労働関連三法案を審議している六日の衆院厚生労働委員会で日本共産党の高橋千鶴子議員は、貧困と格差をなくすため低すぎる最低賃金を生計費に基づいて大幅に引き上げるよう求めました。
高橋氏は、最賃法改定案で「生活保護との整合性を図る」とすることについて、母子・老齢加算廃止など生存権が保障されないと批判されており、低い方に合わせて引き下げてはならないと指摘。税と社会保険料を考慮した可処分所得で比べると、すべての都道府県で最賃が生活保護を下回っており、この実態からスタートするべきだとのべました。青木豊労働基準局長は「重要な指標だと思う」と答弁。「生活保護水準を下回らないのが趣旨であり、最賃を引き下げることにはならない」と明言しました。
高橋氏は、最賃が生活保護費より低いことを柳沢伯夫厚労相が「遊んでいた方が高い手当が手に入るようなことがあってはならない」(一日)と生保受給者を攻撃したことは許されない認識だとして撤回を要求。柳沢氏は「不明をおわびして撤回する」とのべました。
大幅引き上げが中小企業を圧迫するとの答弁に対し、予算の0・35%と貧弱な中小企業対策の責任を棚上げしていると批判。三十人未満の事業所調査で最賃に満たないのは1・2%で、影響率は1・4%にすぎず、労働政策・研修機構のアンケートでは「最賃は低すぎて参考にならない」と答えており、引き上げこそ必要だと迫りました。
青木局長は「数字はその通り」と認め、セーフティーネットの機能を果たさなければならないと答えました。
(2007年6月7日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは最賃の質問をいたしますが、その前に、先ほど来、宙に浮いた年金記録の問題で、きょう一日だけでも問題がさらに次々と明らかになった、本当にどうなっているのかということなんです。
社会保険事務所に今国民の相談が殺到している、本当に強い関心が示されております。そして、先ほどの質疑の中で、五千万件では済まないのではないか、その外にさらに宙に浮いた記録があるのではないか。あるいは、一年間で名寄せ完了という自民党のビラがどうやらごまかしではないか、こういうことまで判明をいたしました。大臣がこの場でできないと否定したことや、めどは言えないと言ったことを、総理が先に言ってしまった、やりますやりますと。後から大臣がそれにつじつまを合わせている。矛盾がそこに噴出するのは当然なんですね。これは内閣の体をなしていない、余りにも無責任ではないか、私は強く指摘をしたいと思うんです。
この問題についての解決策については、衆議院で議論の途中でありました。途中であったにもかかわらず、強行採決で与党がふたをしたんです。ですから、私たちがこれまで積み上げてきたことと全然違うことがどんどん出てくる。これは衆議院の責任が問われてくるんです。だから、これをもう一度審議をしようと言っているのは当然ではないですか。
きょういろいろ出された参考人要求、資料要求、そしてきちんと整理をしなければわからなくなりました。サンプル調査の結果と、政府の考える対策の全容をこの委員会で報告し、年金問題での集中審議を行うべきと考えますが、委員長にお願いいたします。
○櫻田委員長 後刻理事会で協議させていただきます。
○高橋委員 よろしくお願いいたします。必ず理事会で審議をしていただきたいと思います。
そこで、最低賃金の問題でお話をいたしますが、最初に大臣に簡単な質問をいたします。
今現在、最低賃金の全国平均額は六百七十円、月収に直すと十一万七千円何がし、年収で百四十一万五千円くらいになると思うんですけれども、この水準を低いと大臣はお考えでしょうか。ワーキングプアという言葉がございますが、まさしくこの最賃に張りついた労働者の実態、貧しいと考えていらっしゃいますか。見解を伺います。
○柳澤国務大臣 今委員が御指摘になられましたように、現行の地域別最低賃金の全国加重平均額は六百七十三円でございます。したがいまして、これを一日八時間として二十二日間働くということで考えますと、十二万円足らずということになります。
この具体的な水準は、委員も御承知のとおり、公労使三者構成の地方最低賃金審議会における地域の実情を踏まえた審議を経て決定されているものでございまして、そのこと自体については、私どもとして審議会の御意向を尊重して決定させていただいておるという立場で、このこと自体について云々することは、こうした枠組みの中では差し控えさせていただきたいと思います。
