なってきている、そういう現状において今回のパートとフルタイムの均等処遇というものが提起されている、そういうふうな理解をしております。よろしいでしょうか。
○高橋委員 失礼しました。では、引き上げるという表現は使いませんので。
では、均衡処遇を実際にやるためにはどのような基準が必要だとお考えですか。
○今田参考人 今言ったような形で融合している状態で、これまでのような形で全くクリアカットに、一方は、長期的な視点から企業内の賃金体系があって、それに基づいて処遇される、パートは、ある意味では時給で、地域の最低賃金を基礎にしながら賃金が決定される、そういう意味では完璧に処遇がクリアカットに別の体系であった、それをどうにか崩そうというのがこの案です。
今回言ったような、法律で明記している、あるいはルール化したような多様なパートタイムについて、それなりのふさわしい処遇をするルールとして、今疑似パートのところで議論されたような拠点となる、私は出発点、起点と言ったんですけれども、全く同一とみなされる人、それを起点としながら、さまざまいるパートの人たちの実態について、それを分類とか格差とかという議論をしていますけれども、実際、我々がやった調査において、さまざまな人がいる中で、最もこの人たちの明確な分類というか差異、望ましい差異を明らかにする基準としては、納得いく基準としては職務というものがあったわけで、職務の同じ人、違う人、そういう軸を設けることによって、今言ったフルタイムとパートが融合しつつある現状で、多様なパートタイムの人たちに対する適切な物差し、そういうものをつくることが基本的にはパートタイムの処遇の改善につながると。
引き上げるということがよくわからないんですけれども、つながる、そういうコンセプト、考え方というふうに御理解いただければというふうに思います。
○高橋委員 実は、先ほど引用させていただきました今田参考人の御意見は、二〇〇四年の七月に「勤労よこはま」という冊子の中で紹介をされているんですけれども、多分いろいろな形で論文は寄せられていると思うんですけれども、その中で、権限と責任が同じならば同一職務とみなすべきだということをおっしゃっていられると思います。
既に引用されていた、日本労働研究機構が平成十五年の八月に発表した「企業の人事戦略と労働者の就業意識に関する調査」、これを見ましても、パートではあるけれども残業をしているですとか、正社員の中の本当に固定的な労働をやる分野よりも、もっと専門的なものですとか、専門的な業務を維持するところがふえてきている、そういうことを踏まえた上での御提言だったのではないかなと思って、私自身は、そうであれば、職務が同じだという方をなるべく広く救済できるのが望ましいのではないかというふうに考えているということで、ここだけ質問すると時間がなくなりますので、それを踏まえてほかの方にも質問していきたいと思います。
二つ目に、均衡のとれた処遇の確保のための基準ということがあるんですけれども、同様に、福利厚生などは本来差をつける必要がないのではないか。例えば、勤務時間が短い、本当に限られているという方に社宅は必要ないんじゃないかとか、そういうふうな話ではなくて、先ほど来お話が出ている、例えば慶弔見舞金などに対してなぜ差をつけるのかが理由がわからないわけです。これについて、今田参考人と井筒参考人に伺いたいと思います。
○今田参考人 お答えさせていただきます。
この審議にかかわってきた者として、政府案というものが現状においては適切である、特に、労使のいろいろな現状からくる意見、それを調整した結果としてこういう形になるというのは、私としては納得しました。
ただし、いろいろなパートタイムの現状とか意見とかそういうことからいいますと、データで見てもわかるように、福利厚生とか慶弔については、企業によって進んでいるところもあればそうじゃないところもあるし、ルールとしてあって運用でやっているところもあるし、特に慶弔なんかについては、正社員とパートの人たちとの間の差別意識を、何か、かなり強烈に明確化する。フルタイムの人はそういう慶弔金が支給されるのにパートタイムの人たちは支給されない、そういう現実を知るときに、賃金とかその他の処遇よりも、そういう部分において非常に差別意識とかそういうものを感じるとかいうデータもあります。
さらに、例えば福利厚生の食堂みたいなものについて利用できるできない、それは日常的なことなので、そこで、例えばフルタイムの人は食堂が利用できるのにパートタイムの人が利用できないというようなことがあったときに、また差別意識があるということで、そういう意味からいえば、企業の実態として可能ならば、そういうものを平等にしていくということが望ましいというのは、いろいろなデータからいって私はそういうふうに思います。
