国会質問

質問日:2007年 11月 2日 第168国会 災害対策特別委員会

被災者生活再建支援法与党案

 被災者生活再建支援法改正案の審議が二日、衆参の災害特別委員会で行われ、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員、仁比聡平参院議員がそれぞれ質問に立ちました。同改正案は、今国会で衆院に与党案が、参院に民主党案が提出されています。両案には住宅本体への支援や支給対象要件の緩和が含まれています。適用の時期については、民主党案は今年一月一日以降、与党案は改正法施行日以降の災害としています。

 高橋氏は、与党案について、支給対象要件で年収の引き上げや年齢条項の撤廃など、現行法との違いについて質問。公明党の赤羽一嘉議員は「経済的理由を削除することで、対象となる被災者を広げる」と答弁しました。さらに高橋氏は、半壊世帯、一部損壊世帯への支援の言及がないなど不十分な部分を指摘し、見直し規定を盛り込むことを要望しました。

 仁比氏は、阪神・淡路大震災の被災者が十三年たったいまも苦しんでいる現状を示し、「大震災の教訓は、住宅再建こそが復興の要であり、そこへの公的支援が欠かせないと言うことだ」と強調しました。

 民主党の森ゆうこ議員は、「まったく同感だ。住宅本体に対する公的支援が盛り込まれた成案が実現するよう力を尽くしたい」とのべました。また、店舗兼住宅の支援について、民主党の藤本祐司議員は「柔軟な運用ができるよう考えていきたい」と答弁しました。

 同法をめぐっては、五日に衆参の災害対策特別委員会の理事懇談会が開催され、取り扱いについて協議を行う予定です。

(2007年11月3日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 ただいまの松本委員の質疑の中で、与党の考え方として、住宅本体に公的資金を投入するのを阻むものではない、そうした提出者の意見が示されました。見舞金としての整理であるということではありますが、私は、実は、昨日の大臣の答弁を聞いていまして、やはり今回のが個人住宅への直接支援なんだということを言われることに大変抵抗を感じているのかという印象を受けました。そのこと自体を非常に残念に思っておりました。しかし、結果が同じであれば被災者の要望がこの点でクリアされたという点で確認をされたと思いますので、この点は歓迎をしたい、このように思っております。

 そこで、昨日の委員会で、私は、地盤災害の問題、新潟中越地震も中越沖地震も非常に地盤災害が多いということを踏まえて、やはり被害認定に地盤災害を評価に加えるべきではないか、こういう指摘をさせていただきました。この点については、現行法ではまだできないというふうなお答えだったと思います。これについては、与党の皆さんにもぜひ検討をしていただきたいと思うんです。

 その上で、今回、敷地の被害を対象災害に加えたその理由についてと、現行制度との違いについて説明をいただきたいと思います。

○赤羽議員 私たちの法改正の趣旨は、現行法で被害実態に即していない部分は改正していこうということでございます。全国知事会からの要望事項にも入っておりましたし、また、検討会での御指摘もありましたが、これまでの現行法制度は住宅のダメージということだけであった。しかし、実態としては、先ほど申し上げましたとおり、住宅は一部損壊程度であっても、その地盤がどうしようもなくて建てかえをせざるを得ない、もう一度住み直すためには解体をせざるを得ないということは、これは当然入れなければ被災者間の不公平を是正することはできないということで、今回、被災者の対象に加えさせていただいたとおりでございます。

○高橋委員 ありがとうございます。

 実は、検討会の中間報告の中でもこの地盤災害の問題を検討されておりますけれども、住宅以上に土地というのは個人の資産である、税金投入は難しいのではないか、こういう指摘があったわけですね。でも、そのことを与党の皆さんは乗り越えられたというふうに、私は大変歓迎したいと思うんです。

 ただ、一応確認をさせていただきたいんですが、これは、住宅は一部損壊でも、あるいは極端な話、ほとんど無傷であってもよいのだ、ただしかし、地盤によって解体するということが必須条件ということなんですね。

