日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は七日の厚生労働委員会で、最低賃金法改定案が「生活保護基準との整合性」を盛り込んだことについて、抜本的引き上げには不十分であり、政府が生活保護基準の改悪を狙っているもとで、逆に引き下げられる恐れがあるとのべました。
高橋氏は、政府が生活保護基準の見直しを検討していることにふれ、最低生活費を引き下げることや、それと連動した最低賃金の引き下げがあるのかとただしました。厚生労働省の中村秀一社会・援護局長は、最低生活費が「検証の結果下がるケースもある」と答弁。青木豊労働基準局長は、最低賃金も「機械的に下げられるものではない」としつつ、「否定されるものでない」と認めました。高橋氏は、これでは最低賃金が大きく改善されることはなく、引き下げもありうると指摘しました。
高橋氏は、全国平均十四円上がったものの青森県の最低賃金が六百十九円で、フルタイムで働いても十一万円足らずで全国の日雇い派遣労働者の平均月収を数万円も下回ることにふれ、「依然としてワーキングプアの実態ではないか」とのべ、最低賃金の抜本的な引き上げを求めました。舛添要一厚労相は、「これで生活するのは大変かなという気もするが、公平な立場で決めたものだ」としながら、「長期的には最低賃金を上げていくべきだ」と答えました。
労働契約法案について高橋氏は、労働基準法一八条の解雇権の乱用禁止規定が同法案に移されることによって後退することはないのかと質問。また、同法が施行以後も労働者にとって不利益変更があった場合、労働局はどういう役割を果たしていくかとただしました。
青木局長は、「解雇権の乱用は民事ルールを定めているものなので契約法に置くほうが適切ということでそのまま持ってきたものであり、変わるところはない」と答弁。労働局の役割について、「契約法について周知し、窓口で十分相談にこたえるよう対応したい」と答えました。
(2007年11月8日(金)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、委員長のお許しを得て、一点だけ述べさせていただきたいと思います。
先ほどのニュースで、薬害肝炎訴訟で、大阪高裁で初めての和解勧告が出たということであります。横田裁判長は、訴訟代理人だけでなく当事者との面談の機会も持ちたいと述べたと報じられております。
私は、この間、舛添大臣が全面和解、全員救済に向けて御尽力をされたことに対し大いに感謝をするものでありますが、この裁判長の意見も踏まえながら、全面解決、全員救済に向けて、改めて国の決意を伺いたいと思います。
○舛添国務大臣 私も今委員会の中におりましたので、間接的に、本日午後、大阪高裁の和解勧告が行われたということを聞きました。
具体的にどういう細かい文言であったかは、委員会終了後、きちんと対応したいと思いますけれども、国としては、和解協議のテーブルに着きます。まず、これをはっきりと申し上げたいと思います。
そして、今後、大阪高裁が精力的にリーダーシップを発揮くださって、問題の解決に当たる、和解協議を見直させる、そういう所存であると思いますので、厚生労働省として誠実に対応して、その成果が上がるように私も全力を挙げ、一日も早い問題の解決に取り組むということをこの場でお約束申し上げたいと思います。
○高橋委員 ありがとうございます。
原告団の皆さんがこれ以上悲しむことのないように、大臣のリードで全面解決を図っていただくことを強く要望したいと思います。
本日の質疑に入ります。
最初に、民主党さんに質問をさせていただきたいと思います。
最低賃金法についてですが、これについては、きょうもかなりの時間を割いて議論がされておりました。私たちは、全国最低賃金、前回の国会でも主張しておりますけれども、世界の趨勢でもある、全国一律最低賃金千円以上を目指すべきだという主張をしてまいりました。
民主党の考えも同じであるか、改めて確認をさせていただきます。
○細川議員 高橋委員からの質問にお答えしたいと思います。
御党がどのような全国一律最低賃金、詳しいことは私も存じておりませんけれども、民主党が考えております全国最低賃金は、全国の労働者すべてに適用される生活の最低保障の最低賃金額のライン、すなわちナショナルミニマムの水準でございます。
ただ、物価などの差によりまして、労働者とその家族の生計費は全国各地におきましていろいろと相違がございます。したがって、全国最低賃金の額では生活ができず、これを適用することが不適当な、そういう地域もございます。
