官邸関与を追及/高橋氏
日本共産党の高橋千鶴子議員は1日の衆院予算委員会で、毎月勤労統計の調査手法の変更に官邸の関与があった疑惑をただしました。
高橋氏は、2015年3月31日に中江元哉首相秘書官(当時)が厚生労働省の姉崎猛統計情報部長(同)に調査手法の変更を促す〝問題意識〟を伝えたことをめぐり、安倍晋三首相が「私の考え方を理解しながら問題意識を述べるのは当然だ」と答弁(2月26日、同委員会)したことを指摘。「首相の指示ではなく『個人的考え方』と言っているが、首相の考えとかわらないということだ」と迫りました。安倍首相は「同じではないが、理解しているということだ」と述べました。
高橋氏は、手法変更に伴い、対象事業所を入れ替えた際に行っていた過去の数値の改訂(遡及〈そきゅう〉改訂)をやめた経緯も追及。手法変更を議論した有識者検討会の中間報告の、遡及改訂を否定する文言が「報告書の素案が出た後、『一意見』の扱いから『基本的考え方』に変わった」と指摘しました。
そのうえで、「せっかくプラスになった数字(賃金の伸び率)がマイナスになる」(中江氏)などと、中江、姉崎両氏や麻生太郎財務相、菅義偉官房長官が共通して遡及改訂に否定的な発言をしていると強調。過去の賃金が下振れするのを避けるために「遡及しないという結論が必要だったのではないか」とただしました。
厚労省の藤沢勝博政策統括官は、中間報告は「検討会委員の意見を踏まえた」と述べ、官邸や閣僚の影響を否定しました。高橋氏は「『基本的考え方』とされた『過去の数字は、その時々の正しい判断』が、官邸などがほしかった答えだ」と批判。「見せかけの賃金上昇という誤りを認めず、消費税増税に突き進むことは許されない」と主張しました。
( しんぶん赤旗 2019年03月03日付より)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
短い時間ですので、答弁も御協力お願いします。また、順番も少し変えておりますので、お願いいたします。
きょう、中江元首相秘書官はおいでいただいていますよね。遅い時間にありがとうございました。
少しおさらいになるんですけれども、二〇一五年の三月三十一日、毎月勤労統計の説明を受け、一月にサンプルを総取りかえしたときに、その後三年もさかのぼるのでマイナス改定になるということを説明を聞いて、それは問題ではないかとコメントしたこと、このことは既に国会でお認めになっていると思います。
また、二〇一五年の九月十四日に姉崎さんから説明を受けたことは記憶にないんだけれども、六月ごろに検討会のことを聞いた、これはよろしいんですよね。確認をさせてください。
○中江参考人 お答えいたします。
二〇一五年三月三十一日に、私は、毎勤統計のサンプル全数入れかえによって過去三年にさかのぼって数値を変えるということについて御説明を受けて、それについて、私としては、専門家の意見も聞いてみてはいかがですかという問題意識を伝えたということで、これは、認めた、認めないということではなくて、私から申し上げていることでございます。
それから、九月十四日の件は、厚労省の姉崎部長と、もう一人、宮野さん、お二方が来られたということをお二人から聞いたわけですが、そこはちょっと私としては覚えがありませんが、いろいろなことを思い出そうと思っても思い出せないんですけれども、当時の問題意識からすれば、私としては、経済の実態をあらわすような形での部分入れかえみたいなものを御検討されているんですか、御検討してはどうですかというようなことを言ったのかなと。
それは、私の当時の考え、問題意識からすればそうかなと思いまして、そこも、会っていないとか言っているわけではなくて、もうお二人から会ったと言われているわけですから、そうなんだろうな、そこはそう思っております。
それで、六月の件は、そこでお話を聞いた、検討会の状況を聞いたということではなくて、三月末に問題意識をお伝えして、そうしたところ、厚労省さんの方から、ちょっと私、時期は覚えておりませんが、厚労省の中でいろいろ議論をして、こういう検討会を設けるということを聞いたということでございます。
○高橋(千)委員 わかりました。三月三十一日、また六月、そして、九月十四日は定かではないけれども言ったのかなということを御答弁になったということでありました。それは、誰だって一月前のことも正確に覚えていないわけですから、日付までしっかり覚えているということの方がむしろ不自然なわけで、でも、流れはお認めになっていると思います。