○赤羽議員 これは、今の現行法が住宅を中心にした考え方でございますので、住宅が解体せざるを得ない場合、ここはやはり最低限残さざるを得ないと判断しております。

○高橋委員 この点については、解体をしなくても補修できる部分というのが必ずございますので、今後の検討をお願いしたいと思っております。

 そして次に、年収要件の問題ですが、八百万円以下にしたということで、多分、カバーできる範囲というのが八割くらいまで広がるのではないかと思うんですね。従来政府が答弁してきたことは、対象の拡大について、真に支援を必要とする人、こういう言い方を繰り返しされたわけですね。でも、このことは、真に支援を必要とする人と言っておきながら、実際には、余りにも所得制限が低く抑えられているがためにローンすら組めないような事態になっているのではないか、非常に矛盾しているのではないかということを私は考えておりました。

 昨年の六月一日に本委員会で参考人質疑をやっておりますけれども、そのときに、重川参考人がこのことについて、「声の大きい被災者ではなく、サイレントマジョリティーと言いますけれども、何も言わないけれども黙って頑張っているといういわゆる中間層、」普通のサラリーマンということをおっしゃっています。「一番子供にお金がかかり、一番大変な世代の人たちが何も公的な支援がもらえずに、でも自助努力で頑張り、そして経済や産業の復興を支えています。」こういうことをおっしゃって、働き盛りの方たちの住まいの再建、あるいは子供たちの教育の継続を公的に支えていくことが大事だということを指摘されて、私も、やはりそういうふうに発想を深化させていく必要があるのではないかと思っております。

 その点で、真に支援を必要とする人、この考え方をどのように整理するのか、伺います。

○赤羽議員 今御指摘いただいた点は、現行制度から大きく変えたところでございまして、現行制度の第一条の「目的」のところには、「生活基盤に著しい被害を受けた者であって経済的理由等によって自立して生活を再建することが困難なものに対し、」こうなっておりますが、ここの「経済的理由等によって」というものを削除しております。

 ですから、今回、見舞金的な性格の支援金にするということで、見舞金的なものを経済的な理由で困窮している人たちだけに支給するのかという議論もございましたし、できるだけ広い範囲の方たちに見舞金的な支給、また、今御指摘のありました、所得はあっても支出も多い子育ての家庭とか、そういったところができるだけ対象になるように配慮をしたつもりでございます。

○高橋委員 ありがとうございます。

 この点について、政府についても同じ質問をしたいと思います。真に支援を必要とする人の考え方について。

○加藤政府参考人 お答えいたします。

 ただいま提案者の赤羽先生がお答えになられたとおりだと考えております。

○高橋委員 次に、検討会の中でも提起をされていた親孝行支援についてどのように考えるか、伺いたいと思います。

 被災した親の住宅に一緒に暮らしてはいないけれども、被災していない子供さん、でも、親には資力がなくて、子供さんが今言ったような中間所得層なわけですよね。そういう方たちが再建してあげるという場合に、何ら今まで支援の対象になっておりませんでした。この点についてどのようにお考えですか。

○大口議員 今回の与党案でございますけれども、その点につきまして大きく前進をした、こういうふうに言えると思います。

 と申しますのは、今まではローンの利子についてしか対象にならなかった。そうしますと、ローンを組めるのは息子さんであって、資力のない親は組めなかった。ですから、せっかくこういう制度があっても使えなかったんです。今度は、例えば親が二百万、そして子供が一千万という形で契約を結びます。そして、その場合、契約を結んだら渡し切りでお金は出ますので、それによってこの対象となる、こういうことでございます。

 そういう点では、いろいろ検討会で言われたことを与党案でクリアさせていただいた、大きな前進を見ることができた、こう思っております。

○高橋委員 ありがとうございます。

 この点については、今大きな前進ということをおっしゃいましたが、歓迎をしたいと思います。

 では次に、逆に前進できなかった部分について少し考えていきたいと思うんですけれども、この間の被災実態から見ても、半壊世帯、一部損壊世帯に対する支援がやはりどうしても必要だと思っております。

 調査室の資料などにも出ておりますけれども、制度開始以来、中越沖地震までの統計で一万三千百八十八件に支援金が支給されて、大体百三十三億円以上の実績がございます。これは、確かに、対象となる大規模半壊以上の世帯でいうと七割くらいをカバーしていることになるかと思うんですけれども、実際には半壊世帯が非常に多いわけでありまして、そういう中で、全体の割合でいうと、せいぜい二割くらいだろうということになるわけですね。

