雇用対策法及び地域雇用開発促進法の改定案が25日の衆院厚生労働委員会で自民、公明党の賛成で可決されました。日本共産党、民主党、社民党は反対しました。
反対討論で日本共産党の高橋千鶴子議員は、雇用対策法が経済財政に従属させられ、、2001年の改定後は雇用の流動化を支えるものへ変質したことを指摘。今回の改定安で雇用対策基本計画が廃止されれば、「『骨太の方針』など官邸主導、財界の要請に沿った雇用対策が厚労省の頭越しに決められることになる」と批判しました。
外国人労動者の個人情報を出入国管理行政に提供することについて、外国人労働者の無権利状態を改善するために就労実態を把握することは必要だが、「永住外国人など適正に働いている多くの外国人労働者まで対象となるなど管理強化に利用され、外国人労働者の権利侵害につながりかねない」と指摘しました。
(2007年4月26日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、民主党提出の法案について若干の質問をさせていただきますが、先ほど来のようでありますと、とても時間が足りませんので、答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。
まず、労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案についてでございますが、政府の現行指針では、年齢差別禁止における十の除外項目の中に、新規学卒者等を募集及び採用する場合というふうにありますけれども、民主案では、法定している四項目にはこれは入っておりません。新卒一括採用については完全になくすという意味でしょうか。
○加藤(公)議員 できるだけ簡潔にお答えしたいと思いますが、私どもが考えておりますのは、新規一括採用と今おっしゃった中のその新規学卒者だけに限定をして募集、採用するということは間接差別に当たる可能性が極めて高いという考え方から、それは例外規定に盛り込みませんでした。ただし、新規一括採用という雇用慣行は、そもそも長期雇用を前提とした未経験者の方を事業年度のあるタイミングで同時に入職をしていただくという考え方でありますから、その制度自体を否定するというつもりは毛頭ございません。
○高橋委員 慣行はそもそも否定しないというお話でございました。それは賛同するものでありますけれども、ただ、この間の議論を聞いておりますと、提出者は、やはり限定列挙と例示列挙の問題で厳しく政府に対して追及をしているわけです。そうすると、今回は四項目で限定列挙されているわけですから、新規学卒者などを中心とした採用については、これは義務違反になるのではないかと思いますが、いかがですか。
○加藤(公)議員 今申し上げたとおり、新規学卒者のみに限定をした採用は例外規定に盛り込んでおりませんので、それはできない、こういう考え方であります。
〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕
○高橋委員 そうすると、やはり私は、この問題、先ほど慣行は否定しないとおっしゃいましたけれども、できないということでしたので、ちょっとやはり異論を持っているものであります。
新卒の採用について私が非常にこだわりを持っていますのは、私自身が実は私立高校に七年間勤めて進路指導を担当しておりました。八〇年代半ばでしたので、当時は山のような求人票と毎日格闘して、職種別の仕分けに追われました。文字どおり生徒一人一人が何が自分に向いているか、あるいは何をやりたいかを考えて、また私自身もそれを引き出すために向き合ってきたわけであります。初めて社会に出る学生が、学校では基本的な知識を学び、また進路指導も受けながら春には巣立っていく、そういう新卒採用の流れは私はあってしかるべきだと考えております。もちろん、そのために既卒者が門戸を閉ざされても構わないと言っているのではございません。
平成十八年度版国民生活白書、「若年者の適職探しをめぐる壁」によりますと、「新卒一括採用慣行は、「適職探し」という観点からは功罪の両面がある。人々は原則として一生に一回しか「新卒」となれない。企業の採用が新卒に過度に偏っていると、新卒のときに不本意な就職をした若年者が捲土重来を期そうとしても、中途採用枠が限定されているためにそれが困難となってしまう。」と分析をしています。
そこで、端的に厚労省に伺います。
