1948年に成立して以来、60年ぶりの改正となる消費生活協同組合法(生協法)改正案が27日の衆院厚生労働委員会で全会一致せ可決されました。改正案は参院先議で、連休明けの衆院本会議で可決・成立する見通しです。
委員会質疑で日本共産党の高橋千鶴子議員は、今回の改正によって組合員外利用を例外的に認めるとしていることについて、医療生協が、地域医療の重要な担い手として地域に開かれた慰留を提供していることを紹介。改正案が員外利用についての区分を「利用分量の総額」で一対一となるよう求めているが、事務的な負担も考慮して、組合員数で見ることを提案しました。
中村秀一社会・援護局長は「実務的に煩雑にならないように、提案も含めて現場が困らないよう検討していきたい」と答えました。
高橋氏は生協の規模が大きくなると直接声が届きにくくなるのではないかと質問。中村局長は「重要事項は会員の五分の一以上で総会を招集」できるなど、組合員が参加しにくくならないようにしていると答えました。
高橋氏は、生協が県域を超えて設立された際、現在の都道府県の所管から地方厚生局あるいは本省の直接所管に移ることから、生協の自主的な活動に対して国による介入が強まってはならないことを指摘しました。
(2007年4月28日(土)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
ことしは憲法施行六十年に当たり、昨日、記念式典も開催されました。生協法は憲法の一つ年下、これまで一度も改正が行われなかったことからいっても、組合員一人一人にとって大変重要な転機を迎えていると思います。
確かに、組合員数は五千九百十五万人、共済契約件数で一一・七%、購買事業が全小売業の二%を占める大きな存在となっていること、生協を取り巻く環境もまた大きく変わっていることは紛れもない事実であります。
しかし、今回、その第一条「目的」には手を加えませんでした。「この法律は、国民の自発的な生活協同組織の発達を図り、もつて国民生活の安定と生活文化の向上を期することを目的とする。」株式会社ではないということ。商品やサービスはあふれているというけれども、一方、地域格差、食の安全、安心など、今日的に生協の活動に期待されているものはむしろ大きいのではないか。このことを大臣に一言確認させていただきたいと思います。
○柳澤国務大臣 背景になる事実認識についてはいささか異なる点もあるわけでございますけれども、それはちょっと横に置いて申し上げるとすれば、生協というものが、昭和二十三年の制定以来、非常に重要な社会的あるいは経済的役割を果たしてまいったという認識でございます。
○高橋委員 生協の目的は変わらないということでよろしいですね。
○柳澤国務大臣 目的規定は第一条にあるわけでございますけれども、「国民の自発的な生活協同組織の発達を図り、もつて国民生活の安定と生活文化の向上を期することを目的とする。」ということで、十分に過不足なく規定をされていると考えます。
○高橋委員 その上で具体の話を進めたいと思います。
まず、員外利用が原則禁止とされるものの、例外的に認められる場合を省令に明記することになりました。そのうち医療福祉事業についてですが、百分の百、一対一が求められることとなります。私は、医療生協とは、もともと組合員のための医療機関として、絶えず組合員をふやし、健康診断など班を基礎とした活動に力を入れていると思っております。同時に、地域医療の重要な担い手であり、地域に開かれた医療を提供してきました。この間の調査で組合員比率が七割以上である、そのことがこうした活動を物語っていると思うのであります。
そこで、今回、利用分量の総額ということが書かれておりますが、これはお金で比率を見るのか。組合員とそうでない人の経理を分けて割合を見るというのは大変な事務量になると思います。組合員数の数で見るというので十分ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
委員からお話がありました員外利用制度につきまして、法律で利用分量の総額ごとに厚生労働省令で定める割合を超えてはならないとなっております。その割合につきまして、まあ、員外利用につきましては、今回、基本的に法律で員外利用を例外的に認める場合を列挙、明記するということでございますが、ただいま条文で申し上げましたとおり、員外利用のはかる基準としては、利用分量の総額ということで金額で示されております。
したがって、基本的な考え方は利用額であるというふうに考えておりますが、委員からお話ございましたように、実際上、それぞれの生協、またそれぞれの事業の実態、購買事業、利用事業等々ございますので、そういう実態の中で実務的に煩雑にならないような工夫があるかどうか、その点については、今委員の方からは人数というお話がございました、そういった御提案も含めて、現場が困らない、しかし法律で要請していることを満たすような方法についてよく検討してまいりたいと思います。
○高橋委員 このことはぜひ要望しておきたいと思います。
次に、県域規制の見直しですけれども、これは組合員の単位で見ると確かに生活圏が隣の県に実質なっているんだ、そういう実態を踏まえて利便性を図るというのであれば理解ができますけれども、今回の改正によって隣県同士の合併も可能になるということであると思うんです。例えば青森県でいうと、岩手県と秋田県と二県ありますけれども、その隣の県、隣の隣というふうにジョイントしていけば、理論上は本州全部つながるのかな、大きな合併が可能になるということも含まれているのか、伺います。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
今の御指摘でございますが、主たる事務所の存在する県の隣接県でございますので、主たる事務所というのは一つの県にあるわけでございます。今言った、何といいますか、無限に広がる、そういう観点ではございません。それはあくまでも利用される方の生活圏域の拡大ということを念頭に置いているわけでございまして、そういった場合に一つの地域生協が隣の県の方も利用者として対象とし得る。
その場合に、方法として、宅配などの場合は店舗がございませんのでAという県からBという県の利用者の方に行く場合もありますでしょうし、場合によってはAという県の生協がBという県にも店舗を構える、こういうことはあろうかと思いますが、あくまでも主たる事務所の存在する県の隣接県でございまして、また、その観念は、利用者の方の便宜ということを念頭に置いております。そういうことを御説明申し上げたいと思います。
○高橋委員 それは、ですから、出発ではそうだけれども、理論上は可能ですねということを確認したかったんです。
続けます。私は、そこに評価を挟むつもりはないんです。今いろいろな議論が起こっておりますから、地域に根差した身近な生協であってほしいという声とスケールメリットを追求する声が両立できるのかということが今問われていると思うんですが、私は、結論はあくまで組合員自身が決めることだと思っているからなんです。
ただ、今回、総代会を置くことができる組合員数を一千人以上から五百人以上にするなどの緩和がされました。私は、生協が大きくなるにつれて総会を開くことが困難となり、結果として組合員の声が届きにくくなるということがあってはならないと思うんですね。あくまで組合員自身が決めるという原則が貫かれるべきと考えますが、その点を伺います。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
基本的に、最高の決定機関は総会でございますが、今委員からお話ございましたように、総会にかえて総代会において決定できる、こういう規定になっております。
現在千人以上というのを五百人以上ということで、そういった意味では総代会がつくりやすくなっておりますが、しかし、総代会で決められた決議につきましても、例えば組合の合併等、そういう重要事項につきましては、総組合員の五分の一以上の請求がありましたら総会を招集しなければならない、総会で決めていただいたことが優先する、こういう形になっておりますので、そういった意味で組合員の声が届きにくい状況にならないように配慮しているところでございます。
○高橋委員 このことは生協への今後の期待を込めて確認をさせていただいたことであります。
生協が県域を飛び越え、仮に東北と関東の県がくっつくような、ブロックを越えるようなことになると、国による直接監査の対象となるわけですね、理論上は。そうすると、逆にこのことをもって、自主的な組織であるけれども国による介入が強まってはならないということを私はあわせて指摘しておきたいと思うんです。もう時間が来てしまいましたので、組合員の自主性を保つと同時に、国による介入が強まってはならないという立場で臨んでいただきたいということを要望して、終わりたいと思います。