 そうすると、今回もその点は変わりがないわけですから、国民から見ても、せっかくの改正が生かされないのではないかと思うんですが、この点について改正する考えはないか、伺います。

○赤羽議員 私、冒頭申し上げましたように、この被災者再建支援法というのは、決してオールマイティーな法律ではなくて、相当限界を持っている法律だ。冷たく言うようですけれども、この法律のそもそもの対象者は、住宅が全壊または大規模半壊もしくは解体せざるを得ない半壊と、住宅が相当なダメージを受けた被災世帯を対象としてその枠組みがつくられた法律であります。そういった前提で全国都道府県知事会も六百億円の基金を拠出している。

 ですから、今の整理は、半壊以下の被災者については、例えば災害救助法の規定で応急修理といった項目を使うですとか、これは五十万円出ます、また災害援護貸付金、これも百七十万まで利用することができる、こういったさまざまな災害関連法制、他の災害法制で今、半壊以下の方たちの支援は行われているという整理になっております。

 しかし、半壊だって大変な被害があったんだ、このような御意見は御意見としてよくわかります。しかし、もしそのようなことをこの被災者生活再建支援法の対象にするとするならば、まず全国知事会で拠出していただいている基金、六百億円の基金を、これは今正確な計算をしておりませんが、恐らく二倍以上の拠出をしていただかないと、このスキームそのものがパンクをしてしまう。

 政治家ですから当然その財源の手当てということも考えないと、残念ながら、何から何まで対応できる法律にはなっていないということをぜひ御理解いただきたいと思うのでございます。

○高橋委員 まず、理由の一つ目の、他の災害法制での対応ができるのではないかという御指摘でございますけれども、実は、今提出者が例に引かれました応急修理の問題、私、この問題は、二〇〇四年の新潟、福井の豪雨災害のときから提起をさせていただいております。

 最初は本当に、応急修理というのは、屋根の穴をふさぐ程度のものだとか、そういうふうな説明が政府からされておりました。しかし、五十万という枠があるではないか、もっと有効に使うべきだ、制度の中身を見れば、十分に修理をすれば住めるという人に対応するべきだ、こういうことをお話しさせていただいたつもりです。そのことが、新潟の中越地震では、県単の事業と組み合わさって大きく活用されました。その後、宮崎の豪雨災害ですとか、定着していって住宅再建の一助になるというか、そういう制度として、これは内閣府の資料の中にもされている。

 私は、このことを非常に喜ばしく思っているんですが、逆に、災害が多発をし、この制度を運用するがために、応急修理は半壊以上というふうにしてしまったんです。そして、所得は支援法と同じ。そうしたら、本当の趣旨は、資力がなくて大変で、そして修理をすれば住める、まさにそれは、一部損壊ですとか半壊ですとか、そういう人たちが五十万でも十分住むに値するという趣旨だったはずなのに、半壊以上という要件にされたために、すき間ができちゃったんですよ。何の法制でもできなくなる。これは絶対私はおかしいと思うんです。法の条文を読めば、絶対それは書いてはございません。

 災害救助法は厚労省の所管でありますから、きょうは厚労省を呼んでおりませんけれども、そういう形で制度にすき間ができるというのはおかしいのではないか。この点を省庁として連携をして整理をされたらいかがかと思いますが、政府に伺います。

○加藤政府参考人 今、災害救助法のお話がありまして、半壊以上ということで、半壊、恐らく、先生がおっしゃっているのは、被害率がゼロから二〇%のところについての手当てがどうなっているかということだろうと思います。

 お話のように、災害救助法自体は厚生労働省の所管でございまして、今の先生からいただいた問題点を含めて、厚生労働省の方とも、私ども今答える立場にはございませんけれども、ちょっと話をしてみたい、そういう問題意識をお伝えしたいというふうに考えております。

○高橋委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 財源の問題もありますけれども、それをちょっと後にいたしまして、確認をさせていただきたいのは、法適用される災害の対象を政令によって広げたということが説明されておりますが、このことについて少しお願いいたします。

