「技能移転」と矛盾/〝過酷な外国人実習生〟/高橋氏
高橋千鶴子議員は21日の衆院厚生労働委員会で、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改定案について、今も介護で外国人技能実習生に過酷な労働を強いる仕組みとなっている問題を追及。同改定案は「技能移転」という実習制度の目的とも矛盾すると批判しました。
厚労省は、介護の技能実習制度は昨年11月に開始し、今年10月末までに986件の計画が出され、247人の実習が開始されていると明らかにしました。
高橋氏は介護労働について、介護福祉士養成施設では日本人入学者の減少が続く一方で、外国人留学生の入学が5年間で67倍(全体の16・7%)にもなるなど外国人労働力に頼っている状態を紹介。こうした中で、技能実習生は1年目から夜勤も1人で任せられることになっており、利用者にとっても実習生にとっても不安だと強調しました。
さらに技能実習制度は実習生出身国への「技能移転」を目的としているのに、出入国管理法改定案では、人材不足対応のため新たにつくる在留資格(特定技能1号)へと実習生が移行することになる矛盾を指摘しました。
( しんぶん赤旗 2018年11月24日付より)
ー議事録―
○高橋(千)委員
それで次に、外国人労働者の、きょうは介護の問題で質問をします。
資料の二枚目に、介護に従事する外国人の受入れということで、今までの、これからのではなく、今までどういう形態があったかというので、三つの表を示しています。
EPA、これはインドネシア、フィリピン、ベトナムの人たちが今入ってきている。それから、在留資格「介護」、これはまだ平成二十九年九月一日からです。それから、介護職種の技能実習、これは昨年の十一月一日から、本当に始まったばかりなんですね。
それで、まず伺いたいのは、技能実習の介護、始まってから何人の受入れ計画が出されて、現在、何人が実習に入ったのか、その数字だけお願いします。
○谷内政府参考人 お答えいたします。
介護の技能実習は、議員御指摘のとおり、昨年十一月に開始されましたけれども、平成三十年十月三十一日現在の数字を申し上げますと、介護職種の技能実習の計画申請数は九百八十六件。一件が一人でございます。あと、機構に認定された数は四百七十二件でございます。そのうち二百四十七人が入国されていると承知しております。
○高橋(千)委員 先日聞いたときは六百件と言っていたのがもう九百八十六件ということで、やはり、技能実習を、いわゆる施設の側では、待っていたという感じになっているのかしらという気がいたします。
それもそのはずで、資料の三枚目を見ていただきたいんですけれども、介護福祉士養成施設の定員等の推移というのがあります。これは平成二十六年度から五年間を見ているんですが、一目瞭然です。入学定員数が減っている。入学者数も減っている。定員は二千五百三十五人減っています。入学者は三千五百三十六人減っています。それに対して、外国人留学生は十七人から千百四十二人、六十七倍になっているんですね。ですから、出発したときは〇・二%だったのが、今は一六・七%までいる。
だから、さっき、もう既に、これから受け入れる人は一七%ぐらいというお話があったと思うんですけれども、これから育っていく人が、一六・七%は外国人留学生に頼って、そういう状態であるということなんですよね。これは本当に大丈夫なんだろうかということを思うわけです。
それで、伺いますけれども、今、介護の仕事、資料の四枚目にあるんですけれども、技能実習生の、シルバーサービス振興会が出しているパンフレットの中で、移転の対象となる技能とはというふうにあって、介護の仕事には、必須業務、身支度の介護とか移動の介護とか食事の介護とか、そして関連業務、掃除、洗濯、調理、機能訓練の補助、周辺業務、安全衛生業務、こういうのがありますと言っています。
それで、実習生はこの中のどこまで、入ったばかりの人がですよ、何ができるのか。それから、夜勤についてはどうなっているのか。お答えください。
○谷内政府参考人 お答えいたします。
技能実習生が行う介護の業務についてのお尋ねですけれども、訪問系サービスはできないということで除かれますけれども、基本的に介護職員が行う介護と同じでございますので、今議員が御指摘になった業務全般ということになります。
あと、議員から夜勤業務についてお尋ねがありましたけれども、利用者の安全を確保して、実習生を保護するための措置を講じている場合に限り可能でございまして、心身両面への負担が大きいことを考慮いたしまして、技能実習生以外の介護職員を指導に必要な範囲で同時に配置する等の対応を必要とする、そういった場合に夜勤業務が可能としているところでございます。
