国会質問

質問日:2007年 11月 16日 第168国会 厚生労働委員会

児童扶養手当

 日本共産党の高橋千鶴子議員は十六日、衆院厚生労働委員会で、低所得者の母子家庭に支給している児童扶養手当の削減撤回を迫りました。舛添要一厚労相は「いろいろな問題点が解決できるよう、全力をあげて取り組みたい」と答弁しました。

 同手当の削減は、二〇〇二年の法改悪で、受給が五年を超え、末子が八歳以上の場合、最大で半額まで削減することが決まっており来年四月の実施を予定。参院選の結果を受け、与党が同日、手直しで合意しました。

 高橋氏は、厚労省がおこなった全国母子世帯等調査結果でも〇二年に二百十二万円だった平均年収が、〇五年に一万円しか増えていないことを指摘。大谷泰夫雇用均等・児童家庭局長は、「低所得世帯が多くをしめる状況に、大きな変化はなかった」とのべ、受給五年で手当を削減する根拠がないことを認めざるを得ませんでした。

 また、年収は一万円しか増えないのに、月に一万円の手当削減となる世帯もあることを示した高橋氏にたいし、大谷局長は、わずかな年収の増額によって、給付額が大幅に下がる世帯がでることもあるとし、制度の不備を認めました。

 高橋氏は、新日本婦人の会の調査で、複数の職場で働く母親が13%、手当が削減されたら仕事を増やすという母親が38%を超えたと紹介。「国会要請にきた母親が、時給の高い深夜に働き、子どもに弁当を作ってやれないと訴えた。手当の削減は、やめるべきだ」と強く求めました。

(2007年11月17日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 私は、きょうは、児童扶養手当の削減問題について質問させていただきます。

 児童扶養手当については削減をするべきではないと、昨年の三月、ことしの三月と質問させていただきました。平成十四年の母子寡婦福祉法の改正によって、受給期間五年以上、末子の年齢が八歳以上、この世帯が今年度中に最大で半額まで児童扶養手当を削減することが決まっています。受給世帯の三割近い二十八万人に影響が及ぶのではないかと心配をされているところです。

 しかし、削減幅を最小限にすべきだという請願が重ねて衆参で採択されてきたこと、十一月二日には、全国知事会、市長会が、一部削減を凍結せよと申し入れを行っています。また、民主党さんや与党さんも、この見直しについて検討されている、そういう状況である。私は、改めて、きっぱりと削減はやめるべきだと訴えたいと思います。

 そこで、質問は、まず、厚労省が検討の材料にすると言ってきた全国母子世帯等調査結果が先般公表されました。母子家庭の年収はふえたのでしょうか。果たして、五年たったら削減してよいという根拠ある数字だと認識をしておりますか。伺います。

○大谷政府参考人 先般公表いたしました平成十八年度全国母子世帯等調査の結果を平成十五年度に行われました前回調査と比較いたしますと、一つは、母子世帯の平均の年間収入でございますが、これが二百十三万円となっておりまして、前回調査の二百十二万円に比べまして一万円増加。二つ目として、平均の年間就労収入でございますが、これは百七十一万円になっておりまして、前回調査の百六十二万円に比べますと九万円の増加ということでございます。

 こういったことで、数字的には一定の改善は見られるところでございますけれども、母子世帯の平均の年間収入は、一般の世帯と比べましてなお低い水準にあります。また、低所得世帯が多くを占める状況に大きな変化はなかったということで、引き続き、就業支援施策に取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

○高橋委員 今、大きな変化はなかったというお話でしたけれども、その続きが、引き続き就業支援策にということですけれども、これは根拠ある数字だとは言えない、五年では十分だということではないということを確認してよろしいでしょうか。

○大谷政府参考人 さっき申しましたように、一定の改善は見られたというふうには理解しておりますけれども、なおその水準が十分でないということでございます。

○高橋委員 十分でないということを確認させていただきました。

 資料の一につけておきましたけれども、これは母子家庭白書ですね。一世帯当たり平均所得金額及び世帯人員一人当たり平均所得金額は、全世帯と比べて、あるいは高齢者世帯と比べても、母子世帯が極端に低いということが一目でわかると思います。これは、今回の母子世帯等調査結果においても、全世帯の平均所得の三七・八%という形で、依然として低いということが改めて確認をされたと思っております。

