国会質問

質問日:2007年 4月 18日 第166国会 厚生労働委員会

雇用対策法・地域雇用開発促進法一部改定案

 雇用対策法改定法案の審議が始まった衆院厚生労働委員会で18日、日本共産党の高橋千鶴子議員は宮城県の指定誘致企業でありながら、身勝手な工場閉鎖で200人の労働者全員が解雇された自動車部品製造の「三陸ハーネス」の問題を取り上げ、大企業による労働力の使い捨てに歯止めが必要だ--とただしました。
 三陸ハーネスは赤字もない優良企業でしたが、住友電装の子会社が中国に移転するとして2006年1月、孫会社である同社の向上閉鎖を発表。地元の志津川町議会が全会一致で存続を求める決議を採択しましたが、9月に閉鎖を強行しました。
 「再就職の援助もしている」との厚労省の高橋満職業安定局長の答弁に、高橋氏は「会社の就職支援で再就職できたのは9人に過ぎない。親会社は海外に生産拠点を移すと工場閉鎖しておいて下請け工場を岩手県内に8ヶ所も増設し、37人を求人している」と指摘しました。
 高橋氏は「地域雇用対策といいながら、他方で補助金や税制措置の優遇で儲け、安上がりの労働力確保に乗り出す。その一方で勝手な撤退や閉鎖で失業を大量に生み出す。こうしたやり方に歯止めをかけるべきだ」と迫りました。
 柳沢伯夫厚労相は「同じ企業が再雇用するという計画では困る。経営上の判断の自由は確保しながら、そのなかで労働者の保護にあたっていく」と答えました。
 高橋氏はまた、政府案が「雇用対策基本計画」を廃止しようとしていることに触れ、財界の要請に雇用対策を合わせていくことになり、憲法27条の国民の勤労権を保障できるのかと問いました。
 柳沢厚労相は、ときどきの経済計画はあっても、そのなかで「(雇用対策の)目標を追求していくこともある」とこたえました。

(2007年4月19日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 先ほど来の議論もありまして、最初はおさらいになるかもしれませんが、確認をしたいと思います。

 雇用対策法一部改正の趣旨において、大臣は、働く希望を持つすべての人の就業の実現を図ることを明確化すると説明されました。この点は当然賛成するものでありますが、現在第九次となっている雇用対策基本計画が廃止をされます。

 そこで、今後、雇用対策の基本方針がどのように決められるのか、まず伺います。

○柳澤国務大臣 先ほど来の議論をいわば確認するという意味のことになるわけでございますけれども、雇用対策基本計画につきましては、親の計画ともいうべき経済全体にわたる中期経済計画が廃止をされるということの中で、私どもとしても、この計画をそのまま維持するということはやはり適切でないというふうに考えまして、これを今度は削らせていただいたわけでございます。

 しからば、今後はそういう中期的な目標なしでいくのかといえば、それはそうではないわけでございまして、現在の「進路と戦略」を踏まえまして、私どもとしても中期的な雇用政策のビジョンというものを、これは仮称でございますが、策定いたしまして、公表し、これを道標として今後の中期的な雇用政策、労働政策を進めていくということでございます。

○高橋委員 今、親の計画という表現を使われましたけれども、親の計画が目まぐるしく変わるので、長期的な視野での計画というのがなかなか持ちにくくなったということなのかと思うんですね。

 その上でですけれども、雇用対策法が昭和四十一年、一九六六年に成立をしておりますが、佐藤栄作首相の当時だったと思います。国会の議論の中で、経済計画に従属して雇用計画が策定されるようなことはあってはならない、そういう指摘がありました。私は、この指摘が非常に大事だと思っているんです。

 というのは、毎年決められる骨太方針、あるいは今「進路と戦略」と言われておりますが、官邸主導で、経済界の要請に沿った方針に雇用対策を合わせる流れが一層強まるのではないか、厚労省が本来雇用の所管でありますけれども、そういう親の計画待ちの姿勢になってしまうのかということに非常に懸念を持つわけであります。