それで、総理に伺いたいんですけれども、二十五日の枝野委員の質問に対して、中江元秘書官のことをいろいろ聞かれたものですから、私の考え方を、理解を持っておられますから、そういう見識のもとでさまざまな意見を述べられるのは当然なんだろう、こういうふうにお答えになっております。
ということは、総理が指示をしたわけではない、秘書官が個人的な意見を述べた、でも考え方は違わない、一緒である、こういうことになりますよね、解釈すると。
○安倍内閣総理大臣 先日、私が答弁で申し上げましたのは、秘書官は私の考え方を理解しているということを申し上げたわけでございます。
私も、その後、それぞれ見識を持っておられますから、そういう見識のもとでさまざまな意見を述べられたのは当然なんだろう、このように思っておりますということでございまして、まさに私の考え方を理解している。
理解をしているということは、同じではないということでございまして、私の考え方を例えば高橋先生が理解をしている、でも、その考え方は間違っているねと思っておられるんだろうと思いますよ。ですから、同じではないけれども理解をしている、こういう意味で申し上げたところでございます。
○高橋(千)委員 全く同じということはないんだと思うんですけれども、ただ、総理がいわゆる問題意識を持っていることを、全くそれと違うことを、個人的な考えですという形で首相秘書官がお話をしたり、省庁を呼びつけて意見を述べるということは、それはないだろうと思いますから、総理の答弁はそういう趣旨なんだろうなというふうに私なりに理解をさせていただいたということでございます。
それで、同じく菅官房長官は、二〇一五年の三月に、やはり、専門家の意見を聞くことを検討すると私自身が報告を受けたという答弁をされております。これは、二十二日の小川委員に対する答弁です。
九月四日に手計課長補佐が阿部座長に送ったメールの中で、官邸関係者とも相談していますと。その官邸関係者とは、官邸の内閣参事官、官房長官秘書官、そして副長官補付参事官の三人であるということも、これは二十五日の委員会で繰り返し答弁がありました。
ということは、もしかして、九月十四日に厚労省が説明に行ったのは官房長官の秘書官だったとか、あるいは御一緒だったとか、そういうことはあったでしょうか。
○菅国務大臣 お尋ねの点につきましては、二月二十二日にも答弁をいたしましたけれども、平成二十七年六月から九月に毎月勤労統計の研究会に関する説明や報告を厚生労働省から受けた記憶は、私にはありませんでした。当時の担当秘書官にも聞きましたが、秘書官も記憶にないということでした。
○高橋(千)委員 済みません、これは二十二日の議事録を読み上げたんですけれども、私自身が報告を受けたという答弁をされていますが、それは違うんですか。
○菅国務大臣 それは三月の話じゃないでしょうか。(高橋(千)委員「三月です」と呼ぶ)今申し上げましたのは、私、委員の御質問が六月、九月だったので申し上げたということです。
○高橋(千)委員 失礼しました。九月ではないとおっしゃっている、三月はそうだと。
要するに、今ちょっとおさらいのような質問をさせていただきました。
最初にお断りをしておきますが、これが、今回の統計不正と、官邸の皆さんが何かコメントしたことが、悪いことをしたのか、と言っているのかなどと総理がここで発言をされたことがありますが、そういうことを言っているのではありません。別の問題である。だけれども、皆さんが同じ問題意識を持って何らかのコメントをされているということは間違いないと思っております。
当初、野党は、十月十六日の経済財政諮問会議での麻生大臣の発言が発端で、大きく調査手法が変わったということを追及してきました。これは、麻生大臣がだめ押ししたことには変わりはありません。ただ、複雑な入れかえ方法のこと、それはやはりマニアックな世界でありますから、それ自体にあれこれではなくて、姉崎部長も中江元秘書官も官房長官も、そして麻生大臣も共通して言っているのは、遡及しないということなのではないかと思います。
これは、中江元首相秘書官が随分詳しく答弁されているんですね。二十二日に、先ほどの小川委員の質問の中で、「それまでの二〇一二年、二〇一三年、二〇一四年の伸び率がさかのぼって改定されると、それなりにプラスになっていた数字がマイナスにばたばたと変わっていく。それは、そうすると問題ではないですかと。」これはわざわざ年数を言ってまで、よっぽど悔しいんだろう、そういう気持ちがにじんでいるわけですね。それで、何とかできないか、こういうことになる。