 それで、今も十分でないというお答えをいただいたんですけれども、この中身なんですね。例えば、二百十三万円に一万円アップしたということがあったと。新聞報道で、年収が五年前と比べてちょっと上がっているじゃないか、削減幅が限定的なものになるのではないか、ちょっとそういう報道が一時出たんですね。それで非常に不安を広げてしまった。

 しかし、それが十分ではないということの一つの試算として、これも依然として児童扶養手当の一部支給の対象には当然なっているわけですね。例えば、今の二百十三万円で一体どのくらいの手当になるかなというのを計算してみますと、一万二千九百八十一円、年十五万五千七百七十二円かなと思います。

 つまり、年に一万円ふえて、月一万円以上の手当が減らされるというと、何倍もの打撃になるわけですね。それはもう十分お認めになると思いますが、その点を確認させていただきます。

○大谷政府参考人 どういった対象の方にどういった幅で減額するかについては、まだ固まっておりませんので、今おっしゃったように、金額で突合することはできませんけれども、確かに、わずかに収入がふえた結果、計算の上では給付額が下がる世帯が出るということは、制度の改正によっては起き得ることだと思います。

○高橋委員 改めて、五年で削減してよいという根拠にはならなかったと思っております。

 十四年の法改正のときは、いわゆる経済支援から就業支援に切りかえたのだと説明をしてきました。私は、もちろん就業支援はやるべきだと思っています。だけれども、それが、実効が上がる前に、現実に、今言ったように十分な所得は結局上がっていない、そういう状況があるのに削減ありきということがやはり問題なのではないかと思っています。

 そこで、調査は母子家庭の実態に迫れたのかということです。シングルマザーは、常用雇用が若干ふえたとはいえ、依然として臨時、パートが四三・六%です。では、社会保険の加入率はどうなっているでしょうか、また、ダブルワークがどのくらいあるか。この二点を伺います。

○大谷政府参考人 平成十八年度の全国母子世帯等の調査結果によりまして、母子世帯の母の社会保険の加入状況でありますけれども、まず、雇用保険につきましては、加入している方が五六・三%、医療保険につきましては、被用者保険に加入しておられる方が四九・〇%、国民健康保険に加入しておられる方が四四・六%、次に、公的年金でありますが、被用者年金に加入しておられる方が四五・四%、国民年金に加入しておられる方が三七・二%となっております。

 また、ダブルワークとおっしゃった内容でありますが、母子世帯のお母さんが複数の仕事をかけ持ちしているケースというふうに理解するのかと思いますが、これにつきましては、私ども、当事者団体のヒアリングやあるいは報道等で、そういった実態があるということは承知しておりますが、今回の調査ではその数量的な把握はしておらなかったところでございます。

○高橋委員 社会保険の加入率については、今回の調査で初めて行ったということを伺っています。

 改めて、ひどい実態だと思うんですね。雇用保険の未加入が、つまり四三・七%だと。さすがに医療保険というのは一番多いわけですけれども、それでも未加入が六・五%。そして、公的年金が一七・五%という、まさに本当に未権利な状態で働いている。多くのシングルマザーが、もし自分が倒れたらこの子はどうなるんだと将来に不安を抱えている、そういう実態が浮き彫りになったのではないかと思います。

 それから、もう一つのダブルワークの問題ですけれども、今回の調査にはありませんでした。

 私たち、紹介をさせていただいておりますが、新日本婦人の会が、ことし三月から五月に、全国の五百五十九名からの回答をいただいた母子世帯の就労・子育て実態調査、この中で、二カ所かけ持ちで働いている方が一〇・九%いらっしゃいます。そして、三カ所あるいは四カ所以上、これを合わせると二・六%もいらっしゃいました。こういう実態なんですね。

 大臣に次に伺いますので聞いていただきたいと思うんですが、深刻だと思うのは、手当が減額されたらどうしますかという問いがあるんですね。それに対して、三八・一%が仕事をふやすと答えています。