ただし、法律としてこういうルールをつくるときに、大きなルールの一つとして明記するべきなのか、そういうのはやはり労使の話し合いの中で決めていくものなのか、そういう判断も一方でありまして、企業、使用者サイドのかなり厳しいアピールというようなものによって、今回の法律をつくる上で、現状においては、これは労使の間で話し合いのルールとしてするべきものとして、二以下のところに関しては、慶弔とか福利厚生に関しては明記されなかった、そういうことで一応私は納得しております。今後の課題であるというふうにも思います。
○井筒参考人 今回の法改正で福利厚生のところで、給食施設と更衣室などを正社員と同じように使えるのは、いわゆる正社員と同視すべきパート、差別的取り扱いを禁止されている部分のパートタイマーであって、その他の部分は配慮義務ということになっております。私もやはり、なぜわざわざこのように区別をするのかということについては非常に理解に苦しみます。福利厚生の中に慶弔が含まれていないということも問題だというふうに思います。
中野参考人からのお話にもありましたように、私たちがよく聞きますのは、パート労働者が日々仕事をしていて差別感を非常に感じるときというのは、家族が亡くなったりしたときに、慶弔休暇が正規にはあるのにパートにはない、慶弔金が出ないという問題なんです。私たちも、家族を亡くした悲しみは正規もパートも関係ないということで、よく企業に、この改善運動は取り組んできました。パートの賃金を引き上げるということについてはなかなか進まないわけですけれども、しかし、慶弔だとかそういった福利厚生の部分では、事業主も日々努力をして、少しずつ改善をかち取ってきています。
しかし、今回法律で、こういう形で区別をして明記されるということについては非常に問題だというふうに思っています。同じ職場で働く労働者間にこういった部分での差別があってはならないと思っていますし、ましてや法律にこのことを持ち込むことはあってはならないと思いますので、ぜひ修正をしていただきたいと思っております。
○高橋委員 ありがとうございました。
次に、佐藤参考人に伺いたいと思うんですけれども、きょうお配りいただきましたコメントの資料の中で、ちょっと飛ばしたところなんですけれども、「差別的取り扱いの禁止(均等)」というところで、「基準が適切であるならば、その対象となる層が少ないことは望ましいこととなる」という御意見をされております。
実は、この問題について私が厚労省の担当課とやりとりをしたときに、差別禁止の対象となるのは、言ってみれば公序良俗に当たるおそれがあるので、余り多くないのが望ましい、実態がもしそうであれば非常に問題だというふうな説明をされていたわけです。逆に言うと、それが放置されてきたとすれば、また重大であるということになると思うんですね。私は、現状が本当に差別禁止の対象に当たる事例が少ないというのであれば望ましいかもしれないけれども、逆にそれが対象を絞り込むための基準となっていないのか、それが適切と言えるだろうかということに危惧を持っているわけです。
例えば、佐藤参考人が例に挙げた合理的でない処遇差として、労働時間の長短によるものというのを一つだけ例示されております。そうすると、そもそもパート労働法は、第二条において、短時間労働者というのは、通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者というふうに規定されていて、短いのが当たり前というか、そこから出発をして、今、均衡処遇の議論をしているわけですから、それしか例示がないというのであれば、合理的でない処遇差というのはほとんどないという認識になってしまうわけですね。それでは議論が始まらないと私は思うんです。その点について佐藤参考人の御意見を伺って、同じことを中野参考人にぜひ伺いたいと思います。
○佐藤参考人 御質問を十分に理解できているかどうかわかりませんけれども、私が理解した範囲内でお答えさせていただきます。
まず、後半の労働時間の長短によるもの、これは合理的でない処遇差ということですけれども、本来、パート労働法は、基本的には、通常の労働者、正社員よりも労働時間が短い、この人たちの処遇の改善ということを意図した法律であります。
なぜこういう法律ができたかといいますと、やはり、労働時間が短いから処遇はほどほどでもよいというような考え方が結構あった。これを変えていこう。時間が短くても、例えば今回の差別的禁止というようなこと、あるいは均衡というふうに入りましたけれども、どういう仕事をしているのか、その仕事でどういう貢献をしているのかということをちゃんと評価し、もちろん、それに差があって処遇差がある、これは合理的でありますけれども、時間が短いということをもってして処遇差をつけるのは合理的でないという趣旨であります。ですから、もともとパート労働法というのはそういうものだというふうに私は理解しております。