○赤羽議員 これも冒頭の地盤被害のことと少し類似のところがあるんですが、現行制度で矛盾があるところはなくそうということでございまして、例えば、今、全壊が十世帯以上がこの法律の対象となる災害と認定されています。

 例えば、神戸市が十世帯以上でこの被災者生活再建法の支援対象になった。その隣接の芦屋市が、例えば六世帯全壊があったけれども、当初はこれは対象ではなかったんです。しかし、政令が改正される中で、隣接都市は五世帯以上の全壊があれば認めようということでございました。しかし、そのまた隣接、例えば西宮市が八世帯だと。現行法は、この八世帯の方は対象にならない。

 これは、同じ災害でそういったことはやはりおかしいのではないか。六世帯の芦屋市が対象となり、八世帯全壊がある西宮市は対象とならないというのは、だれが考えてもおかしな話なので、そういった矛盾は全部なくそう、隣接にこだわらないということで、今回の与党の改正に入れさせていただいております。

○高橋委員 この点は、知恵を絞っていただいたことに感謝をしたいと思います。

 先日からも随分話題になっております北秋田市なんかでも、北秋田市なんかは支援法の対象になっている。ですが、秋田県でいうと、県北と県南という非常に離れた地域で、また別の災害が同じ時期に起こっているわけですよね。そういうときに、隣接という言葉があればどうしても対象にならないという実態がございます。そういうことが今回救済されるのかなというふうに受けとめました。

 ただ、遡及されればもっといいということで、遡及については先ほど来ずっと議論がされておりますので、私からは重ねて要望するということにとどめたいと思います。

 それで、先ほどの財源論に戻りたいと思うんですけれども、二倍以上の財源がかかるだろうということの試算が示されましたけれども、この点については、やはり先ほど来議論してまいりました真に必要な支援ということの中身についてさらに議論を深める必要があるのではないか。本当に必要であれば、そして、そのことによって地域が復興するというのであれば必要な資金ではないか、そのための予算措置をするのは当然ではないか、私はこのように思っております。

 ただ、この間の議論の中で、例えば、首都直下のような大規模地震が来たら耐えられないだろう、そういう議論があり、そのために何か一部引き下げるのではないかという報道も一部にはございました。私は、こうした問題については、やはり一つには、首都直下のような大規模地震に関しては、特別な、枠の外の財源措置が必要である、この支援法のスキームで全部入れちゃうんだよとしちゃうと絶対無理だというふうに思うのであります。

 そのことについてどう思うかということと、耐震化の問題ですとか、九割の耐震率を掲げていらっしゃいますけれども、こうしたことを積極的にやっていく、防災、減災のこととあわせれば、そこまでの災害、いわゆる被災被害額にはならないのだという立場で取り組むことが必要だと思いますが、この点のお考えを伺います。

○赤羽議員 何から答えますかね。済みません、最初は何でしたっけ、半壊でしたっけ……(高橋委員「予備費です、首都直下の」と呼ぶ)どうも済みません。首都直下のような特別な地震があった場合はどうするのかというのは、これは今回の法改正で急に起こる問題じゃなくて、現行制度、現状でも内在している問題であります。これは、以前の防災担当大臣でありました井上喜一大臣が、委員会の答弁で、そういうけた外れなことが起きたら、それは別の特別措置法ができるだろうという答弁どおりだというふうに、私はそう考えております。

 もう一つが何でしたっけ。済みません、最近忘れっぽくなって……(高橋委員「耐震率を高める取り組み」と呼ぶ)もちろん、これは私は別に国土交通大臣じゃないので答弁する立場じゃありませんが、阪神大震災も六千四百名近い方が亡くなられたうちの八割から九割が家の滅失で亡くなったということを考えれば、当然、家の耐震を進めるということが減災につながる、防災につながるということは御指摘のとおりだというふうに思っておりますし、そのもとで、国土交通大臣の指揮のもとで、九割の耐震化を進めるということが進められているというふうに、そう承知をしておるところでございます。

○高橋委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたので、参加の委員の皆さん、提出者の皆さんに、最後に御要望申し上げます。

 ぜひ、見直し規定を附則に設けていただいて、この間議論されたさまざまな残された課題を今後の見直しとして検討されることを要望して、終わります。

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