そこで、民主党案では、そのような地域におきましては、地域最低賃金を決定することができる、そして、その地域の生活費に応じたより適切な最低賃金額を設定することを想定いたしております。
そして、最低賃金額を決定する際の考慮基準、これは、労働者及びその家族の生計費、これを基本とすることによりまして、最低賃金額は最低限労働者とその家族の生計費程度の額となるようにいたしました。これによりまして、私どもは、全国最低賃金は八百円程度、全国各地で適用される最低賃金額の平均を千円程度になるものと想定いたしております。
○高橋委員 ありがとうございます。
労働者と家族の生計費を原則とし、全国最賃と、そして地域最賃がある場合にはそれを上回る、必ずそれを条件としているという点において、我々はこの民主案を歓迎したいと思っておりました。その旗をおろさずにいてほしいということを強くお話しさせていただきたいと思います。
次に、政府に伺いますが、現在、政府は、生活扶助基準の見直し検討会を開催しておりますが、低所得世帯の消費支出を踏まえた見直しなどが二〇〇六年の骨太方針などで要請されており、このことによって生活扶助基準が引き下げもあり得るのかということを懸念しておりますが、いかがでしょうか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
生活保護基準につきましては、平成十六年に専門委員会でその水準の検証を行ったわけでございますが、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見きわめるために、全国消費実態調査などをもとに五年に一度の頻度で検証を行う必要がある、こういうふうにされているところでございます。また、委員御指摘の昨年の閣議決定もございます。
御指摘の生活扶助基準に関する検討会は、全国消費実態調査、五年に一度行われておりますが、その結果が生活保護の作業にも使えるようになりましたので、級地を含む生活扶助基準について、直近の今の調査を踏まえた専門的な分析、検討を行っていただくことを目的といたしまして開催しているところでございます。
委員御指摘の、引き下げることがあるのかということでございますが、まさに、本検討会は、今申し上げました全国消費実態調査という客観的な調査結果に基づいて専門的な分析、検討を行っていただくために、学識者に集まっていただいて検討しているところでございまして、あらかじめ基準の引き下げまたは引き上げといった方向性を持って検討しているところではございません。
○高橋委員 あらかじめ決めるということではないと。もちろん、詳細に級位で分けていきますと、逆に基準の方を上げなければならないとか、そういうものがあるという資料もいただきました。
しかし、私が伺っているのは、あらかじめかということではなくて、引き下げもあり得ますねということを伺っております。
○中村政府参考人 まさに、ただいま申し上げましたように、全国消費実態調査等をもとに検証する必要があるということでございます。検証の結果、上がるケースもあると思いますし、下がるケースもあるということで、可能性については両方とも否定するものではございません。
○高橋委員 両方とも否定するものではないというお話がありました。
基本的にはこれは、そうはいっても、生活扶助基準の見直しということは、主に引き下げがねらわれているのではないかということに対して、私たちは強く反対をしているものであります。
同時に、生活扶助基準というのは、生活保護法が、憲法二十五条に基づく健康で文化的な最低限度の生活、これを保障するものであるということでありますから、これの基準が下がるということは、いわゆる今述べた健康で文化的な生活という最低生活費がこの程度というふうに国が認めたということに相なるのだろうと私は解釈するのであります。
そこで、最低賃金とこの生活保護基準と整合性を図るということは、国によって生活保護基準が結果として引き下げになった場合、最低賃金も引き下げされるということも選択肢としては否定できないと思いますが、いかがですか。政府に聞いています。