 つまり、今現在でもダブルワークの人たちが、ふやすと答えている。今一つの人でもふやすということは、ダブルワークになるということですね。そういう実態が、つまりダブル、トリプルという形になっていくということをまずわかっていただきたい。今回の厚労省の調査でも、帰宅時間が午後十時から十二時に及んでいる方、深夜、早朝の方を合わせると六・四%もいらっしゃる、そういう実態だということです。

 九月の交渉に私も同席させていただきましたが、新婦人の会の申し入れのときに、福島から来たシングルマザーが訴えておりました。夜九時に仕事を始めるんですね。朝の七時か八時に帰ってくる。だから、息子さんは中学生なんですけれども、顔を見られない、いつもすれ違いなわけです。ですから、息子さんと一緒にいたいんだけれども、昼働きたいんだけれども、夜の方が時給が高いと。今、最賃の話もこの間しましたけれども、そういう状態で、少しでもいい方を選ばざるを得ないんだと。ですから、お弁当も持たせてやれない、毎日コンビニで弁当を買わせる、そういう実態なのだということを訴えられていました。

 私は、こういう就業形態で、さらに仕事をふやすなどということを選ばざるを得なくなったら、子供も母親もどうなるかはもう推して知るべしではないかと思います。

 このような実態を大臣はどう見ますか。せめて手当は削らないでと訴えています。この児童扶養手当は既に毎年削られています。減っています。だから、本当は全然足りないと言いたいんです。でも、せめて削らないでと言っているんです。児童扶養手当が命綱であることを認めますか。そして、少なくともこれ以上削るべきではないと考えますが、いかがですか。

○舛添国務大臣 先般、母子家庭の皆さん方ともお会いいたしました。

 そして、実は、私自身、父親を子供のときに亡くして、ずっと母子家庭ですから、母子家庭の大変さというのは本当に身にしみてわかっているつもりでございます。そして、私が子供のころというのは、戦後すぐですから、児童扶養手当なんて何にもない。ダブル、トリプルどころかクアドラプルになるように、とにかく仕事があればみんなで、残された者で働いて生き抜いていく、そういう思いがありますので、この問題に対して私は人一倍強い思いを持っております。

 ぜひこれは、議院内閣制ですから、財源の問題も考えないといけません、政府・与党のしっかりとしたスクラムを組んで、私もしかるべきリーダーシップを発揮する、そしてまた与党の皆さん方の御英断を賜りまして、今委員がお話しになったようないろいろな問題点が解決できるように、全力を挙げて取り組みたいと思います。

○高橋委員 全力を挙げて解決できる、今の言葉の中には、私が質問をした、削減すべきではないということも含まれているのかなと。

 これには法律の改正が当然必要であります。期限を区切っているものを削除するか、あるいは、せめて延長、今年度中には結論を出さないという手段があるかと思います。このことも含めて検討されるということでよろしいでしょうか。

○舛添国務大臣 その前にやはり、私の例を出したのは、就労支援というのは非常に重要ですよということは、まず一つ申し上げておきたいと思います。

 その上で、本当に困っている方々をどうして救うか。大きな理念、大きな理想を掲げるのはいいんですけれども、現実にある法律を施行したときにさまざまな問題点が起こってくる、それにきちんと対応するのが政治家の仕事だと思っていますし、そのことを与党の皆さん方はプロジェクトチームでしっかりと今検討なさっておりますので、スクラムを組んで、問題を感じている方々にそういう悩みを持たないで済むように、そういう方向で全力を挙げていきたいと思っております。

○高橋委員 私が先ほど指摘をしたのは、含めてですから、そのことも含めて最大限努力をしていただきたいということなんです。

 一言だけ就労支援の問題で言いますと、これは政府としても、来年度の概算要求の中でも、予算のいろいろな面で考慮をされております。教育訓練のときの生活支援ですとか、そういうことは十分承知をしております。しかし、それはまだ緒についたばかりなんですね。

 ですから、これから一定前進をするかもしれないけれども、今年度中には決着しないというのはもう当然である。よろしいですね、それを局長にちょっと、最後、一言確認して。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

○大谷政府参考人 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、就労支援という自立の問題も含めて、対策を全般的に講じてまいりたいと考えております。

○高橋委員 以上で終わります。よろしくお願いいたします。

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