 憲法二十七条における国民の勤労権を保障する、この基本的な立場が確保されるのか、この点を確認したいと思います。

○柳澤国務大臣 今の御指摘でございますけれども、労働政策あるいは雇用政策といえども、経済全体の運営と全く無関係に独立に運営できるというものではないと思います。

 もとより、雇用というものは、先ほど来のお話にありますように、国民にとって最も大事な経済行為である雇用ということに非常に関係をするものでございますので、場合によっては、経済計画がかくかくしかじかであるけれども、その中にあってもなお、こういう目標を追求していくというようなことがないというわけではありませんけれども、基本的には整合性を持った計画ということが大事だろう、このように思うわけでございます。

 新しいビジョンというものにつきましては、私どもとしては、労働あるいは雇用の他に別して大切な側面があるということを十分に心得て、そういう心得のもとで策定していくという考え方でございます。

○高橋委員 ちょっと最後の質問にお答えをいただいていないと思うんです。

 時々の経済にどうしても雇用の情勢が影響を受ける、引きずられるということは避けられないと思うんです。しかし、そういう中で、先ほど来ディーセントワークなどという議論もされておりますけれども、いわゆる労働者が犠牲になってもいいのかという点では、やはりそれは違うんだと思うんですね。

 二十七条における国民の勤労権、これを保障するために、厚労省はきちんとその点を中心に据えて仕事をするんだということは確保されますねということを確認したかったんです。

○柳澤国務大臣 私の答弁も、高橋委員の御質疑あるいは立脚点を理解した上での答弁ということであった、このように考えております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 二〇〇一年、経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するためとして雇用対策法が改正されましたが、我が党は、労働力流動化の名のもとに企業の大量リストラを合理化するものだと反対をいたしました。その年、三十人以上の大量雇用変動届を出した事業所は三千八十四事業所、離職者数は二十三万九千六百一人に上ります。これは前年比で倍加、一気に失業者を生み出し、完全失業率を五%台に押し上げました。

 当時の改正では、事業所が再就職援助計画を出せば大量雇用変動届を出したとみなされるとされていますが、どの程度この計画が出され、そして、どのくらい再就職に結びついたのでしょうか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねのありました再就職援助計画の認定状況の推移と申しますか、十三年十月以来どういう状況だったのかということでございますけれども、例えば、十三年は十月からの集計でございますけれども、十三年度で再就職援助計画の認定事業所数が二千三百三十六事業所、このうち、大量雇用変動の対象になります対象労働者が三十人以上の事業所が一千百七十四ということでございます。

 以下、十四年度以降の数字を申し上げますと、再就職援助計画の認定事業所数としては、十四年度が二千八百十七、十五年度が二千四百六、十六年度が一千七百、平成十七年度が一千六百十八、平成十八年度で一千百四十四事業所と相なってございます。

○高橋委員 今、計画の事業所数を述べていただきましたけれども、例えば、十三年度が十月からの集計でありながら二千三百三十六の事業所が認定計画を認定されまして、十二万九千二十六人が対象労働者になっているわけです。ただ、その内容については、計画を出しただけということで後追いはできていませんよね、例えば再就職ができたかどうか。

○高橋政府参考人 確かに、再就職援助計画に基づいてどれくらい再就職がかなったかということについては把握はいたしておりませんが、私ども、ハローワークにおきまして、再就職援助計画を策定した事業所からのいろいろな協力依頼等々があった場合、また、大量雇用変動の届け出を受けました場合には、必要に応じて、ハローワークが、隣接する他の地域のハローワークとも連携をとりながら離職した方々の再就職の促進に努めておるところでございます。

○高橋委員 今、どのくらいというのはわからないというお答えだったと思います。

 ですから、さまざまな計画がつくられて、また改組される、そして奨励金もさまざま出されるんですけれども、それが本当に雇用の安定あるいは再就職に結びついたということがわからないままにまた新たな施策にいくんだという点では、非常に危惧されるものがあるんですね。

 今回、地域雇用開発促進法の改正によって、雇用情勢の地域格差是正として、特に雇用情勢が厳しい地域における事業所の設置、雇い入れに助成金を出す仕組みをつくるわけです。

 助成金をもらえる要件についてですけれども、これは例えばやはり正規雇用ということをすべきではないか、あるいは、雇用の継続という点についても、当然、一定、雇用の安定が保たれるということが審査されるべきではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。

○高橋政府参考人 今御指摘のございました地域雇用開発促進法に基づきます助成金制度のみならず、その他さまざまな雇い入れ等にかかわる各種助成金というものがあるわけでございます。