○青木政府参考人 地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素というものについては、労働者の生計費、それから賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力という三つの要素、これを決定基準にいたしているわけであります。今般の改正におきまして、この地域別最低賃金を決定する際に考慮すべき要素の一つである生計費について、生活保護に係る施策との整合性に配慮するということを明確にしようとしているわけであります。
したがって、地方最低賃金審議会で具体的な水準を決めるということでありますけれども、生活保護基準額の水準のみに連動するような性格のものではないわけであります。そういう意味では、総合的に考慮されるということであります。可能性については否定をされるものではありませんけれども、今申し上げましたように、生活保護基準が下がったからといって、機械的に何か地域別最低賃金が引き下がるというようなものでもないということであります。
○高橋委員 今、否定されるものではないとお答えになったと思います。もちろん、私も、前回も最低賃金の問題を質問していますし、三つの要素であるということは十分承知した上で質問しています。ですから、当然、機械的に基準が下がったから下がるということでは決してないと。
しかし、あえて今回、このことを条文に盛り込んだ。盛り込んだことによって、現状は生活保護基準を下回る最低賃金を改善しようというところからスタートしたかもしれないけれども、しかし、今最低保護基準を見直ししているという現状において、これを否定できないんだ、下がることも当然あり得るんだということをお認めになったと思います。
私は、その点で、この最低賃金が生活保護との整合性を図ると書いたことによって大きく改善されるということではないのだ、むしろ引き下げもあるのだということを強く指摘したいと思います。
そこで、次に伺いますが、産業別最賃が、使用者側のなくせという厳しい攻撃に遭いつつも特定最低賃金として残ったことは歓迎したいと思います。ただ、罰則は除外されました。これを補てんする措置をどのように考えていらっしゃいますか。
○青木政府参考人 現行の産業別最低賃金については、御指摘のありましたように、これは廃止され、特定最低賃金として、いわば最低賃金法上の罰則の適用はなくして、民事的効力のみを有するということにいたしているわけでありますけれども、これは民事的効力を引き続き有しておりますので、この特定最低賃金の不払いにつきましては、これは約束した賃金ということになります。その賃金を払わなかったということになりますので、労働基準法の二十四条に規定いたしております賃金の全額払い、これに違反をするということになります。
したがって、この労働基準法二十四条違反として、これは罰金額は、今度の最低賃金法とは異なりますけれども、上限三十万円ということでありますけれども、引き続き罰則としては、額は違いますけれども適用されるということになります。罰則規定については、そういう意味で、全くなくなるということではないわけです。
ただ、これは、その特定最低賃金について最低賃金法上の罰則を外しましたのは、最低賃金については、賃金の最低限を保障する安全網としての役割、これはすべての労働者についてあまねくそういう役割を期待するということで、地域別の最低賃金をまず全国につくることを義務づけるということで、必ず地域別の最低賃金が日本全国の労働者に及ぶということで、まずセーフティーネットとして強化をする、この地域別最低賃金についても罰則を引き上げるというようなことで、ここに従来のセーフティーネットとしての意味合いを期待するということであります。
産業別最賃につきましては、いわば関係労使のイニシアチブにより設定をして、企業内におけるいろいろな賃金水準を設定する際のいわば労使の取り組み、それを補完するというようなこと、あるいは公正な賃金決定に資する、そういうことを期待して整理をいたしました。しかし、先ほど申し上げましたように、罰則としては労働基準法が適用されるということになります。
〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕
○高橋委員 労働基準法二十四条が適用されて三十万の罰則になる、これは確認させていただきたいんですが、今回、今るる説明をされましたように、最低賃金法の罰則を五十万円まで引き上げた。引き上げたけれども、産別最賃は別よとしたということで、次は産別最賃危うしかということをどうしても指摘したいなと思っております。