○高橋委員 今、決め方の問題についてはこの後質問いたしますけれども、そこに逃げないでいただきたいんですね。これで暮らせると思っているのかということを、大臣の率直な認識を伺いたいと思うんです。数字の上の積み上げではなくて、実際として十二万足らずで暮らしていけるのかということなんです。そのことを本当にお答えをいただきたいと思います。
〇五年一月七日の最賃制度のあり方に関する研究会に提出された資料、「最低賃金制度の意義・役割について」によれば、第一条、目的の解説の中で、労働条件の改善とは、労基法で言えば労働条件の向上という改善度合いの向上、これは現状より上回ることであって、水準が一定高くてもそれより上回れば向上と言う、しかし、改善とは現状が悪いことを前提としている、このように説明がされています。現状が悪いことが前提なんだということなんですね。
同じ資料の中に、「ILO事務局ジェラルド・スタール「世界の最低賃金制度」による整理」の中で、最低賃金制度は「すべてのあるいはほとんどの労働者に、不当に低い賃金から保護する安全網を提供することによって、貧困の減少に適度に寄与する手段」と整理をされております。
あれこれの要素の前に、現状は極めて低いんだ、これをまさしく改善するのだという立脚点に立つのかどうかが問われていると思います。もう一度お答えをお願いします。
○柳澤国務大臣 最低賃金というのは、今委員がお述べになりましたように、労働者の最低限度の生活を保障する、そういうセーフティーネットという役割を果たすことを当然期待されておる制度でございます。
そういうことで、今私が申し上げましたように、現在の水準というのは六百七十三円ということが全国加重平均額になっているわけでございますけれども、今回の改正においては、地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素の一つである労働者の生計費について、生活保護に係る施策との整合性に配慮するということを明確にさせていただいておりまして、このことを踏まえて、私どもとしては、最低賃金額をぜひ引き上げの方向でそれぞれの審議会からの答申もいただけるように、そういうことを願って、こうした法律の改正案を提出させていただいておるということを御理解賜りたいと思います。
○高橋委員 なかなか暮らしていけないということを大臣のお言葉では言えないのだろうと思うんですね。ただ、今お話しされたように、生活保護よりも低いような状態を改善しようという点では、極めて低いということの認識であったのかなと思います。
確認をさせていただきます。それが違うというのであれば、後でまた答弁なさればいいかと思うんです。簡単なことでございます。最賃の決定者はだれかということです。
第十条には、厚労大臣または都道府県労働局長はという主語になって、決定しなければならないというのが最後にあります。また十七条には、「著しく不適当となつたと認めるときは、その決定の例により、その廃止の決定をすることができる。」ともある。これは大臣に決定権限があるということで確認をしてよろしいでしょうか。
○柳澤国務大臣 結論的に申しますと、高橋委員が言われるとおりであります。
最低賃金については、原則として、一都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案については都道府県労働局長が、それからまた、二以上の都道府県労働局の管轄区域にわたる事案等については厚生労働大臣が決定することとされております。
都道府県労働局長が決定した最低賃金が著しく不適当であると認めるときは、厚生労働大臣が都道府県労働局長に対してその改正等を命ずることができることとされておりまして、それぞれの、中央及び地方の最低賃金審議会のお考えを尊重しながら、決定は、都道府県労働局長、あるいは場合により厚生労働大臣であるということが法律の規定するところでございます。
○高橋委員 基本的な権限の所在がはっきりしたかと思います。
ただ、改正や廃止の決定について、大臣が伝家の宝刀を抜いたことは一度もないということでありましたので、私はやはり、今こういう議論を積み重ねている中で、そういうことだってあるんだよということを、今抜けと言っているわけではありませんが、そういうことをきちんと念頭に置いて議論を進めていきたい、そういうふうに思っております。