 こうした助成金については、まず基本的に、受給のできる事業所、事業主に関しましては、解雇による離職者を生じさせた事業主ではないということをまずはその条件といたしておるところでございます。

 また、助成の対象になります雇い入れにかかわる雇用の中身といたしましては、常用雇用というものを前提にして助成金というものを支給いたしておるところでございます。

○高橋委員 ですから、私は、常用雇用だけではなく、常用雇用というのは常用派遣というのもありですので、その点も含めて検討してほしいということを言ったわけです。今のお答えでは、多分今すぐには答えが出ないだろうということで、それを踏まえて、要望として受け取っていただいて、次の質問に入りたいと思うんです。

 地域雇用対策といいながら、地方で自治体が各種補助金あるいは税制措置での優遇をやっております。それが結局、安上がりの労働力の確保に企業が乗り出す、その一方で勝手な撤退や閉鎖で失業を大量に生み出す、こうしたことにはやはり歯どめが必要だと思うんですね。このことをぜひ考えていただきたい。

 まず、少し具体的な話をしてみたいと思うんです。宮城県の三陸ハーネスという会社であります。八八年十月に宮城県の指定誘致企業として志津川町、現在の南三陸町に設立をされ、株式会社協立ハイパーツの直営会社として日産自動車のワイヤーハーネスの製造を行っていました。このワイヤーハーネスというのは電線の束のことをいうそうで、自動車にとっては血管と神経に当たるんだというコマーシャルがあります。

 関連会社を含めて二百人が働いていました。〇五年一月に、突然、親会社である協立ハイパーツがワイヤーハーネスの生産拠点を中国へ移転することに伴い、同年九月三十日をもって工場を閉鎖すると告げられました。同会社は住友電装の一〇〇%出資子会社であり、三陸ハーネスは孫会社に当たりますけれども、長期債務も赤字もゼロであります。労働者は住友グループ内の技能オリンピックで二年連続代表となるくらい、大変労働者も優良な会社だった。それが一転、全員解雇となりました。

 志津川町は人口一万三千五百三十五人、今合併しましたが、それでも一万九千人余りです。この小さい町で二百人がリストラというのはどれほど大きな影響か、容易に想像できると思うんです。町議会は、九月十二日に全会一致で工場存続と雇用の確保を求める決議を採択しております。中小企業といっても、親会社である住友電装、あるいはその上の住友電工は世界第三位のシェアを誇る大企業であります。使用者としての責任が問われると思いますが、見解を伺います。

○高橋政府参考人 今の御指摘の具体的な事案にかかわっての話でございますが、この事業所からは、親会社の生産拠点の海外移転に伴って事業を撤退する、こういうことで、それまで雇っておりました従業員に対しまして、解雇せざるを得ない、こういうことで、先ほど来お話のございました再就職援助計画というものが提出をされたわけでございます。

 この計画に基づきまして、事業主として再就職のためのさまざまな措置というものをこの計画の中で盛り込み、実施をしてきたというふうに承知をいたしているものでございまして、こういうようなことで、事業の大規模な縮小もしくは閉鎖というものがやむを得ない形で行われた、それに対して、一定の離職者を出さざるを得ない、この離職者に対する再就職の支援というものも取り組んでいただいているというふうに承知をいたしております。

○高橋委員 今の御説明いただいた、まず再就職支援なんですけれども、会社の求職支援で再就職にこぎつけたのは九名にすぎません。もともと受け皿のない地域であり、困難な中で従業員をほうり出し、再就職支援の努力も十分に尽くしたとは到底言えません。

 しかも、問題なのは、生産拠点を海外に移す、だからそれはもう企業の経済活動の一環だからやむを得ないんだというふうな解釈が一定成り立つように思えるんですね。ところが、一方、この協立ハイパーツのある岩手県では、下請工場を岩手県内に八カ所も増設し、三十七名の求人を行っているんです。つまり、撤退するといって首を切っておきながら、ちゃっかり隣の県に工場を増設している。車で三十分から四十分の距離であります、十分通勤可能なところでありますね。労働者は非常に悔しい思いをしているわけです。この間、労働者は宮城一般労組に加盟し、裁判闘争を闘ってきましたが、そのうち労働者が一名みずから命を絶つ、そういう事態さえ生まれております。