現行の年齢指針には、新規学卒者等について、特定の年齢層を採用するための募集、採用を行うことについて、例外的に年齢制限が認められています。しかし、ここで言う年齢制限とは新規学卒者に限定した募集をすることではないと説明をされております。つまりは、新卒者のみとして採用することや、あるいは新卒者と同じ年齢、つまり現役の新卒者、十八歳以下よとか、二十一、二歳以下よというふうに決めて採用することはやはり年齢差別に当たると解釈してよろしいですね。
○岡崎政府参考人 現行の年齢指針でございますが、新規学卒者等である特定の年齢層でございますので、新規学卒者のみという場合もあるでしょうし、そうではなくて、もう少し幅広く、若干既卒者を含めたような方を含める場合もあり得ると。いずれにしましても、長期勤続によるキャリア形成を図る観点からそういう募集をする場合には、これは例外として認める、こういうことでございます。
○高橋委員 今のお答えは、新規学卒者だけでもよしとするというふうな表現だったと思うんですけれども、しかし、私が今読み上げた部分は、今、現行ある年齢指針のところでありまして、当然今後はそこを含むんだ、いわゆる卒業してたった一年しかたっていない就職浪人生だとかそういう人たちが、さっき読み上げた白書のようにチャンスはもう得られないということがないように、今後は指針に盛り込むなりやっていくんだというつもりでいるのかどうか、伺います。
○岡崎政府参考人 新たな法律の場合には省令で書くわけでございますが、その際には、我が国のいろいろな現在の雇用慣行や雇用情勢、そういったものを踏まえながら考えていく。それからもう一つ、若年者の雇用機会の拡大のための指針も予定しておりますので、その両者相まった形の中で今御指摘のような問題についても対応していくということを考えていきたいというふうに考えております。
○高橋委員 よろしくお願いしたいと思います。
独立行政法人労働政策研究・研修機構、第二新卒者の採用実態調査、〇五年によれば、第二新卒者というのは、学校卒業後おおむね三年以内の者を言うようでありますけれども、この第二新卒者を新卒と同じ枠で採用対象とした企業は二二・四%しかありませんけれども、中途などで採用対象とした企業が三三・六%、あるいは採用対象なし企業は四四%まだございます。私は、ここのところがやはり区別なく、第二新卒者が差別されないようにしていくことがまず最初の大きな一歩であるだろう、このように思っております。そのことを強く求めていきたい。
続けますけれども、同時に白書はこうも言っております。「中途採用の割合が増加すると、それは適職探しのための再就職の機会を増やすが、そのために新卒採用が減少するのであれば、就職できなかったり意に反してパート・アルバイトとなったりする若年者が増えてしまう。」
つまり、先ほどの、新卒は人生で一回、そのことを考えたときに、いきなりハローワークの求職者と同じ競争の中に投げ込まれる、あるいは新卒者が新たに不安定雇用に流れ込むということはやはりあってはならないのだろう。だから、一定、この新卒採用の慣行というシステムはやはり維持するべきだと私は思いますけれども、この点、大臣の見解を伺います。
○柳澤国務大臣 最近の若者の就業あるいは入職の状況を見ますと、学校を卒業するまでに職業生活を選択する気構えと申しますか、あるいは自分の職業能力の醸成というものが間に合わない、そういうようなことでモラトリアム的に何かフリーターみたいなところに就職するというようなことが多くて、それでも今までのところは親のもとで生活が可能だというような形のものが見られるようなことになったわけですけれども、やはり私は、かつての高橋先生のような方が、熱心に学生のあるいは生徒の進路の相談によく乗っていただいて、そうして本当に学窓から巣立つときに自分のしっかりした職業観あるいは職業選択の目を持って、新鮮な気持ちで社会人として巣立っていく、そういう日本の慣行というのは私は重要視されるべきである、このように考えております。
私どもは、基本のところは、そのことを今回の年齢差別禁止の条項の中でも、一つのしっかりした慣行尊重の立場に立った規定を、省令でもって定めてまいりたい、このように考えております。
○高橋委員 前段の、モラトリアムが今どき出てきたのに正直ちょっと驚いておりますけれども、青年が職につけない事情にはいろいろなことがございますので、モラトリアムでフリーターに就職することが云々という御認識はいかがなものかなということをちょっと考えているわけです。
ただ、後段におっしゃっていただいたように、やはり初めて社会に出るときに、むしろ社会人としての十分な基礎的な知識を積んで、ガイダンスを受けて社会に入っていくということを支援するというシステムをしっかり持っていくということは、やはり私は大事なんだろうということを重ねてお話をしたいと思うんですね。