あと前半の、今回、パート労働法の審議、雇用均等分科会で行ったわけでありますけれども、私の理解では、初めから適用対象層の範囲が狭くなるような基準を設けたというふうには考えておりません。先ほどお話ししましたように、パートの方は短時間で働いているわけですけれども、でも、基幹化、社員と同じような仕事をしたり社員と同じような能力を持った人、企業にとって大事な仕事をしている人が出てきたわけであります。その人たちの働きがちゃんと評価されるような仕組みにしていく。そのときに、やはり合理的でない処遇差あるいは合理的な処遇差というものをきちっと分けていこう。そういうものを整理する中で、今回合意できた一つの、均等、差別的禁止の基準がこういうものであった。
結果としてどのくらいの対象層になるか、先ほど私はわかりませんというお話をしましたけれども、これはマスコミ等々で、その範囲が狭いのが問題だという議論があるので、私は、もし本当に狭いのであれば、差別がないということでありますから、それは望ましいのではないかというふうに書かせていただいた。私は、多い少ないはわかりませんというふうに言っているつもりです。
○中野参考人 ありがとうございます。
まず、先ほどの慶弔休暇等に見られるように、この場合の格差というのは、単に経済的にカウントできるというものではなくて、人格的な基礎における差別というものも含んでいるわけです。そういうものが土台となって、パート差別というものが経済的な分野も含めて形成されている。
何が合理的な差別であるのかということを可視化させていくプロセスと、それから、そういった可視化させた不合理な差別というのを取り除いていく手法というものを確立しなければ、何が合理的でないのか、そして取り除いていかなければならないのかという認識はなかなか形成されないのではないかというふうに思います。そういった意味では、今のこの議論の到達点をもとにして、なくしていかなければならない差別というのは既に多くは解消されているのだという議論は、全くナンセンスであるというふうに考えるわけです。
したがいまして、法の原則というものに立てば、やはりパートであるがゆえの差別を取り除いていくということに加えて、そこに格差があるのであれば、何がそれを規定しているのか、その原因を究明して、そして不合理なものは解消していく、そういうシステムを一日も早く確立していくべきだ、そういうふうに思います。
○高橋委員 ありがとうございました。
せっかくですので、同じ質問を井筒参考人と中原参考人にも伺いたいと思います。
井筒参考人は、独自調査の結果について御報告をいただきました。パート労働が今や生計の柱になっているという労働者が非常に多くなっている、あるいはダブルワークだとか、夫も非正規だ、そういうふうなデータに対しては、非常に興味深いものではないかと思っております。かつての補助的労働ではなくなっているんだ、パートでありながら正社員並みに残業あるいはふろしき残業までやっている、勤務経験も長く、職場に頼りにされている、そういうふうな声が非常に聞かれるわけですし、先ほどの中原参考人の意見などもそうしたことを裏づけているものではないかと思います。
そういう意味で、合理的でない処遇差というのは実はかなりあるんだ、そういうことをどう考えるか。そしてその上で、すべてのパート労働者に差別禁止措置を広げる上で、その根拠となるものについてどう考えるのか、伺いたいと思います。
○井筒参考人 合理的でない処遇差というのは、本当にパート労働者の働く上で日々感じていることだというふうに思います。
私たちが均等待遇を目指すときに、同じ仕事、同一、類似の仕事をする場合には時間当たりの賃金は同じ、そのほかの労働条件も労働時間に比例して付与されるというILO百七十五号条約の考え方をやはり基本に考えるべきだと思います。
賃金構造が日本とヨーロッパでは違うので非常に難しい問題もありますし、民主党の案のように非常に挑戦的な、これから研究課題として大切にしていきたいと思うような提案もありますし、パートの均等待遇実現というのは、まさに一丸となってそういうシステムをつくり上げていくことが今から非常に望まれていると思います。
当面、目の前にあるさまざまな、パートであるがゆえに余りにも低い賃金、労働条件、これをまず底上げをし、全体を引き上げていくこと、このことに着手をし、そして、パートという働き方による差別そのものをなくすという根本的な考え方をやはり法の精神の中にしっかりと位置づけていただきたいと思っております。
以上です。
○中原参考人 いろいろ難しいことはわからないんですが、合理的かどうかと言われて、私たちは、パートであるということであらゆる差別を受けております。それが合理的かどうか、パートというだけで差別をされている私たちに聞かれても困るんですが、何というのかな、実効ある法律が必要です。それだけです。
○高橋委員 どうもありがとうございました。
時間が来ましたので、松井参考人に伺うことができませんでした。御了承ください。