○高橋(千)委員 在留資格「介護」を入れるときに、私は、夜勤はどうなるんですか、一番言葉が壁になっているのに一人でやらせるんですかという質問をしました。それが、今お答えになったように、指導的な人がついていればと。いかにも手とり足とりそばにいるように聞こえますけれども、それが最初だけで、一年のうちに、もう既にひとり立ちすると聞いています。そこを確認したいのと、今紹介したパンフレットの中に、こういうふうに書いているんですね。技能実習生が配置される事業所と同一敷地内で一体的に運営されている事業所がある場合は、一体的に運営されている事業所に技能実習生以外の介護職員を同時に配置する体制とすることも可能であると。
つまり、一緒にいるわけじゃないんですよ。同一敷地内だけれども隣の施設かもしれない。そこに日本人の介護職員がいれば、それでも入ったばかりの実習生に夜勤を一人でやらせることができる、そういう考えですよね。
○谷内政府参考人 お答えいたします。
技能実習生の特に一年目の業務でございますけれども、我々の考え方は、一年目では、指示のもとであれば決められた手順等に従って基本的な介護を実践できるレベルを、到達すべき水準として技能実習を受けるということでございまして、繰り返しになりますけれども、夜勤につきましては、技能実習生以外の介護職員を指導に必要な範囲内で同時に配置する等の対応を必要としているところでございます。
特に、業界内のガイドラインの中では、一年目ではなくて、夜勤業務等を行わせるのは二年目以降の技能実習生に限定するということも考えられるといったことがガイドラインに書かれているところでございます。
○高橋(千)委員 今、語尾が薄かったでしょう。一年目はやらせないことも考えられると言っているだけであって、施設として、そういうふうに、やはり最初は無理かなと思うんだったら無理させないで二人でやりなさいと言っているだけで、一人でやってもいい、それは裏返すとそういう意味なんですよ。本当にそれで、利用者さんの安全や、それから実習生にとってちゃんとしたスキルを学ぶ場になるのかということをやはり指摘をしなければならないと思っております。
そこで、資料の最後のページなんですけれども、技能実習の二号と特定技能一号は技術の程度が同程度だと言われています。卒業すれば、二号まで終えれば特定技能一号になれると聞いていますから、試験が必要ないと聞いています。
そうすると、何人かこれまでも質問されたと思うんですが、法務省にもう一度伺います。技能移転という名目の実習生と、人材不足というのを明確に打ち出している特定技能一号の労働者、でもこれは同じ人なんですよね、同じ人がスライドするのに、一体どこに線引きがあるんでしょうか。
○佐々木政府参考人 委員御指摘のように、特定技能一号の在留資格は、一定の技能水準を要求するものでございます。そして、技能実習を終えた方は、一定の技能水準、日本語能力も含めてでございますけれども、これを満たしているとみなすものでございます。
ただ、在留資格「特定技能」による就労目的の在留の後には、技能実習制度等で培った技術、技能、知識を本国に持ち帰り、その後、本国で必要な技能移転を行っていただくことになるので、技能実習制度の趣旨と矛盾するものではないと考えております。
○高橋(千)委員 それはちょっと考えられないですよね。だって、最大五年と言っているわけですよね、上限、特定技能一号は。五年間は人手不足対策なんだけれども、もしかして特定技能二号に行けたら、これはまた本国に帰って技能移転もできるからって、急にまた目的が違う。それも同じ人だと。そんな法律ってありますか。おかしくないですか。
○佐々木政府参考人 御指摘のように、特定技能の在留資格と技能実習制度は、目的、趣旨を異にするものでございます。
技能実習で一定の技能を身につけられた方が、特定技能の即戦力として、いわばもう一活躍、日本でしていただき、その後に本国に帰っていただいて、まさに技能実習制度の趣旨である技能移転をしていただくということを想定しているものでございます。
なお、特定技能二号に行ったら、もうそのまま日本にずっといらっしゃるのではないかという御指摘もいただいておりますけれども、御指摘のような場合には、特定技能一号から特定技能二号に在留資格を変更するに際して、一旦帰国をして、何らかの形で技能移転を図っていただくことを検討しています。
○高橋(千)委員 一旦帰国してね。技能実習も、三号になるときに一旦帰国しなきゃいけないというふうになっているんですよね。今回、三号になれなかったビルクリーニング、これも厚労省の所管ですけれども、これが特定技能一号になると。
だから、結局、自分たちの都合のいいように仕切りをつくっているんですよ。本音と建前が違い過ぎます。そのはざまの中で、本当に真面目に働いてきた外国人の皆さんが大変な思いをしているということが今問われているわけであって、もっと聞きたいことがあったんですが、残念ながら時間が来ましたので、引き続いて連合審査などやっていくことをお願いをして、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
―資料ー