問題は、前にも私、本委員会で指摘したことがありますけれども、いつ経験を積めばいいのというフリーターの悲鳴であります。新卒を採用し、職業訓練もしながら長期にキャリア形成をしていこうという企業の思惑と、即戦力のある人材を中途で採用したいという思惑の二極化の中で、キャリア形成をするチャンスが得られなかった、パートやアルバイトなどの経験しか積めなかった若年者がこぼれてしまう、ここをどうするのかというのが最大の課題であろう。これは多分、年齢制限を取り払うだけでは解決しないと思うんですね。それは働き方の問題をやはり大もとから変えていくということ、もちろん公的職業訓練も必要だし、そういういろいろな総合的な対策が必要だろう。
民主案では、そこに着目した特別措置法も出されているわけですが、ここも大変簡潔にお願いしたいんですけれども、若年者等職業カウンセラーを配置して、個別就業支援計画の作成などマンツーマンの指導をするとありますけれども、その際にも、やはりハローワークの職員の増員、体制強化は不可欠と思いますが、どの程度ふやすと考えておられますか。
○山井議員 高橋委員、御質問ありがとうございます。また、ロストジェネレーションの若い世代のパートやアルバイトの方々を安定雇用するため、そのために国を挙げて取り組むという民主党の若年者就労支援法案に賛成の意を示してくださっていることにも感謝申し上げます。
御質問にお答えいたします。
若年者等職業カウンセラーは公共職業安定所に置くこととし、一定の要件を満たす若年者等に対して、個別就業支援計画を作成し、同計画に基づいて職業指導、職業紹介を行うなど、幾つかのステップを踏んできめ細やかな支援を実施していくこととしております。
その数についてのお問い合わせがございました。
対象若年者等のうち、個別就業支援計画を作成する者が総数で約五十万人、一年当たりで約十万人と想定しております。そして、カウンセラーは一人当たり二十人の対象若年者等を担当し、一年間で延べ六十人の若年者等を担当することを想定しております。したがいまして、人数につきましては、カウンセラーは総数で約千七百人と想定しております。既存のハローワークの職員や団塊世代の退職者を活用するとともに、厚生労働省においては、平成十四年度から五年間で五万人のキャリアコンサルタントを養成することとされており、必要な人数の確保が可能であると考えております。
また、資格についてもお問い合わせがありました。
これについては、カウンセラーはその職務を行うのに必要な熱意及び能力を有する者でなくてはならず、また、多様な人材を確保することとしております。例えば、若年世代で引きこもりなどを経験したことのある者、一般企業で人事などを経験した退職者等、コミュニケーション能力にたけた人の力を幅広く積極的に求めていくことが必要であると考えております。
実際の支援の場面においては、忍耐強く対象若年者等を励まし支える熱意が求められると同時に、雇用や職業についての幅広い知識や、対象者が相談しやすい寛容さ、客観的に対象者を判断できる能力、さらには信頼性や協調性といった人柄も含めた能力が求められると考えております。そのため、法案におきましては、カウンセラーの資質の向上を図るため必要な研修を受けなければならないことも規定しております。
以上でございます。
○高橋委員 そうおっしゃる以上は、ハローワークの民間開放などが今議論されておりますが、やはり公的機関として維持していくということで、御一緒に頑張っていただきたいと思います。
最後に大臣に伺いたいと思うんですけれども、経団連が四月十七日に提言を出しておりますけれども、例えば、トライアル雇用を現行の三カ月から一年程度に延長せよ、あるいは紹介予定派遣を現行で最長六カ月という期間を一年に延長せよ、こうした提言をしております。
私は、これらは企業にとって都合のいい人材を安上がりでかつリスクの少ないお試し雇用で確保することをねらいとするものだと考えます。こうした制度の期限を延長することは、長期に若年者を不安定な雇用に置くことにつながり、安易に期限を区切った雇用につながること、今回の若年者対策でそういうことに対しても規制をするべきだと思いますけれども、見解を伺います。
○柳澤国務大臣 トライアル雇用また紹介派遣雇用につきまして、現行の期限を延長すべしとの提案があったという御指摘をいただいたわけでございますが、私ども、現段階においてそのような措置をとるという考え方を持っておりません。
○高橋委員 終わります。