 私は、解雇のときは事業が大変だからなどと理由を述べて、一方では、新たな工場増設あるいは新たな求人、こういうことがそのまま許されるのか、企業の勝手な振る舞いについて、労働行政において何らかの歯どめがないのか、このことを伺いたいと思います。

○柳澤国務大臣 これは、労働行政で会社の経営の方針についてチェックを加えるというのは、やはり一般的にはかなり難しいことであろう、このように考えるわけでございます。

 現に、ここの事件は司法の方でも判断をされたようですけれども、いずれもやむを得ないというようなことになっているようでございまして、こうした経営上の判断というものは、私どもの経済のシステムでは尊重される。そして、雇用あるいは労働の政策というのは、そういう与えられた条件の中で労働者の雇用を図っていく、雇用機会の確保に努めていくということでありまして、経営判断そのものについて、これの自由というものを制約していくということは一般的には難しい、このように思います。

○高橋委員 司法の場では、確かにやむを得ないという判断が出ました。しかし、これはまだ争っておりますし、労働委員会でも今係争中であるということですので、そこを覆せとか、その中身に踏み込むつもりはないんです。なぜかというと、その中で争われている話はたくさんありますので、事実をもっともっと突き詰めていかないと判断できない話がございます。

 ですから、そこを今求めているのではなくて、一般論として、大量に解雇をする、そのときはやむを得ないと言っている、しかしその後で大変また多くの求人を出している、そうしたことに対しては、やはりおかしいのではないかということを言ってしかるべきだということを私は主張したいんですが、もう一度お願いいたします。

○柳澤国務大臣 今、私も一般論でお答えを申し上げているわけでございますが。先ほども職安局長からお答え申し上げましたとおり、助成の対象としてのお答えでございましたけれども、同じ企業がそうした再雇用をするというようなことの計画では困るという趣旨の答弁があったかと思いますけれども、いずれにしても、一般論として言えば、やはり経営上のいろいろな判断というものの自由は確保しながら、その中で労働者の保護に当たっていくという立場が私どもの立場ではないか、このように考えます。

○高橋委員 ありがとうございます。

 やはり、同じ会社が、ほかの形で解雇した後にまた大量に再雇用というのはうまくないんじゃないかという判断だったと思います。やはり労働者の保護という点での行政のかかわり方が期待されるんだろうというふうに今のお話を聞いて思っておりました。

 残された時間で、このことを踏まえて、先ほど来少し議論になっているハローワークの問題についてお話をしたいなと思うんです。

 今回、女性、障害者、高齢者、青年、外国人など、各分野の雇用における施策を法律に明記いたしました。例えば、均等法、高齢法、職業能力開発法など、個々の法律をこの間改正してきたわけですけれども、いずれの分野においても、企業の義務違反などに対しハローワークの勧告だとか適切な指導が求められていると思うし、そういうやりとりがあったんですね。答弁の中で、きちんと勧告をしていきます、そういうふうなことがあったと思います。

 あるいは、各種助成金もさまざま出されているわけですけれども、これらの不正受給を未然に防ぐ問題、求職票の受け付けに当たって差別禁止や義務違反の徹底、今のような事態も含めて、期待される仕事は非常に多いと思いますけれども、この点についてどうでしょうか。

○柳澤国務大臣 ハローワークの仕事の重要性について御指摘をいただきました。

 私どもといたしましても、ハローワークと申しますのは非常に、就職困難者というもののセーフティーネットという位置づけだろうと思うわけでございまして、そういう意味で、現在も、高齢者、障害者あるいはお子さんを持っているお母さん、こういうような方々につきまして特別ないろいろな手だてを講じまして、その方々の就職の機会の確保に努めているということであります。

○高橋委員 私は、この間のハローワークとILO条約についての懇談会あるいは経済財政諮問会議の議論の中で、ILO条約に合わないなら破棄すればいいなどという議論がされていることに対して、非常に承服できない思いがあります。また、少なくない新聞報道においても、厚労省が条約を盾にとり抵抗しているというふうに描いているというのも非常に問題があるのではないかと思うんですね。

 やはり、コストで官の仕事と民の仕事を競争するという次元の問題ではないんだろう、最初に指摘をした、国民の勤労権を守るという本来の仕事からいって、コストではかれない国民の権利を守る大事な役割をハローワークが果たしているのであり、さらにもっと頑張ってほしいと私は思っているのだということを指摘して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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