そこで、生活保護との整合性について伺います。
九条三項で、「労働者の生計費を考慮するに当たつては、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」というふうに盛り込まれたわけであります。
ここで、十一都道府県の生活保護費を最低賃金が下回っているということが、この間議論をされてきました。そこで、政府が基準としている生計費というのは、ここでいう生活扶助、つまり食費、水光熱費、居住費、これをいうのでしょうか。
○青木政府参考人 生計費につきましては、各地方最低賃金審議会において、生活保護基準や生活保護水準の具体例とか物価指数だとか標準生計費だとか家計収支、可処分所得、消費支出などさまざまな資料を用いて審議が行われているところであります。
それで、生活保護と最低賃金の比較に当たりましては、例えば、地域別の最低賃金は都道府県単位で決定されているのに対しまして、生活保護は市町村を六級に区分しておりますし、生活保護は年齢や世帯構成によって基準額が異なる、あるいは生活保護では必要に応じた各種加算や住宅扶助、医療扶助などがある、これをどういうふうに考慮するのかといった問題があります。
現在の最低賃金と生活保護の水準を見た場合に、衣食住という意味で、生活保護のうち、若年単身世帯の生活扶助基準の都道府県内人口加重平均値に住宅扶助実績値を加えたものを手取り額で見た最低賃金が下回っている地域が見られる。まずはそういったケースについて比較をし、その整合性を考慮の上、逆転を解消し、その上でさらに最低賃金と生活保護との整合性のあり方について考慮していくことが一つの考え方ではないかというふうに思っております。
〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕
○高橋委員 級の区分の仕方が違うですとか、そういういろいろな違いがあることを乗り越えて生活保護との整合性を図るということを今回盛り込んだわけですから、基本的な考え方をきちんと整理していく必要があるのだろう。
そこで、政府の出している資料というのは、最低賃金に対し、税や社会保険料を考慮した可処分所得として〇・八六七を掛ける、そういう数字を比較しているかと思うんです。当然、生活保護であれば負担がないものを、普通の賃金労働者であれば負担しなければならない、そのことを考慮していると思うんですね。そうすると、すべての都道府県が生活保護より下回るという資料が出ているかと思うんですね。それは間違いありませんね。
そして、その上で、最低でも、局長が言うここからスタートというときには、この〇・八六七を掛けた数字、ここはすべての都道府県が下回っているんだ、その認識から出発するべきではないでしょうか。
○青木政府参考人 今委員がお触れになりましたすべての地域で下回るというお話でございます。
これは、今申し上げましたように、生活保護の基準というものを、具体的にどういうものをとらまえるかということは議論のあるところだろうと思います。
私が先ほど申し上げましたのは、少なくとも衣食住ということで、そこは生活扶助基準一類、二類と住宅扶助の実績値というところでいけば十一ということでありますけれども、今お触れになりましたのは、例えば住宅の扶助を実績値じゃなくて基準額で考えた場合にはそういうふうになるということだろうと思います。
したがって、生活保護という場合に、具体的にどこを基準にしてやるのかというのは、これから審議会において十分議論をして審議を経た上、具体的な水準額に反映をさせていきたいというふうに思っております。
○高橋委員 少なくとも、考慮すべき重要な指標だと思いませんか。
○青木政府参考人 委員がお触れになりましたように、衣食住という意味で、住宅についても重要な指標だというのはおっしゃるとおりだと思います。
その額を、具体的にどれをとるのかということについては議論があるところだろうというふうに思っております。
○高橋委員 先般、本委員会で、生活保護世帯に対するリバースモーゲージの問題で私は質問させていただいたことがございました。五百万円以上の資産を持っている受給者に対して、いわゆる資産を活用して融資に切りかえて保護を打ち切るということによって、生活保護費をこれまでもらっていた額の一・五倍の額を月々融資するというのが厚労省の考え方なんですね。それは、生活保護受給者でなくなれば、医療費扶助ですとかさまざまな保険料の負担がかかる、だからこれまでもらっていた額と同じ額では当然暮らしていけなくなるのだ、水準は下がるのだという認識を厚労省が持っていたということなんです。