私は、むしろこのことは大いに充実をさせて、今課題となっている医療、介護、福祉分野などにおいても産別最賃ということを模索していったらいいのではないか、このように思っております。これは要望にとどめます。
そこで、大臣に伺いたいと思うんですけれども、今回、珍しく二けたの引き上げということで、加重平均十四円余の引き上げになりました。ただ、それでも私の地元青森県は六百十九円でございまして、二千時間働いて百二十三万八千円にしかならない、こういう実態であります。まだまだ最低賃金はワーキングプアの水準ではないかと私は思いますが、大臣はどのように考えますか。
○舛添国務大臣 今先生のお話を賜りながら、東京だと幾らになるんだろうと思って、これは七百三十九円で、二千掛けてみたら百四十七万八千円なんですね。そうすると、約二十五万ぐらいの差が、二十四万か差があるんです。
そうすると、これはもう委員の御地元ですから、私の感覚からいうと、青森というのは非常に物価が安くて生活費がかからないところかなと。やはり、私も感覚的に申し上げれば、いや、これで生活するのは、まあ青森知りませんけれども、大変かなという感じはいたします。
ただ、これは地方最低賃金審議会ということで、公労使三者で、青森の状況を全部勘案した上でお決めになるということですから、物価水準とかいろいろなことを考えてされるだろうなということで、公平な立場でお決めになったんだろうということが一つ。
ただ、問題は、ずっとこの一連の議論でありますように、憲法二十五条、生活保護とこの最低賃金との整合性、やはり最低賃金の方が生活保護よりも下じゃないかということ、私が理解する限り、青森はそのケースに当たらないというように思います、たしか十一ぐらいそういうところがあったと思いますけれども。しかし、今回の法律はそれをきちんと明記するということでございます。
それから、成長力底上げ戦略推進円卓会議で、やはり政労使の合意形成で長期的にこの最低賃金を上げていこうということでございますので、こういう方向をそれぞれ皆が努力しながら、長期的なこの最低賃金の引き上げということに向かってやるべきだ、そういう考えを持っております。
○高橋委員 確かに東京に比べれば若干物価は安いけれども、それだけで吸収できる格差ではないということを指摘したいと思います。
八月に厚労省が発表した、日雇い派遣労働者及び住居喪失不安定就労者、よくネットカフェ難民などと呼ばれておりますが、その実態調査、この中で、日々雇用される日雇い派遣労働者の平均就業日数は十四日、平均月収は十三万三千円です。これは、青森県の最賃労働者がフルタイムで働いても十一万足らずですから、それよりも下回っているという実態であるということを、これは答弁は求めませんので、こういう実態であるということをよく考えていただきたいと思います。
私は、別に東京も高いとは思っておりません。この水準を全体として底上げするべきだと指摘をしたいと思います。
次に、時間がなくなってまいりましたが、労働契約法について伺いたいと思います。
まだたくさん伺いたいことはありましたが、きょうは九条について、民主案で、「使用者が、労働者になろうとする者に対して、就労に先立ち、採用する旨の通知を発したときは、その時において労働契約が成立したものと推定する。」というふうに書かれております。この意図するところは何でしょうか。
○細川議員 この九条でございますが、採用内定の法的性質につきましては、いろいろ学説もございまして、始期つきあるいは条件つきの労働契約と考えるものが多くあることは承知をいたしております。また、採用内定の法律関係は、その実態に即して判断すべきものでもございます。
しかし、採用内定におきましては、労働者になろうとする者と使用者の間にどのような法律関係があるかが不明確であるために、両者の間でいろいろと紛争が多く起きているのもまた事実でございます。
そこで、民主党といたしましては、労働契約の成立の時期というものをしっかりと明確にしなければいけないということで、採用内定が出されたとき、発出された時点で両当事者の意思が合致してその契約が締結をされたということを推定する、こういうことにいたしました。
ただし、内定の実態というものがいろいろ多様でございますから、そういうことも考慮いたしまして、労働契約が成立したものとみなすというのではなくて、推定するということにいたした次第でございます。