それで、検討会の中間報告で、断定的に書いてあるのはこういうことなんです。増減率は、その時点における政策判断や評価をする際に用いられた正しいと判断された情報であり、変わるのは望ましくない。これがまとめの基本的な考え方です。このときの議事録を読みますと、姉崎部長も、「過去に遡って補正するわけではないということは書いていいと思います」、こう言っているんですね。
実は今回、手計課長補佐の阿部座長宛てのメールが出て、その中に添付ファイルがありまして、報告書の見え消しが入っていました。見え消しというのは普通ありますよね。検討会のときに、必ず素案があって、あるいはたたき台があって、見え消しが何度もあってまとめになる。それがどうして検討会のこの資料の中になかったのかなと思っていたら、全部、添付ファイルという形で出てきたわけなんです。
そこの七ページの中に、九月四日に送られた素案があります。検討会では、以下のとおり意見があった、増減率は、その時点における政策判断や評価をする際に用いられた正しい情報と考える。これは個人の意見ですよ。それが、今最初に私が言った結論になりかわっているんです、逆転しているんです。
当時の素案のまとめは、「サンプル入れ替えに伴うギャップの補正を行う場合には、国民にとってわかりやすく納得性の高い方法で行うことが重要である。」「その時々の政策判断に悪影響を与えることは避けなければならない。」こういうまとめをしてあった、最初の案は。それが、もっとはっきりくっきり、「正しいと判断された情報」ということに変わったんです。
その後の報告の中で、長妻委員が繰り返し述べていたベンチマークの問題などが出てくるんですが、その最後に、「ただし、過去の増減率については変更しない。」この結論が必要だったのではないでしょうか。
○藤澤政府参考人 ただいま御指摘の増減率はというくだりのところでございますけれども、その報告書の記載についてでございますが、過去の政策判断や評価に使われた数値が後から変わるというのは、御利用者に誤解を与え、混乱させるのではないかといったような検討会委員の御意見を踏まえて記載をされたものと承知をしております。
そもそも、以前から、毎月勤労統計について、二、三年に一回サンプルを全数入れかえること等によって生じるギャップ、断層への対応として、過去の数値を遡及して改定する取扱いが、統計利用者にとってわかりにくい等の意見がございました。検討会のこの中間整理案の記述は、こうした検討会の設置の経緯を踏まえつつ、検討会委員の意見を踏まえて記載されたものと承知をしております。
○高橋(千)委員 ですから、最初にお話をしたように、各政府関係者がこぞって、さかのぼってマイナスになるのはおかしいと言ったことが、結局結論になったんだと。これまでは、入れかえが云々ということで、検討会は、引き続き検討するで終わっていた。だけれども、決まっていたことは、遡及はしない、このことはもう結論が出ていた、そういうことじゃないでしょうか。
○藤澤政府参考人 先ほどの繰り返しになりますけれども、御指摘の検討会の中間整理案でございますが、その記述は、検討会の設置の経緯を踏まえつつ、検討会に御参画いただいた委員の意見を踏まえて記載されたものでございます。
○高橋(千)委員 これについては、やはり改めて姉崎さんに来ていただかないとわからないと思います。
これは、結局、見え消しの中で、最後の瞬間に出てくるんですよ。だから言っているんです。当たり前のことだとか、みんなが意見を言ったんだというんだったら、最初から案に入っているはずじゃないですか。それを確かめたいです。委員長、お願いいたします。
○野田委員長 姉崎さんに関しましては、きょう、協議が調わずということで、招致をしておりません。
○高橋(千)委員 これは引き続き求めていきたいと思います。
過去の判断は正しい、一番欲しかったのはその結論なんです。見せかけの賃金アップという誤りを認めない、これを、このまま消費税増税に突き進むのか、いま一度立ちどまるべきだと指摘をしたいと思います。
昨日の毎日新聞は、閣僚経験者の声を紹介して、「これ以上は何も出ない。」「「首相が関係していないのは明らかだから、「モリ・カケ」問題のようにはならない」と余裕をみせた。」と報じました。
一番肝心なところで参考人が出てこないですから。でも、結局、皆さんが言っていたことがそのとおりになったということは明らかだと思います。
現場で苦労している職員にだけ責任を負わせて、局長以上は知らなかったと言ったら組織的とは言えませんと。それで済むのであれば、もう組織として終わっています。こう指摘をしたいと思います。
改めて、立ちどまって誤りを正すべきだ、全容を解明するべきだ、このことを求めて、終わります。