同じように、最低賃金も同じ額といって比較したらだめなんですよ。当然、扶助として転化されている部分をきちんと考慮する、税金や社会保険料の負担を考慮するというふうにならなきゃ、そもそも話にならないということを強く指摘をしておきたい。ここを今後の議論の中で必ず考慮していただきたいということを言っておきたいと思います。
そこで大臣に、そもそも生活保護制度そのものが、私はもう、人たるに値する制度となり得なくなってきている、このように思っております。老齢加算や母子加算など、これをプラスして初めて最低生活費とこれまでは整理をしてきました。それを、加算分を廃止して、つまり政府の解釈によって、最低生活費というのはこの程度よというふうに割り込まれたんですね、この間の施策の変化によって。そういうふうに今変わってきた。こういう大変なところで、今老齢加算や母子加算廃止に反対しての、私たちは人間裁判あるいは人権裁判と呼んでいますが、そういう闘いが今全国で行われているところであります。
その中身の議論はきょうはしませんけれども、問題は六月一日の本委員会です。野党が出席しないところで、とても気持ちが楽になったのかわかりませんが、生活保護費と最低賃金の逆転現象の解消を尋ねられたのに対し、大臣の答弁はこうです。生活保護との整合性という意味でモラルハザードが起こってしまう、遊んでいた方が高い手当が手に入るというようなことがあってはならない、こうおっしゃいました。
どういうことでしょうか。これはまるで、生活保護受給者がみんな税金をもらって遊んでいる、大臣がそういう認識をしているということになるんです。
病気や障害やさまざまな事情があって働けない方、年金だけでは余りにも少ない方など、そういう事情があって、その上で、すべての資産を調査し、それをすべて処分された上でなければ保護受給に至らない、そういう方たちが今の受給者なんですね。そういう人たちを、遊んでもらっている、こういう認識でよろしいのでしょうか。撤回されますか。
○柳澤国務大臣 モラルハザードということが、逆転現象が存在すると生ずる、労働意欲を阻害するということがいろいろなところで議論があるということを踏まえて、私、別に気を楽にしたからそういうことを申したのではなくて、わかりやすく言ったつもりですが、今こうして高橋委員に指摘をされてみますと、私の本意を必ずしも表現していないというふうに気がつきました。大変不明をおわびして、撤回します。
○高橋委員 撤回されましたので、確認をいたします。
産む機械じゃないですけれども、こういう考え方がずっと大臣の根っこにあって、今の施策に反映しているのかなということが本当に問われてしまうので、しっかりと御認識は改めていただきたいと思います。
局長に簡単に確認をいたします。
生活保護との整合性ということであると、理論上は、低い方に合わせることも条文上は可能になってしまいます。決してそうではないということで確認してよろしいですね。
○青木政府参考人 今般の改正において、地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素の一つである労働者の生計費に関しまして、生活保護に係る施策との整合性に配慮するということを明確にすることとしておりますけれども、これは、もちろん、具体的な水準については、再々申し上げていますように、三つの決定基準に基づいて地方の最低賃金審議会で地方の実情に応じて決定することになるわけでありますけれども、今回の改正の趣旨は、地域別最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨でございまして、生活保護が引き下がったからといって機械的に地域別最低賃金が引き下がるということにはならないというふうに考えております。
○高橋委員 よろしいです。
次に、最賃を引き上げれば中小企業への影響があるということが繰り返し答弁をされております。もともと国の中小企業対策が大変貧弱で、一般歳出の〇・三五%にとどまってきている。本当に史上最高の利益を大企業は上げている、経済成長しているという一方で、中小企業には全くそれが回ってこない。そういう中にあって、それを怠ってきた政府の責任を棚に上げて、こういうときだけ、中小企業が困るからという議論は、私は逆立ちだと思うんです。