○高橋委員 私は、この条項についてはいろいろな不安もあるんです、例えば、逆に内定者を拘束したりはしないかと。ただ、ここで目指している精神というのは非常に大事だと思って、特に、これまで法定化されてきていなかった問題に着目している。この点について、政府では、いわゆる内定者の保護的要素についてどのように整理をするのか、整理をする考えはないか、一言でお願いします。
○青木政府参考人 採用内定につきましては、労働契約法制を検討した労働政策審議会において、労働関係の実態に即して審議を進めていただきましたけれども、これはコンセンサスが得られなかったため、今回、法律案には盛り込みませんでした。論点としては挙げられたわけでありますので、引き続き検討課題ではあるかなというふうに思っております。
○青木政府参考人 この十八条の二の解雇権濫用法理の問題でございますけれども、これは労働基準法で規定をいたしておりますものを、労働契約法ができるということで、いわば民事ルールを定めているものということで、むしろ契約法に置く方が適切だということでそのまま持ってきたわけでありますので、変わるところはないということでございます。
それから、労働局において、現在でもいろいろな労働相談窓口を置いているわけでありますが、相談件数も非常に多くなってきております。私どもとしては、個別労働紛争の増加とともにさまざまな相談もふえてきておりますので、労働契約法を成立させていただきました暁には、こういったものをきちんと周知し、窓口でも十分相談にこたえるよう、努力をしていきたいというふうに思っております。
○高橋委員 しっかりお願いします。
以上で終わります。
【反対討論】
○高橋委員 私は、日本共産党を代表し、内閣提出の労働契約法案及び最低賃金法の一部改正案、労働契約法案に対する修正案及び最低賃金法の一部を改正する法律案に対する修正案の四案に反対の討論を行います。
ワーキングプアなど働く貧困層の拡大に象徴される雇用、労働をめぐる深刻な実態は、日本の将来を左右する重大な社会問題になっています。さきの通常国会は、労働国会とも言われ、労働三法案の質疑が十分に行われることが期待されていました。
ところが、さきの通常国会で社会保険庁改革関連法案の委員会強行採決の直後に、合意のないまま趣旨説明が行われるという不正常な形で審議入りし、今国会に継続されました。今国会でも、参考人質疑も行われないまま、審議時間は、通常国会と合わせてもわずか二十三時間半と極めて不十分であり、拙速な採決は断じて認められません。
労働契約法案に反対する主な理由は、就業規則による労働条件の不利益変更法理を立法化していることです。しかも、これまで判例が確立した判断要素を後退させています。また、有期雇用契約の反復更新は、使用者に配慮を求めるにとどまっており、先の見通しの持てない不安定な生活を強いられている多くの非正規雇用労働者の働き方を改善するものではありません。さらに、解雇の金銭解決制度などが引き続き検討課題とされております。労働法制のさらなる規制緩和に向けた受け皿づくりに結びつく法案を成立させることは絶対に許されません。
最低賃金法改正案に反対する第一の理由は、労働者、国民の切実な願いである現行最低賃金の抜本的引き上げに結びつかないからです。
最低賃金の水準が生活保護の水準を下回るという異常な状態の解消は、遅きに失したとはいえ、当然のことです。しかし、今日、多くの労働者、国民は時給千円以上の最低賃金引き上げを要求しています。これは年収換算で二百万円程度という水準であり、いわゆるワーキングプア、貧困問題の解決のためには最低限の要求であります。
ところが、政府は、一貫して最低生計費の水準を明らかにせず、生活保護とのどのような整合性を図るのかも不明です。一方、生活保護水準の切り下げが議論されている昨今においては、これに連動して最低賃金が引き下げられる懸念すらあります。
反対する第二の理由は、地域別最低賃金を任意から必須とし、地域格差を固定化するものだからです。全国一律最低賃金こそ実現するべきです。また、廃止すべきとの意見もある中、産業別最低賃金は存続されたことは重要ですが、罰則が適用除外されました。労働契約拡張方式が廃止されることも、現行制度からの明確な後退であり、認められません。
なお、労働契約法案に対する修正案は、就業規則による労働条件の不利益変更法理を法律化するという基本的仕組みにおいて、原案を何ら改善するものではありません。また、最低賃金法の一部改正案に対する修正案は、生活保護法の本来の原則である憲法二十五条の規定を重ねて述べたにすぎず、原案を改善させる保障にはなり得ません。
以上を指摘し、討論を終わります。