何をもって中小企業に影響があると言うのか、具体的な根拠を示してほしいと思います。
○青木政府参考人 中小企業に対する影響の問題ですが、我が国におきましては賃金の規模間格差が非常に大きゅうございます。現金給与総額あるいは一時間当たりの所定内給与についても大きな格差が見られます。千人以上の事業所を一〇〇としますと、それぞれ、五人から二十九人の事業所では現金給与総額は五一・七、あるいは所定内給与は六七・八ということになっておりますし、また、労働分配率を見ますと、資本金十億円以上の企業と比較しまして資本金一千万円未満の企業は、人件費の利益に占める割合が高くなっております。十億円以上が五四・九%、一千万円未満の企業が八五・八%ということであります。加えまして、労働分配率が、十億円以上の企業におきましては最近低下傾向にあるのに対しまして、資本金一千万円未満の企業においては高どまりしているということでございます。また、労働生産性については、やはり資本金十億円以上の企業が資本金規模一千万円未満の企業を大きく上回っております。
こういったことから、最低賃金の大幅な引き上げを急にするということは、特に中小企業にとっては労働コストにより企業経営が圧迫されて大きな影響を受けるというふうに考えております。
○高橋委員 所定内給与の比較ですとか、それから、今お話がありました分配率で比較をすると、確かに一定の格差がございます。特に、今お話しされたように、利益のうち八五・八%が人件費にかかっている、そういう中で、直に人件費を上げればそこに影響するだろうというのは容易に理解ができることではあるんですね。
ただ、今、例えば厚労省が行っている、事業所三十人未満あるいは製造業は百人未満の事業所を対象に行っている調査でも、未満率というようですが、最賃に達していない労働者の比率は一・二%、最賃を上げたときに影響を及ぼす率は一・四%にすぎない。実際は、圧倒的多くの中小企業は、やはり労働者がいなければ仕事が成り立たないし、安い給料では逆に来てもくれないという点で一定の賃金を払っているというのが実態だと思うんですね。
労働政策研究・研修機構が平成十六年十一月に行った最低賃金に関するアンケート、これも同じく対象が三十人未満の企業であります。賃金がどのくらい最賃に張りついているかで見ると、正社員では二・四%、パートでも五・九%というところであります。また、最賃が引き上げられたために新規雇用を抑制したのは四・二%にしかなっておりません。私は、重要だなと思うのは、地域別最賃が役立っているかなという問いに対して二四・六%が役立っている。つまり、裏を返せば、七五%以上が役立っていない。その理由は、最低賃金が低過ぎて参考とすることがないから、こういうふうに答えているんですね。
ですから、最低賃金が、中小企業がみんな、かなり低くて、もう今にも上げればやっていけないんだというのは過大過ぎるのではないか、もう少しここは冷静に見る必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○青木政府参考人 確かに、委員がお触れになった数字はそういうことだろうと思います。しかし、それは全体で見たときにはそういうことでありますけれども、やはり、そうはいっても最低賃金のところの水準に張りついているところはあるわけでございまして、そういったところの企業におきましては中小企業がやはり相当な痛手を受けるということは、これもまた確かだろうと思います。
それから、現行の最低賃金の水準で、最低賃金未満の率は非常に低うございます。これは、最低賃金法違反は犯罪でありますので、きちんと守っていただかなければいけないということが一つと、それと、やはり、最低賃金の改定についても、地方の最低賃金審議会でいろいろな事情を勘案して、地方の実情に応じて引き上げているという事情もあろうかというふうに思っております。そういう意味では、委員のお触れになりました調査の中においても、役立っているというのが相当数あるということでありますので、最低賃金がいわばセーフティーネットとして、安全網として機能しているというふうに考えております。
さらに、今般は、罰則を引き上げましたり、あるいは生活保護との整合性を明確にするというようなことで、一層のセーフティーネットとしての機能を果たすように改正をお願いしているということでございます。
○高橋委員 役立っていると答えている企業の理由は、パートやアルバイトの賃金を決める上で参考になるというふうに答えております。ですから、この問題はまたパートやアルバイトの賃金が低く抑えられる別の役割も果たしているということを指摘しておかなければならないと思います。
先ほど取り上げられました成長力底上げ戦略推進円卓会議、この問題について内閣府からもおいでをいただいております。成長力向上と最賃を一体のものとして取り組むということで、私は、その中で、例えば、下請取引の公正化ですとか、バイイングパワーの取り締まり強化もしなくちゃいけないですとか、貴重な立場、発言もされているなとは思うんですね。ただ、問題は、やはりこれは厚労省の所管である最賃審議会との関係なんですね。
資料の一を見ていただきたいと思います。
このスケジュールが六月ごろから立ち上がって、二回から三回やって、八月に最賃引き上げ等についての実施方針を出すんだと。地方最賃審議会の流れ、中央最賃審議会の流れを右に書いておきましたが、例年ですと七月下旬ころに出される答申が、今回、国会で今こういう議論がされているので、一応待ちの姿勢になっている、若干おくれるということを聞いております。そうすると、日程が完全にリンクをするんです。二枚目を見ますと、最低賃金の目安の提示ということが基本的スキームの中に書き込まれているんです。ということは、円卓会議は審議会が目安を出す前に何らかの方針を出すということでしょうか。
○山崎政府参考人 お答えいたします。
御指摘の円卓会議でございますが、御指摘のように、成長力底上げ戦略に関しまして、有識者と労使の代表の方々が集まって、まさに幅広い観点から意見をいただく、こういうものでございまして、その中で、中小企業の底上げ戦略ということで、中小企業の生産性と最低賃金、これに関しても議題に取り上げている、こういう状況でございます。
したがいまして、この円卓会議はあくまでも政労使が幅広い観点から意見交換を行っていただくというものでございまして、この生産性向上と最低賃金、これに関しましても、そういう形から基本的なものについて御意見をいただき、意見交換を行うというものでございます。これを一つ参考としていただいた上で、実際に具体的には、最低賃金の審議に関しましては最低賃金審議会において議論されていく、このように理解している次第でございます。
○高橋委員 これは、結局、先ほど言ったのと同じように、屋上屋なんですね。
中小企業団体中央会が昨年の十月に、制度的に、実質的引き下げも可能な制度とすることという決議を上げています。その決議を上げている中央会の会長が、円卓会議の中に入って、生産性が向上しなければ最賃を上げないといった、そういうふうな発言をされているんですね。
この円卓会議は政労使なんです、公労使ではないんです。そうすると、まず官邸が直結しているということで、労の立場が非常に弱くなるんですね。三つの要素と言いながら、どうしても企業の側に引っ張られる可能性があるんです。そういうときに、この微妙なスケジュールで最賃審議会に横やりを入れる、これまでのルールがゆがめられることになるんではないかということを指摘しなければなりません。
大臣、もう一言、答弁をお願いします。
○柳澤国務大臣 委員も賛成のようなお話も最初にいただいたので安心をして聞いておりましたのですが、急にまた論旨が厳しくなりまして、ちょっと当惑ぎみなんですけれども。
どういうことかと申しますと、先ほども私が申し上げたように、最低賃金の決定の仕組みは全く変わるものではないということでございます。しかし、実際に最低賃金を引き上げようといたしますと、これは、生産性が上がったり、あるいは先ほど委員が指摘されたように、例えば親企業に対する、いわば商品の販売価格を引き上げるというようなことがないと、実際上、最低賃金を引き上げた場合に、それを実行する段になると経営が非常に苦境に立つということは事実でございます。
したがいまして、今、割と大きな企業については成績がいいわけですが、中小企業については成績が余り振るわないということの中で、いかにして我々は最低賃金を引き上げられる環境を整えるかということにいろいろと知恵を絞っているということでございまして、これはあくまでもそうした意味の環境整備のための審議をいただいておる場であるということで御理解を賜りたいのでございます。
○高橋委員 いろいろ言いたいことはありますが、次にします。